児童養護施設からの巣立ちを支援 世田谷区、都内で初

東京新聞 2016年2月18日

世田谷区 都内初
児童養護施設を十八歳で退所したり、里親の元を巣立ったりして大学などに進学する若者に向け、東京都世田谷区は新年度、区営住宅を月額一万円で貸し出す取り組みを始める。また、返済の必要のない給付型の奨学金制度も創設する。親の虐待などで親元を離れ、経済的な支援が受けられない若者には、高額な学費や生活費の負担が進学の妨げになっているためだ。 (小形佳奈、川上義則)
児童養護施設出身者らを対象にした家賃補助は京都市が、給付型奨学金は同市と長野県がそれぞれ導入しているが、いずれも都内の自治体では例はなく、全国的にも珍しい。
世田谷区は今月発表した二〇一六年度予算案に関連費用として二千二百四十七万円を計上。区内二カ所の児童養護施設や三カ所の自立援助ホーム、里親の元で生活してきた若者らを対象にしている。
貸し出すのは民間の賃貸住宅を借り上げた3DKの五室で、一室に若者二~三人で共同生活してもらう。原則として学生は卒業まで、社会人は二年間支援を受けられる。
給付型の奨学金制度は大学や短大、専門学校に通い、親族などから経済的支援を受けられない学生に在学中、年額三十六万円を上限に給付する。初年度は二十人を予定している。
厚生労働省の調査では、一三年三月に高校を卒業した子どもの大学、短大、専門学校などへの進学率は76・8%だが、児童養護施設出身者は22・6%。世田谷区によると、進学できても、学費や生活費を捻出するために働き過ぎて体調を崩したり、費用を賄いきれずに生活が追い詰められるケースも少なくなく、進学先での中退率は高いという。
無事に卒業しても、一般的な貸与型の奨学金を利用した場合、利子を含めて返済しなくてはならない。世田谷区にある児童養護施設「福音寮」の飯田政人園長は「貸与型奨学金を借りて大学進学を望んだ子どもに、将来の負担の大きさを考え、利用を思いとどまらせたこともある。返済の必要がない世田谷区の給付型奨学金は大変ありがたい」と歓迎する。
日本大文理学部の井上仁教授(児童福祉)は「社会的養護が必要な子どもは格差社会の中でも、最も光が当たらぬ存在。他の自治体でも支援が広がれば」と期待する。

短大生・田中さん 余裕のなさ友達関係にも影響
児童養護施設で育ち、四月から世田谷区の住宅支援を受ける予定の短大生、田中麗華さん(20)は、区内で一月末に開かれたシンポジウムで登壇し、「お金のやりくりには、いつも苦労しています」と窮状を明かした。
小学二年の時、父親の暴力に耐えかねた母親が家から去り、姉と二人で家出したところを児童相談所に保護された。その後、児童養護施設に入り、高校を卒業するまで過ごした。
短大では、保育士を目指して勉強中。授業料は月五万七千円の貸与型奨学金を中心に賄っており、卒業時には百三十万円を超える借金を背負う。生活費はスポーツクラブのアルバイトなどで稼ぐ。家賃は月四万円。食費を月二万円に抑えても貯金は難しい。
定年退職した父親や結婚して子どもがいる姉には、経済的な援助は望めない。
「友達と一緒に食事したり、遊びに行ったりできない。経済的な余裕のなさが友達関係にも影響する」と悩みを打ち明け、「短大に行きたくない時期もあった」と振り返る。世田谷区の住宅支援について「家賃が一万円で済むなら、差額を奨学金の返済に充てられる」と喜んでいる。

障害ある子ども支援強化

共同通信 2016年2月18日

政府が今国会に提出予定の障害者総合支援法改正案の全容が18日、分かった。虐待を受けて児童養護施設に入所したり、新生児集中治療室(NICU)を退院後も人工呼吸器などの医療的ケアが必要だったりする子どもに対し、障害の特性やニーズに応じた支援を強化することなどが柱。早期成立を目指し、2018年度の障害福祉サービス報酬改定に反映させたい考え。
厚生労働省によると、虐待などを受けて養護施設や乳児院に入所する子どものうち、障害があるのは約3割に当たる9447人(13年)。
施設職員だけでは対応が難しいため、保育士や児童支援員らを派遣し、生活訓練や療育を行う。

子どもの貧困による国益の損失~結婚・出産編~

水野友貴ブログ 2016年2月19日

2月19日。筆者は33歳となった。議員になったのが28歳であるので、市民・県民の有権者による選挙でのご判断により、有り難いことにこの仕事を5年間続けている。
当時から「結婚」や「出産」のことは数え切れないほど指摘されてきた。「早く結婚しなさい」、「子供を産まないと一人前ではない」、など駅や街頭活動、選挙活動の中で散々言われてきた。現在も独身であるが、この仕事を始めてから恋愛とは程遠い生活を送っており、市民の付託に応えるため、恩返しをするために、何よりも仕事を優先してきた。筆者はこれは議員として当たり前のことであると考える。
筆者は表面的には笑顔で対応したり、開き直って我孫子市議会の一般質問でも提言をしたりしているが、何を強調したいかと言えば、一人で生きていくという選択をする女性もいる一方で、男女とも社会的、身体的、精神的、経済的に様々な事情を抱えて「結婚や出産をしたくてもできない」層が現実に存在するということだ。
2014年の平均初婚年齢は男性は31.1歳、女性は29.4歳で、この20年で3歳上がった。さらには第一子を産む女性の平均年齢も30.6歳と約40年前から5歳上がった。この背景には女性の仕事などの社会的理由が存在する。
日本産婦人科学会によると妊娠・出産に最も適した年代は25~35歳前後とされているが、女性の社会進出が進んだことによって自分の適齢期の間に仕事と育児を両立できるかわからないという不安や仕事の復帰の際に心理的にも負荷がかかるのは言うまでもない。つまり、女性は仕事か育児を常に選ばなくてはならない人生設計を強いられてきたことが言える。
こういった状況で健康な独身女性が卵子を凍結(「卵活」や「卵貯金」などと言う)するなど、晩産化・晩婚化社会が加速することが懸念される。自然に誰もが産み、育てる社会を形成していくことが政治家の仕事であるにも関わらず、健康女性までもが科学的な手法を頼りにせざるを得ない現状を深刻に受け止め早急に環境整備に取り組むべきである。
先日、千葉県人権啓発事業補助金事業の第3回千葉県東葛地区人権サミットに出席した。人権問題の解決に向けて差別のない社会を目指す活動を精力的に行っているNPO法人人権ネットワークPEaCE21が主催し、母親が仕事が忙しく育児に時間がかけられないケースやひとり親の育児問題など、児童虐待という視点で千葉県松戸市長、柏市長、我孫子市長によるパネルディスカッションも行われた。
基礎自治体が独自の取り組みで母親や女性の育児・仕事をサポートしている一方で、国においては社会的背景から生まれる出産や育児において心理的、社会的に不安を抱えた女性たちが求めている社会環境作りがおろそかになっていると考えざるをない。筆者も全国の地方議員及び団体とともに活動している「里親制度」の支援などに取り組んでいるが、社会全体で過不足分をそれぞれが補ったり、手助けできる柔軟な仕組みを創り上げていくことが重要であると痛切に感じる。
この現状を直視し、女性の人生が結婚・出産か仕事か、という二者択一になってしまう蓋然性を多分に秘めているこの社会構造こそが児童虐待や子供の貧困につながっていることを認識し、女性の社会進出ばかりに目を向けるのではなく、その政策の前提にある最重要項目を見落としてきた社会の矛盾に気づき、生活保護以下の収入で暮らす子育て世帯が過去20年で倍増してしまったというこどもの貧困状態に対して国は率先して取り組んでいくべきである。
「女性が輝ける社会を目指す」という政府のスローガン以前に、安心して子供を産み・育てる社会が構築されなくては輝くどころではない。

「子どもの貧困」解決元年に

八重山毎日新聞社説 2016年2月17日

石垣市も新年度から対策事業がスタート

モデル事業実施へ
全国では子どもの6人に1人、沖縄はもっと深刻で3人に1人が貧困状態という「子どもの貧困」対策に石垣市も動きだす。2016年度からモデル事業の実施を12日明らかにしたのだ。支援の充実強化を望みたい。
同年度からは内閣府も10億円を予算化。県も30億円の基金を積み立てて6カ年の推進計画をスタートさせるなど対策に乗り出すことになっていたが、そこに石垣市も加わることになった。
県内では既に那覇市などが内閣府の予算で取り組みを明らかにしており、竹富町や与那国町も事業を実施し、新年度が沖縄・八重山の「子どもの貧困」解決元年になることを期待したい。

ひとり親世帯の貧困率59%
県民所得全国最下位、非正規労働者割合全国一位の沖縄県は、全国に先駆けて子どもの貧困実態調査を行い、先月29日中間報告をした。そこで分かったのは子どもの貧困率が29.9%で全国平均の約2倍に上る3人に1人、ひとり親世帯の貧困率は58.9%で、もっと深刻だということだ。
子どもの貧困は見た目には分かりづらいが、親が病気やけがで仕事ができないとか、非正規労働で賃金が安いのに加え子だくさんのため電気水道も止められる貧困状態に陥り、給食費が払えない、食事は学校給食だけなどの子どもが確実に増えているという。
さらに貧困が原因の児童虐待が増え児童養護施設に保護されたり、あるいは親が夜働かなければならないため、子どもは居場所がなく深夜はいかいなど非行に走ったり、罪を犯して少年院に送られたりのケースは全国の残虐な少年事件で明らかだ。
こうした貧困の子どもは十分な教育を受けられず、「貧困の連鎖」になっていることも既に明らかだ。

子どもの貧困は社会の問題
このことから県の6カ年の「子どもの貧困対策推進計画」は、「子どもの貧困は自己責任論でなく、社会全体の問題」と明示。その上で子どもの貧困は親の収入が増えないことには解決が困難なことから「保護者への就労支援」「生活支援」「経済支援」と「子どもの教育支援」を重要施策に位置付け、34の指標で数値目標を掲げている。
たとえば市町村の無料塾を現在の32市町村から41の全市町村に、大学等進学率を39.8%から45%に、生活保護世帯の高校進学率を83.5%から90.8%の全国並みにといった具合だ。
国の緊急対策事業予算10億円では、県内で貧困の現状を把握する支援員130人配置と、食事提供や学習支援を行う子どもの居場所を30カ所程度想定しており、これを受けて石垣市のモデル事業は支援員3人配置と子どもの居場所は1カ所を設置予定という。
市児童家庭課では市内のひとり親は11年度の829世帯が14年度は934世帯に増え、状況は県平均を上回る厳しさだとして、独自に地域の子育て支援事業者も募っていたが、2業者が名乗りを上げてきたのはありがたい。
本島地区ではNPOが子ども食堂を開設したり、フードバンクで生活困窮世帯に食の支援をしており、八重山でも今回の事業開始を機に官民で支援の輪が広がることを期待したい。

児童虐待防止で改正法案提出へ 厚生労働省

NHKニュース 2016年2月18日

厚生労働省は児童虐待の防止に向けて、国や地方自治体の役割と責任をより明確にすることなどを盛り込んだ、児童福祉法などの改正案を今の国会に提出する方針で、自治体側との間で意見が分かれている児童相談所の設置義務の在り方などを巡って調整を進めています。
全国の児童相談所が把握した昨年度、平成26年度の児童虐待の件数は、これまでで最も多い、8万8000件余りに上っていて、厚生労働省は年々増加する児童虐待の防止に向け、児童福祉法などの改正案を今の国会に提出する方針です。
改正案では、すべての児童が適切な養育や保護を受けられるよう、その権利を新たに明記しています。そして、国や地方自治体の役割と責任をより明確にするため、適切な養育に必要な情報提供や支援は国が、広域での対応が必要となる保護などの措置は都道府県が、子育て支援や保育への対応は市区町村が、それぞれ責任をもって行うとしています。
さらに、厚生労働省は現在、都道府県や政令指定都市にのみ義務づけられている児童相談所の設置を、東京23区や人口20万人以上の中核市にも義務づけることを改正案に盛り込みたい考えで、財源や人材の確保への国の支援が前提だなどとして難色を示している自治体側と調整を進めています。