<奨学金>「給付型」見送り…政府、年末の予算編成で判断

毎日新聞 2016年5月12日

政府は、今月中にとりまとめる「ニッポン1億総活躍プラン」で、大学生らを対象にした返済不要の「給付型奨学金」の創設について「課題を踏まえて検討を進める」と明記するにとどめ、導入を先送りする方針を固めた。自民、公明両党が均等な教育機会の確保に向けて「給付型」の創設を求めていた。年末の予算編成で改めて判断することになりそうだ。
国の奨学金事業には有利子・無利子の「貸与型」しかない。日本学生支援機構の奨学金制度を利用している学生は無利子で約47万人、有利子で約84万人に上り、大学生の2人に1人は何らかの奨学金を受けている。非正規など不安定な雇用のため、経済的に困窮する若者が増加する背景もあり「給付型」の創設に対するニーズが高まっていた。
ただ、対象範囲の線引きが難しいことや恒久的な財源が必要なこともあり、今回は判断を見送る方針だ。
プランには、同一労働同一賃金法制の実現や保育士、介護士の処遇改善策などを盛り込む方針だ。【田中裕之、阿部亮介】

キリン福祉財団が助成金

大分合同新聞 2016年5月13日

キリン福祉財団(三宅占二理事長)はキリン・子育て応援事業で選ばれた「おおいた子ども支援ネット」(大分市、西畑修司理事長)に助成金30万円を贈った。
同財団は地域の子育てボランティアに対する支援を毎年実施。本年度は全国の289団体から応募があり、県内からは家族の問題などで居場所をなくした子どもの自立支援に取り組む同支援ネットが選ばれた。
同市のホルトホール大分であった贈呈式では、キリンビールマーケティング九州統括本部の小日向真大分支社長が「子どもの自立を進めてほしい」とあいさつ。同支援ネットの矢野茂生事務局長は「児童養護施設利用者らの就労体験活動に役立てたい」と話した。

<社説>民生委員不足 「奉仕の精神」広げたい

琉球新報 2016年5月13日

地域住民が安心して暮らせるよう活動する民生委員・児童委員が不足している。県によると、4月1日現在で2108人が委嘱されているが、定数2368人に対する充足率は89・0%しかない。昨年に続き全国最下位となっている。
充足率の低さは、必ずしも地域福祉の低下を意味するものではない。だが不足している分、民生委員一人一人の負担が重くなることは容易に想像がつく。支援を求める人たちへの対応が遅れることも懸念される。充足率アップは急務と言えよう。
県は充足率が低い要因を「民生委員の役割が周知されていないのではないか」と分析している。昨年も同じような分析だった。要因が分かっていながら、改善が進まないのはなぜか。詳細な分析と対策を急ぎたい。
民生委員委嘱の第一段階は自治会長らの推薦などである。地域の実情に精通し、福祉活動やボランティア活動へ深い理解を持った住民の掘り起こしに、自治会は積極的に取り組んでほしい。
子どもの貧困問題では多くの県民が高い関心を示して募金に応じたり、支援にも乗り出したりしている。地域福祉を向上させる人材は確実にいる。その人たちへの働き掛けも考えたい。
少子化と核家族化で地域のつながりや人間関係が希薄になっている。このため、周囲に相談できずに孤立する生活困窮世帯は増えている。民生委員は支援制度を知らずに苦しむ困窮世帯に制度利用を働き掛けて行政・福祉機関とつなぐ。
それ以外にも高齢者や障がい者、子育ての不安に関する身近な相談相手となり、ニーズに応じた福祉サービスの情報を提供している。民生委員が果たす役割は極めて大きい。
「民生委員・児童委員の日」の12日から「活動強化週間」が始まった。これを契機に、民生委員の活動への理解を県民全体で深めたい。充足率100%を目指して「社会奉仕の精神」をさらに広げ、誰もが安心して暮らせる地域社会を実現したい。
民生委員の身分は厚生労働相から委嘱された非常勤の地方公務員で、給与は支給されない完全なボランティアである。奉仕の心を持った県内2108人の民生委員一人一人の福祉活動への熱意を高く評価し、日頃の献身的な活動に感謝したい。

年4万人の妊産婦「精神疾患の治療やケア必要」 厚労省

朝日新聞 2016年5月12日

うつ病などで治療や精神面のケアが必要な妊産婦が年間4万人いるとの推計を11日、厚生労働省研究班(研究代表者=光田信明・大阪府立母子保健総合医療センター産科主任部長)が発表した。
全国の病院や診療所2453施設で昨年11月に出産した妊産婦について、精神疾患の治療やケアの必要性を尋ね、1073施設(44%)から回答があった。出産した約3万9千人のうち1551人(4%)で治療やケアが必要と判断された。全国では年間約100万人が出産しており、4万人に相当するという。
1551人のうち診断や治療を受けていたのは459人(30%)で、276人(18%)は薬をのんでいた。一方、少なくとも381人(25%)は過去に診断や治療を受けたことがないとみられるという。
家庭や生活環境を分析すると、未婚や貧困などで問題を抱える人が目立った。診断や治療歴のない381人では、「実母と折り合いが悪い」「近所との付き合いがない」という傾向が強かった。
調査を担当した日本医科大産婦人科の中井章人教授は「妊娠や出産は女性に精神的なストレスがかかりやすくなる。妊産婦のケアを専門とする精神科医らを確保し連携することが重要」と話している。(南宏美)