「養子縁組」あっせん、4分の1が出産前に同意

読売新聞 2016年6月12日

血縁関係のない大人と子供が法律上の親子となる「養子縁組」の制度で、2014年度に全国の児童相談所(児相)が養子縁組をあっせんした新生児の約4分の1は、実母が同意した時期が出産前だったことが厚生労働省研究班の調査でわかった。
研究班は、出産後に実母の意思が変わり、子育てを望んでトラブルとなるのを避けるため、同意は出産後に取ることが望ましいと提言した。
今年5月に成立した改正児童福祉法では、児相が虐待防止などのために養子縁組のあっせんや相談を行うことが明示され、養子縁組で児相が適切な役割を果たす必要性が高まっている。
研究班は昨年9~10月、全国の207児相(当時)にアンケート調査を実施し、195児相から回答があった。児相があっせんした67人の新生児について分析した結果、出産前に実母の同意を得ていたのは16人(24%)だった。

産まない女:結婚15年目を迎えたふたり。“産まない”選択を貫いたことをどう感じているのか

東京カレンダー  2016年6月12日

少子化の今、産まないという考え方は“悪いこと”なのだろうか。
高齢経済社会研究センターでは、厚生労働省が毎年発表する都道府県別の合計特殊出生率について、全国値と比較可能な平成 26 年の都道府県別の合計特殊出生率を計算し、以下のように発表した。

1位:沖縄県(1.88人)、47位:東京都(1.20人)

地方に比べ女性の自立が進んでいる都会では、晩婚化が進み“出産”から少しずつ遠のいてしまう現状がある。このままでは少子化が進み、2060年には65歳以上の高齢者が、日本全体の約40%を占めると言われているのだ。
多くが出産を望み、命が生まれることは素晴らしいことだ。しかし、“産まない”という選択肢を選ぶことも否定はできない。決して子供が望めない体でもない、嫌いなわけでもないが、産む決断と同じように、産まない決断をする女性も増えている。
これまで20代にして産まないことを決意した和香(29)、DINKSでいることを選んだ真奈美(36)、独身を謳歌しているバツイチの恵美(43)を紹介した。
今回は結婚15年目を迎え、産まないことを貫き通してきた香織(46)に話を聞くことにした。

ふたりだけの人生ですか?幸せですよ
結婚15年目ともなれば、普通は愛情も次第に冷めていく。妻は家事など日々の忙しさに追われ構うことができず、旦那は外に女性を囲ってしまう。それを付き合いが長ければしょうがないと諦め、結婚なんて所詮そんなものとどこかで諦めてしまう気持ちも出てくる。
しかし、香織にはそういった雰囲気をひとつも感じることがない。彼の話をするときは幸せそうに笑顔を浮かべ、まるで付き合いたてのカップルのような微笑ましさがあった。
「主人の准一とは、子供を作ることを最初から考えていませんでした。お互い仕事が大好きで、俺たちの子供はこの仕事だ!なんて笑って話しています」
香織は化粧品開発の仕事に携わり、年収は700万円弱。そして夫の准一(44)は自営業を営んでおり、2,000万円以上を稼いでいる。普通の家庭より経済的に余裕はあるが、老後のことを考え代々木に中古マンションを購入。4LDKの部屋のうち二部屋の壁をぶち抜き、30平米くの寝室を作ったという。
結婚当初から喧嘩をしても必ず一緒に寝ることを約束しているふたりにとって、寝室は大事なコミュニケーションの場。どの部屋よりも居心地をよくすることに徹底した。あとはお互いの書斎を設け、仕事には没頭できるようにしている。幾つになっても仕事は続けたいと思っているだけあって、彼女たちは年齢よりも若々しい印象だ。
ふたりだけで寂しくはないのか?という我々の問いにも胸を張って「ふたりでいれていつも幸せですよ」と話す。お互い大恋愛の末に結婚、というわけではなかったが、不思議な事に時を刻むごとに気持ちはより増しているという。それこそ、子供がいればもっと幸せなのではないかと思うが、二人の決断には理由があったのだ。

逆になぜ産もうと思うのかを話し合った
ふたりが結婚を決めたとき、周りは祝福をするのと同時に「子供の予定は?」と当たり前に聞かれるようになった。子供嫌いではないが、ふたりのままでいいと考えていた香織と純一は、なぜ産むことが必要なのか、きちんと家族を含め話し合いをしたという。
両親は「老後は誰に見てもらうのか?」「仕事はだれが継ぐのか?」とふたりに質問を投げつけてきたが、子供は決してそういうことのために産むものではないと考えていた。老後は今の稼ぎをきちんと貯蓄していけばいいし、准一の会社は何も血縁関係に継がせることはない。彼が認めた相手ならば、誰だっていいのだ。
それに香織は女性にとって子供を産むことが義務だとは思っていないし、心から欲しいと思えないのに産むのは失礼ではないかとも考えていた。だからといって自分の意見を誰かに押し付けるつもりはないし、押し付けられたくもない。女性が自立できるようになった環境に、そういった選択肢が増えただけのこと。
その考えを准一も納得してくれて、今日まで一緒にいる。結婚した当初から「香織が側にいてくれればいい」という気持ちは変わらない。子供がいない分、距離ができてしまうかと思えば逆で、お互いに自分たちしかいないという気持ちが仲を深くさせてくれる。喧嘩をしたことはあるが、一緒のベッドに入れば自然と体をくっつけあって寝てしまい、怒っていたことが馬鹿らしくなってしまう。
お互いの休みが合えば海まで車を走らせ、サーフィンをして一日を過ごす。帰りはレストランで食事を済ませ、家に帰ればお気に入りのウイスキーを飲む。そんな日々が幸せなのだ。
仕事は忙しいが、家事はお互いが得意なものを分担し、できないときはしょうがないという気持ちでいる。そういう気持ちに余裕があるからこそ、多少のことには気にならず、家に帰ることが苦痛というストレスもない。
子供がいればそれはそれで幸せかもしれないが、周りの話を聞けば毎日が戦争で家にいることをストレスに感じるという友人もいる。そんな友人を不幸だとは思わないが、自分とは違う世界だなと一歩下がって見ているのは事実。そういった意味でも、この選択に後悔はない。
「私たちを意地っ張りという人もいますが、そう思われても別に構いません。誰に何を言われても私たちが幸せなことは変わらず、人の目なんて気にしていたら生きにくくなるだけですから。これから10年先に准一と何をするかを考えることが、これからの楽しみです」

お互いを尊重する、それが仲のいい夫婦でいることの秘訣だろう。彼女たちは問題にぶつかる度に、きちんと話し合いお互いが納得のいく答えを出している。そして周りの目を気にせず、堂々としている姿にも共感をもてる。子供がいないから“おかしい”ということではなく、子供のいない家庭もあるということを今一度認識してほしいと思った。

増加する〇〇依存症は「現代社会が作り出した現代病」

週刊女性PRIME 2016年6月11日

’13年に厚生労働省の研究班が発表した調査によると、日本全国のアルコール依存症患者は109万人。パチンコなどのギャンブル依存症の疑いがある人は536万人、スマホやSNSなどインターネット依存症の疑いのある人は421万人にのぼるという。
そこで知っているようで知らない「依存症」のリアルについて、榎本クリニック理事長で医学博士の榎本稔医師に教えてもらった。

【Q1】『大酒飲み』と『アルコール依存症』の違いは?
ほとんど毎晩のようにお酒を飲むし、飲み始めたら酔っぱらうまで……。お酒は大好きだし、誘われたらつい飲んでしまう。これはアルコール依存症なのだろうか?
「実は、アルコール依存症であるかどうかの診断基準は、明確にはありません」
さまざまな依存症に関する著書が多数ある榎本稔医師はそう話す。
「お酒が好きで毎晩飲んでも、翌日ちゃんと仕事に行くなら問題ないでしょう。ただし、飲みすぎて仕事に行けなかったり、酔っぱらって暴行や痴漢などの問題を起こしたり、身体を壊して入院したり、家族に迷惑をかけるようになったらアルコール依存症と言えます」(榎本医師)
お酒をいっぱい飲んで「酒豪ですね」と言われているうちはいいが、勝手に仕事を休んだり、周りから「ちょっと、おかしい」と思われ始めたら危険信号。
「ほどほどの量であれば、昔から言われるように“酒は百薬の長”。ほんの憂さ晴らしのつもりで飲み始めたのが、いつしかハマり、習慣になって、飲む量が増える。やがて“今日はこれくらいでやめておこう”と思っても、歯止めがきかなくなる。つまり、自分で自分の行動を抑えることができなくなる。これが依存症の典型的なプロセスです」(榎本医師)
わかっちゃいるけどやめられない、という状態がつまり、依存症なのである。

【Q2】依存症になっているかどうかを見分ける境界線は?
ここまでやると、もはや依存症かも……なんて、自分で依存症に気づくことはできないものか。
「そもそも依存症の人は自覚がまったくありません。依存症とは現代社会が作り出した病気ですが、本人は病気だなんて思っていない。悪いのはお酒を売っている店だし、パチンコを営業している社会だし、自分をこうしたのは教育のせいだと思っています。
ただ、何か問題を起こす前に、その人が依存症であると見分けるのは難しいし、区切り方もわかりません。ケガや病気で苦しくなれば病院へ行きますが、依存症の人は自ら病院やクリニックに来ることはありませんから」(榎本医師)

【Q3】女性がなりやすい依存症ってあるの?
多様化し、細分化される依存症。その中でも、特に女性が陥りやすいものとは?
「食べ物系の依存症は女性に多いです。女性はスイーツが好きですよね。甘いものに依存する女性はいます。ダイエットや過食も、女性が依存しやすい。買い物依存症も若い女性に多いです」(榎本医師)
買うといっても、別にその品物が必要というわけではなく、ただ「いいなあ」と思って衝動的に買ってしまう。その「買う」行為そのものが快感で、自分を抑制することができない。
大金持ちであれば特に問題にはならないが、そうでなければ親に泣きついたり、借金を重ねて、周囲を困らせる問題を引き起こす。
「リストカットも圧倒的に女性のほうが多いです。ストーカーも女性の『性依存症』と言えます。最近は女性もお酒を飲む機会が増えましたので、女性のアルコール依存症も増えています」(榎本医師)
男女同権や女性の社会進出も、女性特有の依存症に大きな影を落としているという。

【Q4】依存症の原因に遺伝は関係あるの?
親が昔からお酒をよく飲んでいたから、体質を受け継いで、子どもがアルコール依存症になることはあるのか。
「親から体質を受け継ぐというと、依存症は遺伝的な要素があるのかとよく聞かれますが、アルコール依存症については、DNAの配列などの観点から研究が行われているようですが、まだ明確な結論は出ていません」(榎本医師)

【Q5】依存症の原因は実は本人ではなくて家族にあるの?
アルコールやギャンブルで問題を起こしても、泣きながら反省すれば家族は許してしまう。ひきこもりであっても家族は家族。そっと見守ってあげるのが大事……と思っていたら大間違い。
「依存症は、実は患者の家族に大きな問題があるのではないかと気づきました。重要なのは、目の前の症状ではなく、背後にある家族病理に目を向けること。依存症患者自身が自分の病気を認識するのはもちろん、その家族も患者を生み出した自分たち家族全体の病理に気づかないといけません」(榎本医師)
家族はどうしてもかばってしまう。苦しむ子どもを目の前にした母親なら、それはなおさら。
「家族も病気なのです。治療をする立場からすると、本人をかばう家族はいないほうがいい。家族は面倒をみようとしますが、それをすると依存症の治療は挫折します」(榎本医師)

【Q6】依存症という病気は昔からあったの?
「依存症とは、現代社会が作り出した現代病です。終戦直後の日本は食べるものがなかったので、糖尿病はありませんでした。幼いころの私のように、6畳ひと間に家族5人で住んでいれば、ひきこもりもできません。
お酒も昔は今ほど大量生産していなかったし、貧乏な人はそんなにたくさん飲めなかった。つまり、社会が豊かになるほど、心が歪んで満たされなくなり、何かの依存症になるのです」(榎本医師)

【Q7】国によって依存症の種類は違うの?
「イタリアには『性依存症』の痴漢や盗撮はないそうです。欧米人は挨拶でハグをしながら頬を合わせたり、女性と一緒に歩くと男性が腰に手を回したりするのは当たり前ですよね。文化や社会によって依存症に違いはあります。ただし、欧米に痴漢はありませんが、レイプが深刻な問題になっています」(榎本医師)

【Q8】依存症はどうやって治療するの?
自分の力では、どうしようもないのが依存症。そもそも心の病気であり、それが身体の病気も引き起こして、さらに家族も巻き込んで、社会的な問題に悪化してしまう。
「依存症には、飲んだら治る薬とか、こういった手術をすればいいという治療方法がありません。徹底的な治療法がないのです。そもそも本人には病気である意識はありませんから。
自ら進んで病院やクリニックにやってくる依存症の人もいません。家族も最初は面倒をみますが、見続けられなくなる。どうにかしてと、家族が本人を病院やクリニックに連れて来て、ささやかながら精神科が医療として支えているのが現状です」(榎本医師)