児童養護施設の給食で12人食中毒症状…ノロウイルス検出「夏でも予防を」

読売新聞(ヨミドクター)  2016年7月26日

鹿児島県は25日、曽於市末吉町上町の児童養護施設「慈光園」で給食を食べた入所者の男女12人(5~18歳)が嘔吐(おうと)や下痢などの症状を訴え、うち9人と調理員からノロウイルスが検出されたと発表した。
全員快方に向かっているという。県は食中毒と断定し、26、27日の2日間、給食施設に対し、業務停止命令を出した。
県生活衛生課によると、園内で給食を食べた子どもと職員計50人のうち、幼稚園児~高校生の12人が21日夜から22日午前にかけて症状を訴えた。発症時期などから20日に提供された給食が原因とみられる。
同課は「ノロウイルスによる食中毒は冬場に多いが、夏でも起こる。調理前の手洗いなど、予防法を講じてほしい」と呼びかけている。

福祉施設の食品衛生管理を強化 HACCP(ハサップ)導入義務化へ

福祉新聞  2016年7月26日

2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向け、厚生労働省が食品衛生管理の国際基準「HACCP」(ハサップ)の導入義務化を検討している。福祉施設や病院などの大量調理施設も対象になる見込みだ。
HACCPは欧米諸国で義務化されている衛生管理基準で、原材料の入荷から最終製品までの工程ごとに微生物による汚染などの危害を予測して、監視・記録することで安全性を確保する(図参照)。
義務化の背景には食料の約6割を輸入に頼る日本の食糧事情がある。輸入食品の安全性を輸出国に求めるには国内でのHACCP導入が前提になるため、14年6月に閣議決定された改定日本再興戦略にも導入推進の方針が位置付けられた。
厚労省はこの方針を受け、今年3月に生活衛生・食品安全部長の諮問機関として「食品衛生管理の国際標準化に関する検討会」を設置。年末までに対象食品や事業者の範囲、監視指導のあり方などの方向性をまとめる。
13日に開かれた第5回検討会では、保育所などの調理業務受託企業で組織する日本給食サービス協会が参考人聴取されるなど、福祉施設も義務化の対象になる可能性は高い。
対象から外れても、厚労省はHACCPに沿って大量調理施設衛生管理マニュアルを改訂する予定で、同マニュアルに基づき衛生指導を受ける福祉施設は、義務化と同様の対応を求められることになりそうだ。
厚労省HACCP企画推進室の福島和子室長補佐は「20年に向け義務化を検討しており実行可能な仕組みにしたい」と話している。

保育士年収に地域格差、最大180万円の開き 全職種平均の7割

西日本新聞 2016年7月26日

待機児童の解消に向けて保育士の確保が全国的な課題となる中、民間保育所で働く保育士の2015年の平均年収が都道府県によって最大約180万円の格差があることが、西日本新聞の試算で分かった。九州でも福岡、佐賀両県で約140万円の開きがあり、各県とも主要産業の平均年収の6~8割にとどまる。低賃金に加え地域間格差も浮き彫りになった形で、専門家からは離職や人材流出を防ぐ処遇の底上げを求める声が強まっている。
厚生労働省が主要産業129職種の事業所を対象に実施した15年の賃金構造基本統計調査を分析。パートなど短時間労働者を除く保育士(公務員以外)の給与月額と年間賞与などを合算し、平均年収を推計した。
その結果、保育士の全国平均年収は323万円で、全129職種平均の66%にとどまった。最低額は鳥取県で201万円。最高額は愛知県の383万円で、約180万円の差があった。九州では佐賀県が全国で2番目に低い222万円。福岡県は359万円で全国3位だが、熊本26位、宮崎31位、長崎37位、大分41位、鹿児島43位と全体的に低水準だった。

保育単価の地域間格差が人材確保に影響か
保育士の平均勤続年数は最長の福岡で10年。鹿児島は6年2カ月、佐賀は2年5カ月で、勤続年数と年収の関連も浮かんだ。賃金の原資となる保育単価(認可保育所への国の補助金)は国が市町村ごとに賃金水準や物価を基に区分しており、保育単価の地域間格差が人材確保に影響している可能性もある。
保育士の処遇について政府は「1億総活躍プラン」で給与を2%(月約6千円)、経験を積んだ職員は月4万円程度上げるとしている。ただ、公立と私立、正規と非正規の給与の隔たりも指摘されており、賃金アップへの自治体の取り組みも求められている。

全体の処遇引き上げ必要
《保育政策に詳しい池本美香・日本総合研究所主任研究員の話》
民間で働く保育士の収入は仕事の大変さに見合っていない。少しでも条件のいい職場に移る動きが出ており、人材流出の懸念がある。都市部の方が高収入の傾向だが、地方でも保育士不足のところがある。保育の質を高めるためにも、処遇を全体的に引き上げる必要がある。保育所への補助金が賃金に反映されているか検証すべきだ。

公立と私立の給与差問題
《鈴木亘学習院大教授(社会保障論)の話》
都市部と地方では物価や保育士の需要も異なり、年収の地域差は仕方ない。ただ、国が定める保育単価が低すぎて民間保育士の給与が低いのは確か。処遇改善が必要だ。一方で、公立保育所の保育士(公務員)は自治体の補助もあり、はるかに給与が高い。公立と私立の格差が大きな問題だ。保育所の民営化を進め、私立への補助を手厚くすべきだ。