<所在不明の子>全国に25人…12人は2年前から 厚労省

毎日新聞 2016年7月29日

住民票はあるのに自治体が居住実態を把握できない「所在不明の子ども」が28日現在、13都県に25人いることが厚生労働省の全国調査で分かった。うち12人は2年前の調査から引き続き居場所が分からず、事件に巻き込まれたとみられる子どもも含まれる。事件や虐待など危険な状況に置かれている可能性があるとして、各自治体は警察と協力し安否確認を続ける。
調査は2014年に続き2回目。14年10月20日時点では141人の所在が分からなかった。
今回の調査は、15年6月時点で乳幼児健診を受けていなかったり、学校に通っていなかったりして連絡が取れず、市区町村が安否確認が必要と判断した18歳未満の1878人を対象に実施した。
その結果、1853人は家庭訪問のほか、他の自治体や警察、入国管理局との情報共有、照会により所在が確認されたが、25人(男10人、女15人)はなお所在が分からない。
年齢別では就学前が4人、小学生7人、中学生6人、義務教育期間後の子が8人だった。
都道府県別では、東京5人▽栃木、埼玉各3人▽茨城、三重、和歌山、熊本各2人▽長野、愛知、岡山、山口、高知、長崎各1人。数人は、周囲の状況から海外に出国している可能性もあるという。
25人のうち3人は、過去の経緯から病院に通院させていない恐れがあることなどから虐待を受けている危険性がある。また、15年6月に東京都新宿区の女性が相模原市で遺体で見つかり、元交際相手の男が殺人容疑で逮捕、起訴された事件で、消息が分かっていない女性の長男も25人に含まれる。
一方、所在が確認された事例の中には、殺人容疑で逮捕、起訴された男の供述で今年1月に佐賀県伊万里市で母親とともに遺体で見つかった福岡県久留米市の男児が含まれる。全国調査に伴って県児童相談所が14年6月に県警に行方不明届を出して捜査が始まり、発覚した。
厚労省虐待防止対策推進室は「昨年3月に自治体や教育委員会、警察が協力して調査するよう求める通知を出し、連携が進んで居場所が分かる子どもが増えてきた。今後も調査を実施し、早期に居場所を把握して事件や虐待の防止につなげたい」としている。【黒田阿紗子、桐野耕一】

夏休みの中高生が「ポケモン」求めて「夜」の公園徘徊…注意すべきポイント

弁護士ドットコム 2016年7月29日

国内で大人気となっている「ポケモンGO」。配信されたのが、ちょうど中高生が夏休みに入るタイミングだったため、昼夜を問わず、若者がレアなポケモンが出没するスポットに押し寄せている。一方で、深夜に少年少女がポケモン目的に徘徊し、補導されるケースも相次ぎ、問題視されている。
報道によれば、深夜に公園などを徘徊していたことを理由に少年が補導されたケースは、7月22日から27日までに、都内で25件にのぼっているという。
ポケモンを探すために中高生ら深夜に徘徊することは、法的にはどんな問題があるのか、小野智彦弁護士に聞いた。

午後11時から午前4時までは、補導の対象になる
「東京都が定めた『青少年の健全な育成に関する条例』に関する条例では、青少年とは18歳未満の者で、深夜というのは23時から翌日の朝4時までと定められています。
この点は他の都道府県の条例もほぼ同様だと思います。深夜はいかいについて次のようなことなどが定められています。
・保護者は、正当な理由がある場合を除いて、深夜に青少年を外出させないように努めなければならない。
・深夜に営業している事業者は、青少年に帰宅を促すよう努める。施設に立ち入らせないようにする」
つまり、青少年の保護者や周囲の大人は、青少年が「ポケモンGO」目的に、深夜に外を徘徊しないよう注意しなければならないということだ。この条例を根拠に、補導されることになるのか。
「それは別に定められています。この条例は、本人を補導する法的根拠ではありません。補導は、警察法施行令に基づく『少年警察活動規則』が根拠になっています。
条例の『青少年』は18歳未満ですが、この規則では、少年は『20歳未満』と定義されているので、18歳、19歳も補導の対象になります。
そして、未成年者が夜に外を出歩く『深夜はいかい』が『不良行為』とされています。東京都の場合、午後11時から午前4時までの深夜に外出していれば、警察の補導の対象になります。
『深夜はいかい』で補導されること自体はよくあることです。ただ、これに犯罪行為が絡んでくると、少年法で、罪を犯すおそれのある少年(『虞犯(ぐはん)少年』といいます)に分類される可能性もあります。
虞犯少年は、年齢に応じて、家庭裁判所や、児童相談所に送致・通告される可能性があります」

大人が連れ回すケースも問題に
京都では、21歳の女性が「ポケモンGO」を一緒にやる目的で、17歳の女子高生を深夜に連れ回し、書類送検されたと報道があった。大人が同行していても、問題となるということだろうか。
「保護者の委託・同意を得ていない人が、18歳未満の青少年を深夜に連れ回すことは、京都の『青少年の健全な育成に関する条例』に違反する行為です。罰則も定められています(18条の2第2項、31条4項7号)。
京都のケースでは、この規定に違反したとして、摘発されたのだと考えられます」

相模原の事件で問われることは何か

yomiDr. 2016年7月29日

神奈川県相模原市の知的障害者福祉施設「津久井やまゆり園」で7月26日未明、入所者19人が刃物で殺害され、26人が重軽傷を負いました。逮捕された容疑者は、この施設に以前勤めていた26歳の男性で、「障害者なんていなくなればいいと思った」という趣旨の供述をしているということです。理不尽な理由で、就寝中に次々と襲われた被害者の恐怖と苦痛を思うと、やりきれません。
今の段階で強調しておきたいことが2点あります。
第1に、容疑者は措置入院になっていた時期がありますが、本当に何らかの精神障害があったかどうかは、まだよくわかりません。したがって、精神障害による犯行と決めつけたり、事件を予防できなかった原因を精神科医療システムに求めたりするのは、時期尚早だということです。
第2に、はっきりしているのは、重度の障害者は死なせるのが本人と社会のためだという、ゆがんだ確信を容疑者が抱いていたことです。容疑者個人の特異性で片づけるのではなく、私たちの社会の中に存在する差別の思想と向き合い、しっかり闘っていくことが重要だと思います。

精神科医療にゆだねてよかったのか
報道によると、容疑者は今年2月14日と15日、東京・永田町の衆院議長公邸を訪れ、「障害者総勢470名を抹殺することができます」「職員の少ない夜勤に決行致します」などと書いた手紙を預けました。内容を見た警視庁麹町署が神奈川県警津久井署に対応を依頼。同署から連絡を受けた施設が面談した時も「障害者はいなくなったほうがいい。間違っていない」と言ったため、職員としてふさわしくないとして2月19日に自主退職させました。
同じ日、津久井署が事情聴取したところ、「重度障害者の大量殺人は日本国の指示があれば、いつでも実行する」などと話したことから、同署は通報を相模原市に行い、それを受けて市は、指定医の診断を経て、精神保健福祉法に基づいて県内の病院に緊急措置入院させました。22日には指定医2人が診察を行い、正式の措置入院になりました。しかし3月2日、措置入院の要件に該当する症状がなくなったとして措置は解除され、退院していました。
精神保健福祉法による措置入院は、精神障害によって自分を傷つけたり他人に危害を加えたりするおそれがある場合、知事または政令指定市長の行政権限によって行われる強制入院制度です。精神保健指定医の資格を持つ医師2人の診断に基づいて行われます。より急を要する場合に指定医1人の診断で72時間を限度に行えるのが緊急措置入院です。
かなり具体的な犯行の示唆があったのに、なぜ防げなかったのか。出口の段階である措置解除の妥当性やその後のケアに目が向きがちですが、その前に、本当に措置入院の対象だったのか、大量殺人を公言している人物を精神科医療にゆだねるのが妥当かという点を、検討する必要があると思います。

医師の診断が正しいかどうかはわからない
2月19日に緊急措置入院になった時の血液・尿の検査では、大麻の陽性反応が出ていました。措置入院に切り替えた段階の指定医2人はそれぞれ「大麻精神病、非社会性パーソナリティー障害」「妄想性障害、薬物性精神病性障害」と診断したということです。
とはいえ、その診断が正しいかどうかは、まだわかりません。精神症状が本当にあったのかも検証が必要です。同じ患者でも精神科医によって診断が異なることはよくあります。また精神科には多種多様な診断名があり、つけようと思えば、たいていの人に診断名をつけることができます。他害のおそれが明らかでも、精神障害でなければ措置入院の対象にならないのですが、大量殺人をすると言っている人間を放置できないという理由で、診断名をつけて強制入院させるというケースも考えられます。
重度障害者はいないほうがよいという考えは、差別思想であって、それ自体が妄想とは言えません。妄想とは、現実とかけ離れた確信を抱くことです。たとえばヘイトスピーチをする連中が「○○人をぶっ殺せ」と叫んだからといって、精神障害による妄想ではありません。
もしパーソナリティー障害や妄想性障害なら、簡単な治療法はなく、わずか12日間ほどで状態が大幅に改善するとは考えにくいものです。もし大麻や薬物の影響があったなら、依存症のことが多く、定期的な通院か回復支援施設の利用といったフォローなしで退院させるのは理解しにくいことです。
なお、大麻取締法では単純使用には罰則がなく、病院が警察へ通報する義務もありません。そもそも違法薬物を使っていた患者を知った医療機関がいちいち警察に通報していたら、患者から本当の話を聞けず、依存症の治療ができなくなります。

池田小事件の報道の教訓
なぜ、精神科の診断はあてにならないと強調するのか。2001年6月に児童8人が殺害された大阪教育大付属池田小学校事件の教訓があるからです。
池田小事件の犯人は、精神病の診断で過去に何回も入院し、傷害事件を起こしたあと精神障害を理由に不起訴になって措置入院していた時期もありました。それを受けて精神障害による犯行という印象を与える初期報道が行われたのですが、人物像や行動を調べていくと様相が変わり、やがて本人が病気を装い、周囲の関係者がだまされていたことがわかってきました。裁判では、証人出廷したすべての医師と鑑定人が精神病を否定し、過去の病名についても「保険請求のための診断名」「前の医師がそういう病名をつけていたから」といった証言がありました。結局、極端な人格ではあるが精神病ではないとして完全な刑事責任能力を認めた1審判決が確定し、死刑が執行されました。
報道する側として、この事件は苦い経験でした。事件の核心部分について初期報道で誤ったイメージが広がり、精神障害者が危険視されるという2次被害も起きたのです。精神科医の診断も、警察・検察の刑事責任能力に関する判断も、うのみにはできない。たとえ入通院歴、診断名といった「事実」があっても、それが「真実」とは限らない。そのことを痛感したのです。

警察に手だてはなかったのか
相模原の事件で、もうひとつ検証が必要なのは、警察の対応です。2月に大量殺人を予告する手紙を届け、警察官にもその意図を話したのに、精神科医療に頼る以外、刑事司法として何の方策もなかったのかという点です。
考えられる罪名のひとつは業務妨害。ネット上の爆破予告などでも適用されています。容疑者に業務妨害の目的があったかは微妙ですが、大量殺害の発言を受けて施設が防犯カメラ設置などの対策を取ったのだから、成立する可能性はあるでしょう。脅迫罪は、相手または親族の生命、身体、自由、名誉、財産に対する害悪を相手に告知することが要件で、衆院議長、施設、警察に告げても脅迫罪の成立はむずかしいかもしれません。そして殺人予備罪。殺人目的で凶器を準備していた場合などに適用できます。
警察は、まさか本当にやると思わなかったのか、それとも犯罪の構成要件の関係でむずかしいと判断したのか。たとえ逮捕できなくても、取り調べと家宅捜索ぐらいできなかったのでしょうか。一定の歯止めになるし、結果論ですが、捜索すれば刃物や大麻が見つかったかもしれません。
大量殺人やテロの計画を公言する人物がいても、もし刑事司法が何もできないとすれば、それでいいのか心配になります。精神障害と関係なく、何らかの政治的・宗教的・社会的信念を抱いた人間が大事件を起こすことは十分ありえます。社会防衛のために閉じ込めることは、精神科医療の本来の役割ではないし、思想は治療できません。対策を考えるとすれば、明白な殺害予告に対処できない刑事法制の不備のカバーではないでしょうか。

意思疎通できないことはあるのか
容疑者は、12年12月から津久井やまゆり園に非常勤で勤務。13年4月から常勤職員になりました。当初から障害者を見下すような行為があり、今年2月に入ると、職場で障害者の尊厳を否定する暴言を吐くようになったといいます。社会福祉の事業費が抑えられる中、障害者施設の職員は、仕事が大変なわりに賃金が安く、人手不足になりがちで、適格と確信できない人でも雇わざるを得ない状況があるようです。もともと福祉の仕事に向かないタイプだったのかもしれないし、仕事を続ける中でやりがいや楽しさを見いだせなかったのかもしれません。
障害者施設の入所者には、生活の介助に手のかかる人が多く、いろいろ困った行動を繰り返す人もいます。容疑者は「意思の疎通のできない人を刺した」と供述したようですが、重度の重複障害者で言葉のやりとりができない人でも、感情や快・不快の気分はあるものです。言語以外を含めたコミュニケーションの工夫から、仕事の喜びも生まれるはずですが、それには人を大切にする態度と、ある程度の専門知識、努力、経験が必要です。教育、研修、指導がどうだったかも気になります。
それにしても、重度障害者は安楽死させようという極端な考えに、どうして凝り固まったのか。過去の無差別殺傷事件は何らかの生きづらさを抱えた人物の衝動的な犯行が多かったのと異なり、今回は計画的な確信犯で、主観的には正義感から実行したようです。衆院議長への手紙では、殺害計画を実行すれば国が喜んでくれると考えていたフシもあります。仕事上の不満やストレスだけでなく、何らかの影響を受けたものがあったのか、解明が求められます。

すべての人に生きる権利がある
障害者の尊厳や存在を否定する考えは、けっして容疑者独自のものではなく、昔からあります。
20世紀前半には、遺伝学の見地から不良な子孫の出生を防ごうという「優生思想」が世界各国で幅をきかせました。極端な形で実行したのがナチスドイツで、ユダヤ人の収容・虐殺に先行して、精神障害者、知的障害者、神経疾患の患者などを安楽死させる「T4作戦」を秘密裏に進めました。犠牲者は30万人と推計されています。価値なき生命は、死なせたほうが本人にも幸せだと考えたのです。
日本では、殺害までいかなかったようですが、1948年に優生保護法が制定され、96年まで存続していました。精神障害者や知的障害者らに約1万6500件の強制不妊手術が行われ、中絶の強制もありました。ハンセン病患者らにも事実上の強制不妊手術が行われました。
障害者を社会の対等な構成員とする現代の考え方は、自然にあったわけではありません。障害者の人権、生活保障、社会参加を求める運動が長年にわたって続けられ、行政や政治の理解も広がる中で、ようやく確立してきたものです。日本は14年1月に障害者権利条約を批准し、それを反映させる障害者差別解消法が今年4月に施行されたばかりです。法制度にも社会にも、まだまだ不備があります。
重度の知的障害者の生活の場は、かつて大規模施設への入所が多かったのが、2000年代以降、グループホームを含めた地域への移行が進められてきました。しかし津久井やまゆり園は7月1日時点で入所149人という大規模施設。共生社会の実現が道半ばであることの表れとも言えます。
障害者、高齢者、病者、貧困者をはじめ、社会的に弱い人々を社会のお荷物と見る傾向は、今でも世の中の一部に存在します。社会保障の財政負担に関連して、そういう風潮はむしろ強まっているようにも感じます。ネット上では、障害者を蔑視する書き込みが以前から珍しくありません。今回の事件で容疑者の供述や手紙の内容が報道され、結果として差別思想が広く流布されたことも、類似の犯罪につながらないか、心配です。
すべての人に個性と尊厳、よりよく生きる権利がある。価値なき生命など存在しない。そのことを政府、自治体など公的機関、報道機関、そして良識ある個人と団体が、確信を持って積極的に発言していくことが、とても重要だと思います。