「給付型奨学金」家計や成績基準、給付の仕組みは? 議論を整理

リセマム 2016年9月2日

文部科学省は8月31日、給付型奨学金制度の設計について、これまでの議論を整理し公表した。高校在学中の予約採用を基本とする考えで、高校生活前半での成績が基準に満たなかった場合にも後半からの成果によって、学校推薦などの方法で給付の対象とすることも検討する。

給付型奨学金制度の給付の在り方について
給付の在り方については、経済的事情により「進学を後押し」するという趣旨のもと、自身が対象となるのかどうかを入学前の時点で予見可能とすることが重要とし、高等学校等在学時における予約採用を基本とする。奨学金の対象となる学校種は、日本学生支援機構の貸与型奨学金と同様に、大学、短期大学、高等専門学校、専修学校専門課程。選定にあたっては、一定の成績基準を設けるべきとしているが、必要以上の厳しい基準を設けることは適当ではないとした。
対象者の選定については、他世帯と比較して年収の低い世帯の学生ほど家庭からの給付が少ないことから、年収の低い世帯ほど進学を断念せざる得ない子どもが多いと判断。よって、家計基準の設定には「年収の低い世帯を対象とすることが適当」だとしている。世帯種等としては、具体的には児童養護施設退所者、里親出身者、生活保護世帯、高校生等奨学給付金受給者数や生活保護世帯を除く住民税非課税世帯などを想定しながら、引き続き検討を続ける考え。
現在の奨学金の予約採用では、高校1・2年次の評定平均値を成績基準に用いている。議論が行われている奨学金では、たとえば、さまざまな困難な状況を抱えて高校生活前半で一時的に成績が低下し基準を満たさなかったとしても、後半から学力を向上させるなど優れた成果を収めた生徒については、透明性を確保したうえで、学校推薦などの方法により対象とすることも検討するという。
給付にあたっては進学後の学業の状況を確認する仕組みを設ける考え。支給の具体的な方法については、学業の状況を確認して支給を確定させる方法(返還免除型ないし条件付給付型)と、当該年度は支給を確定し、翌年度への継続の可否を当該年度の学業の状況を確認する方法で検討している。
それぞれのメリット・デメリットについても触れており、返還免除型では学修状況を確認したうえで免除することで学業をしっかり修めた者への給付となるという利点がある。ただし、給付(免除)を受けられるかどうかが入学前に確定しないため、学生にとっては不安感が大きい。事前給付型では学修状況にかかわらず給付されることで安心感が得られるが、学修がおろそかな者にも給付される可能性が指摘されている。
また、給付(免除)分と現行貸与分の関係についても、通常貸与額に上乗せして給付(免除)する場合と、通常貸与額の内数として給付(免除)する場合を検討。いずれにしても追加の財政措置が必要だという。

待機児童 定義なく数字と実態隔たり 受け皿拡大も入所希望上回る

産経新聞 2016年9月3日

希望しても認可保育所などに入れない待機児童が2年連続で増加した。待機児童が多い自治体は、受け皿を増やすなど施策を進めるが、予測を上回る入所希望者が出る「いたちごっこ」は繰り返されている。厚生労働省の待機児童の定義をめぐっても自治体の判断は分かれ、数字が実態を表していないとの指摘もある。
「受け入れ枠を1500人以上増やした結果、待機児童を減らせた」と語るのは、昨年比で待機児童を422人減らした千葉県船橋市の担当者。同市は昨年、待機児童数が全国ワースト2位で、受け入れ先を必要とする児童数が千人以上いると見積もり、受け皿拡大と保育士確保を進めた。
一方、4年連続で待機児童数最多だったのは東京都世田谷区。年千人規模で受け皿を拡大しているが、待機児童数は3年連続で千人を超えており、担当者は「人口と需要の増加が止まらない」と説明する。
ただ、同区の待機児童数には他の自治体が待機児童に含めない子供も含まれる。厚労省の通知は(1)特定の保育所のみ希望(2)保護者が育児休業中(3)自治体が助成する施設を利用(4)求職活動を休止-などの場合、待機児童に含めるかどうかは自治体の判断に委ねられている。同区は保護者が育休中の子供も待機児童に含めており、基準の違いが待機児童数を押し上げている。
595人と全国で最も待機児童数が増えた岡山市も同様だ。これまで自宅から30分未満の保育所に空きがあっても入らない場合は待機児童に含めてこなかったが、「市民感覚とずれている」と今年から基準を変更。729人という待機児童を「新たな政策目標の数値と捉える」と話す。保育園を考える親の会の普光院亜紀代表は「厚労省の通知は実態に合わず、認可保育園に入れなかった人数すべてを待機児童とみなすべきだ」と指摘している。

精神指定医100人が資格不正取得か 相模原事件判断の医師も

産経新聞 2016年9月3日

精神疾患の患者の強制入院の要否などを判断する「精神保健指定医」の資格を不正に取得していた疑いがあるとして、厚生労働省が精神科医約100人から聴聞を行っていることが2日、分かった。この中には、相模原市の障害者施設で19人が刺殺された事件で殺人容疑で逮捕された植松聖(さとし)容疑者(26)の措置入院に関わっていた医師も含まれる。厚労省は10月にも審議会を開き、資格取り消しなどの処分を決める。
不正が疑われているのは、資格取得に必要なリポートに、診察していない患者の症例を提出するなどした精神科医やその指導医ら。相模原の事件では植松容疑者の措置入院をめぐり指定医4人が判断に関わったが、このうちの1人にも不正取得の疑いがある。厚労省の検討会はこれまで、植松容疑者の措置入院から退院までの医師らの対応について「おおむね標準的な精神科救急の対応だった」としている。
精神保健指定医をめぐっては昨年4月、聖マリアンナ医科大病院(川崎市宮前区)で複数の医師が同じ患者の症例を使い回すなど診察していない患者のリポートを提出して不正に資格を取得したことが発覚。厚労省は資格を虚偽申請した11人と指導医12人の計23人の資格を取り消している。
この問題を受けて厚労省は症例のデータベースを作り、他の医療機関でも同様の不正がなかったか、過去5年分を調べていた。その結果、全国の医療機関で同じ患者の同一期間のリポートを複数の医師が提出するなどの不正が見つかった。
専門家によると、精神科の入院施設をもつ医療機関では、措置入院や身体拘束の要否を判断できる精神保健指定医がいないと現場が回らないため、若手に資格取得を急がせる傾向にあるという。
厚労省は「指定医は人権に配慮した医療を行う必要があり、不正取得は許されない」としている。