子育ての「3歳児神話」は、ホントなの?

R25 2016年10月3日

昔から言われる子育ての考え方のひとつに、“3歳児神話”というものがあります。子どもが3歳になるまでの時期は大事で、母親は子育てに専念すべき。そうしないと成長に悪影響を及ぼす…というもの。しかし、それはホントなのでしょうか? そこで、教育評論家の親野智可等先生にお話しを伺いました。

3歳までに、土台となる“基本的信頼感”を育むことが大事
「まず、人生の最初である3歳くらいまでの幼児期は、人間の土台を作る本当に大事な時期であることは間違いありません。なぜなら、この時期に日々の生活のなかで“基本的信頼感”を育ててあげることがとても重要だからです」(親野先生 以下同)
基本的信頼感とは、自分に対する信頼感と、他者・自分をとりまく世界に対する信頼感の二つだという。
「自分に対する信頼感とは、母親をはじめ他者からスキンシップを受けたり、話しかけられたり、自分がしたことに反応してくれたり…。こういったことによって“自分は大切にされている、愛されている、存在していいんだ”という信頼感が持てるのです。もうひとつの他者への信頼感とは、母親、父親、祖父母、保育士…など、自分をとりまく世界に受け入れてもらっているという安心感です。つまり、この基本的信頼感が持てれば、自分も他者も大切にしながら、人生に夢を持って前向きに生きていけるわけです」
では、その土台を作るのは母親でなければならないのだろうか?
「もちろん、お母さんが子どもとずっと一緒に居てもイライラせず幸せを感じ、愛情をたっぷり注げるということは理想ですし、そういう人もいます。しかし、いろいろな理由でストレスを溜め込んだ母親が、そのストレスを子どもにぶつけたりイライラして叱ったりなど、わが子に適切な愛情を注げないケースも少なくないのです」
そうなると、むしろ“3歳児神話”に従って“母親とずっと一緒に過ごす”ことが、逆に子どもの成長に悪影響を及ぼしかねないという。
「お母さんとしては、“愛があるから叱る、この子のために叱る”と、言うかもしれませんが、これはまだ未熟な幼児には通用しません。愛情が実感できないからです。“自分は大切に思われていない、価値がない、居ないほうがいいんだ…”と思うようになり、自分に対する不信感を持つようになります。それと同時に、他者は自分を攻撃してくる、自分を取り巻く世界は恐ろしい、自分の身は自分で守らなければと思うようになるのです。このふたつが“基本的不信感”で、それを持ってしまうと、自分も他者も信頼できないので、夢に向かってがんばる力も出ませんし、他者に対しても不信に満ちた対応をし、攻撃的な言動にエスカレートする恐れもあるのです」
このように、イライラしている大人につきっきりで育てられることは、子どもにとって最大の悲劇であり、“3歳児神話”が虐待の温床になっているゆえんだと、親野先生は話します。
「つまり、そうなるくらいなら、誰かにサポートをお願いしたり、仕事を始めたりするなどして、子どもと少し離れる時間を持つことは、むしろよいことなのです。息抜きをしてリフレッシュすれば心が安定し、子どもに愛情深く接することもできます。何より大事なことは、母親が一緒に居ることにこだわらず、子どもが心から安心して愛されているということを実感できる環境づくりをし、生きるためのしっかりした土台を作ってやることなのです」
子どもにとって幼児期の子育てが大事なことはまぎれもない事実。しかし、母子をとりまく環境は様々。そこは、それぞれの母子に合う環境作りをしっかり模索することが大事ですね!
(構成・文/横田裕美子)

月収13万円の“貧困保育士”…タダ働き、自腹も当たり前のひどすぎる現場

女子SPA! 2016年10月1日

「保育園落ちた日本死ね」で注目の集まった保育士不足の問題。需要はあるのに保育士のなり手が少ないのは、「低賃金」も理由のひとつと言われています。
職場環境などで悩む介護士・保育士の駆け込み寺「介護・保育ユニオン」に加盟した、保育士のユウコさん(仮名・24歳)。「1年目の手取り額は月13万円ほどで、その後もほとんど上がってない」といいます。
そこで、薄給で働く貧困保育士の実態を聞かせていただきました。

保育以外はタダ働き!? 仕事の持ち帰りは当たり前
ユウコさんが働く保育園の保育時間は6時半から21時まで。8時間労働+休憩1時間の正規保育士とパートの保育士とが、シフト制で子どもを預かっています。
とはいえ、保育士の数は常にギリギリ。そのため就業時間は保育で手一杯で、サービス残業も当たり前だといいます。
「保育のほかに、お便りや指導書、壁飾りをつくったり、子どもに教える制作の準備、保護者に様子を伝える連絡帳を書いたり、面談などもあります。あと、運動会やお遊戯会、夏祭りなどイベントも多くて、それらの準備もしなければなりません。でも、職員の数が十分ではないので、安全面を考えると保育中には作業できないんです」
終業後に作業したくても、園長からは園に残っての作業を禁止されているとのこと。しかも「書類の記入15分」などとあらかじめ基本給に盛り込まれているため、“超過は自己責任”とされて残業代もつかないのです。
「子ども一人ひとりの発育段階を全員分記入したり、成長を踏まえながら指導書を作ったりするのは、とても15分ではできません。でも、残業が認められないので、休憩時間にできるところまでやって、残りは自宅に持ち帰っています。先輩が帰るまで退社しづらい雰囲気もあるので、遅くに帰宅して深夜まで作業する毎日です」
休憩時間にミーティングが入ることもあり、「“休憩時間”といっても自由にできるわけではありません」。

保育の備品も自己負担。「友達と遊ぶゆとりもない」
それだけ働いても、ユウコさんの基本給は約16万円。そこから税金や昼の給食代も引かれ、実質13万円ほどしか手元に残らないのです。さらに保育園で着る服も自己負担とのこと。
「子どもと過ごす仕事なので、すぐ服がすりきれてしまいます。泥や嘔吐などで汚れることも多いのですが、支給されるのはエプロンだけなんです。あまりみすぼらしいと保護者への印象も良くないので、かなりのペースで服を買ってますね」
また、ユウコさんの保育園では、保育に必要な備品の購入は、毎月決まった日までに申請するシステム。「画用紙が1枚足りない」「マーカーのインクが切れた」などイレギュラーな事態が起こっても、申請日を過ぎていると翌月まで購入できないというのです。
「備品が足りないと、保育に支障が出てしまいます。期日を過ぎてしまったら自腹で買うしかないですよね。絵本やパペットなど保育に必要なものでも、園長の許可が下りなければ買ってもらえないので、すべて自費で用意しています」
それらの立て替え金が戻ってくることはないそうです。
短大で借りた奨学金の返済も抱えているというユウコさん。毎月の残高はギリギリで、友だちと遊びに行くことはおろか、ちょっとした趣味を楽しむゆとりさえないと言います。
「残業代はつかないし、ボーナスだって年間で10万円ほど。ひとり暮らしもしたいけれど、実家を離れたら生活できません」
1日のほとんどを仕事に費やしているのに、困窮した生活を送るユウコさん。休憩時間の業務や残業代未払いは労働基準法違反になることを知り、「介護・保育ユニオン」に相談に訪れました。現在、ユニオンを通じて残業代の支払い交渉をおこなっているそうです。
そして、ユウコさんのようなひどい条件で働く保育士は、決して珍しくないのです。

心理職の国家資格「公認心理師」 カリキュラムの検討始まる

福祉新聞 2016年10月4日

心理職の国家資格「公認心理師」のカリキュラムを作る厚生労働省の検討会(座長=北村聖・東京大大学院教授)が9月20日、発足した。カリキュラムのほか国家試験科目、現任者講習科目などを検討し、2017年3月末までに取りまとめる。18年中に第1回の国家試験を実施する予定だ。
公認心理師法は議員立法により15年9月に成立。名称独占の資格として保健医療、福祉、教育、司法・矯正、産業などの分野で活躍することを想定する。
養成ルートは原則として三つあるが、そのうち4年制大学と大学院で計6年間学んだ人が国家試験を受けるルートが基本となる。
検討会は心理の専門家のほか児童相談所、保護観察所、少年鑑別所の職員らが委員となり、大学と大学院で学ぶ科目、教育内容、実習・演習の内容などを中心に議論する。
厚労省によると、心理職の勤務者数(推計)が最も多いのは保健医療分野(精神科病院、老人保健施設など)で最大約2万4500人。それに続くのが教育分野で約1万7000人。福祉分野(児童福祉施設、障害者施設など)は最大約1万人とみる。