「親子心中は最悪の虐待」認識薄く 加害動機に特徴 精神疾患や孤立…

西日本新聞 2016年11月16日

11年間で454人。これは全国で2004年1月~15年3月に、「心中」によって亡くなった子どもの数だ(親の未遂も含む)。同期間に虐待で死亡した子どもは1055人に上り、43%を占めている。心中と呼ばれているが、子どもは自分の意思で死を選んでいるわけではなく、親が手にかけた最悪の身体的虐待だ。11月は児童虐待防止推進月間。親子の無理心中に焦点を当て、犠牲を出さない手だてを考える。

加害動機に特徴
2014年11月26日午前6時すぎ、福岡市博多区のマンションで、母親(28)が生後9カ月の長女と飛び降り、2人とも死亡した。警察は母が無理心中を図ったとして、殺人容疑で被疑者死亡のまま書類送検。今年6月に公表された、福岡市こども・子育て審議会権利擁護等専門部会の検証報告では「母親の精神状態の悪化が心中の要因の一つ」とし、母が精神科医療機関を受診していたことも明らかにした。
心中による子どもの虐待死と、心中以外の虐待死では加害動機の傾向が違う。9月に厚生労働省が発表した子どもの虐待死事例検証報告(2014年度分)によると、心中以外による虐待死は43件44人で、心中が21件27人。加害動機では、心中以外は子どもの存在拒否(31・8%)▽保護を怠ったことによる死亡(11・4%)▽しつけのつもり(9・1%)-などばらけているのに対し、心中は「保護者自身の精神疾患・精神不安」が59・3%と、一つの項目が高い割合を占める。
精神科医で、福岡市の児童相談所「こども総合相談センター」の藤林武史所長は、親子心中の場合、経済的不安や子どもの障害、自身の病気などによる親の悲観的な思い込みがあるとし、さらにその背景には「精神疾患や虐待などを受けてきた成育歴、地域や親族などからの孤立がある」と指摘する。

共有されぬ情報
九州のある児童相談所(児相)に勤める男性職員は、ネグレクト(養育放棄)などの虐待事案で関わるケースの半数近くに、親の精神疾患が関わっていると実感している。
親が精神科医療機関を受診している場合、心中のリスクなど子どもの安全を判断するために主治医に意見を求めることもあるが、普段から連携を取れていないため「医師への問い合わせにハードルを感じる職員も多い」と打ち明ける。守秘義務を理由に情報提供を断られることも珍しくない。
厚生労働省が作成した「子ども虐待対応手引き」では、子どもの適切な保護のための情報提供は、医師の守秘義務違反にはならないとされているが、それが浸透していないのが現状だ。
連携の動きも出ている。福岡市は9月、127の病院やクリニックが加盟する福岡県精神科病院協会に協力を依頼。12月の同協会福岡ブロックの院長会で、藤林所長が児童虐待の現状や連携の必要性を報告する予定だ。

従属物ではない
こうした心中リスクのある人に対して関係機関が連携する「水際防止」だけでなく、そもそも発生を防ぐには「子どもへの考え方」の変革が必要、と指摘するのは、児童相談所の勤務歴も長い福岡市子ども家庭支援センター「はぐはぐ」の河浦龍生センター長だ。
「子どもは親の従属物ではなく一人の人間として生きる権利がある。心中なら仕方がないという社会の風潮をなくさなければならない」。西日本新聞のこれまでの紙面を振り返って見ても、親子の無理心中や未遂事件は、親が子を殴るなどして殺害した事件に比べ、ニュースとして小さく扱ってきた。
こういった「親子の無理心中は虐待」という認識の薄さが、「なぜ心中まで追い詰められたのか」という検証や、防止のための連携を後手にしているのではないか。大人たちが意識の壁を越えるだけで、救える命があるはずだ。

“すべての子どもに愛を”日本初の民間保育園「二葉保育園」の想い

TOKYO FM+ 2016年11月16日

江戸の粋から古き良き昭和まで、東京の過去を旅する、TOKYO FM「シンクロのシティ」のコーナー「ハナコマチ」。今回ご紹介するのは、東京タワーから見て北の方角、東京・四谷にある保育園のお話です。
JR中央線四ツ谷駅の改札口を出て約10分。
ガードをくぐった低地に「二葉保育園」はあります。
ここは、日本の保育園の歴史を語るのに欠かせない、大事な場所です。
今では信じられませんが、この一帯は明治時代、東京の三大貧民窟のひとつとして数えられるほどの貧しい地域でした。
日雇労働者が多く、狭くて不衛生な長屋に多くの家族が暮らしていたのです。
たくさんの子どもたちが内職の邪魔だと家から追い出され、外で兄弟の子守りをしたり、地面に絵を描いたりして時間を潰していました。
そんな様子を通勤中に見ていたのが野口幽香と森島峰(美根)の2人。
彼女たちは、現在の学習院の前身である幼稚園に勤めていました。
当時、子どもを預けることができたのは上流階級の家だけ。
すべての子どもたちが平等に保育を受けられないのはおかしい……。
そう思った2人は、この場所から1kmほど離れた麹町の借家で、貧しい人たちのための保育園を開園したのです。
1日5時間の保育で、保育料は1銭。半分は管理のため、半分は園児たちのおやつにあてました。
入浴や栄養の管理など課題はたくさんありましたが、もうひとつの幼稚園の仕事と並行し、奮闘。
自分たちの時間をほとんどすべて、子どもたちのために使ったのでした。
貧しい子どもたちの中で彼女たちは、いろいろなことに気づきました。
「おいら」「おめえ」といった言葉遣いをしていた子たちが、「あなた」などの言葉に変わっていっていること。
一方、上流階級の子どもたちがひ弱で目が離せないのに対し、二葉保育園の子どもたちはやんちゃに遊びまわり、あまり手がかからないこと……。
保育の本当の喜びを知り、彼女たちは麹町から、貧しい人たちが多く暮らす四谷・鮫河橋の移転を決意します。
お風呂場や治療室が完備された保育園には100名以上の子どもたちが入園しました。
その後も志を同じくした女性たちと東京の貧民窟を巡回し、分園を作るなど福祉に尽くしたのです。
二葉保育園は、民間の子どもたちの生活改善に踏み込んだ、最初の保育園。
創立者である彼女たちの名は、日本の保育士ならば知らない人はいないそう。
きっとこれからも、その想いが子どもたちの未来を支えていくことでしょう。
(TOKYO FMの番組「シンクロのシティ」2016年11月15日放送より)

天の授かりもの、親どこに 新生児置き去りから1カ月

朝日新聞デジタル 2016年11月12日

東京都目黒区の公園で、生まれて間もない男の赤ちゃんが置き去りにされ、無事に保護されてから1カ月が過ぎた。両親は見つかっていない。赤ちゃんの発育は順調で、今は都内の児童福祉施設に入所している。
生後24時間以内とみられる男児が見つかったのは、10月3日夕。会社員の長谷川進さん(57)は小雨が降る中、愛犬といつものように自宅近くの公園周辺を散歩していた。するとガサガサッと音が聞こえ、見回すと10メートルほど先のベンチ脇の地面に袋があった。袋は動いていて、近づくと、赤ちゃんの頭が見えた。目は閉じ、息をしていた。
赤ちゃんの顔に雨粒がかかっていたが、ずぶぬれではなかった。「放置されて時間は経っていない」。着ていたシャツを脱いで赤ちゃんがぬれないようにして、通りすがりの女性に警察への通報を頼んだ。「大丈夫。もう少しだよ」。赤ちゃんを抱きかかえ、近くの木の下で助けを待った。赤ちゃんは最後まで泣かなかったという。
碑文谷署によると、男児は白い手提げ袋の中に仰向けに入れられており、肌着を身につけ、2枚のタオルにくるまれていた。約3センチのへその緒がついたままで身元が確認できるものはなかった。署は保護責任者遺棄の疑いで調べている。

生活保護の高齢者、直近20年でほぼ倍増 厚労省調べ

朝日新聞デジタル 2016年11月16日

高齢者のうち生活保護を受けている人の割合が直近20年でほぼ倍増したことが、厚生労働省の調べでわかった。16日の衆院厚生労働委員会で明らかにした。生活保護世帯の半数超を高齢者世帯が占めているが、実際に高齢者の貧困化が進んでいる実態がうかがえる。
民進党の長妻昭氏の質問に塩崎恭久厚労相が答えた。それによると、65歳以上のうち生活保護受給者が占める割合は、1995年に1・55%だったところ、最新の2015年には2・89%となり、1・8倍に増えた。20年間、ほぼ一貫して増加傾向が続いている。
衆院厚労委では、長妻氏が「年金の脆弱(ぜいじゃく)性が大きな要因の一つではないか」と指摘。塩崎氏は「いろんな原因があると思う。高齢者の世帯構成の変化や経済情勢、資産をどう形で保有するか。年金の脆弱性だけで説明するのは難しい」と答弁したうえで「否定するわけではないが、複合的に考えていくことが大事だ」と語った。