施設育ちの若者、「前向き生きる」

カナロコ by 神奈川新聞 11/24

児童養護施設などで育った若者が生い立ちや仕事について語るシンポジウムが23日、横浜市中区の横浜情報文化センターで開かれた。困難な状況に直面しながらも、周囲の助けを借りて前向きに生きていくことの大切さを訴えた。
施設の若者らの就労支援に取り組む企業「フェアスタート」(永岡鉄平代表)の主催。同社設立5周年に合わせ、社会で活躍している若者の姿を広く知ってもらおうと企画した。
都内の施設出身の男性(23)は学費捻出のために新聞配達をしながら専門学校を卒業。今は保険会社で営業を担当している。「『施設出身でかわいそう』とよく言われるが、施設でさまざまな大人に支えられたからこそ今の自分がある」と強調した。
県内の施設で過ごしていたころは内気だったという男性(24)は、ITエンジニアの仕事などを通じて人と関わることで「少しずつ自信が持てるようになった」と振り返った。
親のネグレクト(育児放棄)などで高校3年生だった18歳の時に民間シェルターに身を寄せた経験がある女性(23)は生活保護受給を経て、システムエンジニアの仕事をしている。同じような境遇の子に向けて「好きなことを見つけてほしい。それが人生の支えになる」と呼び掛けた。

学校給食費滞納の家庭に弁護士を使った取り立てをすることは正義なのか

週刊女性PRIME 11/24

「しんどくても、きちっと給食費を納めている保護者はたくさんいます。滞納者の逃げ得を許すわけにはいきません。11月から回収業務の一部を弁護士に委託することにしました。対象者には弁護士から『催告書』が届きます」(大阪市・学校徴収金担当者)
公立小・中学校の給食費未納額が膨れ上がった大阪市は給食費の取り立てに弁護士を使うことを決めた。市によると、2015年度末の未納は5606件で総額約1億1300万円。’14年度末から約5600万円増加した。背景には、市内の中学で全員給食制が導入されたことがある。
しかし、それだけではない。文科省の’12年度サンプル調査によると、全国の公立小・中学校における給食費の未納割合は、推定0・5%にとどまる。大阪市は’15年度の新規未納割合が1・3%と大きかった。
大阪市には「取り立てないのは不公平だ」などの声が寄せられていたという。
「給食費の徴収で学校に負担をかけたくない。といって市職員の人員にも限りがあります。約束してもお支払いいただけなかったり、連絡がつかなくなることもある。長期未納となれば金額も大きくなります。裁判所に持ち込む直前の処理を弁護士に任せることにしました」
と前出の担当者は話す。
つまり、弁護士が最後通告を突きつけるかたちだ。
「ただし、弁護士が自宅に徴収に行くことはありません。取り立てる対象についても今後、慎重に検討します。督促を繰り返しても納付がない長期・高額滞納者などに限られると思います」(同担当者)
業務委託先は入札で決定ずみ。ビジネス法務に特化した法律事務所で、回収額の15%を支払う出来高制だ。対象者の線引きができていないため回収に入っていないが、弁護士は「分割払い」などの相談にも乗り、納付計画を立てる。もちろん、延滞金は発生する。

生活困窮者を追い込むことにならないだろうか。
小学生と給食を食べる大阪府の橋下知事(’08年当時)。大阪市長時代には、給食を「エサ」呼ばわりした中学生がいると聞き激怒
「生活苦にあえぐ保護者から無理やり回収することはない。そもそも就学援助制度の利用をすすめている」(同担当者)
同市の公立小・中学校の給食費は月額4500~6000円程度。就学援助制度を使えば、小学生の給食費は全額支給され、中学生も半額支給される。生活保護世帯には全額支給されるため、経済的余裕があるのに支払っていない悪質な保護者が少なくないとみられる。
大阪市に先行して、滞納給食費の回収業務を弁護士に委託した自治体がある。東京・練馬区だ。
「’14年にテスト運用し、翌年から本格実施しています。学校は、生活が苦しくないのに給食費を払っていない家庭を把握している。未納連絡、督促と段階を踏んで、学校長が法的措置の可否を判断しています」(練馬区・施設給食課)
弁護士に業務委託する直前の’13年度に発生した新規未納額は約260万円だった。委託後は、’14年度が約119万円、’15年度が約118万円と半分以下に減った。
「累積の滞納総額はおおよそ500万円です。’14年に発生した未納は現在約50万円まで減りました。でも、幅広くビシバシと取り立てているわけではありません」(同課)
悪質な保護者には弁護士を使ってプレッシャーをかけているものの、本当はそこまでしたくないのが本音だろう。
こうした悩みとは無縁の自治体もある。栃木・大田原市は’12年10月から市立小・中学校の給食費が無料になった。
「市長の公約の一丁目一番地でした。本年度の給食費総額約2億7000万円はすべて市費でまかないます。痛みがなかったわけではありません。職員数を減らす行財政改革を行い、内部で切り詰めて財源を捻出しました」(大田原市・教育総務担当者)
同市が今年調査した保護者アンケートでは、89%が給食無料の継続を望んだという。3年前のアンケートでは「生活費が助かります」という声が多かった。今年は「子どもの学用品購入や部活動に使っています」など、浮いたお金を子どもに使っていることが確認できたという。

子どもにとっての給食とは何か
佐賀・江北町は、ふるさと納税の増収分を見込んで給食無料化の実現を目指す。
「小1と中1はすでに無料化しています。完全無料化には約3000万円かかるので、積極的にふるさと納税を呼びかけたい」(江北町教委)
子どもにとって、給食とは何だろうか。新潟県立大の村山伸子教授(公衆栄養学)は「安定した栄養が保証される大切な食事です」と話す。
「エネルギーをはじめタンパク質やビタミン、ミネラルなど基本的な栄養素が平均的に基準を満たしています。大量調理できるので家庭の食事に比べて品数も多い。
日本人は小学生のときに給食を食べているため、一汁一菜などバランスのいい食事のパターンを身につけています。子どものころの経験は大事です。児童養護施設の職員に聞いた話ですが、魚や野菜に全く手をつけない子どもがいるらしい。家で食べた経験がないからだという。嫌いというより食べられないんです」(村山教授)
子どもの貧困問題に取り組む村山教授は、給食の実施率を上げるべきだと話す。
「だいたい小学校で97~98%、中学で80%台後半です。特別支援学校や定時制高校も給食を出す。家庭で食べられない子どもがいます。栄養的に問題のある家もある。おにぎりだけ、チャーハンだけ、カップめんばかりとか。どこまで国民の合意が得られるかわかりませんが、子どもの食事に価値を置いてほしい。税金をそっちに使いましょう、となればいい」(村山教授)
給食をめぐっては全国で注目される騒動があった。三重県鈴鹿市では野菜価格の高騰で「給食の2日間中止」が通知され、のちに撤回された。
「鶏モモ肉をムネ肉に変更するなど食材を見直して1日分は確保した。もう1日は調理員の炊き出し訓練を行い、備蓄のレトルトカレーを作ります」(鈴鹿市教育総務課)
札幌市の小・中学校では給食調理用ボイラーの煙突からアスベスト含有の疑いがある断熱材がはがれ落ち、計30校で調理給食が出せなくなった。
「牛乳、パン、ゼリー、チーズなど調理しなくてもすむ簡素なメニューから、他校の協力で温かい1品をつけられるめどが立った。給食費の返還などはこれから検討されるだろう」(札幌市・保健給食課)
学校給食が出ないのは一大事。騒動はそれを証明した。わが家の滞納を知って、ビクビクしながら給食を食べる子どもを出してはいけない。

学力足りても学費足りず…進学悩む子供たち

日本テレビ系(NNN) 11/23(水) 19:05配信

返済の必要がない「給付型奨学金」。これまで国の制度がなかったが、与党は「月3万円を基準」として来年度から一部先行して導入することで一致した。背景にあるのは、経済的理由で進学に悩む学生たちの存在。その現状を取材した。

学力は足りても、学費が足りず
東京・八王子市の貸し会議室の一室で行われていた「つばめ塾」。経済的に苦しい子どもたちの学習を支援する「無料塾」だ。英語を教えてもらっているのは、高校1年生の女子生徒。父親がうつ病にかかって仕事を辞め、現在はその障害年金などで生活しているという。高校はより学費の安い学校を選んだという。大学進学を希望しているが、学費のために諦めることになるのは耐えられないと不安を感じている。

「返済不要の奨学金」国が制度化
こうした子どもたちの支えになるのが「給付型奨学金」だ。「給付型奨学金」とは、返済義務がある「貸与型」とは異なる、返済を必要としない奨学金のこと。しかし、現状では成績要件などのハードルが高い民間によるものしかなく、国の制度はない。
今年9月、安倍首相は、国による「給付型奨学金」の実現を明言。そして、22日、自民・公明両党は、給付金額を「月3万円を基準」とすることなどで合意した。本格的な実施は再来年4月の新入生を対象としているが、経済状況が特に厳しい学生については、来年度から一部先行して給付を開始するという。

父が自殺、母から虐待―
都内で一人暮らしをしている、大学4年生の久波さん(23)。学費の全てを民間からの「給付型奨学金」でまかなっている。金額は、民間企業やNGOなど6つの団体から4年間で約250万円。奨学金を受けるようになった理由は―
久波さん「小学2年生の時に父親が自殺しまして、そのあと母親から虐待を受けるようになって」
親から虐待を受けているとみなされ、小学5年から高校卒業まで約7年間、児童養護施設で過ごしたという。

大学進学の話題に加われず―
高校2年生までは、行事などでリーダーシップを発揮していたという久波さん。しかし、高校3年になって、進学を意識し始めた頃、ある変化が起きた。
「一番のひっかかりというのが、経済的な壁といいますか」「学校の話とか進学の話とかってなってくると、どんどん自分がこう…輪にも入れないし、入ろうともできないし」

今度は自分が支援したい
友達との間に生じた“疎外感”。欠席が続き、高校は卒業したが、大学進学を一度はあきらめた。しかし、1年後、久波さんは「お世話になった施設に恩返しがしたい」との思いから、児童福祉を学べる夜間の大学に行くことを決意。現在、経済的な理由で十分な教育を受けられない子どもたちを支援する団体でインターンをしている。
「将来そういう仕事に就けたらいいなと思っている自分からしたら、ここでの経験が間違いなく糧になるだろうと」
まもなく実現する、国による初めての給付型奨学金。ただ、現時点で財源確保のメドがついていないなど、課題も残されている。自民・公明両党は、11月中にも提言をまとめ、政府側に提出する方針だ。