<養子縁組>10~17歳の9割「養親の愛情を感じている」

毎日新聞 2017年1月4日

割は自己肯定感高く 専門家、家庭で育つことの重要性指摘
生みの親でなく養子縁組した親と暮らす10~17歳の7割は自己肯定感が高く、9割は親の愛情を感じているとの意識調査結果を、日本財団がまとめた。国が全国の中学3年に実施した調査結果よりそれぞれ割合は高く、専門家は児童養護施設でなく家庭で育つことの重要性を指摘する。
民間の2団体のあっせんで養子縁組した263世帯に昨年8~9月に調査し、10歳以上の子を対象とした質問には89人が答えた。2団体は養親に対し、子に養子縁組であることの告知を促している。
子どもに「自分自身に満足しているか」を聞いたところ、26%が「そう思う」と回答。「どちらかといえばそう思う」を加えると71%になった。「親から愛されていると思うか」の質問では「そう思う」が64%で「どちらかといえば」を足すと93%に達した。
内閣府の中3を対象にした2011年調査では、同じ質問に対する「そう思う」の割合はそれぞれ10%台と40%台。直接比較はできないが、養子縁組家庭の子の方が高かった。
一方、友人関係がうまくいっていると答えたのは66%で、小4~中3に同じ質問をした内閣府の14年調査の81%より低かった。
日本財団福祉特別事業チームの高橋民紗(みさ)さんは「こうした意識調査は珍しい。絵本の読み聞かせなど子どもと積極的に関わっている養親が多く、それが子の自己肯定感につながったのではないか。友人関係については養子であることを周囲にどこまで話せるかが影響した可能性があり、社会の理解は十分とは言い難い」と分析する。【黒田阿紗子】

<厚労省>巡回保育士導入へ 施設の重大事故防止策を強化

毎日新聞 2017年1月4日

厚生労働省は2017年度から、保育施設での重大事故防止策を強化するため、経験豊かな保育士らが各施設を毎月訪れて助言する仕組みづくりを進める。自治体に新たに「巡回支援指導員」を配置し、認可外施設も含めて月1回以上巡回する。助言に法的強制力はないが、改善しない施設については、自治体が改善指導に乗り出す。
内閣府によると、15年には全国の保育施設で14人の乳幼児が死亡。このうち認可外施設での死亡が10人と最も多い。6人は睡眠中で、乳幼児にうつぶせ寝をさせないという基本的な注意を怠っていた。認可保育所でも2人が死亡している。
政府は待機児童解消を目指し、認可保育所などの保育サービスの拡大に取り組んでおり、15年11月には、13~17年度の拡充目標を当初の「40万人」分から「50万人」分に引き上げる方針を打ち出している。一方で、急速な施設整備によって保育内容の質の低下を懸念する声が上がっている。
保育施設への指導監督の権限は自治体にあり、定期的に指導監査を行っている。しかし、人員不足のため十分に監査が実施できていないのが実情だ。
そこで、厚労省は来年度から都道府県や市町村を財政支援し、巡回指導員の配置を促す。指導員には元保育園長など長年保育現場を経験した保育士を想定する。少なくとも月1回巡回し、昼寝や食事、水遊びなど重大事故が起こりやすいケースを中心に事故防止策を助言する。定期巡回によって問題のある施設に早期に対応し、重大事故防止につなげたい考えだ。
また、保育士など保育施設の職員を対象に重大事故防止のための研修を実施した自治体に対する財政支援も行う。
一連の事故防止強化策として、17年度予算案に30億円を計上した。【細川貴代】

かんしゃくや散らかし… 子の「問題行動」どう向き合う

朝日新聞デジタル 2017年1月2日

かんしゃく、文句、食べ散らかし、鼻ほじり……。虐待や場当たり的なしつけで心に傷を負っている子どもに起こりやすい「問題行動」にどう向き合えばいいのか。児童精神科医として児童相談所に4年間勤め、英国生まれの里親向けプログラムを日本に紹介した長野大の上鹿渡(かみかど)和宏准教授に心得を聞きました。
子どもには子どもの理屈やニーズがあり、子どもなりに対応に困ったとき、「問題行動」につながります。大人がそれを無視して接すると摩擦が起こります。大切な一歩は、子どものサインを読み取ること。向き合うための基本技術を身につければ、関係は改善されていきます。
英国生まれの里親向けプログラムがもとになっていますが、子どもの行動の奥を読み取り対処する方法として、里親以外の子育てにも多くのヒントがあると思います。

少子化の原因? 子育て世代の夫はどのくらい長時間労働なのか

THE PAGE 2017年1月3日

総務省が2016(平成28)年10月発表した平成27年国勢調査確定値で、大正9(1920)年の調査開始以来、初の減少に転じた日本の総人口。厚生労働省がまとめる人口動態統計の年間推計でも2016年に生まれた子どもの数が1899(明治32)年の統計開始以来、初めて100万人を割り、98万1000人にとどまる見通しであることが明らかになりました。

人口減少時代
人口減少に転じた大きな原因として挙げられる深刻な少子化。そして少子化が進行した背景に日本の労働時間の長さが指摘されています。平成28年版少子化対策白書(内閣府)から、男性の就業時間を年齢別に比べてみます。
少子化の原因? 子育て世代の夫はどのくらい長時間労働なのか
年齢別就業時間が週60時間以上の男性就業者の割合の推移=平成28年版少子化対策白書(内閣府)

30~40歳代の長時間労働の割合が最も高い
白書によると、週60時間以上の長時間労働をしている男性は、2005(平成17)年以降、ほぼ減少傾向になっています。1990(同2)年は、30~40歳代の3割弱が60時間以上の長時間労働に就いていました。しかし、子育て世代であるこの30~40歳代男性の労働時間が世代別でみて、最も高いという特徴に変化はありません。2015(平成27)年も40歳代16.6%、30歳代16.0%で、全平均の12.9%よりも3%以上、またどの年代よりも長時間働いているという実態がわかります。

先進国最低水準 夫の家事・育児参加
一方で、男性は家事や育児には、どのくらい参加しているのでしょうか?6歳未満の子どもを持つ夫の家事・育児関連時間を、他国と比較してみます。日本では、夫の家事関連時間は1日に1時間7分、育児は同39分です。これは先進国の中で最低水準です。
ちなみに、最も家事に取り組むスウェーデンの夫は1日に3時間21分、そのうち育児に1時間7分当てていました。育児を担当する時間が最も長かったのは米国の夫で、家事の時間は1日に2時間58分、育児は1時間17分でした。

出産後も変わらず就業できた女性は約4割
女性は、出産で働き方にどのような変化があるのでしょう。2005(同17)年から2009(同21)年に第1子を出産した既婚女性で、出産前に働いていた女性のうち、出産後もその仕事を継続した女性は約4割にとどまっていました。また、妊娠・出産前後で退職した場合の理由は「仕事を続けたかったが、仕事と育児の両立の難しさでやめた」が26.1%と最も多く、出産により、女性が働き続けることが厳しくなる状況がうかがえます。(資料:三菱UFJリサーチ&コンサルティング「両立支援に係る諸問題に関する総合的調査研究」厚労省委託、2008年=平成28年版少子化対策白書より)
日本でも育児に関わる父親「イクメン」が増えてきていますが、男女ともに長時間の労働が、家事や育児に関わる時間の確保を難しくしているといえそうです。