給付型奨学金で支援 安倍総理、児童養護施設を訪問

テレビ朝日系(ANN) 2017年2月19日

安倍総理大臣は山口県の児童養護施設の記念式典に出席し、来年度から始まる「給付型奨学金」の制度などを通じて困難を抱えた子どもたちを支援していきたいと話しました。
安倍総理大臣:「いくら厳しい、あるいは貧しい状況であったとしても、望めば進学できる。学校教育をしっかりと、高等教育も受けられる。そういう仕組みを作っていこうということで、いよいよ給付型の奨学金をスタートします」
安倍総理は19日午後、山口県下関市で開かれた児童養護施設の記念式典に出席しました。そのなかで安倍総理は、大学生などが返済不要で利用できる給付型奨学金について言及し、児童養護施設の出身者には来年度から先行して奨学金を支給することなどを訴えました。給付型奨学金制度は2018年度から本格実施され、安倍総理は「様々な困難を抱えている子どもたちを支援をしていく」と強調しました。

社説[児童虐待]支援のあり方検証せよ

沖縄タイムス 2017年2月18日

児童虐待や虐待の疑いのある傷害事件・傷害致死事件が後を絶たない。どうすれば児童虐待を防ぐことができるのか。
交際相手の女性の生後5カ月の長男に暴行を加え死亡させたとして宜野湾署は16日、25歳の男性を傷害致死容疑で逮捕した。
事件は昨年7月、女性が仕事で外出しているとき、一緒に住んでいたアパートで起きた。容疑者の男性は乳児に何らかの暴行を加え、低酸素脳症で死亡させた疑いがもたれている。
外傷はなかったが、頭部を激しく揺さぶったり、硬くない鈍器で殴打した場合、血流が低下し、低酸素状態になるという。
宜野湾市やコザ児童相談所(児相)は、同居を始めた3人の養育環境に不安があるとして定期的に訪問し、母親の育児相談に乗っていた。
児相などが支援に動きながら、結果として犠牲を防ぐことはできなかった。
2015年7月、宮古島市で起きた児童虐待事件も、そうだ。言いつけに従わなかったとの理由で、継父(当時21歳)が3歳の女児を叱責(しっせき)し、転倒した際、床に頭を強く打って死なせた事件である。
児相など多くの関係機関が関わり、SOSをキャッチしていたにもかかわらず、支援は生かされなかった。
児相は女児の一時保護方針を決めたが、母親の反発などで見送られ、事件を防ぐことができなかった。
この二つの事件から浮かび上がるのは、関係機関の保護・支援のあり方である。

県社会福祉審議会の児童福祉専門分科会審査部会は、宮古島市で起きた事件の検証報告書の中で、一時保護の決定が母親の反発などで見送られたことが「最大の問題」だと指摘した。
宜野湾市の事件についても、事件捜査という観点だけでなく、虐待防止という観点からの綿密な検証が必要だ。
沖縄でしばしば問題になるのは、育児経験の乏しい若い未婚の母親が周囲に相談できる相手がいないために孤立し、育児ストレスに悩まされた挙げ句、児童虐待に走るケースである。
離婚件数が多いと、再婚件数も増える。離婚も再婚もごく普通の出来事になった社会では、子連れ再婚などで継父(あるいは継母)と子どもが同居する「ステップ・ファミリー」(継父・母の家族)が増える。
ステップ・ファミリーへの偏見をなくしていくことと、孤立を回避するための当事者支援は、車の両輪である。

全国の児童相談所が15年度に対応した児童虐待の件数は10万件を超え、過去最多を更新した。県内は687件で、前年度比44%の増。増加率は全国で4番目に高かった。
妻への暴力や経済困窮、子どもの貧困などが絡んでいるケースもある。児童虐待が「負の連鎖」の中に組み込まれているとすれば、問題の根は深い。子どもたちが輝く社会を実現するための、欠かすことのできない第一歩-それが児童虐待防止である。

社説[働く女性意識調査]育休取得の壁 映し出す

沖縄タイムス 2017年2月19日

高い離職率と低い育児休業取得率は、女性が活躍できない社会の裏返しだ。
沖縄総合事務局が県内在住の20~40代女性を対象に実施した「働く女性に関する意識調査」で、4人に3人が「離職・転職の経験がある」と回答した。その理由で最も多かったのが「出産のため」、2番目が「結婚のため」だった。
約7割の女性が出産後も働き続けたいと答えているものの、出産時に育児休業を取得したのはほぼ2人に1人で5割を切っていた。
結婚・出産で仕事を辞めざるを得ない女性たちの姿が浮かぶ。
厚生労働省の雇用均等基本調査で女性の育休取得率は10年前から8~9割の高い水準にある。県調査も同様の傾向を示している。
一見、育休制度が社会に浸透し、仕事と育児を両立させる環境が整っているように見えるが、国や県の統計は会社を辞めなかった女性たちの8~9割という数字で、そこに妊娠・出産で退職を余儀なくされた女性たちは含まれていない。「育休が許されない空気」がかき消されているのだ。
働く女性に関する意識調査で、育休を取得しなかった理由の上位は「雇用形態が対象条件に合わなかった」「職場に取得する雰囲気がなかった」だった。
パートや派遣といった働き方、職場の無理解が壁になっているようだ。
企業のほとんどが中小企業で、非正規雇用率が高いという県内の状況も大きく関係していると思われる。

育休を取り巻く環境は、取得が定着する公務員や大企業と、職場の理解さえままならない中小企業との間で二極化している。
一定の条件を満たせば非正規でも育休取得は可能だが、理解が進まず、正規と非正規の格差も根強い。
人事院の発表によると2015年度の国家公務員の女性の育休取得率は100%に達している。
他方、県内では育休制度を整備していない事業所が5割近くに上る。
調査で育休を取得しなかった理由に雇用形態や職場の雰囲気の次に「家計が苦しくなるため」との声があったのは、気にかかる。
県民所得の低さや男女の賃金格差の問題もあって、賃金の6割ほどの育児休業給付金では生活が困難と考える人が少なくないのだろう。

最近の育休取得の話題は、もっぱら男性の取得率アップである。しかし女性たちが取りづらいと感じている企業文化そのものを変えていかない限り、男性の取得も一部の大企業にとどまる。
中小企業が育休に二の足を踏むのは、従業員が少ないため人繰りが難しい、前例がないなどの理由からである。
制度整備は経営者の意識の問題で、代替要員の確保には県など行政の後押しが必要となる。給付金の拡充も検討課題だ。
17年春闘が始まっている。女性が働きやすい職場環境の整備にも強力に取り組んでもらいたい。