文科省、指導要領改訂案で「森友学園」的愛国教育――幼稚園・保育所にも“ 君が代”

週刊金曜日 2017年3月10日

文部科学省が「大綱的基準として各校の教育課程編成に法的拘束力がある」とする学習指導要領(以下、要領)について、2月14日公表した改訂案(小学校は2020年度、中学校は21年度から全面実施)は、政治色を一層強めている。
現行要領は08年3月告示。(1)改正教育基本法の“国を愛する態度”を、「総則」(全教育課程に関係)に盛り、(2)小学校音楽で“君が代”を1年生(6~7歳児)から「歌えるよう指導する」としている。
今回の改訂案は、(1)では「総則」の前に新設した前文でも“国を愛する態度”を明記。(2)は今回、幼稚園・保育所にも及んだ。現在「内外の行事において国旗に親しむ」と記すに留めている幼稚園教育要領を、「正月や節句など我が国の伝統的な行事、国歌、唱歌、わらべうたや我が国の伝統的な遊びに親し」むと加筆する。厚生労働省もこれに合わせ、保育所保育指針を同様に改定するとしている。
領土問題は現在、小中とも社会の全教科書が北方領土・竹島・尖閣諸島を日本の領土だと記述しているが、改訂案では尖閣については「領土問題は存在しないことも扱う」と、教え方まで強制する。
小学校4年社会の改訂案の「自然災害から人々を守る活動」では、「国の関係機関」について自衛隊だけを明示し「取り上げる」よう強制。軍事面には賛否両論ある自衛隊について、中学3年の社会・公民で学ぶ遥か前に、「役立つ組織だ」と刷り込むのは危険だと、研究者や教諭らは警鐘を鳴らす。
なお、現行要領における(1)(2)の加筆には、当時、右翼政治団体の組織的なパブリックコメント“工作”の後押しがあった事実を、市民らが文科省でパブコメ全文コピー(個人情報は削除)閲覧時、担当係長への質疑で確認している。
それだけに、文科省が3月15日までホームページで公募しているパブコメの行方が注目される。

神戸の赤ちゃんポスト見送り 揺れた計画、背景は

神戸新聞NEXT 2017年3月10日

親が育てられない赤ちゃんを匿名で預かる「こうのとりのゆりかご」(赤ちゃんポスト)を神戸市北区に設置する計画が発表されてから9日で1カ月。その間、ポストの設置を当面見送り、24時間態勢で母子の相談に応じる案に変更された。計画が揺れた背景には、ポスト設置や運営に関する法律が整備されていないことがある。(中島摩子、広畑千春)
関西の医療機関や市民団体でつくる「こうのとりのゆりかごin関西」(大阪府箕面市)が計画。同区のマナ助産院での設置を目指し、会見では「望まない妊娠をした母親と、子どもの命を守りたい。助産院で設置できれば全国各地に広げる突破口になる」と語った。
だが、会見前日に法人側と面会した神戸市幹部は「預けられた子どもの健康状態は医師しか判断できず、助産院での設置は医師法に抵触する」との厚生労働省の見解を伝達。「医師の常駐が基本」とする一方、基準を示す法令がないため「事例ごとに体制や安全面を判断する」とした。
法人側は、医師確保を模索したが、助産院での常駐は「現実的に難しい」と判断。今月3日、厚生労働省や神戸市の担当者と会い、ポスト設置の可能性は探りつつ「今の段階では見送る」と伝えた。
医師の確保以外にも課題はあった。ポスト設置には、医療機関やこども家庭センター(児童相談所)などとの連携が不可欠だが、環境整備は十分でなく開設費用も寄付頼み。法人の一人は「準備不足もある」と漏らした。
法人は代替案として、24時間態勢で母子との面談や電話相談をマナ助産院で受ける計画を提示。これに対し神戸市は「相談はよいが、赤ちゃんを預かることになればポストと同じ」と懸念する。緊急対応が必要なケースを想定し、市は「医療機関や児童相談所、警察との連携が必要。有識者の意見を聞いて指導・助言していきたい」とする。

熊本市の赤ちゃんポストを検証する専門部会の部会長、山縣文治・関西大教授の話
今回は行政や医療機関との調整が不足していたのでは。相談の場合も課題は多く、全国の医療機関や児童相談所とのネットワークが必要だ。ただ、ポストができて10年近くたつのにルールがないのは国の怠慢。しっかりとした方針を示すべきだ。
【こうのとりのゆりかご】新生児の遺棄事件などを防ごうと2007年、熊本市の慈恵病院が全国で初めて開設。保育器のある窓口に外部から顔を見られず子どもを預けられる。扉が閉まると同時に看護師が子どもを保護し、医師が診察。児童相談所や警察に通報後、児相が身辺の調査や養子縁組の手続きなどを進めている。24時間電話相談も行い、約6千件の相談があった。

苦しむ母、支え少なく
赤ちゃんポストを巡っては、子どもの知る権利の保障や、望まない妊娠をした女性へのサポートが課題となっている。
全国初となった慈恵病院の「ゆりかご」には2007年の開設以降、15年度末までに125人が預けられた。だが、同病院がモデルにしたドイツでは、匿名での預かりが「子どもが出自を知る権利」を侵害する恐れがあるとして新設は不許可に。14年には出産時は仮名とし16歳で本名を教える制度が始まった。
一方で、国内の新生児遺棄事件は後を絶たない。児童相談所は育児困難な事情を抱えた「特定妊婦」の把握を進め、医療機関の受診や特別養子縁組を促すが、議論は低調なままだ。
慈恵病院のゆりかごでは「行政が信用できない」「身元が分かってしまうのが怖い」などの声があり、苦しむ母親の姿が浮かび上がる。
マナ助産院の永原郁子院長は「切羽詰まっている母子を救うため、新しい形の拠点をつくりたい」と話す。

JKビジネス少女の本音「客は気持ち悪い」 一方で月収50万円超も

産経新聞 2017年3月10日

「客は気持ち悪かった」「平均月収10万未満」-。警視庁が公表した違法「JKビジネス」店に在籍していた少女に対する意識調査で、接客に抵抗を感じる少女の内心や、実際の給与はほかの仕事と大差ないケースが多いといった実情が浮かんだ。警視庁幹部は、「楽観的な考えで働き初めてしまう少女が多い」と危機感を示している。
調査は昨年、警視庁が初めて実施。昨夏に摘発した、都内の2店舗に在籍していた15~17歳の少女42人に聞いた。調査によると、JKビジネスで働くきっかけ(複数回答)は、「高額収入」が23人と最も多い。稼ぐ目的(同)は、25人が「遊興費」、19人が「物品購入」を挙げ、「生活費」「学費」は合わせて8人だった。実際に1カ月当たりの収入を「20万円以上から30万円未満」としたのは6人、「50万円以上」が5人と、高額を稼いだ少女もいる。しかし一方で、ほぼ半数の20人が「10万円未満」と回答した。
また、JKビジネスを知ったのは「友人」(28人)が最多。働いた感想は「嫌だった」(15人)が、「よかった」(6人)を上回り、見知らぬ男性との性行為は7割が「いけないこと」と感じていた。客については「気持ち悪い」「うっとうしい」との声も上がり、業務に抵抗感を持ちながら応じた状況も浮かぶ。居場所を失った女子中高生たちを支援する団体「Colabo(コラボ)」(東京)の仁藤夢乃代表は、「少女たちは給料がいいと思って働き始めるが、意外と普通のアルバイト代と大きく変わらない」と指摘する。
「業者は、友達間の紹介で新たな少女を取り込むなど敷居を下げるのがうまいので、少女らに仕事の危険性が認識されていない。少女が積極的に性を売っているとみるのではなく、少女を利用する業者の悪質さに目を向けるべき」と話し、学校などで危険性を呼びかけることが必要とみる。
JKビジネスに対しては警視庁が平成24年から、労働基準法、風営法、児童福祉法などを適用して32店55人を検挙してきた。25年からは15~19歳の少女90人を補導した。さらに店への監督を強化しようと、警視庁は開催中の東京都議会定例会に、JKビジネスを規制する条例案を提出している。18歳未満の就労を禁止し、営業には届け出を義務づける。条例が新たに制定されれば、全国初。7月の施行を目指している。
条例案では、看板や衣装などでJKを連想させる店で、マッサージを建前とした「リフレ」▽デートできる「お散歩」▽会話をする「コミュ」-などの5形態を「特定異性接客営業」に規定。営業する際は、公安員会に届け出をし、従業員名簿を備える。警察は条例に基づき、立ち入り調査や命令を行うことができる。違反すれば、最高で1年以下の懲役または100万円以下の罰金が科される。水着や下着姿で接客するガールズ居酒屋なども18歳未満の就労を禁止する。
都内では約100店のJKビジネス店が規制の対象となる見通しだ。条例案をめぐっては、警視庁が主催する有識者懇談会で昨年5月、実態把握と禁止行為を明確にするために法的規制が必要とする報告書が出されていた。警視庁は、「JKビジネスは営業実態の把握が困難になっている。条例で、福祉犯罪の防止と少年の健全育成につなげたい」としている。

学校不祥事の顛末 -児童に「窓から飛び降りてもらう」と暴言-(1)

教員養成セミナー 2017年3月10日

見誤った相手との距離感 職場のパワハラにも通じる問題

【今月の事例】
A県B市の市立小学校で、40代の男性教諭が、男子児童に「窓から飛び降りてもらう」などと暴言を吐き、市教育委員会から文書訓告の処分を受けていたことが分かった。市教委によると、教諭は保護者参観が行われた道徳の授業前に、3階の教室で児童らとゲームをし、「次は勝ちます」と言った男子児童に「先生に勝てなかったから飛び降りてもらおうかな。冗談だけど」などと言ったという。参観のため集まっていた保護者ら約10人がやりとりを聞いていた。授業後に指摘を受け、教諭はその場で謝罪したという。

(1) 保護者からの苦情が多い教員の「暴言」
今回は、保護者のいる前で、児童に対し「窓から飛び降りてもらおうかな。冗談だけど」と述べたことにより、訓告処分を受けた事例を検討します。
男性教諭の認識としては、児童らとのゲームの中で冗談として述べたものだったのでしょう。しかし、それを聞いた保護者はどう思うか、児童はどう思うかといった意識が、全く欠如していたと言わざるを得ません。
話し手と聞き手の受け止め方の違いからくる、教員のいわゆる「暴言」については、保護者からの苦情が多いものの一つだと思われます。何気なく言った一言が原因で、「担任を外してほしい」といった苦情がくることもあれば、児童生徒が不登校に陥る原因になることもあります。「悪気はなかった」では済まされないことを、改めて自覚する必要があると思います。

(2) 訓告処分
教員が、児童生徒に恐怖を与える、侮辱するなど精神的苦痛を与える言葉(=暴言)を述べた場合、状況によって不適切な指導として処分される可能性があります。本事例では、保護者のいる前で、窓から飛び降りるという、「死」を連想される発言を堂々としたわけです。そうしたことから、不問に付されることなく、訓告処分がなされたものと推測されます。
地方公務員法には、懲戒処分として「戒告」「減給」「停職」「免職」の4つが定められています。こうした懲戒処分にまでは至らないものの、問題のある非違行為があった場合に下されるのが、本事例の「訓告処分」です。

【 地方公務員法第29 条 】 職員が次の各号の一に該当する場合においては、これに対し懲戒処分として戒告、減給、停職又は免職の処分をすることができる。
一  この法律若しくは第57 条に規定する特例を定めた法律又はこれに基く条例、地方公共団体の規則若しくは地方公共団体の機関の定める規程に違反した場合
二  職務上の義務に違反し、又は職務を怠つた場合
三  全体の奉仕者たるにふさわしくない非行のあつた場合

(3) 相手との距離感~パワーハラスメント
男性教諭には、児童がこうした発言を聞いてどう思うかといった視点が欠けていましたが、同様の問題は職場のパワーハラスメントの局面でも見られます。
―職場のパワーハラスメントとは、同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内での優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為をいいます。
(厚生労働省Web サイト「明るい職場応援団」より)
ここで言う「職場での優位性」とは、上司・部下、先輩・後輩を含む、さまざまな上下の優位関係を言います。教員自身に児童生徒に対する優位性の自覚が足りない場合、その教員は上司や部下などの人間関係や距離感に対する感度も低下している可能性があります。
例えば、パワーハラスメントが問題となる事案で、パワーハラスメントをしている当事者にその自覚が全くないというケースは大変多く見られます。相手との関係、本当の距離感を客観的に見定められないことは、職場のパワーハラスメントにつながる恐れもあるわけです。児童生徒への暴言と職場のパワーハラスメント、全く局面が異なるようでいて、実は通底する部分もあることを心に留め、常に他者との関係性を客観的に見られる教員を目指していただきたいと思います。
※「教員養成セミナー2017年4月号」より