虐待相談が最多 「心理的」半数超

カナロコ by 神奈川新聞 2017年4月27日

2016年度に横須賀市児童相談所に寄せられた虐待相談の件数(速報値)は635件で、開設した06年度以降最多だったことが同相談所のまとめで分かった。
暴言で脅すなどの「心理的虐待」が319件(前年度比75件増)と最多で、全体の半数以上を占めた。増加分のほとんどが夫婦げんかを目の前で繰り広げるなどの体験により、心にダメージを負う「面前DV」だという。「ネグレクト」の203件(10件減)、「身体的虐待」の113件(2件増)が続いた。
被害者の学齢別では、幼児が209件(6件増)と前年度に引き続いて最も多く、次いで小学生202件(18件増)、中学生94件(8件増)の順だった。中学卒業以上も86件(27件増)、乳児も44件(4件増)あった。
同相談所によると、虐待相談は開設以来、増加傾向で、高場利勝所長は「周囲の関心が高くなってきている」と話している。
子どもに関する相談は、同相談所電話046(820)2323=平日午前8時半~午後5時。

学力低い・性的興味強い… 「問題生徒リスト」の問題点

朝日新聞デジタル 2017年4月25日

埼玉県内の中学校が、いじめや非行防止の会議で、素行に問題があるとされる生徒のリストを配った。名前や住所、「特性」、顔写真も記載。保護者から抗議を受け、学校側は謝罪した。ある程度の個人情報がなければ非行防止の取り組みは難しいという声もある。情報はどう扱うべきなのか。
1月、熊谷市立熊谷東中学校。「いじめ・非行防止ネットワーク会議」で、小学校長やPTA関係者、自治会長ら17人に、学校から「地域ぐるみで見守る必要がある生徒」のリストが配られた。1~3年の13人の名前や住所、「学力が低い」「性的な興味が強い」などとも記され、顔写真も5人分あった。「取扱注意」とあったが、学校は回収せず、13人が持ち帰った。会議後、リストの存在を知った保護者が抗議。学校は県警熊谷署と市教委に配った分以外のリストを回収した。保護者からはその後「資料がネットに流れている」との抗議もあったが、学校によると、ネットへの情報流出は確認できていないという。
会議は2015年に設けられ、過去に「生徒の名前や顔がわからないと対応できない」と要望があり、初めて個人名が入ったリストを配った。問題発覚後の3月の保護者説明会では「詳細な情報が必要なのか」「プロジェクターで示せば良かった」との声が上がった。西博美校長(当時)は「特性など必要ない部分まで記載し、回収も怠った」と陳謝した。
学校がこうした場を設けているのは、痛ましい事件を防げなかった過去があるからだ。
川崎市で15年、中1の上村遼太さん(当時13)が年上の少年らに殺害された。事件を検証した市の報告書は「関係部署が相互に連携した十分な対応が図れなかった」と分析。学校と、児童相談所や警察、地域の人々も加わった協議会の活用を再発防止策に挙げた。埼玉県東松山市で昨年8月、アルバイト井上翼さん(当時16)が死亡し、少年5人が起訴や少年院送致された事件も同様だ。県教委などの検証委員会は「非行が顕著になる前から、学校と関係機関で情報共有すべきだった」と指摘。警察や民生委員らによる定期的な会議の設置推進を提言した。
連携にあたり、個人情報をどう扱うのか。東松山の事件後、県教委とは別に再発防止策をまとめた東松山市の中村幸一・市教育長は「新設する生徒指導専門職員に個人情報を扱う専門性を持たせ、管理させる」と話していた。
文部科学省が04年に各都道府県教委に送った通知では、学外の組織との「日常的な連携の推進が重要」とし、個人情報については事前に扱いに関するルール作りを促した。同省は川崎市の事件後の15年3月にも、教委を通じて全国の学校に、警察との間での子どもの名前などを含む情報共有や、地域住民や関係機関との連携を求めた。
ネットワーク会議について詳しい早稲田大学社会安全政策研究所長の石川正興教授(少年法)は、今回の問題について「抽象的な事柄なら問題ないが、詳細な個人情報を共有するなら人選は慎重にすべきだった。顔写真や特性などは、緊急対応が必要なときなど一定の条件に限られるべきだ」と指摘する。「学校も警察も守備範囲は限られている。適切な対応を取るためには『横割り』の組織作りが必要だ」とした上で「原点は子どもの健全育成。学校は共有する情報に十分注意を払い、情報の取り扱いについてもしっかり説明する必要がある」と話す。(角拓哉、川崎卓哉、田中正一)

絶対に子どもたちを守る。通学路にひそむ危険の正体、今すぐやるべきこととは。

BuzzFeed Japan 2017年4月26日

またも子どもが犠牲になった。相次ぐ事件を「特殊なケース」「守るすべがない」とやり過ごしていいのか。子どもの安全と、性犯罪。2人の専門家に聞いた。【BuzzFeed Japan / 小林明子】
日頃から、子どもにこう言い聞かせている親は多いのではないだろうか。

「知らない人にはついていかない」
しかし、顔見知りの関係であっても、事件は起こりうる。身近な人物による犯行は「防ぎようがない」のか。すべての人を疑え、と教えるよりほかないのか。
子どもの安全に詳しいセコムIS研究所の舟生岳夫さんは、著書『子どもの防犯マニュアル』で、子どもが一人でいる時に不審者から声をかけられた時の対処法を詳しく解説している。
それが顔見知りだった場合でも、対応は変わらないという。

セコムIS研究所の舟生岳夫さん
誰であっても「ついていかない」
友達の親などよく知っている人でも、事前に親同士が連絡を取り合っていなければ、車に乗ったり家に上がったりしてはいけない。そのルールを、子どもとしっかり確認しておく必要があるという。
「やみくもに人を疑えというのとは違います。親が、自分の子どもがどこに行ったかわからない『空白の時間』を作らないための対策です」
とはいえ、子どもは声をかけられるととっさに判断できず、「親切で言ってくれているのに断ると失礼かも」「親に怒られたらどうしよう」と思ってついていってしまうかもしれない。
「きちんと対応しなさい」といった曖昧な言い方をしていると、そうなった時に子どもは混乱してしまう。
「一人になった時に誘ってくる人がいても断りなさい」
「断ってもしつこく誘われたり、強引に連れて行こうとされたりして、怖いな、嫌だな、と思ったらすぐ逃げなさい」
「もし失礼にあたっても、あとでお母さん(お父さん)が謝ってあげるから」
このように具体的に伝えるとよいという。

忙しくても代替手段はある
千葉県で女の子が殺害された事件では、女の子が通っていた学校の保護者会長が逮捕されたことで、子育て中の親たちに戦慄が走った。
しかし、それで保護者会を否定するのではなく、むしろ保護者会やPTA、地域活動に親が積極的に関わって、近隣住民や保護者とのコミュニケーションを密にすることが防犯には近道だ、と舟生さん。不審者を見分けやすくなるだけでなく、子どもに接する大人どうしの監視の目もはたらきやすくなる。
ただ、共働きや核家族などの事情で、そうした地域のつながりをつくることは難しくなってきている。日々何も起きないことをひたすら祈りながら、やむを得ず一人歩きや留守番を続けさせているケースは少なくない。舟生さんはこう断言する。
「親の都合で子どもに高い負荷をかけてはいけません。親が忙しいなら忙しいなりに、代替手段は必ずあります」

帰宅前50メートルの対策
例えば、下校するときに自宅までの50メートルだけ、子どもが一人になる区間があるとする。その区間のために毎日、親が早く帰宅して迎えに行くことは難しい。だからといって「気をつけてね」とだけ子どもに伝え、昨日も今日も何もなかったからといって、明日は何が起きるかわからない。
その50メートルのためにできる対策はたくさんある。近所の友達と時間を合わせて帰ってもらったり、帰宅したら親に連絡するルールを作ったり、GPSつきの携帯電話をもたせたり、ママ友・パパ友同士で交代で迎えに行ったり預かり合ったり……。
特に、定期的に親が子どもと一緒に通学路を歩き、子ども自身に危険な場所や死角を見つけさせ、認識させるとよいという。
普段は見かけない車が止まっている、不審な人物が立っている、何かあればこの店に助けを求めることができる、この方向に走ったほうが大通りに出やすいーー。
子ども自らが危険を察知し、「おかしい」「怖い」と感じ取れる力を育てることこそ「最大の防犯」だと、舟生さんは言う。
「まじめな親ほど、自分の力だけで子どもを守ろうとしますが、そんなことは無理なんです。地域の力に頼り、子ども自身の力を育てなければ、子どもを危険から守ることはできません」

危険人物は身近にいる
警察庁の統計によると、2014、2015年、強姦の被害者(成人を含む全年齢)の過半数は、加害者と顔見知りだった。子どもの場合でも、身近な人物に安心しきっていいという根拠はどこにもない。
埼玉県富士見市でベビーシッターの男が預かっていた男児を殺害した事件や、子ども向けキャンプ旅行に同行した添乗員らが児童ポルノ撮影グループだったとされる事件など、子どもや親の「信頼」が利用されるケースもある。
性犯罪加害者の再犯防止に取り組む「性障害専門医療センター(SOMEC)」の代表理事、福井裕輝さんは「こうした事件に驚くのではなく、起きて当然だと考えて対策すべき」と話す。
「小中学校の教員、保育士などの一部に、性的嗜好の対象が子どもである人物が交じっているのは事実です」

「安全だ」という根拠のない思い込み
SOMECでは、性犯罪の加害者や、自身の性的嗜好に悩む人たちを対象に、グループプログラムを通した治療をしている。認知行動療法(カウンセリング)に加え、薬物療法(ホルモン治療)をすることもある。
強姦、強制わいせつ、DV、ストーカー、痴漢、盗撮などの犯罪につながる性的嗜好のなかでも、小児性愛(ペドフィリア)は「犯罪行為に移しやすい」。子どもは大人と比べて抵抗しにくく、被害を訴えにくいからだ。
そうした「対象」がたくさんいる学校や幼稚園、保育園、塾、マンションなどに、小児性愛の嗜好を抱えている人物が入り込むのは当然の流れだ、と福井さんはいう。
「危機感をあおるわけではありません。むしろ『いないはずだ』と根拠なく思い込みすぎではないでしょうか? 子どもの身近に小児性愛者がいることを前提に対策をとらない限り、子どもの被害をなくすことはできません」

教壇の下でオナニー
SOMECの患者の中には、子どもたちがテストをしている姿を眺めながら、教壇の陰でマスターベーションをしていた小学校教諭がいたという。本人が治療を希望したことで発覚したが、こうした行為は明らかになりにくい。
「例えば、女子が着替えている部屋に突然、見知らぬ男性が入ってきたら問題になるが、それが男性教諭であればとがめられにくいですよね」
業務上の必然性との線引きは難しく、犯罪行為であっても子どもに自覚がない場合もある。男性保育士による女児のおむつ替えの議論も同様だ。
警察庁は、子どもへの性犯罪の再犯を防ぐため、加害者の出所後の所在確認や面談を実施している。福井さんは、犯罪を未然に防ぐためにはそれにとどまらず、海外で実施されているような「スクリーニング」を日本でも導入するべきだ、という。
スクリーニングとは、小中高校の教員などを志望する人に対し、小児性愛の嗜好があるかどうかを確認し、場合によっては現場からシャットアウトするためのもの。性的な興奮パターンを自己申告するほか、測定器をペニスに巻きつけて児童ポルノ画像などを見て、ペニスの大きさの変化を調べる方法などがある。
「職業差別や性的嗜好差別など、さまざまな観点からの議論は必要ですが、被害にあう子どもを本当になくしたいのなら、一つの方法だとは思います」

「気をつけよう」では守れない
現状で、子どもを守るためにできることは何か。福井さんは、日本では小児性愛に対する危機意識があまりにも低い、と指摘する。
小児性愛者や犯罪者が子どもの近くにいる可能性は十分にある。親が知らないだけで、子どもが嫌だ、怖いと思うことがすでに起きているかもしれない。
まずその前提に立って、通学路や見守りの体制を見直すこと。「まさか」「ありえない」で思考停止しないこと。
「気をつけてね」などの曖昧な言葉で、親の不安を子どもに転嫁するのではなく、「いますぐ具体的な対策をとる」。その点で、2人の専門家の意見は一致している。

【GWの子育て】お父さんは過保護禁止!?少しの「スリル」が子どもを大きく成長させる

ホウドウキョク 2017年4月26日

父親ならではの「触れる」あそび
第3回で学ぶのは、子どもの「触れる」の育て方だ。さまざまなものを「触る」ことは、子どもにとって貴重な体験となる。また、お父さんと子どもが文字通り「触れ合う」ことで、日頃不足しがちなスキンシップを補うことにもつながるといえるだろう。東京大学の発達保育実践政策学センターで准教授を務める野澤祥子(のざわさちこ)さんは、父親ならではの、子どもとの触れ合い方があると話す。
「一般的に男性は女性よりも筋力があるので、子どもとダイナミックに体で関わることができます。また、日頃仕事を通して社会と関わっているお父さんは、子どもに外の世界を見せてあげたり、その世界を広げてあげたりすることもできるんです。少し難しそうな遊具でも『やってみない?』と背中を押してあげるなど、お父さんだからこそできる遊びを提案してほしいですね」(野澤さん)
公園にある難しそうな遊具に一緒にチャレンジする。それだけで子どもの世界は広がるうえ、父子の関係性を育むことができるのだ。
続いて、ボーネルンド「キドキド」のプレイリーダーである鈴木洋滋(すずきようじ)さんに話を聞いたところ、野澤さんも語った「父親ならではのダイナミックなあそび」の具体的なアイデアを話してくれた。
「父親の足の甲の上に子どもを乗せて、手を繋いで一緒に歩く『ペンギンレース』というあそびが子どもに大人気なんです! 二人三脚のように『1、2、1、2』と息を合わせて歩くと、親子の一体感も生まれます。大人も意外と疲れるので、体力に自信のあるお父さんにオススメです。他には、子どもと手を繋いでグルグルと遠心力で回す『メリーゴーランド』もいいですね。子どもの手をしっかり握るのはもちろん、周りの安全をしっかり確認して、広い場所であそんでください」(鈴木さん)
子どもとのスキンシップがうまくいかず、悩んでしまう父親は多い。だが、前述のように、父親にしかできない役割、そしてあそび方があるようだ。続いて、保育士のてぃ先生は、ゲーム形式で楽しめる「触れる」あそびを提案してくれた。
「子どもに目をつむらせて、手のひらに石や木、葉っぱなどを置き『これはなんでしょうか?』と当てさせるというあそびは園児も大好きです。素材によってさまざまな温度や感触があるので、その違いを感じさせてあげるのは、子どもにとって貴重な経験になると思います。乾いたサラサラの砂、水を加えたネチョネチョの砂、芝生の意外とチクチクする不思議な感触、想像以上にしなる木の枝など、いろいろなものに触れさせてあげてください」(てぃ先生)
中には、あまり外のものに触ろうとしない子どももいるだろう。そんな時、お父さんが率先して「触ること」を導いてあげることで、子どもは知らない世界とつながることができる。お父さんの役割は、子どもの背中を押してあげること。子どもの触覚を育てるうえで、特にそれが有効となるようだ。

たくさん「失敗」させてあげる
現代の子どもたちは過剰に失敗をおそれてしまい、なかなか新しいあそびにチャレンジできないと言われている。そんな子どもたちとの接し方に対し、てぃ先生はこのように話してくれた。
「子どもに対して『失敗してもいいんだよ』と優しく伝えているパパやママはとても多いですが、子どもが失敗をしてしまった後に声をかけているケースが大半。けれど、子どもの立場からすると、今更声をかけられても遅い…と慰めにしか聞こえないわけです。ぜひ子どもが何かに挑戦する前に『失敗してもいいよ!』と声をかけてあげましょう。その言葉が強い安心感を与え、自発的な行動を後押しします」(てぃ先生)
また、失敗の仕方もお手本で示してあげるのが良いそうだ。
「子どもに新しいあそびを提案するとき、最初から上手なお手本を見せてしまうと、『ぼくはパパみたいに凄いことはできない』と自信をなくしてしまうことがあります。それを考慮し、ぼくはあえてヘタクソなお手本を見せてから、子どもと一緒にあそぶことが多いです。パパの凄い一面を見せたい気持ちはわかりますが、一緒に考え、一緒に失敗しながら、子どもとの関わりを楽しんでほしいです」(てぃ先生)

「ダメ」とは言わないあそびの制し方
あそびの中で、時にはその行動がエスカレートして危険を伴うこともある。そんなとき、どこからあそびを制するべきか。また、どう制したらいいか、対応に悩む親は多い。
「親として、子どもの危険を取り除こうと思うのは自然な発想だと思いますが、『痛みを経験させてあげる』というのも親の役目です。子どもは傷みや不快な経験を通して、注意する心を養います。もっと言えば、痛みを知らないことよりも、恐怖心を知らないことが問題なんです」(鈴木さん)
さらに、鈴木さんは「ダメ」という言葉を使わないことの重要性について話してくれた。
「どのような状況でも、『ダメ』という言葉は子どもを否定することになるので、ボーネルンドのプレイリーダーは使いません。子どもが周囲の環境を考慮したうえで危険を伴うあそびをしている場合は、あそびの“種類”を変えるよう促します。例えば、狭い場所で走り回っている子どもを制したい場合、上に高くジャンプするようなあそびを提案します。すると、動きが並行から垂直に変わっただけなので、『あそびを妨げられた』というストレスを子どもに与えなくて済むのです」(鈴木さん)
「触れる」というあそびにおいて、ダイナミックなスキンシップが楽しめるという意味で、よりお父さんの存在が重要となる。また、失敗や痛みを体験する機会が増え、子どもへの接し方も問われるため、「触れる」というあそびには、父と子がともに成長できるきっかけが数多く含まれていると言えそうだ。