<里親認定>東京都、同性カップルは除外 69自治体調査

毎日新聞 2017年4月16日

大阪市が男性カップルを養育里親に認定して全国で初めて子どもを委託したのを受け、毎日新聞が全国の自治体に調査したところ、東京都だけが同性カップルを実質的に里親に認定しない基準を設けていることが分かった。ほかに約2割の自治体が、同性であることが認定の審査に影響する可能性があると回答し、同性カップルの位置づけに意識差がある実態が浮かんだ。
養育里親は、虐待や貧困のため親元で暮らせない子を、家庭で預かって育てる。申請を受けた自治体が適格性を判断して認定するが、里親の婚姻の有無は法令上の規定がない。
今月、児童相談所のある69自治体(47都道府県、20政令市、2中核市)に里親認定の基準を聞いたところ、東京都だけ同性カップルを除外していた。都の基準は、結婚していない人が養育里親になる場合、子育て経験があるか、看護師、保育士などの資格を持っていることを要件とし、成人した親族との同居も求めている。「親族」は事実婚のパートナーも含めるが、同性カップルは該当しないとしている。
都福祉保健局によると、都は1973年に国に先駆けて養育里親制度を作った。当初は未婚者を一律除外していたが、徐々に要件を緩和し、88年に今とほぼ同じ形になった。同性カップルの扱いは、専門家による審議会で議論があったが、賛否が割れて見直しに至っていないという。
都の担当者は「民法で結婚が認められないなど、まだ社会制度の整備が進んでいない。子どもの受け止め方や成長過程での影響が分からないため、慎重に検討したい」と話す。
残る自治体に同性カップル除外の規定はなく、兵庫県は昨年3月に30代の女性カップルを養育里親に認定していた。子どもの委託はしていない。
一方、川崎、相模原、岡山の3市は「申請があっても受理するか分からない」、新潟、京都、熊本、横須賀の4市は「同性であることを児童相談所がどう評価するか分からない」と回答。また、8自治体の担当者が、適否を判断する審議会でマイナスに評価される可能性があるとの見解を示した。
滋賀県の担当者は「子どもの中にも性的少数者はおり、間口を広く取っておくことが大事」としつつ「同性カップルへの社会の理解が十分でないため、ただでさえ難しい子どもとの信頼関係の構築が更に困難になる可能性がある。現時点では、認定しても実際に子を委託する確率は低い」とみる。秋田県は性的虐待を受けた子らの委託先として「選択肢が多い方が子どものためになる」と前向きだ。
林浩康・日本女子大教授(社会福祉学)は「同性カップルに育てられることに何の害もないことは海外の事例からも明らかで、都は施設で暮らす子の数に比べ圧倒的に少ない里親の貴重な担い手を失っている。自治体の懸念はマッチングを慎重にすれば解決できる。家族のあり方の時代の変化に里親制度も対応させる必要がある」と指摘する。【黒田阿紗子、藤沢美由紀】

国際的流れに反する
性的少数者が里親の担い手になることを目指す一般社団法人「レインボーフォスターケア」の藤めぐみ代表理事の話 東京都の基準は子どもが安心して家庭で過ごせる可能性を狭めており、国際的な流れにも反している。一方で多くの自治体が同性カップルであることを理由に排除せず、本人の資質で判断する姿勢であることは良かった。離婚して同性のパートナーと子育てをするなど、既に一般の夫婦と同様に育児をしている事実を知ってほしい。

「ぼくは養子」18歳男子高校生ケイタが考える”家族の定義”

駒崎弘樹 認定NPOフローレンス代表理事 2017年4月14日

養子縁組支援を行っている、認定NPO法人フローレンスの駒崎です。
昨今、養子という運命について既に整理のついている大人や、養子を迎えていかに幸せな家族を築いているかを伝える大人の声は比較的紹介されることが増えたものの、「養子となった子ども」本人の現在進行系の気持ちは、まだなかなか語られることがありません。
今回、NHKの番組でゲストとなった本人にお話を伺うことができました。
(※未成年のため氏名や画像についてはすべて仮名・架空のイメージで構成しています。)

はじめに
インタビューに応じてくれた18歳の男子高校生ケイタ君は、乳児院から2歳半の時に現在の両親の元に迎えられました。現在の両親とは、特別養子縁組の手続きを経て、法律上も親子になったのです。
育ての親は当時不妊治療の過程で、実子を授かる可能性が低いことが分かりました。それでも子どもを育てたいと希望した夫妻が、児童相談所職員の紹介で初めて乳児院を訪れた時、たくさんの子どもが遊ぶ部屋で一人ふっと顔をあげ、夫妻を見てニッコリと笑ったその子がケイタ君だったそうです。
数ヶ月の交流期間の後「3人家族」の生活が始まり、ケイタ君は6歳の誕生日に両親からの告知で「血がつながっていない」ことを知ります。それから「養子」という運命を生きてきました。

ーNHKの番組はTwitterやSNSで「泣けた!」「家族について考えさせられた」ってすごい反響でしたね。
ケイタ:びっくりしました。でも、出演を通して改めて自分を振り返るきっかけにもなったし、「自分は養子で親と血が繋がっていない」って言うと、よく「ドラマみたいな人生だね」って言われるけど、ドラマじゃなくて現実だよって。こんな家族もいるんだって紹介になったのなら嬉しいです。

「血のつながりが家族の証」という呪いに苦しむ小学校時代
ー親しい人には養子であることを伏せてはいないようですが、確か、ケイタ君は担任の配慮ミスから養子であることがクラスに知られてしまって、それがきっかけでいじめられ、小学校時代辛い思いをしたことが…。
ケイタ:小学校4年生の時ですね。あの頃は自分自身も「養子である事実」を受け入れられずにいました。「自分は友達と違う」と誰に対しても壁を作って、引きこもってました。「親なし」といじめられたことで、さらに養子であることを前向きに捉えられなくなってました。

ー小学校の道徳の教材で『血のつながっているものを家族と言う』と定義されたというエピソードにも、驚愕しました。
ケイタ:あっ…!て思いました。「うちは血がつながってないから、家族じゃない」って。だんだん殻に閉じこもって親とも距離を置くようになるし、悩みもどんどん抱え込むし……負のスパイラルでした。

ーその頃はご両親にも本心をオープンにできなかった?
ケイタ:育ててもらってるのに、「養子」だってことで僕が悩んだりいじめられたりしているってことを絶対に気づかれちゃいけないと思いました。これ以上迷惑かけられないみたいな遠慮と、とにかく育ての親を悲しませたくないという気持ちと、両方で。

悩んでいることやいじめの事実を知ったら、きっと親は傷つくだろう。自分が我慢すれば、家族を傷つけずに済む、って思って。親には笑っててほしかったし、自信を持っててほしかった。

生涯の恩師との出会いが、クラスとケイタ君を変えていく

ー小学校時代そんなに辛い時期があったのに、今は養子であることをオープンにできるまでになった、と。小中学校時代どんな変化があったのか、気になります。
ケイタ:まず最初の転機は、小学5年の担任の存在です。もうめちゃめちゃいい先生で!その先生のおかげで、いじめから解放されたんです。

担任になってすぐに声をかけてくれたんですよ。「4年生の時からお前いじめられてるよな。先生見てたよ」って。僕がはぐらかさないよう、いじめられている現場を押さえた上で。4年生の時は隣のクラスを担任してた先生だけど、ずっと見てて自分がいじめられてることに気づいてた。「見ててくれた」「分かってくれた」ってことが、何より救いになりました。
先生は授業をまるまるひとつ潰して、いじめについてクラスに問いかけました。いじめはその授業を境に、本当にピタリとなくなりました。

ー素晴らしい先生に出会えたんですね。
ケイタ:子ども一人ひとりと向き合う先生で、生徒のいいところや頑張ったことを毎日たくさん発見して一日も欠かさず学級通信を出してくれるような先生でした。インフルエンザの時も休まずに!(笑)生徒同士が褒め合うこともとても大切にしてました。クラスの雰囲気もすごく良くて、控えめだった自分も、どんどん活発な子になりました。

ー(ケイタ君が丁寧にファイルされた分厚い学級通信の束を見せてくれました。)ケイタ君の名前のところにキレイにマーカーがひいてありますね。
ケイタ:両親も毎日学級通信を楽しみにして、母は僕の名前を見つけるとマーカーしていました。頑張ったことや友達と色んなことに取り組む記事を見て、とても喜んでくれました。この学級通信は家族の宝物です。

元プロボクサーから「今、幸せ?」と聞かれて

ー小学校高学年で自分や周りが変わる中で「養子」だという悩みも解決していった?
ケイタ:中学に入るとまた新しい環境で、先生も友達もイチから。やっぱり悶々としてしまったんですよね。自分の名前や誕生日は本当なのか? 信じられないから、新しい友だちには僕のことは名前じゃなくて「名字」で呼んでくれって言ってました。名字だけは本当だから。

「自分は誰で、何をするために生まれたんだろう?」って、本当の部分がないみたいな自分が本当に嫌でした。やっぱり養子であるっていう部分とは折り合いがつけられないでいたんです。

ーただでさえ思春期は「自分って何者だろう」って悩む時期だけど、それがより深い感じですね。
ケイタ:でも、親と一緒に参加したあるイベントで、元プロボクサーの坂本博之さんに出会って変わったんです。これが2つ目の転機です。
※坂本博之…元プロボクサー。世界ランキング最高WBCライト級1位タイトル等多数。両親の離婚が原因で親戚の家に預けられた後、虐待を受けて児童養護施設で過ごした経験がある。養護施設の子どもや里子・養子の促進、支援を続けている。
ケイタ:番組でも紹介しましたが、坂本さんの講演後、偶然二人で話す時間がもらえて。その時に今までもやもや悩んできたことを全部話しました。

坂本さんはずっと耳を傾けてから「それで今、幸せ?」と聞いてきました。考えてみると「間違いなく幸せ」なんですよね。「じゃあ親はいない?」と続けて聞かれました。「親はいない、親はいる、どっちも正解だ」って思いました。だけど、何も不自由はない、自分は幸せだって。

「親を大切と思う気持ち」をありのまま受け入れる

ケイタ:僕は養子で、親と血縁関係はないけど、今の家族は家族であるし、親は親。きちんと周りと同じ条件は揃ってるから、周りとは変わりはないって思って。坂本さんも「そうだよな。今いる家族に感謝だよな」って言ってくれました。

親を大事に思う気持ちは名前より誕生日より自分の真実だなって。ブレなくなったのは、この頃からです。親にありのままぶつかってわがままも言えるようになったし、めっちゃ仲良くもなりました。ワガママしすぎていい加減にしなさい!とすごく怒られることも増えて。笑

真実告知は小さいうちに親から直接聞いたほうがいい

ー学校の先生だったり、坂本さんだったり、第三者の大人との出会いを通じてケイタ君は吹っ切れていったんですね。家族との関係に悩み自分のアイデンティティを探した小中時代。もしかしたら告知の時期はもっと早い時期か、うんと遅い時期が良かったのでしょうか。
ケイタ:個人的には、大きくなってから偶然知ってしまうとか大人になってから聞くより、できるだけ小さいうちに親から直接聞くのがベストだと思います。まだ色んなことが理解できないくらい小さい歳の時に言ったほうが、理解するのと受けとめるのを一緒のペースでできる。年齢が上になるほど、受けとめるのに時間がかかると思います。

知っていれば、例えば同じ境遇の家族同士の交流会などで相談できる機会も増えます。
とはいえ、誰でも多分「小学校中学年」で最初の壁にぶつかるんですよね。そういう時に頼れる大人がすぐ近くにいてくれた場合とそうじゃない場合で、だいぶ違います。

同じ境遇の家族が集うコミュニティに参加する理由

ー告知の時期は早いに越したことはないけど、実際に壁にぶつかる学生時代にいかに一人っきりで悩まないか、が大事ということですね。
ケイタ:うちは、養子縁組や里親制度などで家族になった、血のつながらない親子が家族同士交流するコミュニティに所属しているんですが、自分はそこで子ども側のリーダーとして、今後も何か手伝えたらと思っています。養親や養子ができるだけ自由に気持ちを話せる場に、自分がなりたいと思っているからです。「自分が正しいと思っていれば、それが答えなんだ」って伝えたいから。

ーいつ頃からご家族で参加されているんですか?
ケイタ:養子縁組をした最初の頃からそのコミュニティに家族で参加してます。自分は子どものリーダーっていうのをやっていて、夏はキャンプに行ったり年間何回か講演会があったり、そういう時に子どもたちの面倒を見る役目ですが、養親からも養子からも、最近とにかく何でも相談されることが多くて…。

ーへえー!ケイタ君にみんなが相談をしてくるの?
ケイタ:イベントに参加していたほとんど全部の親子と話したんじゃないかな。子ども達も、養親達も、本当に色んなことを相談してくるんですよ。対面もあれば、LINEとかもしょっちゅう。

そんな時、「不満はなに?不安はなに?」と全部聞くことにしています。小学校の恩師や坂本さんが自分にやってくれたように。養子や養親の悩みは普段の生活で人に簡単に話せないことも多いです。まずは話せることで安心できるかなって。特に子どもにとっては、親でもなく友達でもないから話せる、身近なお兄さんでいてあげたい。

身近なお兄さんとして、同じ悩みを持った子の相談に乗る

ーどんな相談があるんですか?
ケイタ:子どもサイドからは、養親や里親に「本当にわがままを言っていいの?」「自分の意見が言えない…」とか、「産みの親は自分が嫌いだったのだろうか」「育ての親に迷惑かけないで過ごさないといけない」って思い込んで悩んでる子もいます。

全部自分も経験のある気持ちだから、よくわかるんですよ。同じ悩みを持った子を助けてあげたい。
「子どもが嫌いで手放したわけじゃなく色んな事情があると思う。でも自分がやりたいことをどんどんやって幸せになることが産みの親にとっても育ての親にとっても、一番いいことじゃないかな」って年下の子達と話します。
きっと産みの親が望んでるのは、幸せな場所で子どもが生きてくれること。育ての親にとっては子どもが自己肯定感を持ってのびのび思い通りの人生を送ること。そして、親に甘えてくれること。

子どもは親の見えない所で成長する。我が子を信じて応援してほしい

ケイタ:養親サイドだと「親じゃないくせに!ととても反抗的な態度を取る」とか「告知の時期はいつがいいか?」「実の親に会いたいと言われたらどうしたらいい?」といった相談から「子どものあやし方を教えて!」まで色々です。自分も分からないことばかりだから一緒に考えていきたいです。

ただ、親の見えない所で子どもは成長してる。そのためにはいい人との出会いや色んな価値観に触れる機会を逃しちゃいけないし、そういうチャンスに出会うには子どもが自分から動ける少しの勇気が必要。だから、いつも変わらず子どもを信じて応援してあげて欲しい。

ーケイタ君はこれからその団体全体のリーダーになっていくんでしょうね。
ケイタ:養子の子の気持ちをもっと発信していきたいって思ってます。

子どもはなんにも選べないんですよ。極端な話、この里親さんがいい!とも、育ての親から離れたいとも言えない。産みの親と育ての親といった大人に全てを左右されます。だからこそ、子どもの声を僕は大事にしていきたいです。
それから、一般の人がこうした団体のイベントに来るのもいいと思うし、もっと関心をもってもらえるようにしたい。養子縁組で家族になる人がいて、子ども達はこんなことを感じているよって知って欲しいです。

今春から大学生に。恩師のような学校の先生になりたい

ー(インタビュー当時)今、高校生活最後の春休みですね。新年度からは?
ケイタ:教員になるために、4月から大学で教育の勉強をしたいと思っています。養子も含めて子どもが色々な問題に最初にぶつかるのはだいたい小学校なので、そんな時に側にいてあげられる教員になれたら。子どもが自分から殻を破ることは難しいから、悩んでる子どもの殻を破ってあげるきっかけを作れるような大人になりたいです。小学校の時の恩師のように。
その先生は「話したい時はいつでも何時でも連絡してこいよ」っていう人で。今でも連絡を取り合っていて、進学が決まった時も携帯にかけたらすぐ出てくれました。すごく喜んでくれて、嬉しかった。
ケイタ:それから、児童養護施設にはものすごくたくさんの子たちが残されています。「子どもが欲しい」という大人が新生児ばかりに飛びついて、乳児院では3歳をすぎると受託率は激下がりなんですよ。施設で育つ子は突然18歳で社会に放り出されます。

こうして何不自由なく大学行って勉強することを楽しみにする自分がいる一方、施設の同じ歳の子はこの春からたった独りで生きてかなきゃいけないんです。児童養護施設を出たあとの進路はほぼ就労と決まっていて、大学等進学率は1割程度です。そういうのを、なんとかしたい。産んでも育てられずに子どもを施設に託さなきゃいけない親についても、サポートが必要なんじゃないかと思うし、中高での教育の中でも「妊娠」や「出産」の先にある、「産んでからのこと」を、今はちゃんと教えてないと思います。

心の底から大事と思えるなら、それが「家族」。血のつながりは関係ない

ーケイタ君が活躍する近い未来、私たちフローレンスも色んな家族が生きやすい社会をつくる仲間でいられたらと強く感じます。さて、道徳の教材の家族の定義はおかしかったけど、ケイタ君が今思う「家族の定義」を最後に教えてください。
ケイタ:(長い時間悩んでから)家族とは、自分のことを一番に思ってくれる人。そして自分も一番大切に思える人のこと。心の底から大事と思えるなら、それが家族です。困ってる時に一番最初に帰りたくなる場所で、一番最初に助けを求める人です。今は、そう思います。

一緒に泣いたり笑ったりもがいたりしながら「家族」になっていく

ケイタ:それから、一般に親というと子どもから頼られて、親は子どもを支える、育てるってイメージが強いけど、うちの場合は3人全員血が繋がらないから、親>子の関係じゃなく、親=子が平等な関係だと感じます。一緒に彷徨ったりもがいたりしながら成長してきました。そんな新しい関係の家族は、養子の家族だけです。自分にとって育ての親は、フツーに「親」と言うので終わらせたくない大切な存在です。親以上の親友です。

家族はそれぞれ、価値観もそれぞれってことにつきますよね。
僕は、家族皆で泣いた6歳の誕生日は鮮明で忘れられないし、忘れちゃいけないって気がしてます。泣いたり笑ったりしながら、家族になっていく。血が繋がっていても、血が繋がっていなくても、それが家族だと思うから。

「養子」という境遇だったからこそ、経験した気持ちを昇華させ、家族への感謝や愛情をしっかりと自分の土台にした18歳のケイタ君。ご両親にとってもどれほど頼もしい息子さんだろうと、家族の双方の愛情をしっかりと感じました。
実は、インタビューにはケイタ君のお母さんも同席して下さいました。終始ケイタ君の言葉に優しく相槌をうち、にこにこと笑顔を絶やさない姿が印象的でした。インタビュー中「初めて聞くことばかり」と、ケイタ君が堂々と自分の経験や考えを話す様子をとても眩しそうに見つめるお母さん。「遠くからでも近くからでも、あなたが望む距離でずっと応援しているよ」という温かな愛情が伝わってきたのも印象的でした。
ケイタ君が強く訴えたように、日本では年間4万人もの子どもが児童養護施設で暮らしています。様々な事情で予期せぬ妊娠をして出産に至った場合、児童養護施設にいったん保護されれば、ほとんどの子どもは施設の中で18歳まで集団生活を送ります。ケイタ君のように養子縁組で家族となるのは日本ではたった年間500組程度なのです。
一方、アメリカでは養子縁組の家族は年間12万組も誕生、子どものセーフティネットの役目も果たしています。
既に他の先進諸国では施設養育から家庭養育に完全にシフトしています。日本はこの分野では極めて遅れを取っているのです。

二週間に一人、予期せぬ妊娠で出産に至った赤ちゃんが亡くなっている日本
日本で社会問題となっている子どもの虐待死ですが、子どもの虐待死の中で最も多いのは、「0歳0ヶ月0日」※(子ども虐待による死亡事例等の検証結果等について(第12次報告) |厚生労働省)。つまり、産まれた直後なのです。
フローレンスは妊娠期間からソーシャルワークを行い、予期せぬ妊娠で遺棄されたり虐待される赤ちゃんを救いたいと考えます。殺されてしまったり児童養護施設に保護される前に、子どもを家庭に繋ぐ手段のひとつとして「赤ちゃん縁組」を推進しています。 そして、日本でも、一人でも多くの子ども達がケイタ君のように温かい家庭で愛情を受けて育ち、思春期にも一人で悩むことがないよう支援していきたいと思います。
フローレンスの特別養子縁組事業では、養親と養子、そして産みの親を継続的に見守り、困った時にはいつでも相談に乗ります。必要な時には行政との橋渡しもします。ケイタ君一家の拠り所であったように養子を迎えた家族同士の交流会なども積極的に行っていく予定です。
ケイタ君一家にお会いして、新しい家族の形が「あたりまえ」になる日本が、目前まで来ていると感じました。

小児性犯罪を減らす、たった1つの方法

駒崎弘樹 認定NPOフローレンス代表理事 2017年4月16日

病児保育・小規模保育等、子どもに関わる仕事をしている、認定NPO法人フローレンスの駒崎です。
松戸市に住む9歳のベトナム人の女の子の遺体が見つかり、女の子の通っていた小学校の保護者会会長が死体遺棄の容疑で逮捕されるという事件がありました。
まだ容疑の段階なので確定的なことは言えませんが、報道では、小児性愛者であることが強く示唆されています。

相次ぐ性虐待事件
また先日、子ども向けキャンプで男児にわいせつな行為をしたうえ、その様子を撮影した疑いで、学校教諭や子ども向けキャンプ旅行の元添乗員ら6人が逮捕されました。
保育所でも、悲しいことに小児性愛者による性虐待は起きています。男性保育士を心配する母親の気持ちも、あながち全く根拠がないというわけではありません。
このように、相次いで小児性愛者による性犯罪、性虐待が事件化しています。しかしこれは氷山の一角です。
性虐待というのは、最も「見えない」虐待です。子どもは自分が何をされたのか分からず、大人になってから「あれはひょっとして・・・」と後遺症に苦しむため、その時点で犯人は非常に見つけづらいのです。

雇用時に小児性犯罪歴のチェックを!
こうした子どもが犠牲となる事件を防ぐために必要なこと。それは子どもに関わる教師や保育士の採用時、またPTA等のボランティア参加時において、性犯罪歴をチェックできる仕組みです。
例えばイギリスでは、DBS( Disclosure and Barring Service )という政府部局があり、ここが各事業者が行う犯罪記録チェックのリクエスト処理を行っています。
DBSは警察記録を検索して、申請者にDBS証明書を発行するのです。これで、保育事業者や学校は、保育士や教師子どもへの性犯罪の前科がないか、チェックした上で雇用することができます。
また、ボランティアにもDBSチェックは行えるということなので、今回のケースのように、PTAのような組織に対しても活用でき、リスクを低減できるのです。
こうした仕組みは、イギリスの他にアメリカ、カナダ、オーストラリア、韓国にもあるようです。
しかし、日本にはありません。犯罪経歴証明書は、海外渡航や国際結婚の際に取得できますが、雇用時においては取得できません。保育所や学校や子どもに関わる団体が、小児性愛者を雇用することを防ぐ仕組みは、皆無なのです。

善意の人を疑うということ
雇用時における性犯罪履歴のチェックの話をすると、こんなご意見を持たれる方もいるでしょう。
「善意でボランティアをやってくれる人を疑うなんて」
「志を持って保育士や教師たちになろうとしてくれる人たちを、犯罪者扱いするなんて」
確かに、保育事業者として、日々保育士たち(特に男性保育士)と接する身からすると、彼らを傷つけてしまうと考えると、胸が張り裂けそうになります。我々の団体で働く男性保育士は、本当に良い人たちで、彼らが犯罪なんて犯すわけない。それは誓って言えます。
しかし、たとえ1000人に1人でも、性犯罪者がいた場合、子どもの人生に与える負の影響は計り知れません。
999のケースで「疑われるのは気持ちの良いものじゃない」と保育士やボランティアの方々に不快感を与えたとしても、1つのケースを見つけられ、子どもの人生を救えたら、どちらを優先すべきでしょうか。
僕は後者だと思います。

政府がすべきこと
亡くなった9歳のリンちゃんは、帰ってきません。しかし、これから一人でも子ども達の犠牲を減らしていくためには?
「日本版DBS」を創っていく他ないと思います。
プライバシーの問題。性犯罪者の更生の問題。様々越えていかねばならない壁はあるでしょう。しかし、子ども達が犠牲になっていくのは、もう我慢できません。
「悲しかったけど、レアケースだよね」で終わらせてはいけません。一刻も早く、実効的な議論を始めなくてはならないのではないでしょうか。

働く保護者必見!仕事と子育ての両立5つのコツ

ベネッセ 教育情報サイト 2017年4月17日

家事、仕事、お子さまの世話……子育てをしながら働く保護者は大変です。やるべきことをこなしながら、毎日をうまく回していきたいですよね。
そこで今回は仕事と子育ての両立をするコツを5つご紹介しましょう。ぜひ参考にしてみてください。

【コツ1】パートナーや家族に上手に頼ろう
子育てと仕事を両立する際には、パートナーや家族の協力が重要になってきます。以下で具体的に見ていきましょう。

パートナーや家族と協力する
パートナーや家族とは、「子育てを最優先する」という共通意識をもっておきましょう。お互いに気兼ねなく協力し合えるようになります。
家事や子育ての分担は「緩やかに」を心がけましょう。分担やスケジュールをがっちり固めてしまうと、そのとおりにいかなかったときにストレスがたまってしまいます。臨機応変にすることがコツです。
またパートナーの職場でも、子育てをしていることに対する理解を得ておくことが望ましいでしょう。たとえばお子さまが突然熱を出したときは、どちらかが有休をとって看病する必要があることが多いかと思います。その際パートナーもスムーズに看病に向かえるよう備えておいてください。

【コツ2】家庭内でルールを作っておく
パートナーや家族と協力する上で、家庭内でのルールを作っておきましょう。臨機応変に対応できるよう役割分担は緩やかにすると言っても、最低限基本のルールは決めておきましょう。曜日ごとに誰が迎えにいくのか、誰に協力を頼むことができるのか、などをパートナーや家族を含め、共有しておくことが大切です。
また、保育園を選ぶ際に通勤ルートと照らし合わせて考える、送迎バスの停留地点に合わせて通勤ルートを調整するなど、小さな工夫も必要です。
特にお子さまが急に体調を崩した場合などは、自分とパートナーどちらが対応しやすいか、話し合っておきましょう。どちらかに負担がいく場合が多いかもしれませんが、午前と午後でそれぞれが半休をとって対応する、もし近くに自分かパートナーの両親などがいる場合は一時的に手伝ってもらうなど、それぞれの家庭環境に合わせた対応の仕方を決めておきましょう。

【コツ3】職場の子育て支援制度を調べてみよう
職場ではさまざまな子育て支援制度が用意されているかと思います。制度は職場によって異なりますが、育児介護休業法では以下のように定められていますので、ぜひ活用してみてください。

育児休業制度
お子さまが1歳(おおよその場合は、1歳半)に達するまでの1年間、育児休業の権利が保障されています。
なお、お子さまの保護者がともに育児休業を取得する場合は、「パパ・ママ育休プラス」と呼ばれ、お子さまが1歳2か月に達するまでの間の1年間が育児休業期間として保障されます。

育児に伴う時短勤務
3歳に達するまでのお子さまを養育する労働者について、短時間勤務(1日原則6時間)の措置が義務づけられています。保育園などの送り迎えやお子さまの育児などでも助かるでしょう。

看護休暇
小学校就学前までのお子さまが1人であれば年5日、2人以上であれば年10日を限度として、看護休暇の付与が義務づけられています。お子さまの急な発熱時にも安心ですよね。
職場の人間関係を良好に保つことも忘れずに
子育てのためにイレギュラーな勤務形態になってしまうと、職場での周囲の視線も気になるかと思います。職場の理解を得るには、日ごろから信頼関係を構築しておくことが大切です。周囲の人たちとコミュニケーションを密にとり、良好な人間関係を保っておきましょう。

【コツ4】民間の家事・子育てサポートサービスを調べてみよう
最近では、家事や子育てをサポートする民間のサービスが多数あります。以下でその一例をご紹介しましょう。

家事サポート
毎日の食事の準備を省力化したいという人は、食材宅配サービスの利用がおすすめです。買い物の手間が省けるほか、決まったメニューに合わせた食材が送られてくるコースでは献立を考える手間も省けます。
また家事代行サービスを利用するのも手です。掃除や洗濯、買い物、料理まで、さまざまな家事を行ってもらえます。

子育てサポート
子育てをサポートするサービスとしては、ベビーシッターが代表的ですよね。
情報収集にあたっては、市町村の情報や公益社団法人全国保育サービス協会に加盟している会社のリストを参照して探すのがおすすめです。なおベビーシッターを利用する際は、ベビーシッターの身分の確認、保育場所の確認、保険の確認なども念入りに行っておきましょう。

【コツ5】公共の子育てサービスを調べてみよう
民間企業だけでなく、市町村などの公共機関でも子育てをサポートするサービスが受けられます。
代表的なサービスとしては、市町村の行う託児サービスが挙げられます。予約、定員制であることが一般的で、託児時間は3時間程度が目安です。
また市町村に登録した保育士が、自宅などでお子さまの世話をしてくれる公共のベビーシッターサービスを利用できる自治体もあります。
なお市町村には子育て相談窓口が設けられていることが多いため、悩みがあれば気軽に相談してみましょう。

自分自身のリフレッシュも大切
子育てと仕事をうまく両立させるためには、自分自身のリフレッシュも大切です。保護者が心身の健康を害してしまっては、すべてが回らなくなってしまいます。
今回ご紹介したように、休日に家族やベビーシッターにお子さまを預けたり、家事代行サービスを使ったりして、ときには自分だけの時間を作るようにしてみてくださいね。