<東京・小平>施設の子を被災地へ 旅行資金を支援

毎日新聞 2017年6月12日

「夏に子どもたちを被災地に連れて行きたいなあ」。児童養護施設で働く職員のネット上のひと言がきっかけで、地元の人たちがオリジナル商品を売って必要な旅費を賄おうという取り組みが、東京都小平市で始まった。これに全面協力するのが「子どもの成長を応援する」との設定のヒーロー「くつべらマン」。関係者は「運動を楽しく盛り上げ、児童養護施設を身近な存在にしたい」と意気込む。
同市の「二葉(ふたば)むさしが丘学園」には、親元で暮らせない子ども約80人が生活する。自立支援・地域連携を担当する職員の竹村雅裕さん(30)は4月、フェイスブックに、夏の行事で「高校生を福島に連れて行きたい」と書き込んだ。東日本大震災の翌年、宮城県気仙沼市を訪れる機会があった。その際、支援に頼らず自分の手で復興を目指す被災者との交流が、施されることに慣れた施設の子の自立を促すのに役立つと実感したからだ。
だが、施設に予算の余裕はない。復興事業の一環で、福島県が教育旅行への補助制度を設けていると聞き相談したが「児童養護施設は学校ではないので適用外」と言われ、諦めかけていた。
それを知って助け舟を出したのが、まちづくり活動などを手掛ける一般社団法人「こだいらまちかどステーション」副理事の北山剛さん(27)。「支援でなく協働」「顔の見える関わり」をコンセプトに、子どもも参加して商品を作って地元で売り、収益を費用に充てる仕組みを考えた。
ただ、商店主らの賛同を得るには趣旨が伝わりやすく、商品が魅力的なことが必要だ。2人は共通の友人の武石和成さん(33)と相談。武石さんが2年前に考案し、ウェブ動画などで活動していた「くつべらマン」を登場させることにした。武石さんは元児童養護施設職員。くつべらには「出発の手助け」の意味を込めたという。
5月末に完成した商品は、くつべらマンのイラストや施設のロゴがプリントされたマシュマロ(6個入り400円)。パッケージには、竹村さんのメッセージと「くつべらマンプロジェクト」の説明を添えた。1袋当たり約200円が寄付になり、1000袋の完売が目標。袋詰め作業には施設の子どもたちも参加する。問い合わせは、こだいらまちかどステーション(090・6045・8901)。【清水健二】

 

日本はいかにして親の子育て負担を減らしているのか?

中国メディア 2017年6月11日

2017年6月9日、中国メディアの新華毎日電訊が、日本ではいかにして親の子育て負担を減らすようにしているかについて紹介する記事を掲載した。
記事は、少子高齢化の進む日本では、政府が出産を奨励しており、親の子育て負担を軽減するための多くの政策があると紹介した。
例えば、学校教育法に基づき3歳から5歳の子供を幼稚園に通わせることができるが、幼稚園は午後早くに終わってしまうため、働く親のために児童福祉法に基づき保育所へ子供を通わせることができると紹介。渋谷区の保育所では、朝7時から夜8時半まで子供を預けておくことができ、遅くなっても時間延長できることや、土曜日でも子供を預けることができるとその利便性を伝えた。
また、保育所がいっぱいのために「待機児童」がいる現実を伝えたが、「それでも子供を保育所に入れるのは比較的容易だ」と紹介。公立保育所が空いていなくても、政府指定の私立保育所を検討できるからだという。また、費用の面でも、世帯収入に応じて決まるほか、企業によっては専用の保育所を設けているところもあると紹介した。
小学校についても、義務教育に関する法律で、小学生の通学距離は4キロまでと定められているため、農村部であっても通学に不便はないと紹介。治安の良さもあって、小学1年生から1人で登下校できるとした。
放課後には、児童福祉法に基づき、児童館などの施設を利用することができるため、保護者の仕事に影響は出ないという。2016年5月1日の時点で、日本全国に2万3619カ所の放課後クラブがあり、登録児童は109万3085人に上る。こうした放課後クラブは無料で利用できるところもあり、時間延長の費用も安く、土曜日も開放しているため、親にとっては非常に便利だと伝えた。
このほか、地方政府は出産祝いや補助金を出しており、1人目の子供を産むと数万円、2人目だと数十万円がもらえ、子供が多いほどもらえる額も大きくなると紹介。しかし幼稚園の費用は子供が多いほど安くなり、一部の大企業では社員の出産を奨励するため、祝い金を出しているところもあると伝えた。(翻訳・編集/山中)

 

いじめ、虐待、DV…“不道徳な行動”の裏にある生存戦略とは―進化生物学で読み解く

ダ・ヴィンチニュース 2017年6月1日

いじめ・児童虐待……人間社会には、目を覆いたくなるような凄惨な事件が相次いでいる。残念なことに未だ解決の兆しが見えないこれらの問題だが、人はどこかでこういったいわゆる「同族殺し」に繋がる行為は人間特有のものだと思ってはいないだろうか。だが、実はそうではないかもしれない……そう綴るのが『いじめは生存戦略だった!? 進化生物学で読み解く生き物たちの不可解な行動の原理』(小松正/秀和システム)である。人間社会の諸問題に、進化生物学からのアプローチを試みよう。
まずいじめについてだが、そもそもいじめとは何だろうか。文部科学省によると、いじめの定義は「当該児童生徒が、一定の人間関係のある者から、心理的、物理的な攻撃を受けたことにより、精神的な苦痛を感じているもの」となっている。決して許されることではないいじめだが、集団を作る生物の間では、実は生じて当然の現象でもあるらしい。群れを作る動物は多くおり、それは生存率を上げるためだったり天敵に狙われにくくするためだったりする。だが、群れを作ることで力の強い個体が力の弱い個体よりも餌や雌を独占するという現象も同時に起こる。こういった状況の中で、自分の餌などを確保するために攻撃性を獲得するのは至極当然であり、そこから仲間同士の攻撃……つまりいじめが発生するのだ。だが、自然界には同時にいじめを抑制するメカニズムも存在する。それが、群れの中における絶対的な序列の存在だ。
ニワトリの群れなど、個体同士の序列がはっきりしている群れではいじめ現象は少なくなる。これは、一度序列が決まると序列の低い個体は高い個体を避ける、つまり争いを回避する行動を取るようになり、また序列が絶対であることから高位の個体はそうでない個体を攻撃する理由もなくなる、つまり仲間同士で攻撃し合う意味がないのだ。だが、人間の集団ではなぜかそうはならない。何がいじめを激しくさせてしまうのかというと、それは競争だ。例えば、チンパンジーでも餌などを理由に競争を行わせると、攻撃性が高まっていく実験結果がある。ちなみに、仲間同士を攻撃する現象が環境の変化により収まった事例もある。群れの上位に位置していた攻撃性の高い雄が伝染病で全滅してしまい、その後、生き残って序列の上位に来た雄は協調的で大人しい個体ばかりとなった。それにより、群れの状況が一変し、群れの若い雄や雌の攻撃性が下がり、また別の群れからやって来た若い雄も攻撃性を示す率はぐっと下がったという。人間の集団でも環境を変えることでいじめへの対策になるのではないかという期待が持たれているようだ。
数ある犯罪の中でも、児童虐待などは家庭という閉鎖空間で起こるため、外部の助けがなかなか得られない点で深刻な問題を抱えていると言えるだろう。これらの行為は、実は進化生物学で説明できるという。人間特有の行為であるように思う児童虐待だが、実は動物界でも起こり得るのだ。育児放棄などは、むしろ日常的に起こっていることだ。動物の育児放棄がどのような状況で行われるかというと、多くは親自身の生存が危うくなった時や、子どもが大怪我をし、その生存が絶望的な場合に親はその子を育てることを放棄し、次の子どもを産むことにシフトする。例えば、ジャイアントパンダは通常1頭または2頭の子を出産するのだが、2頭産まれた際にはより体の大きい1頭しか育てず、小さい方は育てることを放棄されて死んでしまう(飼育下の場合は保護されるため、2頭とも生存できる)。どうして育てないのに2頭を産むのかと言えば、これは体の大きい子どもが何らかの理由で生存できなかった場合、もう1頭を保険とするためだと考えられている。子どもを産む目的はそもそも“自分の遺伝子を残すこと”であるため、何度か出産を繰り返してその中の一部が生き残れば良い……つまりひとつの個体に執着する必要がないのだ。また、子殺しも同様で、自分の遺伝子をより確実に残すために雄は別の雄の子どもを殺すことがある。これは、子どもが居るうちは雌が発情期にならず、かつ巣立ちを待つ余裕が自然界にはないためである。だが、これらはあくまで動物界の話だ。人間には、発達した医療もあれば様々な福祉制度もあるし、最後の手段として施設という手もある。生存の可能性・遺伝子……人間に生まれながら、そんな動物的本能で消されてしまう命が少なくなることを願うばかりである。
文=柚兎