グーグルが認めた「花まる学習会」アプリの力

東洋経済  2017年7月17日

設立から3年、社員数わずか14人。小さなベンチャー企業の作ったスマホアプリが、子ども向け教育アプリで世界トップ5に入る快挙を成し遂げた。
東京大学本郷キャンパスの近くにオフィスを構えるベンチャー「花まるラボ」が作ったのが、「Think! Think! (シンクシンク)」というアプリだ。
米グーグルがアンドロイドスマホ向けアプリを対象に表彰を行う「グーグルプレイアワード」のキッズ部門で今年5月、世界中の候補の中からファイナリストの5つに選ばれた。ユーザーからの評価の高さやダウンロード数の伸び、さらに教育に対する理念などを含めて評価されたという。

大人でも難しい思考力育成ゲーム
シンクシンクは5~10歳の子どもを対象に、1問3分の迷路やパズルといったゲームを解いていくことで、思考力育成を目指す教材だ。アプリ内には40種類・5000題以上が収録されている。
ユーザー数は現在12万人。2016年3月に配信が始まり、最初の1年は月額1600円だったが、今年3月から一律無料化された。
たとえば、「はこになる?」という問題は、画面に表示された展開図が直方体になるかどうかを○か×かで答えるというもの。頭の中で自在に展開図を組み立てられる空間認識力を養う。子どもだけでなく、大人でも思わず考え込んでしまう問題も少なくない。親子で楽しめるアプリといえる。
実は開発元の花まるラボは、学習塾「花まる学習会」の運営企業、こうゆうの子会社だ。塾では「メシが食える大人にする」という教育理念を掲げ、単なる受験のための勉強ではなく、思考力を鍛える教材や授業を展開してきた。創業者の高濱正伸氏が開発した独自教材「なぞぺー」で知られる。
花まるラボの川島慶代表は、東京大学在籍時からアルバイトで学習会にかかわり、2011年にこうゆうに入社。以後、教室での指導と並行してなぞぺーなどの教材改良にも取り組んできた。また、社外の活動として「算数オリンピック」の問題作成・解説にかかわっている。
だが、川島氏はふと考えた。「経済的な理由で学習会に通えない子どもたちにも、学べる機会を提供したい」。2014年、教材開発に特化した組織として花まるラボを設立。無料で、どこでも遊べる、そして紙よりも学習の継続性がありそうだと考え、アプリ開発に乗り出した。
「一度始めたらずっと楽しめる、自己肯定感も育めるアプリを作りたかった」。川島氏は、国内外の児童養護施設で教育に携わった経験もある。そこで感じたのが、教育格差は「意欲の格差」から生まれているということだった。
成功体験を積み上げていけば、意欲も上がっていく――。シンクシンクでは、アプリで遊ぶ子どもたち1人1人のレベルに合った問題を出す。メダルやポイント、ランキングといった仕組みも取り入れることで、子どもたちが「できた!」という感覚を持てるように開発したという。
一方で、こうしたスマホアプリに対しては保護者の間で「ゲームのようにやりすぎてしまうことはないか」という懸念がある。
そこでシンクシンクは1ユーザーのプレイ時間を1日3問、合計10分に制限している。「1日の1%にも満たない時間。短時間で子どもたちも没頭できるし、継続性が高まる」(川島氏)。

鍛えるべき思考力とは?
花まるラボでは鍛えるべき思考力として、5つの要素を上げている。「空間認識」、「平面図形」、「試行錯誤」、「論理」、「数的処理」だ。シンクシンクは、この中でも10歳までに大きく伸ばせるとしている空間認識、平面図形、試行錯誤の3分野を鍛える問題が主だ。
問題の制作にあたっては、まず花まるラボの社員がコンセプトを決め、東大生を中心とする40人のアルバイト学生を中心に、個々の問題作成やデザイン、プログラミングなどを行う。
最も人気があるのは「ラッキーバルーン」というゲーム。矢の方向を想像し、いくつか置かれている風船の中で割れないと思うものを選択する。適切な補助線を引く訓練になるという。2番人気は「とおる?」。提示された立体図形が、壁に空けられた穴に通るかどうかを○か×で答える。
3番人気は「ひとふででんきゅう」だ。電池からすべての電球を一筆書きでつなげられるように指でなぞるというもの。電球が多くなればなるほど、一筆書きの道筋を考えるのに頭を使う。
現在は日本国内が中心だが、海外展開も進めている。タイ・バンコクではアプリを含めた教材を使った教室のフランチャイズを始めたほか、カンボジアでは社員の採用を行い、政府への働きかけなどによってアプリの活用を大きく広めたい考えだ。
グーグルプレイアワードでのノミネートが発表されてからは、就職の応募が増えたほか、企業からの提携の打診なども受けるようになったという。
「2020年には1000万ダウンロードを目指す。教育アプリでのフェイスブックやユーチューブのような存在になりたい」と壮大な野望を掲げる川島氏。盤石な親会社の後ろ盾を背に、猪突猛進を続ける。

 

児童虐待死、自治体が5割検証せず…読売調査

読売新聞  2017年7月16日

全国の都道府県や政令市などが2012~15年度に把握した児童虐待による死亡例255件のうち、自治体が検証を実施したのは5割にとどまることが、読売新聞の調査でわかった。
厚生労働省は児童相談所を設置する全69自治体にすべての死亡事例を検証するよう求めているが、警察など関係機関との情報共有の難しさや職員の不足などから検証が進んでいない実態が明らかになった。厚労省は検証の実施を徹底するため、検証の手順などを示した指針を整備する方針だ。
児童虐待防止法は、国と自治体が重大な虐待事例を検証するよう規定しており、厚労省は11年、自治体にすべての虐待死事例を検証するよう通知した。読売新聞は今年6~7月、これらの69自治体に通知後の検証状況をアンケート調査し、すべての自治体から回答を得た。

 

現役保育士が指摘する、子どもを「叱る」と「怒る」の違い

BEST TIMES  2017年7月16日

叱ると怒るの違い、分かりますか?
ふだんからたくさんの子どもと接している保育士さんは、どんなことに気をつけて子どもと接しているのでしょうか。
子どもたちとの心温まるストーリーが大好評、てぃ先生・著書『ハンバーガグー』より、子どもの接し方を紹介します。
4回目の今回は『子どもが喜ぶ叱り方』です。
この話の前提として、
「叱る」というのは子どものためにするもの。
「怒る」というのは大人のためにするもの。
僕はこう考えています。
子どものために「叱る」のであれば、必要なことだけを伝えてあげれば十分ですよね!
長々とお説教する必要はありません。
例えば、子どもが走ってはいけないところで走っていたら……
「危ないから走らないようにしようね。先生ね、前に転んだことがあるんだけど、とても痛かったよ」
これでいいわけです。
でも、これが「怒る」になると……
「走ったらダメ! さっきも言ったよね!?  何でわかんないの!」
こんな感じかな。たまに見ますよね。公共の場とかでも。

NGワードは「さっきも言ったよね」
特に「さっきも言ったよね!?」というのがナンセンスだと思います。
叱りたいのは《走っていたこと》ですよね?
なのに、いつの間にか《さっきも言ったのに》ということで怒ろうとしています。
これがよくある叱り方のよくない例。叱るではなく、怒るになっちゃってます。
一番いいのは、子どもが何回同じ間違いをしようとも、「そのことについて初めて叱るように」声をかけてあげることです。
たとえ3秒前に同じ間違いをしていたとしても、子どもにとっては「今、そのときにしたこと」なんです。3秒前は関係ないのです。
少し話が逸れましたが、とにかく、
・短く必要なことだけを伝える
・過去の話を出さない
これが大切だと思います。

上手な褒め方とは?
逆に褒めるとき!
このときはもう長々と褒めてあげましょう。例えば、お手伝いをしてくれたときなどは、
「うわー! 助かるなー! 本当にありがとう! とっても嬉しい! お手伝いしてくれて本当にありがとう!」
と、こんな具合でとことん褒めましょう!
このとき、笑顔が重要。うれしいならうれしそうに笑うべきです! 子どもが恥ずかしくなって顔を背けるくらいまで(笑)。
褒める時は過去の話を出していいと思います。
「そういえばさっきもお手伝いしてくれたよね? さっきもうれしかったけど、今もとってもうれしいな! ありがとうね!」
こんなふうに。
叱るときは一瞬! 褒める時は長々と! 褒められる方がうれしいですからね。うれしい気持ちをたくさん感じながら成長してほしいです。(『ハンバーガグー』より構成)