<児童相談所>施設内の虐待144件 14・15年度

毎日新聞 2017年8月19日

69自治体調査 16県市は公表義務守らず
家庭内虐待などで児童福祉施設や里親家庭に保護された児童への虐待が、2014年と15年の両年度に計144件あったことが、児童相談所が設置されている69自治体への取材で分かった。表面化しにくい施設内での虐待は09年度から早期発見の仕組みが制度化され、69の都道府県や政令市などに公表が義務付けられたが、16県市は一度も件数などを公表していないことも判明した。
09年施行の児童福祉法は、都道府県などが毎年度、虐待や対応状況を公表することを規定した。しかし、公表しない自治体もあるため、毎日新聞は児童相談所がある47都道府県▽20政令市▽中核市(神奈川県横須賀市、金沢市)に取材した。
それによると、14年と15年の両年度に児童本人からの届け出や職員などからの通告は計427件あり、14年度は64件、15年度は80件の虐待が認定された。厚生労働省によると、09~13年度は39~87件で推移している。
虐待場所は児童養護施設や児童自立支援施設などの「社会的養護関係施設」98件が最も多く、ファミリーホームを含む「里親」21件▽「障害児施設」20件▽児童相談所などの一時保護先4件▽その他1件だった。
虐待された児童の学齢は福島、新潟、高知、佐賀県を除き回答があり、乳幼児20人▽小学生51人▽中学生53人▽高校生38人▽その他4人--だった。同時に3人以上や不特定多数の児童が虐待されたケースも東京都、愛知県などで9件確認された。虐待の態様(複数回答)は、身体的虐待85件▽心理的虐待34件▽性的虐待28件▽放置(ネグレクト)8件--などだった。
改正児童福祉法は公表方法の明確な基準を示していないが、ホームページに掲載するのが一般的だ。09年の義務化後も一度も虐待件数などを公表していないのは18日現在、青森、岩手、千葉、神奈川、新潟、福井、広島、徳島、香川の9県と札幌、千葉、川崎、横須賀、静岡、堺、金沢の7市。その理由について各自治体は、「公表のルール化の遅れ」(新潟県)▽「有識者会議に個別に報告すれば公表になると位置付けていた」(千葉県、神奈川県)▽「国に報告すれば公表したことになると考えていた」(香川県など)--などと答えた。政令市の多くや中核市は「虐待ケースがゼロなので公表の必要はないと認識していた」(札幌、千葉、川崎など)としている。
改正児童福祉法では、施設の職員や里親家庭などでの虐待を把握した職員らは、児相などの関係機関に通告することが義務付けられた。厚労省は自治体から報告があった件数などを公表していたが、13年度分を最後に公表していない。同省の担当者は「事務作業が滞っているため」としている。【野倉恵】

児童福祉施設や里親家庭などでの虐待事例
・児童指導員が冬、指導の一環として複数の小中学生に「海に入って死んでこい」と近くの海に連れて行き入水させた。たたいたり、蹴ったりもした(中部地方の児童養護施設)
・ドアの開け閉めなどにこだわる小学男児の行為をやめさせようと平手でほおを3回以上たたいた(中部地方の障害児入所施設)
・施設職員が入所中の女子高生の体を触り、複数回性交渉をもった(北海道の児童福祉施設)
・通園先の行事があることを突然言われたとして、里親が怒って里子の幼児の頭を強くたたいた(石川県)

 

「感情」を使う仕事につく人の「心」の守り方

All About 2017年8月18日

「感情」を使う仕事につく人の「心」の守り方
サービス業、営業、教師、医療、介護など、感情を使って人に接する仕事につく人は、ストレスをためやすいものです。息切れせずに仕事を続けていくために、どんなことを気をつけるべきなのでしょうか?

「感情労働」を知っていますか?
あなたの仕事は、「決められた感情」で人に接することを求められる仕事ですか?
たとえばサービス業や営業職の人は、苦手なお客さんにも常ににこやかに対応することが求められます。苦情の対応に追われるコールセンターでは、怒鳴り声にもやさしい声で受容的に対応することが求められます。
教師や保育士もまたしかり。常に「先生」として適切な言葉、表情、態度で子どもたちに接することが求められる仕事です。また、看護師やカウンセラー、ケアワーカーは、専門家として患者や利用者に感情を使って安心を与える仕事です。
このように、「人相手」の仕事につく人の多くが、決められた感情の管理を求められ、こうした規範的な感情を商品価値として提供する仕事を「感情労働」といいます。「肉体労働」や「頭脳労働」は昔からよく知られる言葉ですが、「感情労働」は近年注目されてきた新しい概念です。

仕事に熱心なあまり、燃えつきてしまう人も
感情労働は、とてもストレスフルな仕事です。
不快なこと、失礼なことを言われたら、つい嫌な気持ちが顔に出てしまうのが人情ですが、感情労働においては、個人的な感情を仕事に反映させないように、セーブすることが求められます。個人的な感情を表に出さずに、どんな相手にでも同じように接することが求められたりします。
こうした仕事の顔は、プライベートの場でも求められることがあります。休日でも、「先生なんですね」と言われれば、それらしく行動しなければと感じたり、「看護師だから親切でいなくては」「ケアワーカーだから優しくなければ」というように、周囲も本人も、仕事の顔は実際の本人と裏表なく一致しているべきだと、考えやすいものです。
そのため、感情労働につく人は精神的に消耗しやすいのです。とくに、使命感がとても強く、ひたむきな気持ちで仕事をしている人ほど、突然ポキッと心が折れてしまうような虚無感に襲われることがあります。これを「バーンアウト」(燃えつき症候群)と言います。
バーンアウトに陥ると、突然仕事にやりがいを見いだせなくなり、人が変わったように冷淡な対応をするようになったりします。これは、いつも決められた感情で仕事をしなければと頑張りすぎて、情緒が消耗してしまった結果です。「こうあらねばらない」という仕事上の「ペルソナ」(仮面)に縛られすぎてしまう人ほど、バーンアウトするリスクを抱えているのです。

感情労働者のバーンアウトを防ぐには?
とはいえ、感情労働は、やりがいのある仕事です。洗練された笑顔は人を幸せな気持ちにさせますし、真摯な対応は受け手を安心させ、生きる力を与えることができます。
そんな仕事にやりがいを持つ人のなかには、仕事と個人を分けて考えることができず、仕事にのめり込んでいく人が少なくありません。当面はやりがいと使命感で高揚し、仕事に邁進できても、休みなくその状態を続けると、心のエネルギーが失われ、燃えつきてしまいます。その結果、出勤することもできなくなり、好きな仕事をあきらめてしまう人もいます。
そのため、感情労働につく人は仕事にかける思いと同じくらい、仕事に打ち込む時間や気持ちの込め方に制限をかけることも意識し、オンとオフのメリハリをつける必要があるのです。
たとえば、「ここまでは頑張るけれど、ここから先はできない」という限界を知っておくこともその一つ。限界を理解すれば、仕事の物理的な負担、精神的な負担を1人で抱え込むリスクを減らすことができます。
また、仕事中は気持ちを込めて対応しても、仕事が終わったら意識を切り替えて、自分の時間を守ること。「あのことはまた明日、仕事中に考えればいい」というように、ある程度割り切って考えることが必要になることもあります。また、休日には勉強会や研修会など、自己研鑽にばかり時間を費やすのではなく、趣味や気晴らし、ムダ話の時間も大事にすることです。

「仕事の私」のイメージは私の全部ではない
また、仕事では「清楚なお姉さん」「白衣の天使」「みんなのお母さん」といった理想的なペルソナがつきまとっていても、そのイメージが必ずしも「自分自身」であるわけではありません。わがままな顔や冷酷な顔、なまけ者の顔、したたかな顔など、いろいろな側面を持っているのが人間です。
期待される職業上のイメージと自分自身を一体化させねばならないと頑張ってしまう人ほど、職業上のペルソナに合わない自分自身の「負の側面」が許せなくなってしまうものです。すると、「私は○○のプロなのだから、いつでも○○でなければならない」という思い込みが自分を縛り、追いつめてしまいます。
感情労働を選ぶ人の多くは、人間が大好きで、感情が豊かな人だと思います。それだけに、いつも笑顔で懸命に人に尽くしてしまい、知らず知らずのうちに疲れを溜めてしまうのでしょう。
仕事は長く続けていくことに意味があります。せっかく選んだ適職をバーンアウトで失わないように、また労働の価値である感情を守るためにも、仕事とプライベートとの時間的な切り分けをし、「プロはこうあらねばならない」という職業上のペルソナにこだわりすぎないことも必要なテクニックになってきます。感情労働にやりがいを覚えている人ほど、このことを意識していく必要があるのだと思います。
大美賀 直子

 

貧困から抜け出せない外国人労働者の2世たち「16歳から夜の店で働くのがフツー、10代で母になるコも」

週刊SPA! 2017年8月20日

貧困から抜け出せない外国人労働者の2世たち
厚生労働省の発表によると、日本で働く外国人労働者の数は年々増加し、昨年初めて100万人を突破。少子高齢化による労働人口不足を外国人で補おうとする構図だが、安易に推し進めることで新たな貧困が生まれているのも事実だ。
「低賃金で働く外国人労働者が工場近辺の団地などに集住。日本で生まれた子供たちに高い教育を受けさせることができず、2世、3世までもが貧困から抜け出せなくなっている地域があります」
そう話すのは、国内外で若者文化を撮り続けるカメラマンの福持英助氏だ。彼がレンズを向けるのは神奈川県平塚市。平塚といえば、戦後に戦災復興都市の指定を受け、自動車関連をはじめ工業都市として発展した地域である。現在でも工業団地が点在し、多くの外国人労働者が生活を送っているという。
そもそも福持氏がこの地で生活する外国人労働者の2世、3世を撮影するようになったのは数年前のこと。湘南界隈の夜の街で若者たちの姿にカメラを向けるうちに、“ハーフ”のコが多いことに気づいたという。
「話を聞けば、みな労働者として日本にやってきた外国人の子供たちでした。ブラジル、フィリピン、タイ、カンボジア、ベトナム、中国……親の国籍はそれぞれバラバラ。本人たちは総じて陽気でノリがいいんですが、みな決して裕福でないのは共通しています」
彼らが集住するのは工業地帯に隣接する団地群。なかでも平塚駅から5kmほど離れた横内団地は、全住民の20%弱を外国人が占めている有数の外国人タウンである。さっそく現地へと足を運んだ。
「この団地に長年住んでるけど、もともと外国人は少なくなかったからね。その頃から騒音トラブルとかケンカはたまにあったんだよ」
まず話を聞いたのは、この団地に20年住んでいるという相田正さん(仮名・61歳)。そもそもこの地に外国人が増え始めたのは’80年代後半のこと。自治体によるインドシナ難民支援で、ベトナム、カンボジアなど東南アジアから難民が移り住んできたのがきっかけだ。その後、あらゆる国から難民申請者や技能実習生が集まり、日本人との結婚、労働力としての定住申請などを経て多くの外国人が住み着くようになった。
「ただ、彼らの子供が増えだしてからのほうが正直言って治安はよくないよ」(相田さん)
平塚駅周辺で年に一度行われる七夕まつりの際は、毎年若者同士の大規模な諍いが起きているという。前出の福持氏はこう語る。
「もちろん外国人のコばかりではありませんが、正直写真撮影できないような“危険なヤツ”も多い。地元の日本人たちも警察官たちも、見て見ぬふりしている状態です。彼らは夜な夜なクラブに集まって騒いでいるんですが、そこで黒い人物たちとのつながりができて犯罪に手を染めてしまうヤツもなかにはいます」
この地に通って3日目、ようやくこの団地で育った“2世”の若者に話を聞くことができた。
「親父がブラジル人で母が日本人。もう離婚して母はいないんですが、親父と15歳の妹と3人で住んでます。僕と妹は国籍も日本だし、日本にしか住んだことがないです。今20歳で、仕事は高校出てから自動車工場のライン工。以前は親父も近くの工場で働いていたんですけど、目を悪くしてからは知り合いのブラジル料理店で働いています。同世代のハーフでもココから出て行くヤツもいますけど、結構残ってますね。俺と同じように工場で働いてるヤツもいるし、車のディーラーやってるヤツもいるし、クラブのイベント仕切ってるヤツもいる。同い年で子供がいるヤツも少なくない。なんつうか早いんですよ、サイクルが(笑)。まぁ確かにカネはないヤツらばっかですけど……ハーフも純日本人も関係なく、先輩後輩含めみんな仲いいですよ」
もうひとり、この地で育ったフィリピン人の母(父は日本人)をもつ18歳の女性にも話を聞いた。
「私もそうだったけど、高校いかずにバイトしたり、16~17から夜の店で働いてるコは多いかな。でも、それが別にフツーみたいな。夜、子供を同じ団地の親に預けて働いてるコもいるよ」
もうひとつ、貧困から抜け出せない理由がここにある。古くから平塚駅西口にはピンサロが密集するなど、性風俗文化が根づいていることだ。福持氏が続ける。
「外国人労働者の娘たちで、18歳未満の“アンダーキャバクラ”で働くケースもよく聞きます。また、接客業が苦手な女のコが簡単に“ウリ”に手を出すことも。結果として高校に進学せず、10代で母になるコも多いため貧困から抜け出せなくなっているんです」
こうした負のスパイラルは、なにも平塚に限ったことではない。
「神奈川県内だけでも藤沢や大和など、こうした貧困を抱えた外国人集住エリアはいくつかあります。これらの地域にも撮影に行くのですが、どこも貧困と同様に治安の悪化が問題視されています」
ほかにも、静岡県浜松市、群馬県太田市などもこうした問題が顕在化しているという。移民の受け入れを行っていない日本だが、労働人口が減少する日本にとって外国人労働者の需要は今後も増えていくばかりだろう。だが、そんななかで低賃金で働かされ異国の地で貧困に陥る彼ら、その2世、3世たちは、この国の新たな“被害者”といえるのかもしれない……。