「子供の前でDV」急増…同じことを、自分の子どもの前で繰り返すおそれ

読売新聞(ヨミドクター) 2017年9月21日

警察から児童相談所への児童虐待の通告数が、半年間で初めて3万人を超えた。最も多かったのは、心理的虐待の一つで、子どもの目の前で親が配偶者に暴力をふるう「面前DV(ドメスティック・バイオレンス)」。子どもにとって深い心の傷になるとされ、専門家は「深刻な児童虐待で、対策を検討する必要がある」と指摘している。
警察庁によると、今年上半期(1~6月)に、警察が児相に通告した18歳未満の子ども3万262人のうち、最も多かったのが心理的虐待の2万1406人。このうち6割を超える1万3859人は、面前DVの被害者だった。
面前DVは2004年に改正された児童虐待防止法で、心理的虐待として認定された。統計を取り始めた12年上半期は2434人だったが、5年で5倍以上に増えた。

他人の表情を読みづらくなり、対人関係に支障も…
NPO法人「サバイバルネット・ライフ」(栃木県小山市)は、DV被害に遭った母親と一緒に逃げ込んできた子どもたちの「居場所作り」に取り組んでいる。仲村久代理事長によると、面前DVに遭った子どもは、「自分は生まれてこなければよかった」と自己否定したり、壁に頭を打ちつけるなどの自傷行為に走ったりすることがある。ケアを受けないまま大人になると、同じことを自分の子どもの前で繰り返すおそれがあるという。
仲村理事長は「DV防止法は、大人を被害者と位置付け、子どもは同伴者扱い。面前DVで心に傷を負った子どもたちの支援が必要だ」と話す。
16年の全国のDV被害は過去最多の6万9908件に上った。幼少期に親などのDVを目撃し続けると、脳の視覚野が萎縮(いしゅく)し、他人の表情を読みづらくなったり、対人関係に支障をきたしたりするおそれがあるとする研究報告もある。海外では、カウンセリングやグループ討論などDV加害者への矯正プログラムを導入している国もある。
児童虐待防止協会理事長の津崎哲郎・関西大客員教授(児童福祉論)は、「面前DVの被害者に対しては、児相は通告を受けても有効な支援策を持っていないのが現状だ」と指摘。「関係機関は統計を重く受け止め、外国で進められているDV加害者への矯正プログラムを導入するなど、抜本的な対策の検討を進めるべきだ」と求めている。

 

給付型奨学金2500人採用 29年度先行分、申請延長が奏功

産経新聞 2017年9月18日

平成29年度に初めて実施された返還不要の給付型奨学金を日本学生支援機構に申し込み、採用された大学生らが今月11日時点で936校の2468人に上ったことが17日、分かった。書類の不備などで保留となっている約40人も今後採用される可能性があるという。文部科学省幹部は「募集当初は学生が大学などへの入学手続きで多忙だったため申請は伸び悩んだが、申請期間を延ばしたことで件数も増えた」としている。
給付型奨学金の導入は改正日本学生支援機構法が3月に成立したことに伴う措置。大学や短大などに今春進学、進級した2800人を対象として29年度に先行実施し、30年度からは約2万人にまで拡大する。
29年度は、児童養護施設や生活保護世帯出身者、私立大に自宅以外から通う住民税非課税世帯の人ら経済的に困窮し、高校時代の成績や学習意欲の高い人について進学先の大学が機構に推薦。国公立大は月3万円、私立大は4万円が給付される。
日本学生支援機構は5月25日を推薦期限としていたが、申し込みが1500人台にとどまっており、申し込みの機会を十分確保するため8月4日まで延長を決定。給付される可能性がある学生への通知や、大学などへの周知活動を行っていた。
給付型奨学金をめぐっては、政府が今月に初会合を開いた「人生100年時代構想会議」で、大学教育の機会均等に向け、給付型奨学金の拡充と、授業料の減免措置強化の2案を軸に検討する方針。

 

 

保育所や幼稚園の先生が知っておきたい、発達が気になる子の「感覚統合」とは?

ダ・ヴィンチニュース 2017年9月22日

このところ「発達障害」が話題になっているせいか、ちょっと気になる点があるとすぐ「アスペルガー症候群」や「ADHD」などに結びつける傾向がある。だが、特に診断名のつかない「グレーゾーン」という領域があり、「支援が必要な子供」とは見なされないまでも、対人面のトラブルや集団へのなじみにくさなど気になる様子が見られるケースがあるのをご存じだろうか? 実際、そのゾーンにあたる子供こそ数が多く、近年は増加傾向。そうした子の多くが「感覚」の使い方につまずきがあり、適応力(その場、その場の状況に合わせる力)に未発達やゆがみが生じてしまっているという状況なのだという。
適応力の育ちというのは、もともと「理性・思考力・意欲」を司る脳の前頭葉に由来する一面だが、そうした脳の機能を十分に活性化するのに必要なのが「物質的栄養」と「適切な感覚情報」。実は最近の子供は木登りや砂遊び、ボール遊びなどの外遊びをしなくなったことで感覚刺激が乏しくなり、脳の機能が十分に活性化されていない状況になっているようなのだ。その結果、脳の中に流れ込んでくるさまざまな感覚情報を整理できなくなってしまい、適応力につまずきが出てしまう(図1)。
なお本書は「感覚統合の基本を知る」→「ありがちなケースごとに行動の原因を考える」(例:着替えが上手く出来ない→ボディ・イメージの未発達&平衡感覚の低反応)」→「現職保育士さんが教える感覚遊びをやってみよう」の3ステップでこうした感覚統合への理解を促してくれる。基礎から応用までわかりやすく構成されているので、順をおって読み進めていけばかなりのヒントになるはずだ。
ちなみにステップ3の感覚遊びには、道具を使うものもあるが、手をつないで大人の身体をよじのぼってでんぐり返しをしたり、膝にのせてドライブごっこをしたりと、親子の触れ合い遊びも多数。わらべうたで手遊びなど、昔からの遊びに感覚を育む知恵が生きていたことを知るのも、新鮮な驚きだ。

感覚統合のつまずきはどんな適応力のつまずきとして表れるのだろうか?
問題は、どうすればその感覚統合のつまずきを改善できるのか。そこで参考にしたいのが『保育者が知っておきたい 発達が気になる子の感覚統合』(木村順:著、小黒早苗:協力/学研プラス)。保育者とはズバリ、保育園や幼稚園の先生のことで、いってみれば専門家向けの指南書なのだが、その実践力は子供に育てにくさを感じるママの強い味方になるだろう。
本書によれば、感覚統合には「触覚」「平衡感覚」「固有覚」「ボディ・イメージ」の観点があり、たとえば絵を描いたりする時、すぐ机に突っ伏してしまう子は、「やる気がない」のではなく、平衡感覚のうちの脊髄系がうまく働かず身体の軸を維持しづらくなっているかもしれない、とのこと。こうした知識を得ると、子供の育てにくさの捉え方に新しい視点が生まれてこないだろうか。

 

中学生がメルカリでウイルス販売? 報道から見えない「警察」と「メルカリ」の問題

ビジネス+IT 2017年9月19日

中学生がメルカリを利用して販売したのは、果たして「ウイルス」なのか(cgeorgejmclittle – Fotolia)
9月5日、中学生がフリマアプリ『メルカリ』でウイルスを販売したとして、奈良県警がその中学生を児童相談所に通告すると報道した。多くのメディアは、「中学生がウイルスを作った」「メルカリがウイルス販売など犯罪に使われた」といった視点で事件を取り上げていたが、詳しく調べると話はそんな単純な問題ではないことがわかる。そもそも中学生が販売したのは本当にウイルスと呼べるものだったのだろうか。

中学1年生がメルカリでウイルス情報提供、購入した少年らも送検
まず簡単に事件を整理しておこう。
奈良県警がメルカリでウイルスをダウンロードする情報が売りに出されていたことを発見した。調べを進めたところ、出品したのは大阪の中学1年生男子。時期は2017年3月ごろだという。さらに14歳から19歳までの少年4人がこの情報を買い、この中学生に代金をポイントで支払っていたこともわかった。
警察はこの行為に対して、刑法に規定される不正指令電磁的記録に関する罪(刑法第19章の2:第168条の2)に該当するとして、児童相談所に通告することを決めた。告発、送検ではないのは中学生が当時14歳未満という刑事処分受けない年齢だったからだ。刑法第168条は、いわゆる「ウイルス作成罪」と呼ばれているもので、正当な理由なく利用者が意図しない動作をするソフトウェアを作ったり提供したり(第168条の2)、あるいは取得・保管したり(第168条の3)することを禁止する法律だ。
取得も禁止されているので、この中学生から情報を買った少年4人(いずれも14歳以上)もウイルス取得の罪で書類送検されることとなった。
以上が事件のあらましだが、「ウイルス作成罪」(作成に限定しないので、この呼び名は適切でないという議論もある)は、2011年に刑法を改正して導入されたものだ。10年ほど前、Winny事件(P2P技術を使ったファイル共有ソフトが著作権コンテンツの不正利用などに使われた事件)をきっかけに生まれたもので、議論段階から、ウイルスの定義が明確でないこと、ソフトウェア開発そのものを委縮させかねない(研究目的やセキュリティベンダーの解析なども制限される)として、運用は慎重に行わなければならないと言われている法律だ。
この件も刑法168条の適用は適切だったといえるのだろうか。問題点はなかったのか。新聞報道の調査や奈良県警、メルカリへのヒアリングから得られた情報で整理してみたい。

いたずらアプリはウイルスと呼んでいいのか?
まず、当該アプリはウイルスだったのかという問題がある。NHKや新聞によれば、このアプリは、インストールすると人の顔写真のアイコンが大量に表示されスマートフォンを使いにくくするものと報道されている。知っている人もいるかもしれないが、このアプリは、iPhoneのプロファイルを書き換えることで「野獣先輩」(ネット上の有名人)の顔写真を表示するいたずらアプリだ。削除はデバイスの設定画面からはできないようになっているが、デバッグツールをインストールしたPCに接続すれば可能だ。
アプリと表現したが、プロファイルの書き換えなので、Jailbreak(日本では「脱獄」とも言われる、ユーザー権限の制限を不正に解除すること)は必須ではない。ただし、App Store以外のサイトから当該ファイルをダウンロードするため、Jailbreakした端末のほうが確実だ。
新聞など見出しを見ると、中学生がこのアプリを作ったようにも思える記述だが、もともとネット上に存在していたいたずらアプリである。中学生は、ダウンロードできるURLの情報も、ネット上で知り合った別の人から教えてもらったという。
つまり、中学生は人から聞いた情報をメルカリに出品して、情報を教える代わりにポイントを得ていたことになる。提供されたURLは、野良アプリ等のダウンロードサイトであり、アクセスするとマルウェアを仕込まれるような攻撃サイトではないと思われる。しかも、情報購入者は自らアクセスし、ダウンロードしたうえで自分でインストールしなければ起動しない。
これを「利用者が意図しない不正な動作をする」ウイルスと呼んでいいのだろうか。報道後、専門家の一部はこの点を指摘し、県警の措置を疑問視している。

法執行機関に求められる高度な対応
奈良県警は、いたずらアプリ以外に、ウイルスと合理的に呼べるようなアプリやソフトウェアを確認していたのだろうか。この質問に対して奈良県警は「捜査にかかわることなので公表できない」と明確な返事を避けている。
おそらく、県警が行っているサイバーパトロールで、この中学生の出品を発見し、捜査を進めたものと思われる。報道では「不正指令電磁的記録に関する罪」(刑法第168条)を根拠としているが、アプリの内容や大元の開発者(作成した張本人)ではなく、ダウンロードさせる情報をやりとりした中学生を捜査対象としている。
警察に問題があるとすれば、第168条の運用が適正だったかという点だろう。確かに第168条の2には、作成だけでなく提供も明記されているため、自分が開発したかどうかは関係ない。しかし、もしのこのアプリが問題ならば、大元の開発者を捜査しなくていいのか。また、アプリをダウンロードさせていたサイトを取り締まるべきではないのか(捜査の段階でこのサイトは閉じられたという)。情報を提供しただけの末端を取り締まっても、同様な出品やサイトはなくならない。
とはいうものの、中学生は「お小遣がほしかった」と述べている(誘導や強制がないとして)。実際にポイントを取得して別のアプリを購入したりもしている。この点から、中学生の行動は褒められたものではない。年齢の問題もあり、逮捕や送検ではなく児相への通告という措置の一定の合理性は認められる。
ただし、これは結果論であって、この中学生が14歳以上だった場合でも、刑法168条の適用はもっと慎重に行うべきだった。書類送検された購入者も同様だ(こちらについては検察の適正な対処が望まれる)。今回のアプリ程度のグレーなものをウイルスとする明確な根拠と証拠が必要であり、類似行為の取り締まりへの影響も考えなければならない。感染機能がなく被害の実態がないのに、いたずらアプリをネットでやりとりしただけで検挙・送検は慎重に行うべきだ。
この事件のあと、徳島県警がチケット詐欺で21歳の専門学校生を誤認逮捕・勾留するという事件も起こった。巧妙だったとはいえ、犯人のなりすましを見抜けなかったようだ。こちらの問題は、警察捜査の甘さ(郵便局の配送証明でわかる程度の矛盾を捜査しなかった)に加え、勾留を認めた裁判所も非難されなければならない。

メルカリは個別対応より包括的な見直しが必要か
メルカリは、警察からの連絡を受け、利用規約(利用規約第9条2項)に則り中学生のアカウントを削除している。当該条項では、出品禁止商品として「(8)コンピューターウイルスを含むデジタルコンテンツ」を定めている。ここでも、いたずらアプリを「ウイルス」と認定した根拠が問題になる可能性がある。もちろんその解釈が妥当とする意見もあるだろう。公序良俗に反するコンテンツという見方も不可能ではない。結果として退会(アカウント削除)が不合理とも言いきれない。
もう1つは、この問題を契機に、あらためてメルカリのサービスに対する問題点を指摘する声も聞かれる。不正行為やグレーな商品取引の温床となっているという声だ。
この批判は、今回のウイルスの問題とは直接関係ない。メルカリとしては、違法出品や不正な取引についてパトロール強化、システム強化を表明している。大量の出品情報の全数チェックはできないが、問題を発見、あるいは通報され確認しだい、出品やアカウントの削除を行っている。メルカリにとっては、不正に対して正しく対処したのに「誤爆」されたようなものかもしれない。
だとしても、結果としてそれらの施策や効果が見えてこない。仮にメルカリが100%責を負うべき問題でなくても、サービスにネガティブな意見がでてくるのは、一般的な上場企業のコンプライアンスとして適正かつ十分といえるのか、という議論は必要だろう。