女児に面会「1回だけ」 横浜市放置死

カナロコ by 神奈川新聞 2018年1月13日

 横浜市南区で起きた生後6カ月の女児の遺棄致死事件で、同市は12日、逮捕された母親(19)に対して妊娠中から度々接触を試みたものの、女児には1回しか会えていなかったことを明らかにした。市こども青少年局は「支援を試みたが最悪の結果になってしまった。市としても対応を検証する」とし、外部有識者による検証を行う方針。
 同局と南区こども家庭支援課によると、母親が10代だったことや家庭状況などから支援が必要な特定妊婦として、妊娠中から電話連絡し、妊婦健診を受ける病院と連絡を取ったりするなどの対応をしてきた。
 女児についても生後2カ月ごろの昨年1月19日に、虐待につながるおそれがある要保護児童と認定した。
 市職員が女児に会ったのは生後4カ月ごろの1回のみで、親族宅で母親、親族とともに面会。女児にも母親にも異常は見られず「緊急度が高いとの判断にはならなかった」(同局)という。母親とは区役所の4カ月健診の受診を約束したが、姿を現さなかった。
 同区は産後だけでも母親に十数回の電話連絡のほか、抜き打ちを含めた家庭訪問を5回行ったが、不在やキャンセルが相次ぎ、十分に接触できなかった。児童相談所(児相)との連携はしていなかった。
 市は「重篤事例を専門的に扱う児相にアドバイスを求めるなどの方法もあったかもしれない」などとし、児相と区役所の連携のあり方などについても再検討するという。 

児童養護施設で成人式 善意の振り袖「一人じゃないよ」
 
朝日新聞デジタル 2018年1月15日

 東京都内のある児童養護施設で14日、出身者の成人を祝う会が開かれた。施設は原則18歳で出なければならず、退所後の社会的な支援も十分ではない。「ひとりじゃないよ」。そう伝えるため、当時の理事長の女性らが4年前に始めた。善意で寄せられた振り袖に身を包んだ新成人の門出を、職員や先輩が祝った。
 施設の2階にあるホール。今年成人式を迎えた施設出身の男女7人が次々とやって来た。職員や先輩から歓声が上がる。「今、何してるの?」。話題はそれぞれの近況に移った。バイト、大学、就職、結婚……久しぶりの再会に話は盛り上がった。
 児童福祉法上、施設で暮らせるのは原則18歳まで。退所後は親に頼れず、生活が行き詰まる子もいる。未成年者は保護者の同意がなければ賃貸住宅や携帯電話の契約もできない。
 「退所後もケアを続けよう」と、施設を運営する社会福祉法人の当時の理事長、坂本輝子さん(64)が呼びかけ、「成人を祝う会」を始めた。今年で5回目だ。
 新成人の着付けやヘアメイクはボランティアの女性6人が担った。振り袖は坂本さんの知人らから施設に無償で提供されたものだ。
 施設を出た後、アルバイトで生計を立てて一人暮らしをする女性(20)は「晴れ着を着たかった。自分で借りるお金がなかったからうれしい」と喜んだ。

FPが考える、社会全体で子育てを支援するには

ベネッセ 教育情報サイト 2018年1月14日

 少子化対策が必要と言われ始めて20年程度経過していますが、なかなか成果が現れない難しい課題です。少子化が止まらない要因は複数考えられますが、女性の社会進出が進む一方で子育てしながら働く環境が整わないことや子育て・教育にお金がかかりすぎる点などがあげられます。
 そのような中で2015年4月にスタートした「子ども・子育て支援新制度」は、消費税率引き上げによる増収分を活かして、社会全体で子どもの育ち・子育てを支えようというものです。
スタートして2年が経過しましたが、具体的な施策は緒についたばかりです。国の施策には予算が関わるので実行まで数年かかることは珍しくありませんが、子どもを持つ当事者は待ったなしの状況です。少しでも早く効果的な施策が実行されることが重要です。

社会全体で子育てを支援する意味–格差の連鎖を断ち切る
 社会全体で子どもの育ち・子育てを支えるという施策には、保護者の収入や生育環境によって子どもが教育を受ける機会に差が生じている、という格差の連鎖を断ち切ろうという意味が含まれています。
 公立高校授業料の実質無償化はすでに実施されており、2017年度現在、収入制限はありますが、私立高校に進学した場合でも授業料相当分の負担軽減が実施されています。
 大学や専門学校に進学したい場合、日本学生支援機構の貸与型奨学金の内、低所得世帯の生徒における第一種奨学金学力基準が実質的に撤廃され、2017年度進学予定者の予約採用から実施されています。2017年度から給付型奨学金も十分な内容とはいえないまでも実施されました。
 低年齢の子どもへの施策はどうでしょうか。「みんなが、子育てしやすい国へ。すくすくジャパン!」(内閣府、厚生労働省、文部科学省)から2017年度の施策を抜粋してみました。

内閣府の施策–企業主導型保育事業
 企業内保育園はこれまでも大企業を中心に存在していましたが、「企業主導型保育事業」は、複数の事業者が共同で設置することができ、地域住民の子どもも受け入れることで、国の助成を受けられる事業です。
 夫婦ともに働き、子どもを保育園に預けたいと思ったとき、自分が働いている企業が設置した保育園に子どもを預けられれば、安心して働くことができます。保育園へ迎えに行く時間を心配することも少なくなります。
 2016年度からこの制度が始まりましたが、同年11月時点で305事業者の助成が決定しました。さらに充実していくことが期待されます。

厚生労働省の施策–待機児童解消策の推進
 保育園の待機児童の課題は、働く親にとっては切実な課題です。賃貸方式を活用した保育園、小規模保育事業所整備や保育士の確保などの施策を進めています。地域によってばらつきはありますが、2017年度現在、都市部では待機児童解消の目標は達成されていないことから、同年6月、首相は、来年度から「子育て安心プラン」に取り組み、遅くても3年後までに待機児童を解消すると発表しました。

文部科学省の施策–幼児教育の段階的無償化
 公立の小学校、中学校は義務教育なので、授業料などはかかりません。しかし、幼稚園や高校でかかる費用については、自己負担が原則でした。高校の授業料の無償化に続き、幼稚園の費用も段階的に無償化が進められています。各自治体によりますが、世帯の収入とひとり親世帯・多子世帯によって区分化して補助金額を定めています。

民間企業の力にも期待
 2015年4月「生活困窮者自立支援法」が施行され、生活困窮家庭に対する学習支援事業、いわゆる「無料塾」をNPO法人などが運営する場合、国の補助金が交付されています。「無料塾」は全国に広がりを見せていて生活困窮家庭の子どもたちが心身ともに安定できる場としても期待したいと思います。
 従来からある「新聞奨学生」のように、民間企業(飲食業、介護事業など)が独自の奨学金を学生に貸与し、学生はアルバイトとして働きながら通学するシステムを取り入れる動きもあります。民間企業の多様な発想によって、学生が教育を受けられる機会がさらに広がってほしいと思います。
 幼児・学校教育の費用負担が軽くなることや、夫婦ともに働きやすい環境を確保することも、子どもの教育格差を埋める手段の一つです。
 誰もが自分が望む教育を受ける機会が与えられる社会が実現することは、安心して子どもを産み育てられることにつながり、それが少子化対策につながるのではないでしょうか。