「心配でたまらぬ」 親から離れぬ児童も

MSN産経ニュース 2014年1月8日

 「大迷惑」「心配でたまらない」-。川崎市多摩区宿河原の無職、杉本裕太容疑者(20)=強盗や集団強姦(ごうかん)などの容疑で逮捕=の逃走劇から一夜明けた8日も、市内では多くの警察官が捜索活動を続けたり街頭や駅頭に立ったりするなど厳戒態勢が続いた。杉本容疑者の実家近辺の住民からは「早く出頭して」と訴える声も上がった。
 横浜地検川崎支部近くの川崎市立宮前小学校(川崎区)では、8日午前7時半過ぎから教職員や川崎署員、地域のボランティアが見守る中、保護者に付き添われた児童が次々に登校。ものものしい雰囲気に、なかなか母親から離れようとしない児童の姿もあった。
 小学1年生の孫を校門まで送った近くの無職女性(74)は、「今日は(自分の)娘に頼まれたので特別に来た。お迎えも行かなきゃ。1人の人間のせいで大迷惑」と憤慨。出勤前に小学1年生の娘を送った会社員男性(45)も、「不必要に動揺させないよう、子供にはあまり事件の話をしていないが、本当は心配でたまらない」と不安を隠せない様子だった。
 市立富士見中学校(同区)でも校内放送で事件の状況を流し、対策を呼びかけた。同校の江尻孝美校長(54)は「帰りは集団下校の措置を取り、子供たちの安全が確認できるまでは当分この状態が続く」と話す。
 川崎市教委も対応に追われた。事件発生直後から「子供を1人で登下校させない」「人通りの多い場所を歩く」などの注意喚起を市内の小中学校などに呼びかけた。市教委指導課の担当者は「明日以降も今日と同じ対応を各校にお願いしたい。とにかく早く犯人が捕まってほしい」と切望する。
 一方、杉本容疑者の実家に近い市立稲田小学校(多摩区)でも同日正午、集団下校が行われた。防犯指導員として下校を見守った男性(72)は、「長年ボランティアをしているがこんな事態は初めて。犯人が捕まるまで登下校の時間は立ち続ける覚悟だ」と話す。
 杉本容疑者の実家近くで理容店を営む女性は「(杉本容疑者が)小学校高学年のころ、一度散髪に来た。手配写真を見てあまりに顔が変わっていて驚いた。早く出頭してほしい」。杉本容疑者の親族の女性は「話はできません」と言葉少なだった。

中福祉実現には中負担をお願いせざるえない=消費税10%で麻生財務相

ロイター 2014年 01月 7日

 麻生太郎財務相は7日、閣議後の会見で、2015年10月に法律で予定される消費税率10%への引き上げの意義について、中福祉を実現するには中負担をお願いせざるを得ないと述べた。最終判断時期については予算編成に支障を与えない年末が望ましいとし、4月に8%に引き上げた後の経済成長が最終判断の大きなポイントになると語った。
 今年の経済運営方針について麻生財務相は「20年続いたデフレ不況から1年やそこらで解消できるはずもなく、デフレ不況脱出には、数年かかる覚悟でスタートした」と指摘。引き続き「経済成長をきちんとやるかたわら、財政再建を頭に置きながら進める方針は変わらない」と抱負を語った。そのうえで、13年度補正予算案と14年度予算案を年度内に成立させ、4月の消費増税の移行を円滑に進めるとした。
 消費税10%の判断時期については、15年度予算編成に支障がないようにするには「技術的には12月までに上げる覚悟をしておかないと困る」と指摘。経済情勢の判断では「消費増税後に7─9月期GDPで(成長を)取り戻せるかが出ないと(判断)は難しい」とも語り、あらためて7─9月期GDPが明らかになる年末が判断時期になるとした。判断のポイントでは、「(増税後の)4月以降の経済成長が大きなポイントになる」と語った。
 そのうえで、財務相は、政府が消費税10%を前提に社会保障充実の姿を描いていることなどを挙げ「(中福祉)実現には、中負担をお願いせざるを得ない」と語った。
<NISA、「改善すべきことは改善」>
 1月から始まったNISA(少額投資非課税制度)に関連しては、証券界から制度の恒久化や枠組みの上限の引き上げなどの要望が出ている。麻生財務相は、対応していくべき点があれば、使いやすく投資にカネが回っていく方向で「改善すべきことは改善していく」と述べた。 (吉川裕子、平田紀之)

「教育や福祉に」 県に2億円寄付 県内男性が“お年玉” 茨城

MSN産経ニュース 2014年1月8日

 橋本昌知事は7日の記者会見で、県内の男性から「教育や福祉などの関係に役立ててほしい」と、県に2億円の寄付があったことを明らかにした。過去10年間の個人での県への寄付は3千万円が最高で、2億円は極めて異例の額という。
 本人の希望により名前は公表しない。男性の家族も寄付について賛意を示しているという。
 橋本知事は「新しい年を迎えるに当たって、県民の温かい気持ちがあったことに感謝の意を表したい」と、県民からの“お年玉”を歓迎した。
 その上で、橋本知事は「今まで県が使っていた財源の代わりに充てるのでなく、教育であれば図書購入費などに充てたい」と述べ、2億円の使い道は今後議論していくという。

<キラリ★人生> 一歩一歩の成長見守る

中日新聞 2014年1月8日

 福井県敦賀市に、新しい福祉のあり方に挑戦している施設がある。一軒家を改装した、グループホームのような福祉サポート施設「ワンシード」。
 「福祉を必要とする人が制度に合わせるのではなく、その人のための福祉をつくりたい」と、開設者で社会福祉士の吉田こずえさん(63)は言う。
 利用者は、小学校低学年から七十代のお年寄りまで四十人余。主に知的障害などハンディのある人を受け入れるほか、社会的に困っている人のニーズに柔軟に応えるのがモットーだ。母子・父子家庭の子どもや介護が必要なお年寄りを、家族が求める時間帯や期間に合わせて預かったり、引きこもりの若者の自立を支援したり。
 障害や心の病、家庭の事情、社会的な挫折などを抱えた、さまざまな人が集う。多様な人との出会いがあるから、利用者は自分の役割や居場所を見つけやすくなる。
 知的障害のある五十代の女性は、学童保育で子どもたちが来るのを楽しみにしている。「子どもたちの遊びを見守るのが私の役割。ここではいろんな人に出会えて、一日が楽しいです」と、恥ずかしそうに笑う。
 午前十時を過ぎ、皆で昼食の準備にかかる。ニンジンを刻む、ジャガイモの皮をむく。多少の時間はかかるが、一人一人ができることを、できるだけやる。吉田さんは彼らの成長の一歩、また一歩を見逃さない。

 重度の知的障害のある伯母との縁で、吉田さんは高校時代に福祉の道を選んだ。日本福祉大を卒業後、精神科病院のソーシャルワーカーを経て敦賀市職員となり、その後、障害者の支援に約三十年間携わった。
 最も悩まされたのは、福祉制度の枠組みで対応しにくいケース。公的支援である以上、サービスの画一化や利用の線引きは、ある程度避けられない。その結果、福祉施設の利用が制限され、家族の仕事の事情や、本人の急な病気などによる緊急時の対応が、おざなりになる。「個別の悩みを聞いても、何もできないもどかしさがあった」と振り返る。

 二〇〇五年、がんになった夫の看病のために市職員を辞した。福祉にかける妻の良き理解者だった夫は、まもなく亡くなった。その少し前、一つの言葉を残した。「あんたやったら何でもできる。悔いのない人生を送りなさい」。〇九年、蓄えたお金を元手に、志を共にする仲間と、現在の法人を設立した。
 十一人のスタッフを回し、ボランティアの協力も得ながら、利用者の送迎から事務処理までこなす多忙な毎日が続く。そんな中でも、いつも心にあるのは「皆、一人の人間として、ステップアップを続けてほしい」ということ。それは障害のある利用者に限らず、施設にかかわる全員のテーマだ。「皆と一緒に私自身、まだまだ向上したいんだもの」(林勝)