社会福祉法人 児童福祉 児童養護施設

志しているあなたへ

はじめに

 子どもが悪さをしたとき、すべて子どもの所為にしてしまう。その子どもを育てている大人は責任回避をしてしまう。ところが、口から出てくる言葉は偽善的であり、心がこもっていない。自分の対応の仕方が悪かった、心がこもっていなかった。もっと真剣に子どもに対するべきだったと、後悔し改心すれば、まだ良い方でしょう。しかし、それも後の祭りと言う現実は、至る所に転がっています。
 大人が子どもを裏切りさえしなければ児童養護施設は不要の存在かも知れません。しかし、現実は存在します。大人たちが子どもたちを真実に愛することができれば、子どもたちは、自然に大人たちを信用し信頼することができるでしょう。世の中すべてがそうあってほしいのですがそれは非現実的です。
 まずは、自分が努力し、そして、自分の周囲にその影響を与えていく。これが、大切なことでしょう。

 本著は、児童養護施設で働いている方、働くことを志している方、そして、業種を問わず福祉で働いている皆さんの一助になれるよう構成しています。そのため、文章は、「である調」でなく、「ですます調」或いは、「~でしょう。」と問いかける形式になっています。
 著者の願いは、本著を通して、働いている職員の皆さん方が普段の支援内容や業務内容を振り返ることによって、より良い施設運営へと導かれ、それが、子どもたちの幸せに繋がっていくことです。
 また、本著は、職員研修のテキストとしても利用できるよう、児童養護施設の事業内容及び関連事業についても情報を開示しています。
 本著をお選びいただいたことを感謝すると共に、読者の皆さんのお役に立てることを心から願っています。

1 児童養護施設現状

 「児童養護施設は、保護者のない児童(乳児を除く。ただし、安定した生活環境の確保その他の理由により特に必要のある場合には、乳児を含む。以下この条において同じ。)、虐待されている児童その他環境上養護を要する児童を入所させて、これを養護し、あわせて退所した者に対する相談その他の自立のための援助を行うことを目的とする施設とする。」と言うのが法律の条文となっています。
 まず、保護者のいない児童については、現実的には、全体の8%程度であり、殆どの場合、両親又は、一人親が存在しています。昭和20年代は、戦災孤児等、保護者のいない児童が多く存在していましたが、昭和30年代以降より減少傾向にあります。
 条文の( )内の但し書きで「乳児を含む」とありますが、これが、児童養護施設における低年齢児受入の制度に繋がっています。
 虐待されている児童は、読んで字のごとくで、特に解説は、必要ないと思います。
 その他環境上養護を要する児童とありますが、この条文が、おおまかな表現のため、児童養護施設には、単に家庭養育困難な状況だけではなく、非社会性・反社会性の児童、軽度の知的障害、情緒不安を示す児童、低学力児童等、様々な個性(特性)を有する児童が入所してきています。
 退所した者に対する相談その他の自立のための援助を行うとありますが、実際には、「今、そこにいる児童」が勿論、優先されるため、なかなか、密度の濃い支援体制が組めないのが現状です。ましてや、家庭環境の調整となると、児童相談所にお任せするのが一般的であり、児童養護施設の制度として家庭支援専門相談員が配置されていますが、その制度を100%活用できていないのが現実です。それは、最低基準で示されている児童指導員及び保育士の人数が、少年おおむね六人につき一人となっているため、元々の支援者数が明らかに不足しており、家庭支援専門相談員分の加算を受けても、児童指導員及び保育士の補充となってしまうためです。
 法律の条文と現実の間にギャップが生じているのが、現在の児童養護施設の大きな課題点と言えます。
 さて、一般の方は、児童養護施設がどんなところか、知らなくて当然なのです。日本人が知識を蓄えていく、最大の制度は、学校教育ですが、幼稚園から高校までの教育の中で、児童養護施設の説明は、一切、学習しないからです。児童養護施設について教育を受けるのは、社会福祉関連の専門学校や短大、大学等です。しかし、それらの学校でも児童福祉学の一部分として、児童養護施設の項目がある程度で、残念ながら具体性に欠ける内容であることは、仕方のないことでしょう。
 ところが、児童養護施設と言う単語は、多くの人が知っています。それは、TVニュースや新聞の記事として目にしていたり、ドラマの中で主人公の悲しい生い立ちの材料として取り上げられたりしていることが一因として挙げられます。これは、児童養護施設と言う言葉は知っていても、その内容に対して誤解曲解を引き起こす原因ともなっているのが現状です。
 これまで、述べてきた内容だけでも、実は、児童養護施設は、制度的にも啓発的にも整理されていないと言うことが理解できると思います。
 だからこそ、重要なことは、人材育成なのです。優れた人材のプロ集団が、子どもたちの養育を担うことが求められます。

2 保護と養育

 社会福祉施設における利用者への職員の意識の持ち方は、社会復帰或いは、人生を豊かにする身体能力や職業能力、社会性等を伸ばす為の「訓練」から、それらを指導する立場ではなく「援助」する側へと変革し、「助ける」から「支える」、つまり「支援」へと意識を変えてきました。更に現代では、「サービス」へと意識を昇華しています。
 しかし、同じ社会福祉施設でも児童養護施設の場合、その意識変革の流れに乗ることはありませんでした。それは、児童の保護者は、児童福祉法第2条で育成する責任を負い、第6条で、児童養護施設は、監護する者と表現され、保護者と同格の立場となっています。つまり、「保護」と「養育」の考え方が基本としてあるため、「援助」や「支援」への転換には、違和感が生じた経緯があります。その流れの中で、児童養護施設は、「支援費制度」への移行は、見送られ、現在でも「措置費制度」の枠組みの中で運営されています。
 「保護」は、児童の生活が保障され、そこには、心身の安全も含まれます。また、児童福祉法第1条2で、児童は愛護されなければならないと、定義されています。従って、児童は、愛され、護られる存在となっています。
 それを具体化していくのが、「養育」となります。「養う」とは、衣食住を保障すれば、それで良いのか、それは、否です。そこに愛情がなければ、「育てる」へと発展していきません。自然界に目を転じると、例えば、魚は、誕生した、その時から自立します。親魚が、食べ物を与えたりすることさえありません。しかし、人間の場合、成人に至るまでの間、「保護」が保障されています。それだけ、子どもたちに愛情を注げる時間があると言うことです。
 少しだけ、話が脱線しますが、人間の三大欲求として、「食欲」「性欲」「睡眠欲」が有名ですが、これは、生きるために身体が欲する欲求と子孫を維持していく基本的欲求として捉えられています。その他にも情緒的欲求や社会的欲求など学問的には、様々な諸説が研究されています。
 しかし、意外と「愛されたい」「愛したい」と言う欲求は、情緒的欲求や社会的欲求の中での項目として扱われていますが、これは、学問的には、「愛」と言う表現が不確かな要素で構成されているため定義付けしにくいからなのかと研究者ではない私は、推論しています。
 人間の場合、誕生した、その瞬間、殆どの場合、「愛されている」から始まり、愛され護られている経験から「安心」を得て、「愛されたい」「愛したい」との欲求が芽生えてきます。つまり、愛が無ければ、児童の生存そのものの維持が成立しないと言えることでしょう。
 その様な観点から、児童の最大の欲求は、「愛されたい」「愛したい」であると提案します。その欲求を充足させていくのが保護者です。その上で、衣食住の保障が成立します。裕福な家庭の衣食住の保障と、貧しい家庭の衣食住の保障では、明らかに格差がありますが、児童にとっての幸福感は、物質的満足より、「愛」による満足の方が、得られやすいと考えられます。
 愛され護られている児童は、その保護者から全面的に受容され包容されます。その中で、身体的、精神的、情緒的に育まれていきます。つまり、「育てる」は、「受容」からスタートし、成長段階に応じて、様々な取り組みを行い、一人で生きていく力、自立に向けて育てていくことになります。
 児童の育成責任の所在は、国及び地方公共団体とその保護者となっていますが、児童養護施設の場合、自治体の長が措置権者となり、施設長は、保護者の代行を担っていることになります。そして、実際に養育を担っていくのが、保育士であり児童指導員なのです。

3 子育てと目標

 子どもたちが成長し、大人になり、結婚をして、子どもを授かり、子育てしていく。その時、見本となるのが、自分の幼少期の経験です。その幼少期に児童養護施設で育ったから、家庭を守っていくノウハウが分からないと言うことでは、いけません。児童養護施設では、「今、そこにいる子どもを、今、育てている」と言う捉え方では、「養育」の意味を成さないのです。子どもたちのライフサイクルを描いた上で、今、必要な発達段階を育てていくと言う視点が重要になります。
 子どもたちは、日々、大人への階段を一段一段上っていきます。例えば、山登りをするとき、海抜何メートルとか、何合目とかの表示があり、それを一つ一つ達成していくことによって頂上へと導かれていきます。その達成感の積み重ねが、子育てされる子どもたちにも子育てする大人達にも必要なのです。
 それが、目標になり、それは、児童福祉法第45条の2で入所中の個々の児童について、児童やその家庭の状況等を勘案して、その自立を支援するための計画を策定しなければならない。と条文化されています。
 これを自立支援計画と言いますが、この計画書は、児童の成長に応じて書き換えられていきます。親子関係の子育てと違い、専門職として、文書化、記録化していくのが児童養護施設での子育てになるわけです。
 児童一人一人の年齢や能力、特性に応じて、目標が設定されていきますが、重要なことは、目標が一つ一つクリアされていく過程です。従って、クリアできない目標は、何の意味も成さず、反対に成長の阻害要因になることもあります。子どもたちにとって大切な事は、目標を達成した充実感であり、そのことを通して達成欲求や承認欲求が充たされていくことです。その過程の中で、大きな役割を担うのが保育士であり児童指導員になります。叱る場面が多いのか、褒める場面が多いのか、子どもの能力を引き出していく努力をしているのか、目標を子どもに示し、達成したことを伝えているのか等々の関わりが、子どもたちの人格形成に大きく影響していきます。
 また、善悪の区別を明確に示していくことも重要です。ここに「躾」が存在します。現代社会に於いて「躾」と「体罰」の境界線があやふやな状況が目立ち、「体罰」反対の流れの中で、「躾」と言う言葉を使いづらい状態がありますが、少なくとも善悪の区別を学習していく上では、「躾」は、大切な大人の役割と言えます。「他人を傷つけたり、他人の物を盗んだり」の行為に対して、それは、許されないことだと、きちんと「躾」をしておくことが、結局は、子どもたちの人生にとって役に立つことになります。
 幼少時代に達成感を味わい、褒められ、躾られた等の経験は、その子が子育てをする年齢になったとき、必ず生かされます。では、反対に挫折感を味わい、褒められることなく劣等感を抱き、悪いことをしても見て見ぬふりをされた場合を想像してみましょう。その様なことは、児童養護施設では、決して行ってはいけません。
 子どもたちが大人になった時、意識しようと意識しまいと、大人としての見本の一部として児童養護施設で関係した大人が含まれています。子どもたちが素敵なライフサイクルを構築していけるよう、大人達は、見本としての自覚を持ち、最善の努力を心がけることが大切です。

4 衣食住と生活感

 昨今の児童養護施設は、生活の質(Quality of Life)を高めるための運営努力を行っていると言えます。生活とは、人が生きていく上での日々の営みであり、生存する限り、その営みがストップすることはありません。しかし、政治的な目的で運営されている収容所や戦争中における生活など、過酷な生活を強いられている現実もあります。
 この生活の質、福祉的用語として、QOLが用いられていますが、QOLは、環境に応じて変化します。例えば、未開の地に住んでいて、TVも冷蔵庫もない生活をしている人が、TVや冷蔵庫が無いから、生活の質が低いと考えるでしょうか。反対に、電化製品が無いからこそ、自然と共存した豊かな生活を送っていると言えるかも知れません。そこで、QOLは、同地域に住んでいる同世代の人と同程度の生活が出来るように支援することが目標として挙げられます。
 具体的には、児童養護施設に住んでいる子どもたちの生活レベルと学校の同級生の生活レベルとの格差を縮小していく努力がQOLを高める一つの目標となります。
 「衣」
 子どもたちの生活に掛かる費用は、措置費として支弁されています。その中から、被服費として予算化していきます。各児童養護施設で予算単価の振り分け方は、異なりますが、大体、年齢別に単価設定するのが一般的です。児童一人一人に被服購入の予算が付きますので、児童の担当者は、子どもたちを連れて買い物に行き、服や靴を購入します。高学年の子どもは、お金を貰って自分で購入することもあります。以前は、いただき物(寄贈品)やお下がりを活用していましたが、現代では、中古品より新品の割合が高くなっています。
 子どもに与えられた予算だから、子どもの好みを全面的に認め購入させると言う危険な考え方に陥ってはいけません。児童養護施設は、子育てを担っています。人を判断する上で内面が重要なことは分かっていますが、対人関係に於いて、第一印象を与えるのは、外見であり、ファションセンスは、社会性の上で、とても重要な位置を占めます。子どもたちが好みの服を選択していく楽しみの中に、助言を通して、適正なファションセンスを磨いていく働きかけが大切です。
 また、TPO(Time 時間、Place 場所、Occasion 場合)に合わせた服装を選べるように日常生活の中で助言していきます。
 「食」
 児童福祉最低基準第11条で、児童福祉施設において、入所している者に給食をするときは、その献立は、できる限り、変化に富み、入所している者の健全な発育に必要な栄養量を含有するものでなければならない。と条文化されています。このことを通し、児童養護施設の子どもたちは、専門家(栄養士)により適正に計算された栄養を摂取していると言えます。
 人間の三大欲求の一つとして評価されている食欲は、生活の中で、とても重要な位置を占めています。朝食・昼食・間食・夕食を通して、大人と子どもは、必ずコミュニケーションをとる必要性が生じます。特に夕食の時間は、生活している子どもたちの殆どが揃っているので、団らんの場となります。或いは、食事作りや後片付けを子どもたちがお手伝いすることによって、それらのノウハウを会得していくことにも繋がります。食べ物を通して、自然の大切さと感謝、食卓に届くまでに様々な人たちが関わっていると言う社会の仕組み、貧困や食糧危機のために飢餓状態になっている国の人々もいると言う国際情勢等々、大人が子どもたちに伝えることは、たくさんあります。
 平成17年7月に施行された「食育基本法」により、児童養護施設でも「食育」への意識と取り組みを進めています。
 「住」
 最低基準第41条で、児童養護施設の住環境を明示していますが、これは、最低限の環境です。例えば、第41条2 児童の居室の一室の定員は、これを十五人以下とし、その面積は、一人につき三・三平方メートル以上とすること。となっていますが、これを具体的に表現すると、子ども部屋は、30畳の部屋に15人の子どもたちと言うことでも法律違反になりません。となります。現代の児童養護施設は、大体、2人から4人部屋が一般的となります。
 厚生労働省は、児童養護施設等のケア形態の小規模化を推進しています。また、建て替えや新規の児童養護施設については、ユニット型の設計にするよう推進しています。イメージとしては、5LDKの間取りで6人の子どもたちが生活をすると言うことになります。この様な環境が整備されることにより、生活の質のハード面向上に繋がっていきます。
 「衣」「食」「住」を通して、更にQOLを高めるためには、くつろぐ、楽しむ、共有する場所と言う感覚です。つまり、生活の空間作りが大切であり、その空間の中で、生活リズムを整えていく、時間のコントロールも大切です。また、生活用品や自分の持ち物に対する愛着心を育むことにより、自分の物と他人の物との区別を学んでいくことにも繋がります。
 QOLを高める努力により構築された環境によって、育てられた子どもたちは、それが、生活感の見本となります。ですから、環境が整えられていても、職員の怠慢により、不衛生の環境になっていたら、それも見本となってしまいます。衛生的でくつろげる環境作りを児童養護施設は、目指しています。

5 親の役目の伝承

 児童福祉法第47条に児童福祉施設の長は、入所中の児童で親権を行う者又は未成年後見人のあるものについても、監護、教育及び懲戒に関し、その児童の福祉のため必要な措置をとることができる。と明記されていますが、簡単な表現では、親権者代行の役を担うことになっています。古い表現では、親代わりと言うことになります。
 手続きや書類上では、勿論、施設長を保護者として記入しますが、日常生活の中では、保育士や児童指導員が親の代替的役割を担います。
 しかし、児童養護施設に措置されている子どもたちの殆どに、本来の保護者が存在している為、児童養護施設の職員は、親代わりと言う、精神的支柱になり得ないのが現実です。そんな中で、親の代替的役割を担っていきます。
 では、児童養護施設の職員は、どの様な方法で、一見困難と思われる、親の代替的役割を担っていくのか、それは、普段の生活の中で、子どもたちを、褒める(承認)、叱る(解明・獲得)、子どもたちと、笑う(親和)、泣く(共感)等の様々な経験を積み重ねていくことによって、親心から派生する感情表現を伝えていきます。そのことを通して、子どもたちが将来、親になった時、どの様に子どもたちに接するのかのモデルを示すことが、大切な役割になります。
 子どもたちは、親による養育困難な状況によって、措置されてくるのが殆どであり、時には、湾曲した親へのイメージを描いていることもあり、そのイメージを修正していく作業も児童養護施設職員に求められます。
 そして、導き出される結論は、児童養護施設の職員は、子どもたちの親にはなれないが、親の役割は伝えられると言うことになります。
 では、親とは、何であろう。母親と父親、つまり両親と言うことになりますが、その両親と子どものコミュニティが家族となり、社会と呼ぶ枠組みの基本となります。
 その親子関係は、民法第818条から第833条によって、権利と義務が規定されています。それを直接的に表しているのが。第820条で、親権を行う者は、子の監護及び教育をする権利を有し、義務を負う。と明記されています。
 従って、時には、子どもの意志より親権者の意志が法的に優先されることがあり得ます。児童養護施設において、子どもの権利を守ることがクローズアップされ、親権者の代替機能の効力行使に躊躇する傾向が見られるようになり、適正な子育てに対して支障を来しているとも言えます。
 親権者の権利を拡大解釈することは、以ての外ですが、適正な子育てを実行する上で、どうしても必要な親権者の権利は、その代行者として行使することが必要です。
 親としての権利や義務を児童養護施設において、行使することによって、子どもたちは、時には、不快な思いをすることもあります。育てられると言う体験の中では、それも必要な体験です。親との関係の中で、嬉しいこともあれば、辛いこと、悔しいこと、情けなく思うこと、様々な情緒が交錯しながら、子どもたちは、育てられていきます。その親子関係を児童養護施設の中でも伝承していくことが大切です。

6 家族援助の実際

 措置児童の家族を援助するにあたっては人員不足が課題です。児童養護施設の役割は、措置児童の委託を受けて児童支援を行うことです。措置権者は、各都道府県であり、その窓口になっているのが児童相談所になります。役割分担的には、保護者対応は、児童相談所の児童福祉司や心理療法士になりますが、現実は、児童への面会・外出・外泊・電話取次ぎ・進路問題調整・相談の受付等が日々の支援に絡んできます。時には、家庭訪問をすることもあります。
 また、以下の点も現実です。
・職員の配置基準が現行では、児童6名に対して1人です。(ただし幼児に対しては加算があります。)
・労働基準法で1日8時間、週40時間の勤務体制上のルールがあります。
・このような状況の中、具体的には、職員1名で児童15名程度の支援を行っています。
・児童のタイプも被虐待児童だけでなくADHDやLD、PTSD、自閉傾向、てんかん、軽度の知的障害児童など様々です。
 これだけ抽出しただけでも、児童養護施設では、児童支援が手一杯で、保護者のケアまでには至れない現実があることがお分かりでしょう。専任のケースワーカーを配置し、児童相談所と連携を取りながら保護者との調整を行っていても、調整であって、ケアまでには至れません。児童支援で手一杯のためケースワーカーも1名が精一杯の配置です。
 しかし、家族援助が重要な役割を担っていることは、周知の事実であり、児童養護施設での生活の中で、児童の持っている課題が改善され家庭復帰が可能になっても、家庭が、措置前と同じ環境であれば、児童は、また、同じ事を繰り返す可能性があります。
 そのため、児童養護施設の保育士や児童指導員は、児童相談所の児童福祉司や心理療法士と連絡を密に取り、家庭調整を図っています。
 児童心理療育施設(法的名称:情緒障害児短期治療施設)において、家族療法事業の申請を行っているところでは、精神科医と心理療法士の共同作業で家族へのケアを行っています。来園していただいてのカウンセリングや、家族療法棟に宿泊していただいてのケア、時には、家庭訪問することもあります。しかし、ここでも職員数が壁になってきます。家族療法事業に力を入れれば、その分、大切な児童支援の部分が手薄になり本末転倒の状況が生じてしまうからです。
 最近は、地方自治体レベルでの「虐待・DV防止連絡協議会」等が設立され稼働し始めていますが、更に精神科医・ケースワーカー・心理療法士・看護婦・弁護士・ベテランの保育士又は母親等で形成される専門の機関を設立し専門的なアプローチをしていくことが求められます。

7 人間関係を学ぶ

 児童養護施設に入所してくる子どもたちの殆どの措置理由が、家庭養育困難と言えます。家庭で養育が可能であれば、児童養護施設に措置される必要はないのです。母子家庭、父子家庭、父母がいても経済的理由、親の行方不明、児童虐待などなど、理由は、様々ですが、措置される前の児童の家庭環境が落ち着いた状態でないことは、容易に想像できます。
 親は、生活のために仕事をしていて、それが、夜間の仕事の場合もあるでしょう。その間、子どもたちは、寂しく家で過ごしていることでしょう。高学齢になれば、深夜遊びを覚えてしまうこともあります。経済的困窮で、食生活も乏しく不衛生な住環境での生活を強いられていることもあります。短気な親の顔色を窺いながらの生活、人格障害や精神障害の親との生活、勿論、親子の生活の中で楽しいこともたくさんありますが、辛いこともたくさんあります。幸福感は、人それぞれの感性で違ってきますので、一概に不幸な生活とは、表現できませんが、落ち着いて、勉強できる環境ではなかった状況が浮かび上がってきます。
 児童養護施設に低学力の児童が多いのは、その様な家庭の事情に起因するのが殆どです。時には、知能指数測定により高い数値を出す児童もいますが、基礎学力が身についておらず、同学年児童生徒の学力に追いつけなかったりと言うこともあります。小学1年生から4年生までの基礎学力定着時代に、不安定な家庭環境の場合、低学力に陥る傾向が顕著です。
 中学3年生で、九九を習得していない、ましてや、分数や小数の計算は、皆目分からない。漢字が読めない、書けない。この様な学力でも、進学できる私立の高校があることが、本当に救いとなっています。現代社会において、中学卒業の学歴で仕事を探すことは、極めて困難な状況です。また、低学力であるからこそ、児童養護施設では、少しでも長く、成長を見守りたいとの親心が働きます。
 児童養護施設で働く職員は、教育の専門家ではありません。従って、低学力児童の学業成績を向上させていくノウハウを習得しているとは言い難く、実際に養育に忙殺されるため、教育活動に集中できる時間は、限られてしまいます。そんな中でも、基礎学力を身につけるための学習会を実施したり、宿題をさせながら助言を与えたり、教えたりの日常的な取り組みを行っています。また、家庭教師ボランティアの力を積極的に活用しています。ボランティア活動が児童養護施設の児童のために、大きく貢献していることは、意外と認知されていません。
 さて、学校教育のレールから、環境要因により取り残された児童の学力を向上させていくことは、非常に難しい課題となりますが、学ぶとは、勉強だけに限定されるものではありません。児童養護施設でも基礎中の基礎である、読み書き計算を足がかりに、能力に応じて学習課題を高めていく取り組みを行っていますが、学習の習慣化を最大のテーマとしています。1日15分程度でも良いので、毎日机に向かうことが重要で、学ぶ姿勢を身につけておけば、子ども自らが本気で勉強をしたくなった時に役に立ちます。
 しかし、最も大切な事は、「学習」と言うきっかけを通して、大人と子どものコミュニケーションを深めたり、家庭教師ボランティアとの関係を通じて、対人関係の拡がりや新鮮な情報を得たりしていく中で、人間関係を学んでいくことです。

8 遊びと対人関係

 対人関係を学ぶ上で、最も基本となるのは、家族関係であり、それは、小集団と言えますが、そこから保育園や幼稚園への集団を経験し、中集団、大集団へと、対人関係を拡げていきます。そして、最終的には、社会と呼ぶ、コミュニティの中で生きていきます。
 児童養護施設は、家族の代替機能を担いますが、小規模児童養護施設でも定員6名、小舎制でも8名から10名程度のグループになってしまい、人数的側面から捉えると、疑似家族になり得ないと言わざるを得ません。そんな中、保育士や児童指導員は、出来うる限り、児童と1対1で向き合える時間を作ったり、兄弟児童が措置された場合は、同じグループにしたり等の工夫をしています。
 さて、子どもたちが生き生きと輝く時間の一つに遊びの時間があります。1対1の遊び、小グループの遊び、集団遊び、昨今は、TVゲームに代表される個人遊びも社会現象化しています。
 遊びを通して学ぶことは、たくさんあります。多くの遊びに勝敗を決する機会が含まれますが、勝つためには、作戦が必要であり、道具の工夫も必要でしょう。複数人で遊ぶ場合は、チームワークも求められます。勝ったら嬉しいし、負けたら悔しい思いをします。正に、社会で生きていくための縮図が、遊びの中にあります。
 遊びに集中していると、時間が、あっという間に経過します。時間と気持ちのコントロールが必要であり、時には、大人が制限してあげることも大切です。また、遊びを通して、大人と子どもとの駆け引きも生じます。時間的な駆け引き、道具や玩具などの購入に対する駆け引き、その駆け引きを制するために、子どもたちは、様々な作戦を考案します。時には、取引が成立する場合もあり、時には、大人に却下されることもあります。嬉しいとき、悔しいとき、様々な感情が交錯します。
 遊びは、年齢と共に常に進化します。幼児期にままごと遊びに熱中していても、小学生の高学年になる頃は、とっくにままごと遊びを卒業していることでしょう。つまり、遊びも成長しています。それが、青年期の余暇活動の過ごし方に繋がっていきます。
 児童養護施設の中で、子どもたち同士の遊びに関しては、基本的には、見守ります。必要以上の干渉は、遊びを通して自然に育まれる情緒的な成長を阻害する要因になってしまうからです。勝手なルール変更、反則行為、勝敗の判定等々、争うきっかけも発生し、それを解決していくのも、基本的には、子どもたちに委ねます。大人が介入するのは、それがいじめに繋がったり、喧嘩もエスカレートしてしまい、収まりがつかない状態であったり、遊びの時間を超過していたり、大人との約束を破っている時などに介入します。
 一人だけで楽しめる遊びも必要ですが、それだけで終結してしまっては、対人関係の拡がりに繋がらず、対人関係を持つことが苦手になり孤立してしまったりなど、(-)要因に繋がっていく場合もあります。出来る限り複数人での遊びへと、さりげなく誘導していくことも自立支援の取り組みの一つとして挙げられます。
 社会人になったとき、休みの日に楽しめる術を知らなかったら、生きていくために仕事をして、休みの日は、ひたすら寝る。長期の休みがとれても、殆どの時間をアパートで過ごす。この様な過ごし方が良くないと言うことではなく、もし、休みの日に友人と、海や山へドライブに行ったり、アウトドアを楽しんだり、映画を見に行ったり、ショッピングをしたり、美味しい物を食べに行ったりして過ごしたら、どんなに楽しいことでしょう。そして、その経験は、将来、自分が子育てするときに、必ず役立ちます。家族旅行や、子どもと共通の趣味を楽しんだり等へと繋がっていきます。
 遊びを通して学ぶことは、たくさんあり、それは、子どもたちの人生に大きく関わってきます。児童養護施設の保育士や児童指導員は、子どもたちの遊びをいつも見守るだけではなく、時には、仲間に入れて貰い、一緒に遊ぶこともあり、遊びの中では、大人と子どもの垣根を乗り越えて、楽しむこともあります。子どもたちにとっては、そんな大人が、側にいてくれることが安心感へと繋がっていきます。

9 地域への所属意識

 児童養護施設は、独立した存在ではなく、地域社会の中で生活していることで、その存在感を見いだすことが出来ます。学校のPTAに加入することは、勿論のこと、地域の会合や消防団活動にも積極的に参加していきます。地域活動の中には、夏祭りやリサイクル活動などの行事がありますが、子どもたちと一緒に参加します。
 地域の中で生きていくと言うことは、地域の皆さんと交流することです。児童養護施設の職員や子どもたちが地域へと積極的に飛び出し、児童養護施設の資源である会議室やホールを地域の方々に開放するなど、相互協力の中から、相互理解が成立します。
 地域によっては、児童養護施設の後援会を引き受け、資金や物資面の支援を行っていたり、クラブ活動を通して、児童養護施設と地域との垣根を一切無くした活動を展開している所もあります。地域と児童養護施設の関係には、様々な形がありますが、大切な事は、児童養護施設が地域社会の一員として認知され、相互協力が、気兼ねなく行われていくことです。
 地域社会に溶け込む働きかけのきっかけは、殆どの場合、大人(職員)たちが構築していきますが、時には、子どもたちのリーダーが、夏祭りの例えば、御神輿担ぎ等でリーダーシップを取り、地域を盛り上げていく場面などもあります。
 現代社会において、地域社会の中での住民関係が希薄になりつつあるのも事実ですが、そんな時代だからこそ、児童養護施設が地域の中で、しっかりと存在感を示し、地域に関わっていくことが求められます。
 「僕は、○○町に住んでいました。」、子どもたちが大人になった時、自分が幼少時住んでいた場所を自信を持って言えるようになるためには、やはり地域への所属意識が大切です。
 子どもたちの中には、スポーツクラブに所属したり、塾に通ったり、友人宅に遊びに行ったりなど、日常生活の中で、自然に地域に溶け込んでいる子どももいます。また、殆どの子どもたちは、近所の店で買い物をします。時には、残念なことですが、万引きなどの触法行為もあります。いろんな意味で、子どもたちは、地域と関わっています。それらは、社会性に繋がっていくことは勿論のこと、思い出として、子どもたちの人生に刻み込まれていきます。

10 調理室と法律

 児童養護施設は、児童福祉法第35条4により、自治体より認可を得て、運営されています。そして、同法第45条により、最低基準を遵守しなければいけないと義務づけられており、その最低基準を遵守しない場合、同法第58条により、自治体は、認可を取り消すことが出来ると規定しています。
 そして、各児童福祉施設が、最低基準を守れるように、厚生労働省は、局長通知及び課長通知を自治体に通知し、自治体は、各児童福祉施設に通知します。
 仮に、この通知を無視し、その上、自治体指導監査での指摘事項を無視している場合、運営不適格の烙印を押され、最悪の場合は、施設長辞任又は、施設認可取り消し等の処分を受けることになります。
 自治体及び厚生労働省監督の下に成り立っているのが、調理室であり、直属の監督者が施設長と言うことになります。
 調理師個人の考えや感覚で、衛生管理や献立変更が行われるなどと言うことは、あり得ないことです。施設長が責任を持てるのは、調理師が厚生労働省、自治体、保健所の指導を厳守し、調理に対して責任を持って適正に業務を行っている場合です。
 子どもたちの「食」を担う調理室は、アットホーム的で、子どもたちが自由に出入りし、食事作りや片付けを手伝ったりしながら、笑顔が絶えない雰囲気の場所であって欲しいのですが、それ以上に、子どもたちの「食」の安全を守ることが重要なのです。
 関係法令は、以下の通りです。

児童福祉法
第35条 国は、政令の定めるところにより、児童福祉施設(助産施設、母子生活支援施設及び保育所を除く。)を設置するものとする。
2 都道府県は、政令の定めるところにより、児童福祉施設を設置しなければならない。3 市町村は、厚生労働省令の定めるところにより、あらかじめ、厚生労働省令で定める事項を都道府県知事に届け出て、児童福祉施設を設置することができる。
4 国、都道府県及び市町村以外の者は、厚生労働省令の定めるところにより、都道府県知事の認可を得て、児童福祉施設を設置することができる。
第45条 厚生労働大臣は、児童福祉施設の設備及び運営並びに里親の行う養育について、最低基準を定めなければならない。この場合において、その最低基準は、児童の身体的、精神的及び社会的な発達のために必要な生活水準を確保するものでなければならない。
2 児童福祉施設の設置者及び里親は、前項の最低基準を遵守しなければならない。
3 児童福祉施設の設置者は、児童福祉施設の設備及び運営についての水準の向上を図ることに努めるものとする。
第58条 第35条第4項の規定により設置した児童福祉施設が、この法律若しくはこの法律に基づいて発する命令又はこれらに基づいてなす処分に違反したときは、都道府県知事は、同項の認可を取り消すことができる。

児童福祉施設最低基準
(衛生管理等)
第十条
児童福祉施設に入所している者の使用する設備、食器等又は飲用に供する水については、衛生的な管理に努め、又は衛生上必要な措置を講じなければならない。
2 児童福祉施設(助産施設、乳児院、保育所、児童厚生施設、肢体不自由児施設及び重症心身障害児施設を除く。)においては、一週間に二回以上、入所している者を入浴させ、又は清拭しなければならない。
3 児童福祉施設には、必要な医薬品その他の医療品を備えなければならない。
(給食)
第十一条
児童福祉施設において、入所している者に給食をするときは、その献立は、できる限り、変化に富み、入所している者の健全な発育に必要な栄養量を含有するものでなければならない。
2 給食は、前項の規定によるほか、食品の種類及び調理方法について栄養並びに入所している者の身体的状況及び嗜好を考慮したものでなければならない。
3 調理は、あらかじめ作成された献立に従って行わなければならない。

11 児童福祉のニーズ

 戦前までの時代では、子育て技術の連鎖が自然の摂理でした。まず、家族関係では、祖母から娘や嫁へと子育ての方法が伝授されたり、多子の時代であり兄弟が幼子の子守をしたり、また、近所関係においても相互扶助が成立していました。ところが、戦後の高度経済成長に伴い都市部を中心に囲むように住宅地ができるドーナツ化現象と共に核家族化も増加していきました。団地やアパートやマンションでは、2世帯が居住するには手狭であり、加えて、祖母たちの世代は、生まれ育った土地から離郷するには苦渋の決断が必要だったでしょう。結局1世帯での生活パターンが増加していくことになりました。つまり、子育て技術の連鎖が崩れていく結果へと繋がっていきました。それでも、当時の勤勉な母親たちは、田舎に電話したり育児書で学んだり、同じ子育て中の母親たちと情報を共有したり等の工夫によって乗り切っていきました。
 そして、現代、「核家族」「共働き」「住宅ローン」「不純異性交遊の年少化」「一人っ子」「育児ノイローゼ」などのキーワードが示す通り、子育て技術の伝授力が弱体化したり、性知識の氾濫が影響してか、大人としての成熟を待たず妊娠したり、他人への思いやりや我慢する力が低下し、「きれた」のキーワードが社会問題として取り上げられたり、母親一人で子育てを担うプレッシャーからノイローゼに陥ってしまったり、DVに代表される家庭内暴力など、様々な要因が交錯しています。また、現代社会のストレスによる精神的プレッシャーで心の病に陥るパターンもあります。
 「自閉症」「AD/HD(注意欠陥多動性障害)」「LD(学習障害)」「トラウマ」などのキーワードが示すのは、平均的な子育て技術では、対応が難しいお子さんがいる事実を表しています。
 (-)面がクローズアップされてしまいましたが、ほとんどのご家庭では、平々凡々と子育てが営まれています。しかし、一部のご家庭に於いて、家庭養育困難な状況が生じてしまっています。子どもたちは社会構造の基礎である家庭で成長していくのが一番と考えています。ところが、「虐待」「保護者の心の病」等、場合によっては、危険な状況から保護することも必要になり、そのため、児童相談所の行使力が制度化されたりしています。

12 児童養護施設で働くには

 現在、中学生で、社会福祉の仕事をしたいと夢を持った方は、進路について、悩むことでしょう。しかし、進学について重要なことは高校進学より大学進学にあります。保育士の免許資格がとれる大学又は専門学校を選び受験することが大切なのです。大学受験に関しては各大学の受験科目が関わってきますが、高校時代、理系だろうと文系だろうと商業科だろうと工業科だろうと農業科だろうと大学受験に際しての最低限の単位取得はあると思いますので、特に心配することはないと思います。
 児童養護施設で働くための資格としては、主に保育士・社会福祉士・心理療法士・看護士・管理栄養士が挙げられます。只、看護士や管理栄養士は雇用人数が少ないので求人がほとんどないでしょう。心理療法士は心理系の大学を卒業し大学院まで進まなければいけませんので、よほど興味がなければ挫折するかも知れません。となると現実的なのは、社会福祉系の大学で社会福祉士の受験資格を取得し社会福祉士試験を受験することになります。ただし、これは「児童指導員」と言うことになり、女性の場合、門戸が狭いことでしょう。(男女差別はしたくないのですが現実として、まだまだ男女の仕事の役割分担はあるようです)
 高校生のあなたは、例えば「保育士」になりたい場合、大学のパンフレットを見て、取得資格の中に「保育士」があれば、その学校を選ぶと良いでしょう。
 ところで、福祉の仕事は、これから確実に雇用が伸びていく職種です。現代社会では、大企業でも倒産する世の中です。また、特に企業は景気の動向が賃金に影響します。しかし、福祉の仕事は、賃金が高いとは言えませんが、確実に支給されると言う大きな利点があります。勿論、社会的貢献度、やりがい、常に学びの時、専門職、特に保育士は、国家資格です等々、素晴らしい利点が多いのです。自信と誇りを持って「福祉の道を選びました。」と言っても良いのではないでしょうか。

13 児童指導員の資格要件

 保育士は、国家資格ですので、保育士試験が定期的に行われ、それに合格し各都道府県に於いて、保育士登録すれば良いので、資格取得方法が明確ですが、児童指導員の場合、幾つかの方法があります。
◎児童指導員資格は、次のいずれかの該当すれば、有資格者となります。
1.大学で福祉・社会・教育・心理学部(学科)を卒業
2.小・中・高のいずれかの教員免許を取得(級・教科不問)
3.厚生労働大臣指定の児童指導員養成校を卒業
4.児童福祉施設での実務経験者(高卒以上2年、その他3年)
*4のコースは主に現職者を対象とするもので、これから就職する人にはほとんど適用されません
 ただ、これだけでは、資格の所在が明確ではありませんので、社会福祉主事任用資格を学校又は養成機関で発行して貰うようにしましょう。
◎社会福祉主事任用資格は、次のいずれかに該当すれば、有資格者となります。
20歳以上で、人格が高潔で、思慮が円熟し、社会福祉の増進に熱意があり、次のいづれかに該当する者
1.大学などで厚生労働大臣が指定する社会福祉に関する科目を修めて卒業した者
2.厚生労働大臣が指定する養成機関(専門学校等)または、講習会の課程を修了した者
3.厚生労働大臣が指定する社会福祉事業従事者試験に合格した者
 全国社会福祉協議会の中央福祉学院が、福祉系大学等を卒業していない民間社会福祉施設職員や公務員として「社会福祉事業に従事している職員」を対象とした認定通信課程を開講しています。
 社会福祉士は、国家資格であり、この資格を取得していれば、就職の際、有利であることは言うまでもありません。
 大体、1年~1年半に一度、都道府県等からの指導監査が実施されますが、その時職員の資格の有無が指摘事項に挙がることがあります。つまり、現在に於いては、新しく採用する時、具体的には、求人票に、資格要件(保育士や社会福祉主事等)を記入するのが通常です。

14 児童養護施設への就職

 児童養護施設に就職するためには以下の方法があります。
①福祉人材バンクに登録する。これは、全国社会福祉協議会の一部門としてあります。
②学校の就職課から常に情報を収集する。
③児童福祉施設に見学に行き、施設長さんに履歴書を渡しておく。
④コネクションが、もしあれば、利用する。
 児童福祉施設の場合、就職活動は難しい状況にあります。それは、雇用する側もぎりぎりまで、職員の補充が必要になるかどうかわからないからです。就業規則で、退職願は、1か月前までに提出すればよいことになっている事業所が多く、補充の有無が明確になるのは、3月になるからです。また、男性の離職率は女性のそれと比べて低く、更に狭き門となります。また、年度途中で急に退職する職員がでると、その時点で求人を行いますので、就職のチャンスが何月に出てくるのか予測がつきません。そういう意味では、運も大切な要素なのです。
 ④は、認めていないところが増えています。
 条件として、現在では、社会福祉士の資格所得を履歴書に記載した方が、少しでも採用の確率は高くなります。また、普通自動車免許も必要です。採用とは、人材が足らなくなったから行うもので、職場としては、少しでも早く即戦力になってくれるよう望むわけです。児童の通院等で自動車免許が即、業務として必要になります。
 夢(目標)を追い続けてください。くじけたり躓いても立ち上がり、追い続ける根性が必要です。そして、その根性の根となるのが、子どもたちへの愛です。愛がなければ、児童福祉で働く資格はないといっても良いでしょう。
 安月給で、労働時間も曖昧な環境です。自分の青春を子どもたちに捧げるくらいの覚悟が必要です。また、短気では勤まりません、個性の一つとして、人をイライラさせるフェロモンを出している子どもがいることも事実です。短気では、施設内虐待へと繋がってしまいます。そう言った意味では、人間修養も大切です。

15 子どもとの関係

子どもとの信頼関係
 「子どもとの信頼関係が築けたと思われる時」それは、自分が子どもを信じられた時です。まず、自分自身が子どもを信じられなければ、信頼関係は成立しません。しかし、現実は、裏切られる事の方が多いでしょう。「信じる」→「裏切られる」この繰り返しが子育ての醍醐味と言えるかも知れません。また、このことがあるから、この仕事への意欲と責任が生じているのです。
 裏切られることを覚悟で、子どもを信じましょう。信じ続けましょう。それが、信頼関係へのスタート地点です。
待つことが大切
 子どもが悪いことをした時、「注意する」「叱る」「怒る」と大きく三つに対応が分類できると思いますが、
 「注意する」は、話すことによって善悪を納得させようと取り組んでいます。
 「叱る」は、叱責も含まれますが、「注意する」が何度も繰り返された場合の対応になります。
 「怒る」は、危険度の高い対応です。支援者自身が感情的になっている場合があるからです。冷静でないからこそ「怒る」と言う状況になりがちです。可能であれば、演技によって「怒る」と言うことも必要なことかも知れません。支援者は臨機応変使い分けることが大切です。
 只、注意しなければいけないのは、「怒る」対応の時、「叩く」行為が生じる可能性が「大」です。これが虐待へと繋がらないよう、支援者は常に気をつけておくことが重要です。子育ては「忍耐力」が大切です。子どもの成長を温かく見守る、そこには、常に「待つ」と言う心の余裕が求められます。

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