BPO(放送倫理・番組向上機構)に視聴者から寄せられた意見

番組への肯定的な意見

•1回目の放送から差別や偏見を生むと中止を求める騒ぎに発展しているが、私や周りの母親たちの1話を見ての感想は違うものだ。物語の初めでの施設や施設長の描き方は少し極端ではあったが、愛情が全く感じられないというものでもない。誰か特定の人を指してさげすんだり偏見をもたせるものというよりは、多くの人々に問題提起をしている秀逸なドラマだ。辛い立場に今いる子ども達には、きっと励ましや勇気を与える展開になってくれるものと信じて、最後まで見たい。
•番組の放送中止に対して反対する。私には娘がいる。子育てに苦悩することもある。第1話を見て、私は子どもとはなんなのか、考えさせられた。「人権侵害」という意見も分かるが、厳しいことを言わせてもらえばそれが現実だと思う。何度も何度も繰り返して見た。親として人間として教えられることが多いドラマだと思う。子ども目線からの世界や大人の身勝手さがきちんと出ている。現代の問題をこのドラマは伝えている。この番組を楽しみにしている人もいる。
•養護施設のドラマを放送することで、関係者の人権が傷つけられるというが、ドラマの表現に極端な意見を出すということは、如何なものか。人は誰もが”いい人”とは限らないし、暴言を吐くことも人格の一つだ。悪い意味でドラマと現実が一緒になってしまう人をこそ、問題視すべきだ。これでドラマが打ち切りになることがあれば、抗議をした人達は「一つの側からでしか見ることができない人」と見られ、支援もされなくなるだろう。だから、昔の番組はある意味良かったのだ。一部の側の人間の意見を聞くことなく番組を作れた。今の番組は周囲に流され過ぎている。今の番組をつまらなくしたのは、こういう意見を平気でいう視聴者だと思う。
•このドラマは最後まで是非放送してほしい。その後に、親の責任、社会のあり方、放送、報道のあり方、視聴者としてのドラマの見方など、各自の立場から考えること多くあると思う。ある意味、今回のドラマは「ドラマなどでは人権をどう配慮すべきか」を考え話し合ういい機会ではないだろうか。ドラマの途中ではなく、最後まで視聴した上で、良し悪しを議論するべきだ。大人の都合で犠牲になった子ども達を受け入れる機会と感じている。•子ども達の愛を伝えていくドラマだ。絶対に中止しないでほしい。最後まで放送していただきたい。中止しては、すべてのドラマが、事実に基づいたものでなければならなくなる。このドラマはフィクションだ。
•ドラマに対して、内容変更や謝罪の要求は明らかにやりすぎだ。抗議が多かったことは確かだろうが、それ以上に楽しみにしていた視聴者がいることを忘れていないか。「施設出身の子どもや養子縁組を受けた子どもが学校でからかわれて問題になっている」という記事を読んだが、からかわれた子どもは気の毒で、抗議する気持ちも分かるが、悪いのはからかった子どもであって決してドラマではない。ドラマに抗議することは責任転嫁だ。このドラマを駄目と言ったら、その他の多くのドラマやバラエティー、アニメも駄目になってしまうような気がする。抗議者以外にも視聴者がいることを忘れないでほしい。

番組への否定的な意見

•児童養護施設に入っている子たちを馬鹿にした、差別的ドラマだと感じた。これは明らかに、児童養護施設のことすら知らない作家や局側が、あからさまに養護施設の子ども達を偏見の目で見たうえでのドラマだと思う。おそらく今後、学校などでドラマの主人公のあだ名を使って、いじめなどが起きるだろう。そもそも養護施設には、本当に訳ありで入所している子たちがいるわけで、その子たちがこのドラマをみたらどんなに悲しむだろうか。
•番宣を見た当初から不快だった。母も同様に不快だと言っていた。私の地区には身寄りのない子どもが通う児童施設があり、私の友人も多数そこに住んでいた。彼らは児童施設の職員の方々を「兄さん、姉さん」と言って慕っていた。様々な事情で預けられ辛いはずなのに、逞しく生きる彼らを私は尊敬し、応援していた。この番組はそんな彼らに対する冒とくだ。まだ考えの浅い、若い世代にこんな番組を見せたら、いじめを助長し彼らが生きづらい世になってしまう。今回の題材だけは許すことができない。
•ドラマの役名は、養護施設で育った子どもにとって大変心の傷になる。ドラマの内容に対して関連機関が抗議を出したことも当たり前のことだし、それに対する放送局の対応は的を射ていない。「最後まで見てほしい」とは宣伝効果をねらって発言しているようにしか思えない。子どもを産む、育てるとはどういうことなのかを訴えるドラマかもしれないが、養護施設で過ごしている子ども達に対する配慮がなさすぎる。
•ドラマの過剰演出に違和感を覚えた。おそらく第1話ということも加味した演出であり、回が進むにつれてドラマの雰囲気も良くなるだろうという予測は、大人であれば可能だ。しかし、子どもには無理だろう。社会的影響の大きいテレビ放送で、なぜ子どもの成長を阻害することをするのか理解に苦しむ。
•私は児童養護施設職員だ。あまりにもひどい内容に絶句した。ドラマだから誇張されているだろうとは思うが、誤解を与える内容だ。職員が暴力をふるうのか。子どもをペット扱いするのか。とても傷ついた。もっと児童養護施設や子どものことに関心を持ってもらいたいとは思うが、この作品は子ども達や私たち職員の気持ち、人権をあまりにも考えていない。改善していただきたい。
•ドラマで児童養護施設の職員が子ども達に罵声を浴びせたりペット扱いしたりと、事実と異なる内容に怒りを覚えた。私は、訳あって子どもを施設に預けている身なので、今後子どもが学校で差別に遭うのではないかと心配だ。
•このドラマは悪意を持って作られたのではないだろうが、決して善意ではない。何も知識の無い立場からすると、確かに、施設の生活はこんなにすさんでいるのか、だからこんなに不幸な育てられ方でひどい言葉遣いになるのかと勘違いさせられる。番組もあえて暗く希望の無い作りになっている。施設などから苦情があって当然だ。施設の子どもや演じている子役が可哀想でならない。偏見や差別を助長するものだ。

アニメ「最近、妹の…」にBPOが注意 「配慮不十分」

朝日新聞デジタル 2014年3月16日

 放送倫理・番組向上機構(BPO)の放送と青少年に関する委員会は16日、児童養護施設の子どもたちの人権を侵害するという批判が出ていた日本テレビ系のドラマ「明日、ママがいない」を審議対象にしないことを決めた。汐見稔幸委員長は「総合的に判断した」と説明した。後日コメントを公表するという。一方、熊本県の慈恵病院から審理申し立てを受けたBPOの放送人権委員会は引き続き取り扱いを検討している。
 汐見委員長は「社会的で繊細なテーマを扱うことに対し、萎縮が起きることを危惧している。ドラマが反応を十分に予測しきれずに始まった問題はあると認識している」と話した。
 また、放送と青少年に関する委員会は、東京メトロポリタンテレビジョンとサンテレビジョンが午後10時台に放送したアニメ「最近、妹のようすがちょっとおかしいんだが。」の審議を終え、委員会の考えを10日付で公表した。刺激の強い性的表現が含まれているのに、放送時間帯を決める際に児童や青少年に対する配慮が不十分だったなどとして、注意を促した。番組は1月に放送開始。両局はすでに放送時間を深夜に移している。(丸山ひかり)