明日、ママがいない 批評まとめ

「明日、ママがいない」 日テレ、養護施設団体に謝罪

日本経済新聞 2014年2月5日

 日本テレビの連続ドラマ「明日、ママがいない」の内容改善を求めていた全国児童養護施設協議会などは5日、東京都内で記者会見し、日テレから「視聴した子供たちが傷ついたなら、衷心よりおわびしたい」などとする回答書を受け取ったと発表した。同協議会の藤野興一会長は「一定の改善があると受け止めている」との見解を示した。
 回答は「表現上留意すべき点などを慎重に確認しておく必要があった」とした上で「これまで以上に子供たちに配慮する」とした。日テレは内容を一部変更するとしているが、具体的な改善点は「ドラマという性質上、説明できない」という。
 会見には「こうのとりのゆりかご」(赤ちゃんポスト)を設置する慈恵病院(熊本市)の蓮田健産婦人科部長も同席。蓮田部長は「今後の放送を見守るが、子供たちに影響が出れば日テレの責任は重い」と述べた。

日テレ「明日ママ」が全養協に「取材不足」認め謝罪

東スポWeb 2014年2月5日

 児童養護施設を舞台にした日本テレビ系連続ドラマ「明日、ママがいない」に対し、内容改善を求めていた全国児童養護施設協議会(全養協)や熊本市の慈恵病院などが5日、厚生労働省で記者会見を開き、日テレから正式に謝罪を受けたことを明かした。
 全養協はドラマを見た施設出身者の中にリストカットなどの自傷行為や、学校で「おまえも(里親に)もらわれていくのか」と言われるなどの被害報告が全国600施設のうち67施設で約20件あったことを公表。先月下旬、同局に内容改善を求める要請書を送付し、その回答期限が今月4日だったことから、この日の会見となった。
 これに日テレは制作局長の名前で回答書面を返信。従来通り「本ドラマは、子どもたちが厳しい境遇に立ち向かいながら、前向きに愛情をつかむ姿を描くことをテーマにした企画」と主張しつつも、被害が確認されたことについて「そのような結果について重く受けとめるとともに、衷心より子どもたちにお詫び申し上げます」と正式に謝罪した。
 制作過程で対象施設への取材不足が指摘されていることに対しても「事前に児童養護施設を取り巻く環境などの実情を詳細に伺い、表現上留意すべき点などをより慎重に確認しておく必要があったと認識しております」と“過失”を認めた。
 今月1日、日テレの担当者は「赤ちゃんポスト」を設置する慈恵病院を訪問。蓮田健産婦人科部長(47)によると「日テレ側から今後の放送部分について改善していくことを約束された」という。ただし、具体的にどの部分を改善するかなどは「先方のお立場も分かるので、あえて突っ込まなかった」そうで「今後の放送を見守っていくしかない」とした。このスタンスは全養協や全国里親会も同じ。
 なお、同病院は放送倫理・番組向上機構(BPO)に本件の審議入りを申し立てており、現時点で取り下げる予定はない。その理由について蓮田氏は「これからも弱者を描く際に表現の自由とぶつかることとなる。その判断をするのは裁判所ではなくメディアだと思う。どのような判断がでるかで今後のサンプルになると思う」と語った。

クローズアップ2014:日テレ「明日ママ」問題 ドラマ、問われる「表現」

毎日新聞 2014年02月06日

 親元で暮らせない子供たちや施設への偏見につながるかどうかを巡って議論を呼び起こしていた日本テレビ系の連続ドラマ「明日、ママがいない」は、日テレ側が「一層の配慮」を約束することで放送継続が決まった。児童養護施設団体などによる放送中止要求や番組スポンサーのCM自粛、国会での調査請求に発展した一連の騒動は、デリケートな社会問題と表現の自由との適合の難しさを示している。

欠けた見る側への配慮
 全国児童養護施設協議会が日テレ側に改善を求めていたのは、施設内での虐待シーン▽主人公に付いているあだ名▽施設の子供をペット扱いする筋書き−−の3点だ。具体的には、子供たちを預かる施設長が、持っていたつえを床にたたきつけたり、子供たちにバケツを持たせて風呂場に立たせたりする場面や、主人公が「赤ちゃんポスト」を連想させる「ポスト」と呼ばれていることなどだ。
 日テレが4日付で協議会に出した文書は「ご指摘を踏まえ、これまで以上に子供たちに配慮する」と記しているものの、具体的な改善策には「ドラマという性質上、説明はご容赦いただきたい」と言及を避けた。
 5日に厚生労働省で記者会見した協議会の藤野興一会長(72)は「一定の改善が図られると受け止めた」と述べ、最終回まで見届ける考えを示した。日テレの総合広報部は「普段から番組に対する外部の意見は広く参考にしており、スタンスはいつもと変わらない」と話している。
 ドラマの放送が始まったのは今年1月15日からだが、藤野会長らは番組の宣伝などを見て、昨年12月から第1話の脚本を制作会社から取り寄せたうえ、制作スタッフと面会してせりふや表現の変更を求めた。日テレ側は文書の中でも、事前に施設を取り巻く実情を取材し、表現などを慎重に確認する作業が不十分だったことを認めている。
 ドラマは、放送開始直後から異例の経過をたどった。親が育てられない子供を「赤ちゃんポスト」の名前で受け入れている熊本市の慈恵病院は放送の中止を要求。これを受け、1月22日放送の第2話の段階で番組スポンサー8社のうち3社がCMの自粛を決めた。その後、自粛は全8社に拡大した。エバラ食品の広報担当者は「お客様から寄せられたさまざまな声を真摯(しんし)に受け止めた結果だ」と繰り返す。
 さらに田村憲久厚労相は3日の衆院予算委員会で「(ドラマを見て)入所している子に自傷行為があったとの報道がある。調査したい」と答弁した。
 第3話までの印象について、協議会の武藤素明副会長は「1話はショッキングなシーンが多かった。2、3話も施設長が子供に対して『出て行け』と威嚇したり、ペットに例えたりする表現は変わっていない」と批判する。
 1998年のTBSドラマ「聖者の行進」では、障害者の虐待シーンの演出をめぐり、「障害者をばかにしている」「まねする者が出たらどうするのか」などと批判的な意見や抗議が寄せられた。脚本は、今回の「明日ママ」で脚本監修を担当した野島伸司さんだ。
 砂川浩慶・立教大准教授(メディア論)は「権力に対抗する表現の自由とは違い、見る側の納得を得なければ、メディアが権力をふりかざすことになる」と指摘したうえで「日本テレビのリサーチ不足は否めず、協議会や病院と十分に協議してから放送すべきだった。日テレの対応は遅かったものの、一定の評価はできる」と語った。【土屋渓、木村光則】

怒り、共感 多様な受け止め 「親のいない子」は過去のイメージ
 厚生労働省によると、児童養護施設で約3万人、里親家庭で約4300人(2012年3月末現在)の子供が暮らしているが、日本は国際的にみても、施設の比重が極めて大きい。ドラマでは、施設の子供が里親の元に行くのを待っているように描かれているが、実際は施設で18歳まで暮らす子も多い。
 子供たちが施設や里親で暮らす理由は、1977年時点で親の死亡や行方不明が4割を占めていたが、2008年には1割弱に減った。一方、虐待は8・2%から33・1%に、精神疾患などが5・1%から10・7%に増えている。親子が置かれた環境が多様化しただけに、児童養護にかかわる当事者のドラマに対する視線も複雑だ。
 「怒りしかわいてこない。施設があのような場所だと思われたら困る」。東京都の児童養護施設で働く男性(37)は憤る。東京都内の二つの児童養護施設で育った女性(22)は「私がいた施設は、家庭的で暴力もなかった。(ドラマの内容は)ショックだ」と話す。
 一方で、ドラマに共感を寄せる施設出身者も多い。関西の児童養護施設で育った大学生の女性(19)は「子供同士の会話の雰囲気がリアル」と評価する。関西と関東の施設で暮らした東京都の女性(30)も、男に走った母親を子供が「捨てる」場面に「私も、働かない親を親として見られなかった」と共感を寄せた。東京都内で3人の里子と暮らす女性(36)は「里親家庭や施設に来る時の子供は、知らないところに連れていかれる感覚。ああいうふうに見えるのかな」と感じたという。【榊真理子、山崎明子、反橋希美】

子供に刺激的なあだ名
 1月15日放送開始。全9話を予定し、毎週水曜日午後10時に放送されている。野島伸司さん脚本監修、松田沙也さん脚本。出演は、人気子役の芦田愛菜(あしだまな)さんら。
 舞台は児童養護施設「コガモの家」。家庭の事情で親元から引き離され、施設で暮らす子供たちが、施設内の厳しい規律や世間の冷たい視線に立ち向かいながら幸せをつかもうとする姿を描く。
 子供たちには、刺激的なあだ名が付けられている。赤ちゃんポストに置かれていた主人公は「ポスト」、貧困家庭から入所した子供は「ボンビ」、ピアノ好きで両親が蒸発した子供は「ピア美」といった具合だ。
 子供たちが、相性を探るために里子を希望する夫婦らと過ごす「お試し」のシーンや、施設長が子供たちに「大人に可愛がられなければ引き取ってもらえない」と言って上手に泣けない子供に罰を与える場面など、施設での生活を、誇張を交えて描いている。

「明日ママ」第4話 AC広告と番宣のみ…スポットCMもなし

スポニチアネックス 2014年2月5日

 児童養護施設の団体などから内容改善を求められ、番組スポンサー全8社がCMを見合わせた日本テレビの連続ドラマ「明日、ママがいない」(水曜後10・00)の第4話が5日、放送され、企業CMが1本も流れなかった。
 この夜、エンドロールまでに流れたCMはACジャパン(旧公共広告機構)の公共CM5本、同局の番組宣伝6本だけ。提供スポンサー以外の企業の、いわゆるスポットCMは1本もなかった。
 物語の舞台となった児童養護施設の描写などをめぐり、先月15日のスタート直後から賛否両論を巻き起こし、2話目(同22日)から3社がCMを取りやめ。3話目(同29日)から全社に。契約は継続しているものの、全社がCMを見合わせるのは異例。
 AC広告は第2話が3本、第3話が最初のCMから10本連続だった。第2話、第3話と同じく、この夜も冒頭のタイトルバックの後に提供テロップは表示されなかった。
 また、スポンサーに名乗りを上げていた「高須クリニック」院長の高須克弥氏(69)はこの日まで断念した。

 前回の放送では、スポンサーではない企業のスポットCMが8本放送されていた。