【熊本地震】「家に帰るのを嫌がる」「急に怒る」子供の心に異変 ケア活動活発化 相次ぐ余震に不安、熊本市6万人調査へ

産経新聞 2016年5月7日

発生から3週間を超えても、いまだ大きな余震が続く熊本地震。
相次ぐ揺れの恐怖や避難生活によるストレスの蓄積で、精神的に不安定になっている子供たちが増えている。不安をときほぐす「心のケア」のためさまざまな団体が現地で活動。熊本市は幼稚園や小中学校、高校などの子供たち約6万人を対象に心の調査を実施することを決めた。
熊本地震で大きな被害を受けた熊本県益城(ましき)町の避難所となっている広安西小学校。6日、子供たち約50人が集まり、国際NGO「プラン・ジャパン」(東京都世田谷区)の主催で、「心のケア」を目的に太鼓の演奏が行われた。途中からは県のPRキャラクター「くまモン」も登場、子供たちの笑顔がはじけた。
「地震が怖くて家に帰るのを嫌がる」「急に泣いたり怒ったりする」「言葉数が少なくなっている」。県内の児童相談所などには相次いで子供の異変に関する相談が寄せられている。6日現在、相談件数は約50件となった。
東日本大震災でも活動したNPO法人「地球のステージ」(宮城県名取市)は熊本県南阿蘇村の避難所に「こころの相談室」を開設。避難所の小学生に風景画を描かせると、「花の絵」が少なかった。楽しいことを考える余裕がなくなっているという。
医師の桑山紀彦・同法人代表理事は「東日本では津波で面的に被害を受けたが、熊本の場合は被災にばらつきが出て互いに気を使っている感じがする。人は話すことで心を整理する。気遣いが出過ぎると、心の中に閉じこもる傾向になり、心の病気になりやすい」と懸念する。
公益社団法人「セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン」(東京都千代田区)も益城町の避難所5カ所にパズルや風船を持ち込み、自由に遊べる空間「こどもひろば」を開いた。担当者は、過去の震災では揺れの体験を再現する「地震ごっこ」を通じて気持ちを整理しようとする子供がいたと指摘し、「止めずに、見守ることが大切」と話す。
東日本大震災を機に発足した「災害派遣精神医療チーム(DPAT)」も既に20チーム以上が被災地を支援している。日本赤十字社の「こころのケア」班も4日から活動を始めた。
心のケアが急務と判断した熊本市は、大型連休後に学校が再開されれば、各校に対して面談による聞き取りなどで子供の状態を把握するよう要請するという。
調査後、心のケアを図るスクールカウンセラーを増員するため、臨時教員を緊急で募集している。
県教委は益城町など被害が大きかった地域の全ての公立小中学校にスクールカウンセラーを派遣する予定だ。(天野健作、宮野佳幸)

熊本地震の被災地 週明けに学校再開へ

日テレNEWS24 2016年5月7日

熊本地震で休校を余儀なくされていた学校が週明けに、ほぼすべてで授業を再開できる見込みとなった。一方で、復旧を手助けするボランティアが7日になって大幅に減っている。
震度7を2度観測した益城町では、これまですべての学校が休校していたが、9日に授業を再開することになり、避難所になっていた教室を児童らが掃除した。
熊本県内の公立学校は13の市町村で現在も186校で休校が続いているが、9日に67校が、10日には116校で授業が始まる見通し。一部の学校では避難所を敷地内に残したまま、再開するという。
一方、避難所となっている熊本市内の小学校で6日、おう吐や下痢などの症状を訴えた23人が救急搬送されたが、熊本市保健所の調べで原因は提供された昼食による食中毒の可能性が高いことがわかった。症状を訴えている人はその後さらに増え、少なくとも31人にのぼっているが、全員、快方に向かっているという。
被災地では、住民らが後片付けに追われているが、ゴールデンウイーク終盤となりボランティアの数が急激に減っている。熊本市では、7日は募集1200人に対して登録が627人と半数ほどしか集まらなかった。
熊本市社会福祉協議会・中川奈穂子事務局長「たくさんの方々がまだボランティアの力を必要としている」
ボランティアセンターは今後も参加の呼び掛けを続けていくことにしている。

「笑」を入れて…LINEでつながる子どもたち

毎日新聞 2016年5月7日

「家ぶっ壊れました笑」「しぬなよ笑」−−。熊本地震の被災地では、子どもたちが学校の再開を待ちながら、無料通信アプリ「LINE(ライン)」を通じて友人たちとのつながりを保っている。互いを案じるメッセージや、被害をちゃかしたようにみえる表現には、被災後の生活に不安を抱える親には打ち明けられない子どもたちの本心が垣間見える。【春増翔太、栗田慎一、国本愛】
「俺ねー多分部活せんかもしれんもん笑笑」。熊本県西原村の自宅が全壊し、中学校の避難所で寝泊まりする県立熊本商業高1年、田上孝太郎さん(15)はラインにそう書き込んだ。
4月16日未明のマグニチュード(M)7.3の地震直後、ラインでつながる友人たちから安否確認が相次いだ。「みんなだいじょーぶ?」「エグい角度で傾いとる。笑」。「笑」を入れるのは、相手が深刻にならないよう気遣ってのことだ。
田上さんは高校で入ったばかりのサッカー部をやめてアルバイトをしようと考えている。自宅再建のためユニホーム代など部活の費用は親の負担になると思うからだ。「部活せんかも」と書き込んだ1分後、女子から返事が届いた。「部活したらたいへんだもんね泣」。苦境を知る親友ならではの言葉だと感じた。
友人とのラインに「救われた」と話すのは益城(ましき)町で被災した私立高校1年、藤本暉人(あきと)さん(15)だ。16日午前3時40分ごろ、いつもは冷たい態度だった同級生からメッセージが何通も届いた。「おいあきと」「マジ返信して」「たのむけん」。藤本さんが気付いたのは同日夕だった。「いつもは威張っているヤツ。でも本気で心配してくれてめちゃくちゃうれしかった」
別の友人には「死ぬかておもった」との一言を添え、物が散乱した自室の写真を送った。自宅駐車場で車中泊していて、小さな余震でも「また来るのかな」と怖い。「俺、あんまり弱音とか吐かないんです。怖いとか嫌だとか。でもラインなら素直に言える」と言う。
避難所の益城町立飯野小学校で4月24日、肩を並べて壁に寄りかかる中学3年の奥村朋佳さん(15)と秋月美柚さん(14)がスマホをのぞき込んでいた。「いまなんしよる」。メッセージが画面に浮かんだ。別の避難所にいるバレー部の仲間からだ。14日の地震以来、2人はほとんど同年代の子に会えていなかった。奥村さんには小さいきょうだいもいるため、避難所では愚痴も吐けない。でも「友だちとのラインなら、絵文字も使って素直に言いやすい」という。
「なんも、そっちは」とメッセージを返した。その後もたわいない言葉が飛び交う。「これがあるから友だちとつながっていられる」。教室の片隅で、奥村さんは小さくほほ笑んだ。

余震・避難所生活でストレス “地震酔い”患者増加

産経WEST 2016年5月7日

余震が続く熊本県で、何もなくても体が揺れていると感じる“地震酔い”の症状を訴える人が増えている。県内の医療機関の調査によると、症状に悩む多くの人は避難所などで生活。ストレスのたまりやすい環境が影響しているとみられ、専門家は「安心して体を休める場所の提供が必要」と指摘している。
熊本県宇城市の松橋耳鼻咽喉科・内科クリニックを4月19~28日に受診した人のうち、11~89歳の計48人に地震酔いの症状が見られた。内訳は男性8人、女性40人。
このうち、38人は4月14日の地震発生以前からめまいの症状で通院していた患者で、地震後に吐き気を伴うなど症状が悪化。10人は地震の後に新たに体のふらつきなどを覚えた。地震酔いの症状がある48人のうち、75%に当たる36人が受診時点で車中泊や避難所生活をしており、自律神経が乱れている人が目立った。
日本めまい平衡医学会専門会員で同クリニックの松吉秀武院長は、相次ぐ余震で平衡感覚をつかさどる三半規管に異常な負荷が加わり、さらにストレスがたまりやすい生活環境も影響していると分析。症状が悪化したり、新たに発症したりする患者は全県的に広がっているとみている。突発性難聴を発症する患者も地震前に比べ増えているという。
最初の震度7を観測した4月14日以降、熊本県などで記録した震度1以上の地震は1200回を超えた。県内では依然1万人以上が避難所で生活し、車中泊を続ける人も多い。
松吉院長は「めまいの患者はストレスへの耐性がもともと弱い人が多い」と指摘。「精神不安が続くと治りにくくなる。仮設住宅の建設など、少しでも不安を取り除ける環境づくりが急務だ」と話している。