避難の中生まれた「未来」 被災中に8人目出産

くまにちコム 2016年5月8日

「未来[みらい]」と名付けた息子は、被災後に生まれた8人目の子ども-。益城町宮園の尾崎善隆さん(35)清美さん(31)夫婦は熊本地震で被災し、避難中に三男未来ちゃんの産声を聞いた。困難な生活は続くが、10人の大家族が未来を見つめる。
4月14日。2階建てアパートの1階に暮らす尾崎さん一家はそろってリビングにいた。木山中2年の長女綾音[あやね]さん(13)や益城中央小6年の次女沙彩[さあや]さん(11)は勉強中。ほかのきょうだいは6歳から1歳までにぎやか。そんなだんらんを震度7の激震が襲った。
「みんなで手を握りあって…。私は転ばないようにと懸命に逃げました」と清美さん。アパートは倒壊を免れたものの、近所の民家はつぶれ、火の手も上がる。徒歩でたどり着いた近くの駐車場で一夜を明かした。
出産予定は27日。「無事に生まれてきてほしいとずっと祈りました」。熊本市東区のスーパー駐車場で親戚の車に分乗し、体を横たえていた16日未明の本震。泣き叫ぶ子どもたちを落ち着かせながらも、清美さん自身が恐怖に体を硬くした。おなかの子どもも硬直していると心配したが、「しっかり動いていて驚いた」。
17日に熊本市東区の県民総合運動公園に移り、車中泊を続けた。避難所になったと聞いた益城幼稚園に入った22日の昼すぎ、陣痛が始まった。通院中の益城町内の病院は断水で出産できず、主治医が手配してくれた東区の熊本赤十字病院へ善隆さんの車で急行。午後10時21分、2900グラムの赤ちゃんが生まれた。避難生活に疲れた清美さんの負担をできるだけ和らげるような安産だった。
未来と名付けたのは善隆さんの母である祖母の川野康代さん(55)。「震災が起こったけれど、一歩ずつ明るい未来を切り開く」。そんな思いに夫婦も納得したという。
5月6日、仮住まいに選んだ東区のアパートに入った。会社勤めの善隆さんは7日、益城町の自宅から荷物を運び出しながら「家族を守るため、生活を立て直さないと。これからも支え合って、普通の生活を取り戻す」と汗を拭った。
8日は母の日。「頼もしくて、優しいお母さん」。被災しながら新しい命を産み落とした清美さんに、子どもたちはプレゼントを用意した。「みんなで感謝のメッセージを書きました。中身は秘密です」。綾音さんが笑った。(池田祐介)

熊本地震で露呈したテレビ局「失態の数々」

週刊現代 2016年5月8日

「眠れますか?」じゃないよ
「夜寝られないから、昼間にウトウトしているところに、詳しい説明もなくカメラを向けられる。お年寄りは文句を言いませんが、若者は、テレビ局の人たちの不躾な態度に憤っていますよ。
どこの局か知らないけれど、十分に説明せずにお父さんと娘さんを並ばせて、インタビューした局があったんです。中継が終わった後、娘さんが『勝手に撮られた』って怒っていました。化粧もしていない顔で全国放送に映っちゃう、って」
こう話すのは、熊本市内で被災した60代の男性である。
他ならぬ熊本の被災者から、テレビ局クルーの非常識な行為を「告発」する声が上がっている。県内の避難所に身を寄せる50代女性も言う。
「避難所にヘルメットを被った人がいきなり入ってきて、深刻そうな顔で『どうですか、眠れますか』って聞いてくる。あんたらが来るから寝られないんだ、と言いたい。
夜の照明がまぶしい、と訴える人も多いです。中継で使うライトって、ものすごく強力なんですね。しかも、リハーサルの時も点けっぱなしだから、みんな早く終わらないかなって思ってますよ」
大きな災害が、マスコミにとってある意味で「チャンス」であることは否めない。しかし、今回の熊本大地震で現地入りしたテレビ局クルーのハシャギぶりは、少し度が過ぎている。
NHKの朝の人気情報番組『あさイチ』では、18日、有働由美子アナウンサーがこんなFAXを取り上げた。「熊本市内に住む友人から聞いた」という、視聴者の話だ。
「余震で崩れそうなお宅の前で、テレビ局がずっと待機しているのだそうです。すごく失礼なことではないでしょうか」
この視聴者が直に見聞きしたわけではなさそうだが、事実なら、「家が崩れる瞬間を撮るために張り込んでいた」ということだ。明らかに行き過ぎであり、これはもはや「取材」とは言えない。
「いい画」を撮るためなら何でもやる?そんなテレビクルーの姿勢は、番組からもにじんでいた。
巷で「やり過ぎ」という意見が特に多かったのが、17日にフジテレビ系『みんなのニュース』で放送された、消防隊に取材班が密着した映像だ。
暗闇の中に浮かび上がる、倒壊した家屋。画面右上には「奇跡の救出劇」という見出しが躍る。
「高齢の女性のようです。今、家屋の外へと出されました……」「おばあちゃん、無事なようです! 今救出されました! 大丈夫ですか!」
消防隊に救い出され、横たわる白髪の女性が大写しになる。夫とみられる男性に、リポーターは笑顔でマイクを向けた。
一見すれば美しい光景かもしれない。しかし、ネット上ではこんな意見が寄せられた。
〈救出された瞬間インタビューしたりそこまでする必要あったんかな〉
〈二次災害とかもあるかもしれないのに。足手まといにもなるかもしれないのに〉
この映像自体は、確かに「スクープ」だろう。だが、極限状態におかれた被災者にカメラとマイクを向けてまで、報じる必要があるのか。危険な状況下、しかも夜間。消防隊員たちに与えた負担も小さくなかったはずだ。
さらにネット上では、現地入りしたテレビクルーの無神経な行為が、「大炎上」を招いた。
「関西テレビの中継車が、熊本県内のガソリンスタンドで列に割り込んだ」
「毎日放送のアナウンサーが、豪勢な弁当を被災地で調達した」
といった情報が瞬く間に広がり、猛烈な批判を浴びたのだ。関西テレビと毎日放送は、これらを事実と認め、謝罪した。
前出と別の、被災者の男性が言う。
「ガソリンスタンドは、どこに行っても長い行列で、30分で給油できればラッキー。だいたい1時間はかかります。コンビニやスーパーも、まだ商品がスカスカのところもある。割り込みや買い占めがあるとすれば、許しがたいことです。
ホテルもマスコミ関係者で一杯になっている、と聞きました。『避難所にいたくない』という親戚が部屋を取ろうとしたら、熊本市内や周辺のホテルはほとんど押さえられてしまっていたと。休息の場所を最も必要としているのは、地元の人じゃないんですか」
テレビ報道の現場は、誰に向かって何を伝えるべきか、また自分たちが視聴者や取材相手にどう思われているのか、見失っている。そう懸念するのは、ある民放キー局元幹部である。
「ヘルメットを被ったリポーターが、余震が起きると『危険です! 身の安全を確保してください!』と怒鳴っていたけど、視聴者からすれば『誰に向かって言ってるの?』と思ったでしょう。現地の被災者は、テレビなんて見られないんですから。
また、仕方なく車の中で寝ている人に向かって、東京のスタジオにいるキャスターが『車の中にずっといるとエコノミークラス症候群になるから、出てください!』と叫ぶ番組もあった。何様のつもりで作っているのか」
テレビ報道の存在意義とは?今回、被災地でテレビ関係者が見せた振る舞いは、そんな疑問を国民に抱かせた。
彼らが信頼を取り戻す術はあるのか。同志社女子大学教授で、元毎日放送プロデューサーの影山貴彦氏は、こう提言する。
「震災報道が過熱する最大の原因は、行き過ぎた視聴率競争だと思います。テレビのスタッフに、視聴率を考えない者はいない。いい映像が撮れそうだと興奮してしまうのです。
だからせめて、大きな災害の時だけでも各局とスポンサーが連携して、視聴率調査をストップするべきです。『抜いた、抜かれた』のスクープ競争をやめれば、報道の姿勢も変わるはず」
災害の時にテレビが担う役割を、もう一度考え直したほうがいい。

「義援金」に関する税務上の取扱い

マネーの達人 2016年5月9日

Q:熊本地震により被害を受けられた方を支援するために義援金や寄付金を支払おうと思いますが、この場合の税務上の取り扱いはどのようになりますか? また、義援金を支払うのが個人と法人では取り扱いは異なるのでしょうか?

解説

基本的な取扱いとしては、個人が支払った場合は、寄付金控除の対象となり、法人が支払った場合は、全額が損金の額に算入されます。

1. 災害対策本部・日本赤十字社・募金団体等への寄付金
最終的に、国または地方公共団体に拠出されるものであれば、個人が支払った義援金は「特定寄付金」として寄付金控除の対象となり、法人が支払った義援金は「国等に対する寄附金」に該当し、全額が損金の額に算入されます。
ただし、救護活動を行っている NPO 法人等に対して支払った場合は、税務上の取扱いは異なりますので、注意が必要です。

2. 募金団体が義援金を地方等に拠出するかの確認方法
基本的に義援金の受付専用口座が設けられているかが一つの判断基準となります。
この場合、募金団体は、募金者に対して預り証を発行し、確かに国または地方公共団体に拠出されるものであることを示すことがよいと考えられます。
ちなみに、この預り証には印紙を 貼る必要はありません。

3. 被災された取引先に対する寄付
法人が被災した取引先に対して、通常の営業活動を再開するための復旧過程にある期間において支出する災害見舞金は、交際費等に該当せず、損金の額に算入されます。

4. 自社製品を被災者に提供した場合
法人が不特定多数の被災者を救援するために緊急に行う自社製品等の提供に要する費用は、寄附金や交際費に該当せず、広告宣伝費に準ずるものとして、損金の額に算入されます

要するに
最終的に国または地方公共団体に拠出される義援金や寄附金については、寄付金控除の対象、もしくは全額損金算入となります。
また、法人が災害見舞金を支払ったり、自社製品を拠出するなどして支援する場合も、一定の要件に該当すれば、損金の額に算入されます。(執筆者:小嶋 大志)