社会福祉法人 児童福祉 児童養護施設

使命・構想・目標のロードマップ

使命・構想・目標のロードマップ

 福祉施設は、社会福祉法人における一つの事業所との位置づけであり、事業所運営を如何に進めていくかに重点が置かれているのが通例であり、経営(マネジメント)と言う観点は、軽視しがちである。
 しかし、国及び自治体からの補助金(税金)が運営資金の財源となっており、適正な資金運用は、営利団体である企業よりシビアであるべきであろう。企業経営とは「利潤を追求すること」が第一義として挙げられるが、非営利団体の場合、その利潤とは、何であろう。筆者が福祉施設の中でも児童養護施設での経験が長いため児童養護施設を例に挙げる。
 児童養護施設の場合、措置委託制度により行政が利用児童を決定し、利用の開始から解除までを法令に基づいた行政権限で利用児童を措置し、その措置児童を公営や民営の児童養護施設に委託し、その措置委託費として補助金が支払われる。そのため、経営上、資金面での苦労は営利企業と比較すると少ないと言える。何故なら、最低限の経営資金は措置費として担保されているからである。このように表現すると、「児童養護施設は経営について追求しなくても存続できるのではないか」との誤解が生じる。児童養護施設は、税金により委託運営されているが故に、適正な資金運用と社会貢献に対する成果を明らかにする必要がある。
 つまり、社会福祉施設における利潤とは、社会貢献度であろう。具体的には、福祉の心として示される、サービスを受ける利用者、その保護者、利用者を取り巻く環境、福祉施設で働く職員、これらすべての人々が幸福感を享受できることである。そのために、措置委託費が運用されていくのである。例えば、生活環境改善のために、施設整備で改築事業を行う場合、児童養護施設は、非営利団体故に、純利益による積立金は、皆無に等しい。(誤解を避けるために説明するが、正確には雑収入が発生することもあり利益が完全0と言うわけではないため「皆無に等しい」と表現した。)そのため、施設整備積立金等は、措置費収入を計画的に運用し積立金を捻出しておく経営努力が必要となる。
 児童養護施設における利潤とは社会貢献度であると定義したが、社会貢献度と言う表現は大儀すぎて具体性がないため、経営を行うための指針として、働く職員に提示しても漠然としており、成果に対する効力が見込めない。そのため、児童養護施設の使命(ミッション)を指し示す必要がある。
 児童養護施設におけるミッションとは何か。ミッションには、行動が伴わなければならない。達成度が計れない事柄でも構わない、大切な事は、簡潔明瞭つまりシンプルな内容であり、働く職員が明確に理解し、そのミッションを目指す上で自分の役割が見いだせることである。社会福祉法人の理念は、永久に変化しないミッションと言えるが、児童養護施設等の事業所単位でのミッションは、永久不滅にこだわる必要はない。社会は刻々と変化しており、時代の変化に応じてミッションが変化していくことは、至って自然なことであろう。
 ミッションを導き出す上で気をつけなければいけないことがある。それは、必ず人に影響を及ぼす内容でなければならない。社会福祉事業の目的の一つとして、「人の成長」を定義付けることもできる。例えば、福祉サービス拡大のために事業所数を増やしていく、サービス向上のために、最新機器を導入する等は、ミッションとしては成立しにくいのである。福祉サービスを○○地区の皆様に提供しよう。○○の症状に対応できる機器を導入しサービスを向上させよう。であれば、もっともらしく響くが、これらは、ミッションと言うより目的である。サービスの恩恵を受ける人々を増やそうという目的となる。
 ミッションを導き出す上で重要なことは、
①ニーズを知り、
②成果を得るための能力が備えられているかを確かめ、
③どの様な結果を大事に思うか。
 を考えなければならない。
 そして、その結果を得るために
①機会を得ることができ、
②他の組織にはない優れた能力を有しており、
③そのための関わり合いを積極的に行っていく行動力が必要である。
 以上の観点から、児童養護施設のミッション(使命)を考え導き出される例を挙げたい。
 「子どもたちとその保護者、働く職員が幸福感を得られる環境を提供する。」
 幸福感を得たいと言うのは、おそらく世界中の誰もが願っていることであろう。つまり、それはニーズであり、児童養護施設の人材、資金、関係機関との連携と言う武器は、戦略次第で、優れた能力を発揮する。環境とは、空間的環境、時間的環境、人間関係的環境であり、それらの環境を通じて幸福感を得て貰うには幾多の困難が待ち受けていることであろう。成果を得るためには、集中力、勤勉さ、意欲、発見、柔軟性等が組織と職員に求められるのである。そのことを通して、組織と職員は成長し、成果へと繋がっていく。
 しかし、ミッションは、向かうべき到達点であり、そのみちのりは遠い。見通しの良いアスファルトで舗装された道路は快適にドライブ出来るが、でこぼこで曲がりくねった道でも良いのである。到達点に向かうための道が必要である。それが、ビジョン(見通し)である。次は、ビジョン例を挙げる。
・子どもたちが健やかに成長できる環境を提供する。
・子どもたちの背景にある家庭環境に関わり助言を行い家庭復帰を推進する。
・関係機関との連携を緊密にし、家庭復帰や社会自立に向けての環境を整える。
・職員が生き甲斐を持って働ける職場環境を提供する。
 ビジョンは、ミッションに到達するためのロードマップである。一本道でなくても良いのである。ロードマップが明確に提示してあれば、達成すべき目標が設定できる。
 達成できない目標は無意味である。事業とは成果が伴わなければならない。成果は、目視できたり、数字で表現できたり、社会に影響を与えたりなど、動的であることが重要である。また、成果には、長所や短所があってしかるべきである。短所は、改善したり廃棄したりなどの対策を採れば良いのである。
 では、ビジョン例を元に目標を考えてみる。
・家族関係の疑似体験ができるよう、保育士(母親)、児童指導員(父親)の役割分担を子どもたちが分かりやすいように行う。
・家族旅行に類似した体験となるよう、少人数での一泊旅行を企画、実施する。
・家庭支援専門相談員に専門性を持たせ、家庭訪問や家族面談等の実施を推進する。
・家庭支援専門相談員は、心理療法士と連携し、人格障害や精神疾患の保護者に対して対応する。
・個別対応職員に専門性を持たせ、被虐待児対応についての指針を検討する。
・各種関係機関との協議はすでに行っているが、継続していきビジョンについての合意が得られるように提示する。
・職員ひとり一人に対して自己覚知へのアプローチを行う取り組みとして、施設長との面談を実施する。
 目標には、具体性が必要であり、必ず結果が伴う内容とする。具体的な行動が伴わない目標は、成果に繋がらないからである。また、目標は、職員が自分の役目を認識しやすいように設定すべきである。自分の役目を認識することによって、意欲へと繋がっていくのである。目標は、多岐にわたりすぎると目移りしすぎて中途半端になる可能性があるため、目標の項目は、絞り込む必要がある。達成状況に応じて再設定していけば良いのである。ここに、戦略が必要である。効率的に目標達成を果たしミッションへの成果をあげていく。そのためには、何から始め、何に重点を置くか、誰をリーダーにして行動を起こすのか、資金をどの程度投入するのか等々の企画力が求められる。この企画(プラン)の段階にこそ戦略が必要であり、その戦略には柔軟性がなければならない。それは、実施の段階でも状況に応じて戦略が変更できる勇気を勝ち得るためである。時にはイノベーション(革新)の機会が訪れ、企画を廃棄し、1から企画を組み立て直すこともあり得るからである。
 目標は曖昧ではなく明確でなければならない。頑なではなく柔軟でなければならない。緩慢ではなく俊敏でなければならない。何よりも発展が望めるものでなければならない。

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