社会福祉法人 児童福祉 児童養護施設

施設整備事業概略

施設整備事業概略

 福祉施設の建物は、年々減価償却していく。鉄筋コンクリート造でも固定資産的耐用年数は、39年となっている。従って、現存する福祉施設は、必ず、建て替え事業が発生するのである。しかし、それは、30年~50年に1回の周期であり、同人物が2度、建て替え事業を経験することは、稀である。
 つまり、建て替え事業の担当者は、殆どの場合、初めての経験なのである。また、制度は、少しずつ変化している。補助金制度の頃は、国庫協議に於いては民間施設の書類作成が生じていたが、交付金制度に於いては、国庫協議は、完全に自治体と国の協議であり、民間施設が書類を作成することはなくなった。
 従って、現時点での情報が、未来永劫まで通用することはない。ただ、冒頭でも述べているとおり、殆どの担当者は、初めての経験であり、建て替え事業のイメージすら描けないのが現実であり、そのイメージ作りの参考になるよう概略をまとめた。
 まず、資金計画を策定し、法人の建設資金限度額を把握する。それを予定価格とし、設計士にその価格内で、設計図を描いて貰う。これが、事業の基本となり、事業がスタートすることになる。

1.理事会決議
 建築事業を行う場合は、まず、理事会にて事業の概要を伝え、決議・承認を受けることから始まる。これを議事録に記載することが重要である。
 建築資金試算表、資金計画及び借入金返済計画等を作成し、理事会で提示する。理事会決議の基礎として、経営的に事業が立ち上げられるかどうかの検討が最も重要である。
 建物を建造する。これが現実の事業であるが、法人の理念を、その建物に注入していくことが大切であり、それが、環境作りと言う視点になり、施設の個性へと繋がっていく。
 建築事業は、施設単位の事業ではなく、法人単位の事業である。つまり、施主の代表者は、理事長となり、各種書類への押印は、法人印になる。法人本部と施設所在地が離れた場所にある場合は、この法人印押印で苦労することになる。

2.自治体との協議
 理事会で承認を受けたので、早速、建築事業を開始しようとの考えは、早計である。自治体に理事会承認の内容を伝え、理解を求める必要がある。それは、建築費用の補助金申請に関わり、竣工後の措置費支弁にも影響を与えるからである。自治体には、事業計画をレポートとしてまとめ、建築事業の必要性と有効性を明確に示す必要がある。
 また、事業前後の措置受け入れ計画や、定員を増員する計画であれば、社会福祉施設職員配置基準を再確認し、職員配置計画を策定した上で職員雇用計画等を示せば、自治体担当者も理解しやすい。
 自治体が交付金申請を行う場合は、「次世代育成支援対策施設整備計画協議」用の評価ポイントの算出が関わってくる。資料を参考にポイントを仮計算し、ポイント数が50以下の場合は、ポイントを稼ぐために何をすべきかを計画していくことになる。勿論、何ポイントが採否のラインかは、予算年度と申し込み状況によって変化するため予測は不可能である。自治体施設整備担当者と共に対策を検討していくことになる。
 自治体発行の施設整備補助金交付要綱等のマニュアルを自治体担当者から入手する。今後の自治体とのやりとりは、そのマニュアルによって進められていくことになる。実務担当者は、熟読しておくことが大切である。
 自治体施設整備担当者が書類整備を行う場合、その書類は、上司や予算編成に関わる部署を通らなければならない。つまり、書類整備に関わる書類提出を施設の実務担当者に求めるとき、本来の締め切り日より早めに提出を求めて来ることになる。
 その様な理由で、「~の資料を提出してください。?日までに」の?日までの期間が2~3日の場合も生じて来る。そのあたりの事情を充分に理解し、自治体施設整備担当者に全面的に協力していく必要がある。

3.建物設置場所の決定、事業種別・事業内容の決定、仮設園舎用地探し
 新規事業の場合は、土地選定から始まるが、建て替え事業の場合は、土地が存在しているので、現状の土地で建て替え事業が可能かどうかのチェックが必要である。現存する建物の建設当時と現在では、建築基準法の改正が行われており、敷地と道路の関係、建坪率等は、設計士等専門家に助言を求めておく必要がある。
 また、用地現況調査(土地の測量を行い公図を確定)、地質調査(地中障害や地盤強度も併せて調査)、社会福祉施設老朽度調査、耐震診断、テレビ受信障害調査、アスベスト調査等の調査を実施しておく必要があり、これらの経費として、300万円~500万円程度を準備する必要がある。
 これらの調査は、経費が掛かるから省略しようと考えがちであるが、最低限の必要経費として捉え、必ず実施しておくことが大切である。
 事業種別や事業内容は、社会福祉施設の継続だけであれば、特に、追記することはないが、建て替えを機に追加事業を申請する場合は、事業内容をしっかりと吟味し事業計画を明確にしなければならない。
 余剰敷地が存在しない限り、現存建物で生活している人が退去しないと解体が始められず、建築が進捗しない。従って、仮生活の場が必要になる。仮設園舎を建てる用地確保が必要であり、その借地代、プレハブで園舎を建設するにしても定員数にもよるが、1億円程度の費用を要することになる。駐車スペースが確保できなければ、月極め駐車料金も発生する。この仮設に関する補助金は、1千5百万円程度であるため、例えば、用地は、自治体管理の用地を都合して貰う、プレハブは、レンタルを探す等の工夫が必要になる。但し、仮生活と言えども最低基準を満たすことが必要であり、レンタルプレハブで条件を満たすのは難しく、結局、仮設園舎の建設が求められることがある。余剰敷地があれば、現存建物で生活しながら、新規建物の建設が進められるのは言うまでもない。

4.建物構造の決定・資金計画(概算見積書)、地元の同意(町内会長へ説明)
 木造か重量鉄骨造か鉄筋コンクリート造かを明確にする。これによって、入札参加業者が絞り込まれ、勿論、資金面でも大きな違いが生じる。建築後は、減価償却率に影響してくる。
 資金計画は、十分に検討を重ねる。本体工事費以外にも調査費用や建築確認申請費用等の諸経費で700万円前後は掛かり、補助対象にならない部分は、完全自己負担となる。融資を受けるにしても、その後の返済計画を詰めておかなければ、経営破綻に追い込まれる危険性もある。また、建設工事では、様々な要因により追加工事費が発生することは、よくあることであり、その分も見越しておく必要がある。可能な限りの状況予測を試み、事業費の限界額を導き出しておかなければならない。
 この段階で、地元の同意を得ておく必要がある。まず、自治会長へ説明に行き、地域住民への説明会が必要かどうかの打診を行う。説明会が必要であれば、その段取りを進める。実際には、設計図が完成した頃に、説明会の開催又は、説明プリントの配付と言う段取りになる。

5.理事会決議
 設計業者入札を実施するにあたり、理事会の承認が必要である。これまでの事業経緯の報告と共に、入札の段取りを確認する。
 特に、事業費の限界額については、十分に協議を重ね、理事全員が納得した上で、限界額を設定する。つまり、この限界額以下で予定価格が設定されることが重要である。

6.設計業者指名競争入札(自治体又は経理規定に準ずる)
 自治体によって、設計費の補助がある場合とない場合があるが、自治体単独補助がある場合は、随意契約ではなく、競争入札が求められる。自治体のマニュアルに従うことになる。建築と比較して費用が少ないので、一般競争入札より指名競争入札で十分と考えられる。入札の流れは、後述する施工業者入札の段取りと類似しているので、ここでは、省略する。

7.基本設計を自治体に提出(承認を得ないと予算化出来ない)
 設計事務所が確定し、担当設計士が決まったら、早速、基本設計作成に着手する。この基本設計作成は、3~4ヶ月は、最低必要である。運営者だけの意見で進めるのではなく、建築準備委員会等を立ち上げて、一般職員の意見を吸い上げていくことを薦める。
 ある程度、完成したら、自治体からヒアリングを受けることになる。最低基準を満たしているかを中心に、ハートビル法や地域の条例等が厳守されているかどうか等のチェックを受ける。このチェックにパスしないと、自治体予算化の段階にステップアップ出来ないことになる。

8.実施設計と積算書を自治体に提出(国庫協議・自治体予算化資料)
 基本設計の承認を得たら、実施設計作成に着手する。これは、国庫協議の基礎資料及び、自治体予算化の基礎資料として活用される。また、積算書を作成する。これは、一般競争入札における「入札予定価格」になる。この積算内訳書は、紙の厚さにして10cm程度になるため、チェックする気が失せるが、設計士から概要の説明を受けて、大体の内容を理解しておくよう心がける。また、理事会で設定された法人限界額を超えている場合は、積算の削減を設計士と協議することになる。
 補助対象とは、建物に関わる部分で、土地に関わる部分は、基本的には、補助対象外になる。従って、外構工事等は、全てが補助対象として認められない場合があるため自治体担当者と充分に協議する必要がある。

9.国庫協議内示又は自治体単独内示
 国庫協議用の提出書類は、基本的に自治体職員が作成するが、例えば、設計図等の添付書類を揃える必要があり、自治体職員に施設の情報を伝える必要がある。提出書類完備までに数度、自治体とのヒアリングが行われることになる。
 現在は、実際に役所に出向いてヒアリングを受ける場合と、電子メールやFAXを利用して情報交換を進める等が同時並行で行われる。IT化を利用することによって事業にスピード感が加わる。福祉医療機構や社会福祉協議会との情報交換でも電子メールを利用するシーンが発生する。
 もし、仮に実務担当者が「パソコンは使わない」とのポリシーを持っている場合は、速やかに改善努力をする勇気が求められる。

10.理事会決議
 これまでの事業経緯を報告すると共に、福祉医療機構等から融資を受ける旨の承認を得ておく。この議事録は、機構への提出書類になるため、必ず、決裁を得ておく。決算理事会、中間理事会、予算理事会と、年間3回の定例理事会があるので、理事会承認が必要な案件は、計画的に議事に載せるようにする。

11.福祉医療機構へ借入書類提出(受理票受取が契約の条件)
 福祉医療機構より「福祉貸付資金借入申込の手引き」を取り寄せる。最近は、書類フォームをCDに収めてあり、それも同梱されるので、手書きより、タイピングでの作成が主流である。
 自治体に意見書の作成依頼を行ったり、国庫協議内示の厚労省文書が求められたり、公図や全部事項証明書の添付が求められる。また、保証委託を申し込むか連帯保証人を立てるかを決断する必要がある。保証委託を申し込む方が、簡易な手続きで済む。勿論、委託料が、融資額に応じて発生する。
 提出すると、不備があれば、指摘の連絡があるため、即座に対応する。承認されれば受理票が送られてくる。

12.社会福祉協議会融資申請(前年度に予算化予約)
 社会福祉協議会等の融資を受ける場合は、申請する。前年度には、申告しておくようにしておく。これは、受ける場合と受けない場合があるので、詳細は、省略する。

13.確認審査書完成(民間審査機関)
 実施設計の内容が有効かどうかの確認審査を行われる。自治体の審査機関でも民間審査機関でも、どちらでもよい。確認審査を業務委託する事になるため経費が生じる。

14.自治体とヒアリング(書類調整)
 確認審査の承認印が揃ったところで、自治体とのヒアリングで事業内容を詰めていく。特に、積算書の数字が適切かどうかがポイントになる。

15.設計士対自治体監査課
 この段階では、殆ど、最終確認である。修正を求められた場合は、即座に対応することになる。

16.理事会(公告内容・予定価格)
 積算書の自治体承認を受けたら、それは、予定価格の根拠になる。施工業者入札に関しての計画書を提示し、理事会承認を得る。入札は、契約に関する行為であり、本来は、法人の経理規定を元に進められるが、補助金事業であり、自治体のマニュアルに準じて進めていくことになる。

17.法人対自治体監査課
 法人として、この事業を実施する旨の自治体との相互確認を行う場となる。

18.自治体より結果通知
 実施設計図及び積算書についての承認結果が通知される。これがないと、入札の段取りに進めない。
 この時点で、補助金事業として認識されたことになるため、事業としては、第一段階クリアと言える。

19.公告(期間を2週間に設定)
 結果通知が届いたら、早速、施工業者入札の公告を出す。建通新聞等の業界紙を利用することになる。掲載料は、掛からない。或いは、ホームページや法人事務所の玄関等にも掲示する。
 公告には、問い合わせ先として設計事務所を提示しているが、施工業者は、営業活動の一環として、問い合わせをしてきたり、訪問してきたりするため、各者に対して平等に対応するよう心掛ける。それは、談合を疑われないために必要な対応である。
 贈答品や飲食等の接待を決して受けないように気をつける。

20.入札参加締め切り
 締め切り日時は、厳守する。締め切り後の書類提出は、きっぱりと断る潔さが求められる。
 自治体のホームページで施工業者として指名停止を受けていないか等のチェックを行い、仮に指名停止業者であれば、リストから外す。殆どの場合、指名停止業者が入札参加を申し込むことはない。指名停止期間を勘違いしている場合も、稀にあるため、確実にチェックするようにする。

21.入札参加有資格候補者報告書提出
 自治体に報告書を提出。自治体によっては、自治体外の企業が単独で入札に参加するのではなく、地場企業とのJV(Joint Venture)でないと認めない等のルールがある場合もある。自治体発行のマニュアルで再度、リストを確認した上で、提出することになる。

22.自治体より審査結果通知書
 自治体でも指名停止の有無を確認し、特に問題がなければ、審査結果通知書を発行する。

23.理事会(入札参加業者決定)
 理事会にて、入札参加業者決定の承認を得る。この決議が議事録に残されていないと、入札が無効になることもあり得るため、必ず、実施しなければならない。
 予定価格については、設計によって積算された価格となるが、その価格の承認を得ると共に最低価格の設定も行う。但し、最低価格については、議事録に記載する必要はない。法人によっては、理事長単独の決済とする場合もある。

24.業者へ入札参加資格確認結果通知
 理事会承認を受けて、施工業者に結果通知を郵送する。入札説明書を必ず、添付する。この入札説明書に現場説明日や入札日、最低限のルール等を明記する。

25.現場説明(図渡し)
 設計事務所が設計図一式を入札参加業者に配付。施工業者は、コピー代程度を支払って配付を受ける形になる。施工業者は、この時点から自社において、積算作業に入り、入札に臨むことになる。

26.福祉医療機構提出書類受理通知
 この「受理通知書」を受け取る前に入札を行うと、融資が無効になる。必ず、受理通知が届く日付を機構と十分に打ち合わせた上で、入札日を設定するようにする。

27.施工業者選定入札
 入札は、不正を疑われることがないよう、公明正大に行う。台本を作成し、事前にリハーサルをしておくとよい。自治体職員が1名以上、オブザーバーとして出席し、不正がないかどうかのチェックを行う。そのために、出席に関して委嘱状を自治体に提出する。

28.入札結果一覧表公示(2週間)
 入札結果を法人事務所の玄関等にて掲示。それ以上に大々的に公示する必要はない。公示をしたという事実が必要である。

29.請負契約(工事請負契約書)
 施工業者と工事請負契約書を取り交わす。契約書には、設計図や積算書も含まれるため、一式で厚さにして50cm程度の分厚い状態になる。所定の位置に印鑑証明が発行できる法人公印で押印する。

30.自治体へ各種書類提出
 施工業者入札の結果報告文書を速やかに提出。この時点より、自治体担当者は、補助金交付に向けて、本格的に準備を進めていくことになる。
 工事監理については、余程の事情が生じない限り、実施設計を作成した設計事務所が請け負うと考えられる。その際は、経理規定の条項を適用し、入札ではなく、随意契約を行うことになる。その旨、自治体に報告する。

31.起工式
 建築事業の実質的なスタートラインである。起工式の形式は、宗教によって異なるが、施工業者に相談して、一般的な形式で行うと良い。施工業者は、勿論のこと、設計事務所、自治体担当部署等を招待して、執り行う。弁当配付、喫茶、軽食、会食等は、資金の状況で判断する。茶話会で、紅白まんじゅうをお持ち帰りいただく程度でも十分である。最も、大切な事は、関係者の顔合わせと言うことになる。各関係者とのコミュニケーションを深めるよう心掛ける。

32.旧建物財産処分手続き開始(補助金事業の建物の場合)
 特殊な事情がない限り、建て替えの場合は、現存建物の解体からスタートする。その建物の財産処分手続きについて、自治体担当者に相談し、必要な書類の助言を受けておく。古い書類のコピーが求められる場合があるため、事前に倉庫の奥深くから取り出しておく。特に重要な書類は、補助金関係の書類だが、旧建物は、殆どの場合、30年から50年前の事業であるため、当時の書類が整理保管されていないと、書類探しは大変な作業となる。

33.工事着工(週1で業者と施主打ち合わせ会)
 杭打ちを行った時点を着工日に設定するのが一般的である。この時点から、一週間毎に建築定例会議を行い、施主として、建築状況を把握するように努めることになる。この定例会議で、例えば、壁紙の色や材質を指定したり、設備の最終決定を行ったり等、具体的な判断を求められることもある。建築事業の責任者は、理事長となるが、定例会議には、施設長や実務担当者が出席し、理事長に後日、報告する形で十分と考えられる。
 また、近隣住民からの苦情・要望が寄せられてきたばあい、施工会社と法人で、内容による役割分担を設定し、近隣住民に真摯に対応していくことが大切である。建築工事中は、現実問題として、近隣に迷惑を掛けているのは事実である。近隣から問い合わせがあった場合は、即座に対応すると共に、月間工事予定或いは週間工事予定表を作成し、近隣に定期的に配付するなどの情報開示を心掛けることが大切である。

34.理事会決議
 補助金及び融資計画を理事会で承認を得る。この議事録も、自治体や機構等から提出を求められる。補助金や融資の入金や業者への支払い等、経済活動の状況は、必ず、理事会で報告し、議事録に載せるようにする。定例理事会だけでは、間に合わない場合は、臨時理事会を開催することもある。定款で理事会書面出席の項目がなければ、臨時理事会のために、全理事との日程調整が必要になる。

35.機構への融資申請
 一回目の融資申請を行う。「貸付契約・資金交付・事業完了等の手続き」が郵送されてくる。マニュアル通り書類を揃える。揃えた書類を送付すると、抵当権設定登記手続きの必要書類が送られてくる。指示通りに準備を進めることになる。抵当権設定登記手続きは、素人では、大変な手続きのため、司法書士に依頼した方が確実である。8万円程度の経費を要する。この抵当権設定登記手続きは、一回目融資申請時だけである。2回目以降は、融資申請だけ行うことになる。
 建築事業用の口座を開設しておく。融資や補助金の入金口座とし、施工会社や設計事務所への支払いも、その口座から行う。これが、資金の流れの証明になり、その通帳のコピーを機構や自治体に提出することになる。

36.融資償還
 融資を受けた1年後から利子支払いが発生。2年後から元金償還が始まる。定められた日程で、確実に償還を実行していくことになる。
 償還開始年度の資金収支分析表を予測作成する。経営状況によっては、人件費や事務費の削減が必要になる場合もある。また、将来の修理修繕に向けての積立金の計上も考慮する必要がある。
 最も大切なことは、融資償還を確実に行っていくことである。経営とは、多角的な経営分析を行い、未来の後継者達が、経営を引き継いでいけるよう調整しておくことも重要である。

37.出来高中間検査(自治体)
 施工費や工事監理費は、出来高払いが原則となる。従って、出来高が確定しないと、支払われないため、業者としては、資金繰りの面で不利益を被ることになる。そのため、年度毎の出来高検査と共に、年度途中で中間検査を受けるのが一般的である。例えば、工事進捗率50%で出来高検査を受けて承認されれば、施工費の50%が支払われると言うことになる。
 出来高算定表や施行写真他、自治体への資料準備を施工業者や設計監理が行う。

38.補助金精算請求(年度毎の国庫協議)
 中間検査を受けた場合は、その時点で、補助金の精算請求を行うが、年度が終了した時点でも出来高検査を受ける。国庫協議における交付金申請は、年度毎に予算化されるからである。自治体から所定書式の書類提出を求められるので、速やかに準備し提出する。

39.旧建物財産処分(竣工年度に手続き完了)
 旧建物の解体が完了した時点で、その財産は、滅失しているため、財産処分となる。ただし、登記簿変更や、会計上の建物除却処理は、新建物との切り替えで行えば、事務処理が一度で済む。反対に、その様な対応をしなければ、一時期、建物資産が全くない状況になり、それで、施設運営を行っているとの矛盾が生じてくることになる。

40.竣工
 竣工後、建物の引き渡しを受けたら、引っ越しとなる。その前に、備品等を搬入。初度設備として、購入している場合が殆どのため、備品購入に関しても、入札結果書類又は、随意契約に至る議事録等や、見積書・請求書等を確実に保管しておく必要がある。
 棟や部屋の名称を明示したい場合は、施工中の定例会議で、設計士に指示しておく。殆どの場合は、設計士より「どうしますか」と問い合わせてくる。

41.出来高完了検査
 自治体による出来高完了検査を受ける。この承認を受けたところで、支払い残金の殆どを業者に支払うことになる。ここで、殆どと言う表現をしたのは、機構の最終融資が2ヶ月後になるからである。

42.落成式
 落成式の規模は、単純に資金状況によって決まる。竣工前に招待客のリストを精査し、招待状を送付し、出欠の回答を受けておく。招待状に明記された式次第の内容に応じて、招待客は、祝い金等の準備をすることになる。祝い金が必要ない場合は、その旨、招待状に明記しておくことが必要である。
 落成式で記念品を配付する計画であれば、既製品にするのか、手作り品にするのか、早い段階で決定しておく。手作り品の場合、準備期間も想定し、計画を進めていくことになる。

43.実績報告書提出・定款変更
 自治体や機構等に実績報告書を提出する。竣工し建物の引き渡しを受けた時点で、登記簿変更を行う。もし、狭あい道路のため道路拡幅工事を行っている場合は、土地の形状が変化している場合がある。登記に関する一連の変更を行った後で、定款変更を行うことになる。
 勿論、登記簿変更や定款変更は、その内容を理事会にて承認を得て、議事録に記載しておく必要がある。変更した公文書は、自治体や福祉医療機構から提出を求められるため、事業所保管分も含めて、3通以上、発行して準備しておく。

44.竣工2ヶ月後機構最終融資(融資額の1割)
 機構から最終融資が行われる。融資総額の10%である。入金されたら速やかに業者に支払う。
 ここまでで、施設整備事業が完了となる。しかし、この先、20年から25年間、融資返済が続いていくことになる。実務担当者が若ければ、返済終了まで、その担当者が関わることになるが、それは、稀なことである。大抵は、担当者に変更が生じることになる。
 施設整備に関する一連の書類を系統的に分類し、保管する。特に公印が押印されている文書は、書類の重要性を精査し、重要度が高い書類は、金庫に保管する必要がある。
 返済計画書や長期修繕計画書は、将来的に何度も確認する書類である。金庫等、分かりやすいところにファイルを置いておく。
 つまり、現在の実務担当者は、未来の担当者に対する配慮を怠らないことが重要である。

 建物の老朽化等で改築事業が行われる場合、そのプロジェクトに、ぜひ、一般職員も積極的に参加できる雰囲気作りを心がける。建物の建て替えには、夢と希望が詰まっている。建物が原因でなし得なかったノーマライゼーションへの取り組みが可能になり、より家庭的な間取りへの変更も可能である。経営者だけで担うのではなく、実践現場の意見を子どもたちの代弁者としての意見として吸収することが大切である。また、建て替えは、行事予定等のスケジュールを共有したり、ホールや応接室等の予約をしたり、車の予約をしたり、連絡事項は、掲示板や園内メールで伝えたり、ケースファイル等を共有したりなどを一元管理できるように、IT化を進めていく良い機会でもある。
 新会計基準になり、土地・建物が、法人会計から施設会計に移行されたが、建設事業は、各施設の事業ではなく、法人事業になる。従って、判子は、法人印であり、代表者は理事長である。各種契約も、すべて、法人印で行うことになる。
 つまり、本来は、理事長が行うべき業務を、実務担当者は、代行して行うわけである。そのため、常に情報を理事長に報告し、指示を得ることが重要である。
 施設整備事業の日常業務として各業者からの営業訪問対応も、挙げられる。次から次へとやってくる営業に対して、てきぱきと対応し、必要を要しない営業を、きっぱり断る適正な判断も重要である。また、談合を認めない姿勢も、補助金事業では、特に求められる。設計・建築・解体等、随意契約ではなく、入札による業者選定が必要になる。他にも、備品購入や看板等の設置、ゴミ置き場の整備等、たくさんの雑事があるため、次の仕事の予測を常に考えて、計画を実行していくことになる。
 特に、新規事業を立ち上げる場合は、更に準備項目が増加する。また、新規事業の新規雇用契約や、定員増の場合の新規雇用計画も進めていかなければならない。
 事業の実務担当者は、頭を柔軟に保ち広範囲を見渡し段取っていく、機知に富んだ能力が求められることになる。

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