虐待で乳児の左目失明、傷害容疑で母親逮捕/横浜

カナロコ by 神奈川新聞 10月4日(金)

生後1年に満たない長男を虐待し左目を失明させるなどしたとして、戸部署は3日、傷害の疑いで、横浜市西区浜松町、アルバイトの女(31)を逮捕した。

逮捕容疑は、3月上旬ごろから5月下旬ごろまでの間、長男に暴行を加え、外傷性網膜はく離などの重傷を負わせた、としている。同署によると、同容疑者は「やっていない」と供述、容疑を否認している。長男は命に別条はないが、左目が失明したという。

同署によると、同容疑者には長男のほかに長女(4)がおり、5月ごろまでは30代の男性と4人暮らしだったとみられる。同容疑者と面会した横浜市中央児童相談所から6月、「虐待の疑いがある」との通報を受け、同署が調べていた。

◆児相の一時保護を拒否

愛情が湧かない-。

長男が昨年9月に生まれると、女は度々、出産した病院でこう漏らしていたという。

横浜市によると、病院から報告を受けた市こども青少年局は今年1月から、西区の保健師を同容疑者の自宅に定期的に派遣し、様子を見守った。「手がかかる」ともこぼしていた。

「(額を指ではじく)デコピン、しちゃった」。4月9日、同容疑者は保健師にそう打ち明けた。外傷は確認されなかったが、市は翌日、虐待の疑いもあるとして市中央児童相談所(児相)に通告した。

同容疑者は一方、長男に早くから離乳食を与えるなどしており、市は「言葉以上の(虐待的な)言動はない」と判断。保育園への入園を勧め、引き続き経過を見守ることにした。5月1日の入園後、保育園から虐待に関わる報告はなかったという。ところが児相通告から1カ月半後の5月24日、自宅を初めて訪問した児相職員は、長男の額と耳にあざと傷を発見。同容疑者は「(長男が)自分で椅子にぶつけた」「自分でひっかいた」と説明したという。

児相は一時保護を提案したが、同容疑者が涙ぐんで拒否したため、同29日に長男を検査入院させた。1週間後、左目の網膜はく離が判明。虐待と断定した児相が、戸部署に相談した。市が同容疑者と具体的な接触を始めてから、五カ月がたっていた。

6月21日の退院後、男児は児相に保護され、7月1日から市内の乳児院で暮らしている。市こども青少年局は「虐待の明らかな痕跡など相当の理由がなければ、親の同意なしで強制的に保護できない。一連の対応は妥当だった」としている。

助産所が産後母子をケア、虐待防止へモデル事業開始/横浜市

カナロコ by 神奈川新聞 10月5日(土)

  ケアを受ける場所は家庭的な雰囲気の助産所=金沢区の「山本助産院」(横浜市提供)

出産後の育児不安を軽減しようと、横浜市が産後の母子をケアするモデル事業をスタートさせた。産院を退院し、心身ともに不安定になりやすい産後4カ月までの母親と乳児を対象に、助産所でケアをする。市が進めている「妊娠中から出産後までの切れ目ない支援」の一環で、出産直後の母親への支援を強化することで、乳児期に多い子どもへの虐待を未然に防ごうという狙いだ。

1日に始まった事業は、来年度から国がスタートさせる事業の先駆けで、産前産後の母子への支援経験が豊富な助産師が、母親の心身や乳児のケアを実施。母親の健康管理から乳房ケア、授乳方法の指導、赤ちゃんの発育・発達のチェック、子育て情報の提供まで幅広いのが特徴だ。

同事業の委託を受けた助産所は▽とわ助産院(鶴見区)▽めぐみ助産院(同区)▽みやした助産院(南区)▽山本助産院(金沢区)▽みどり助産院(緑区)▽ママスハウス(都筑区)▽うみと森助産院(戸塚区)▽豊倉助産院(泉区)-の8カ所。

タイプは、ショートステイとデイケア(1日最長8時間)の2種類。自己負担額は1割で、1回の費用は1泊2日が6千円、デイケア2千円。

対象は(1)横浜市民(2)家族などから産後の援助が受けられない(3)育児不安などが強く、支援が必要(4)母子ともに医療行為が必要ない-のすべてに当てはまる母親と生後4カ月未満の乳児。住居地の各区役所のこども家庭課を通じて申し込む。利用の可否は、保健師が育児状況を確認した上で決める。

市こども家庭課の担当者は「児童虐待は、心身が不安定になりやすい時期に起きやすく、横浜市でも死亡や重篤事例が起きている。この事業だけでなく、さまざまな取り組みを通じて育児不安の早期解消を図り、児童虐待の未然防止につなげたい」と話している。

同市では、子育てで母親が孤立しないよう「こんにちは赤ちゃん訪問事業」を実施しているほか、産前産後の母親の家事や育児を手伝うヘルパー事業などを行っている。

<自立援助ホーム>施設側「やり直す場が必要」

毎日新聞 9月25日(水)

九州の自立援助ホームに入所する男性(21)は、親の養育放棄のため児童養護施設やホームで暮らした後、自動車部品工場に就職し1人暮らしを始めた。だが、金銭管理が十分できず、訪問販売で契約した車のローンや高額な生命保険料の支払いに追われ、ホームに戻って来た。

関西のホームの20代前半の入所男性は軽度の知的障害がある。うつ病の母と2人暮らしだったが、母が「このままでは息子を刺してしまう」と知人に訴えたのを機に入所し、施設で成人を迎えた。

九州のある施設長は「虐待や養育放棄で親元に戻れない一方、知的障害が疑われても障害者手帳がないため、福祉サービスを受けられない若者もいる。独り立ちしてもつまずきやすく、成人してもやり直す場が必要だが、施設の負担でぎりぎりやりくりしているのが現状だ」と話す。