<児童養護施設>職員の2割、児童から暴力被害 けが、心身不調

毎日新聞 2015年5月5日

保護者からの虐待や家庭の事情を理由に18歳未満の子どもが親元を離れて暮らす児童養護施設で、職員の22.8%が子どもからの暴力が理由で心身に支障があったことが、神戸学院大学総合リハビリテーション学部の岡田強志・実習助手(36)の調査で分かった。児童養護施設の子どもから職員への暴力に着目した全国的な調査は珍しく、その傾向が明らかになるのは初めてとみられる。
調査は独立行政法人日本学術振興会の研究費助成事業で、全国の児童養護施設全600カ所(2014年8月時点)を対象に14年9~12月に実施した。施設長▽勤続5年以上の職員▽3年未満の職員に分け、1施設当たり職員5人、計3000人を対象にアンケートをした。施設長199人(回答率33.1%)▽5年以上の職員358人(同29.8%)▽3年未満の職員321人(同26.8%)が回答した。
その結果、在職中に子どもからの暴力で負傷したり、精神的にダメージを受けたりした人が回答者878人のうち200人(22.8%)に上った。
また、施設長と5年以上の職員に、13年4月~14年3月の1年間に子どもから暴力を受けた経験を問うたところ、17.2%が「ある」と回答。48.3%が「自分以外の職員への暴力を目撃した」と答えた。更に14年4~7月の4カ月間では、3年未満を含む職員のうち12.3%が子どもからの暴力を経験していた。
心身への影響を聞いた記述式(複数回答)の設問には、打撲やあざ、ひっかき傷など軽傷を負ったとの回答が多かったが、中には肋骨(ろっこつ)や鼻骨の骨折など重傷のケースもあった。また、不眠やうつ、過食や拒食などの症状を訴えた人も45人いた。
09年施行の改正児童福祉法は、職員らによる子どもへの虐待防止と対応を明記している。虐待を見つけた場合は、児童相談所などへの通報が義務づけられ、都道府県が毎年公表している。厚生労働省によると、児童養護施設職員や里親による虐待が疑われる届け出件数は13年度に全国で288件で、うち87件が虐待と認められた。いずれも統計を取り始めた09年度以降最多だった。岡田実習助手は「子どもが暴力を振るう背景には虐待を受けた経験などさまざまな要因がある。そうした子どもへのケアと同時に、職員を暴力から守り、安心して働けるようにする施策も必要だ」と話している。【金秀蓮】