<神戸児童連続殺傷>被害女児の母が手記…加害男性から手紙

毎日新聞 2014年3月22日

 神戸市須磨区で1997年に起きた小学生連続殺傷事件で、亡くなった山下彩花さん(当時10歳)の母京子さん(58)が、23日の命日を前に毎日新聞の取材に応じ、手記を寄せた。京子さんの元には2004年に2通、07年から毎年、加害男性(31)から手紙が届いている。今年、10通目を受け取った京子さんは「自分の罪と向き合うのは苦しいことだろうが、あえてそうしていることが伝わってくる内容だ」と話した。
 手紙は毎年、男性の両親や弁護士を介して届けられ、今年は2月24日に受け取った。B5判3枚で、印字したものだった。内容は非公表としている。
 京子さんは「一昨年ごろから印象が変わった。本心から書いているようだ。心の痛みこそが償いの第一歩だと思う」と感想を語った。また、「全ての人が光と闇とを抱え持ち、自分の魔性と闘いながら生きているのではないか」との思いを強くしたという。
 京子さんは昨年から、彩花さんが通った市立竜が台小学校(神戸市須磨区)で絵本の読み聞かせをしている。【久野洋】

京子さんの手記全文◇
 彩花が通っていた竜が台小学校前の道が、「花いっぱい週間」の花々で鮮やかに彩られるこの時季、赤い道を歩くたびに心がなごみます。
 今年もまた、神戸連続児童殺傷事件が起きた3月16日が巡ってきました。今年は、事件の日と同じ日曜日のせいか、例年と比べると心がざわざわして、たくさんのことを思い出しました。
 彩花のとびきりの笑顔、甘えて拗(す)ねたしぐさ、一緒に奏でたピアノ、そして、最後に交わした言葉……。
 事件から17年もの時間が過ぎたのに、目を閉じると、まるで昨日のようにあの日のことが鮮明に甦ってきました。
 事件当時は絶望に覆われた日々でしたが、時の流れとともに、自分の人生を取り戻すことができたように思います。いつの頃からか、3月16日と23日は、悲しみと苦悩を追体験する日ではなく、たくさんの人からいただいた真心に、あらためて感謝する日になりました。
 夫は、ずいぶん前から少年野球のコーチとして、楽しみながら子ども達とふれあっています。私は、竜が台小学校には、つらくて長い間足を踏み入れることができませんでした。でも、数年前から、6年生の「命の授業」で体験を話しながら命の尊さを一緒に考えたり、絵本の読み聞かせボランティアを始めてからは、懐かしい校舎に行くのが楽しみになりました。私の語りに耳を傾ける子どもたち、キラキラした瞳で無心に絵本を見つめる子どもたちから、いつもパワーを貰っています。
 この子たちが、目を輝かせて生きていける日本社会を残すのは、私たち大人の責務だと痛感しています。
 先日、千葉県柏市で痛ましい連続通り魔事件が起きました。そのニュースを見たときには、「なぜ、何の罪もない人が、命を奪われる悲惨な事件があとをたたないのだろう」と悲しくなりました。また、その容疑者が、神戸連続児童殺傷事件の加害男性に理解を示しているような報道がなされ、胸がつぶれる思いです。
 今年も、加害男性からの手紙を弁護士から受け取りました。繰り返し読みましたが、一昨年あたりから手紙の印象が変わって来たように感じています。
 人間とは、神性と獣性を併せ持つ生き物。以前から私は、そんな思いを持っていましたが、彼の手紙を読んで、やはりこの世には、善だけが100%を占める人もいなければ、悪が全ての人もいないのだと感じました。全ての人が光と闇とを抱え持ち、ときに湧きあがる自分の中の魔性と闘いながら生きているのではないかと思います。その魔性に負けてしまった時に、人は罪を犯すのかもしれません。
 加害男性は、生涯をかけて償いながら生きることを選びました。彼が、自分の罪を真正面から見つめようとすればするほど、計り知れない苦痛が伴うでしょう。でも、いばらのような道を歩みゆく過程で感じる命の痛みこそが、償いの第一歩ではないかと思っています。
2014年3月23日 彩花の命日に寄せて 山下京子

「性同一性、相談受けた」 県内養護教諭3割

琉球新報 2014年3月22日

 GID(性同一性障害)学会第16回研究大会in沖縄(同学会主催)が21日、那覇市の県市町村自治会館で2日間の日程で始まり、県内外から200人余が参加した。講演やシンポジウム、研究報告があった。琉球大学大学院医学研究科で臨床心理士の甲田宗良さんは、性別に違和感を持つ児童生徒への対応状況に関する県内調査で、回答した養護教諭ら225人の3割強が、学校で児童生徒から相談を受けたことがあると報告した。
 甲田さんは、相談内容の最多は「性別への違和感」で約86%に上るとし、教育現場で性同一性障害への理解を深める必要性を強調した。児童生徒が学校で困っていることは「制服」「水泳の授業」「トイレ」などと続いた。適切な支援には「学校関係者の多くが携わり、知識を持って対応できる当事者意識を持つことが重要だ」と述べた。
 大会は「南の島から世界へ」をテーマに、医療や法制度、教育現場の現状や課題、職場における支援の在り方などについて報告や討議があった。
 22日午後3時から、市民公開講座「GIDってなぁに?~性同一性障害に関するセミナー」が同会館であり、歌手の中村中(あたる)さんらがゲスト出演する。

世界の出生登録、5歳未満の3人に1人は「公に」存在せず

@DIME 2014年3月21日

 昨年12月11日に、67回目の創立記念日を迎えたユニセフは、世界の出生登録に関する新たな報告書を発表した。出生登録されていない5歳未満の子どもは約2億3000万人、つまり、3人にひとりであることを明らかにした。
 ユニセフ事務局次長のギータ・ラオ・グプタ氏は「出生登録は、権利以上のものです。社会が、その子ども自身とその存在を初めて認識し、認めるのが出生登録です。出生登録は、国家の発展から子どもたちが忘れさられず、その権利を否定されず、隠されないことを保証する上でも重要なのです」と述べている。
 この報告書『すべての子どもが生まれながらに持つ権利:出生登録における不平等と傾向(原題:Every Child’s Birth Right: Inequities and trends in birth registration)』は、161ヶ国における統計の分析と国別の出生登録に関する最新のデータと推定値をまとめたものとなっている。

出生登録率は60%、わずか3%の国も
 2012年、誕生後すぐに出生登録された赤ちゃんは世界全体でわずか約60%だった。数値は地域によって大きく異なりますが、最も低かったのは南アジアとサハラ砂漠以南のアフリカ。出生登録が最も低かった国10ヶ国は以下の通り。
ソマリア(3%)
リベリア(4%)
エチオピア(7%)
ザンビア(14%)
チャド(16%)
タンザニア共和国(16%)
イエメン(17%)
ギニアビサウ(24%)
パキスタン(27%)
コンゴ民主共和国(28%)

「出生登録証」を持つ子どもはさらに少なく、虐待や搾取などにあいやすく
 出生登録が行われても、多くの子どもたちが「出生登録証」を持っていない。たとえば、東部・南部アフリカでは、出生登録証を持っているのは、出生登録が行われた子どもの約半数。世界では、出生登録された子ども7人のうち、ひとりは出生登録証を持っていない。中には、登録証の発行に多額の費用がかかる国々もあり、登録証を持っていない原因となっている。
 また、登録証が発行されず、家族の手元に登録を証明するものがない国々もある。誕生時に登録されなかった子どもたちや公的な証明を持たない子どもたちは、教育や保健ケア、社会保障から除外されてしまうことが頻繁に起こる。公にその存在が登録され、確認できるものがなければ、子どもたちが自然災害や紛争、搾取の結果などで家族とはぐれてしまった場合、身元を確実に確認できず、家族のもとへ帰るのはより困難になってしまう。
「出生登録と出生登録証は、子どもたちが持つ可能性を解き放つうえで、欠かせません。すべての子どもたちは、計り知れない可能性を持って生まれてきます。しかし、社会が子どもたちの存在自体を認識していなければ、子どもたちが育児放棄や虐待によりあいやすくなってしまうのです。そうなれば、子どもたちの可能性はどんどん失われてしまします」と、グプタ事務局次長はコメントしている。

出生登録を阻む要因への取り組みを
 出生登録は、国の市民登録にとっても不可欠であり、統計の質や支援活動、計画立案、政府の効率性を強化する上で欠かせないもの。ユニセフは、出生登録がされていないことは、社会の不平等と格差の兆候だとしている。こうした不平等の影響を最も受けるのは、特定の民族や宗教のグループの子どもたちや、農村部や遠隔地に住む
子どもたち、貧しい家庭や教育を受けていない母親を持つ子どもたち。出生登録が行われない要因は様々だ。登録証の発行に費用が掛かること、関連する法律やプロセスがないこと、文化的な要因、さらなる差別や阻害の恐れなどが挙げられ、こうした原因への取り組みも必要だ。

ユニセフ、携帯電話などを使って出生登録を促進
 ユニセフは、政府と地域社会を支援しながら、市民登録と出生登録システムの強化を支援している。携帯電話などが取り入れられ、革新的な取り組みが行なわれている。コソボでは、ユニセフのイノベーションラボが、RapidSMSと呼ばれる携帯電話を活用した技術を導入。これにより、出生登録されていない子どもを見つけ、報告する作業が、効率的かつ効果的に、低コストで行えるようになったという。ウガンダでは、ユニセフと民間部門の支援を受け、政府はMobile VRSと呼ばれる取り組みを
行なっている。Mobile VRSでは、携帯電話を活用し、これまで数か月もかかっていた出生登録の手続きをわずか数分で行なえるようになったという。
 グプタ事務局次長は「すべての子どもたちの存在を正確に把握できていなければ、公平で包括的な社会とは言えません。出生登録は、子どもの幸福のためでなく、社会や国家の発展のためにも、続いてきたものです」と述べている。