里親 理解広めて 養護必要な子どもたち3万人超

東京新聞 2014年5月26日

虐待などで親元で育てられない子をより家庭的な環境に置くため、国は里親による養護を広げる方針を示している。しかし、養護が必要な子のうち里親などに委ねられる割合は依然14・8%(二〇一二年度末)と低い。東京都や神奈川県は12・1%と平均を下回るなど自治体間でも差があり、専門家は、行政に積極的な取り組みを促している。 (奥野斐)
厚生労働省の資料によると、国内で社会的な養護を受ける子のうち、主な預け先である乳児院、児童養護施設、里親に委ねられるのは一二年度末現在で約三万六千人。うち八割を超す三万人以上が乳児院や児童養護施設にいる。国は本年度中に里親の割合を16%に、十数年後には三分の一にする目標を掲げる。
対象が三千六百六十六人と都道府県で最多の東京都では、里親委託が四百四十三人に対し、児童養護施設や乳児院に入る子は七倍強の三千二百二十三人に上る。これに対し、里親の登録家庭数は四百五十前後にとどまり、委託率向上には遠い。
都育成支援課の栗原博課長は「里親に託すことを実親が了承しないケースもある。虐待児や発達障害児など、専門的な支援を要する子も増えている」と話す。厚労省の調査では、全国の児童養護施設の子の半数以上が保護される前に虐待を受けており、障害児の割合も二十年で二・五倍に増えた。
里親委託が進まない理由について、元大阪市中央児童相談所長で、里親でもある花園大の津崎哲郎特任教授(児童福祉論)は「日本は戦後、長く施設での養護が進められてきた背景があり、個別ケアの視点がなかった」と説明。都市化で自分の子さえも育てにくくなっている社会的な要因もあるという。「行政は、児童養護施設と周辺住民の交流機会を増やすなどして、養護を必要とする子への理解を広める仕組みづくりをすべきだ」と話す。
<里親等委託率> 社会的養護を受ける子どものうち、里親や養育者の家庭で5~6人が一緒に暮らすファミリーホームへの委託の割合。国により事情が異なるが、欧米では50%以上の国が多く、日本は2割に届かない。

児童虐待相談597件、依然高水準 昨年度県内

くまにちコム 2014年5月26日

2013年度に県内の児童相談所が対応した児童虐待の相談件数(速報値)は前年度比10%減の597件だったことが26日、県の集計で分かった。前年割れは2年連続。
10年度に熊本市児童相談所が開設されて以降、件数は約600~700件と高止まり傾向で、13年度は過去10年間で4番目に多かった。
県子ども家庭福祉課は「虐待防止への認識が高まり、市町村や医療機関など関係機関からの通告が多くなっている」と分析。「件数は依然として高水準。乳幼児健診の未受診などリスクが高い家庭への支援を進める必要がある」と話している。
虐待の種類別では、ネグレクト(養育放棄)が39%と最多で、身体的虐待が34%、心理的虐待23%、性的虐待4%だった。
虐待者は実母が64%を占め、次いで実父が21%。子どもの年齢は小学生が33%、3歳未満25%、3歳~就学前18%-の順だった。
この日、県庁であった県要保護児童対策地域協議会で、県児童相談所(中央、八代)と熊本市児童相談所の集計結果を県が報告した。(田中祥三)

横浜市で児童虐待が過去最多の1159件に 平成25年度

産経ニュース 2014年5月26日

横浜市は26日、平成25年度の児童虐待の認定が過去最多の1159件にのぼったと発表した。24年度より230件増えており、うち207件を保護者間の暴力を見せられたり無視されたりする「心理的虐待」が占めた。
市中央児童相談所の虐待対応・地域連携課は、神奈川県逗子市で24年11月に起きたストーカー殺人事件を受けて昨年、神奈川県警がドメスティックバイオレンス(DV)や児童虐待に専従する組織を立ち上げたことで、通告が増えたとみている。
同課によると、児童虐待に関する警察や学校などからの相談・通告は4209件。そのうち虐待と認められたケースの内訳は、心理的虐待がほぼ半数の560件。他に身体的虐待354件、ネグレクト(育児放棄)226件、性的虐待19件となった。
虐待した側については、平成5年の統計開始以来、実父(533件)が実母(522件)を初めて上回った。

抗生物質効かないスーパー淋病 日本の風俗店の女性から発見

NEWSポストセブン 2014年5月22日

世界保健機関(WHO)がいま、世界的な蔓延を警告する病気、それが「淋病」である。
「終末論的な幻想ではないが、一般的な感染症や軽傷が致死的となるポスト抗生物質時代が21世紀に到来する可能性は非常に高い」
「抗生物質の開発や生産、処方の方法を変えなければ、世界は公衆衛生の実現手段を失い、その影響は壊滅的になる」
WHOのケイジ・フクダ事務局長補は記者会見でこう述べた。
「終末論的な幻想」「影響は壊滅的」……およそ国連機関の幹部の言葉とは思えないおどろおどろしい文言だが、それが大げさではない状況にある。
この4月30日に発表された「抗菌薬耐性:2014年世界報告」は254ページにわたり、従来の抗生物質では死滅しない「超強力な細菌(スーパーバグ)」に関する調査結果や医療の状況などについて報告した。それによれば、世界の国々で抗生物質が効かない耐性を持った黄色ブドウ球菌や大腸菌などが出現し、警告レベルに達しているという。
いままで抗生剤を飲んでいれば治っていた結核、大腸炎、肺炎などの感染症が“不治の病”に逆戻りする。江戸時代のコレラの大流行を描いたTVドラマ『JIN―仁―』(TBS系)のように、150年前と同じ深刻な状況が再び訪れる可能性があるのだ。
淋病研究の権威で、元・産業医科大副学長の松本哲朗氏(現・北九州市役所保健福祉局医務監)はいう。
「淋病に抗生物質が効かなくなりつつあります。最初はペニシリンが効かない耐性菌ができ、それ以降、さまざまな抗生物質が開発されては効かなくなった。日本においてセフィキシムは、決められている投与量では効く人と効かない人が半々という状況なので、現在は注射剤のセフトリアキソンという抗生剤が主に使われています。
しかし、このセフトリアキソンも、4年前に日本で完全に耐性をもつ菌が発見され、世界の医療関係者に衝撃が走ったのです」
「最後の切り札」ともいえるセフトリアキソンにも耐性をもつ「スーパー淋病」がすでに誕生しているのである。しかも、世界で初めてこのスーパー淋病が発見されたのは日本だった。
その耐性菌を発見したのが、保科医院(京都市)の保科眞二医師である。
「京都市内のファッションヘルスに勤める女性(当時31歳)の定期検診で、咽が淋菌に感染していることがわかり、セフトリアキソンを投与したところ、菌が消えなかったのです。
それで菌を採取したのち、もう一度、投与したところ、菌が消えた。ただ、咽頭淋菌は、当医院の調査によると25%は自然になくなっていくので、抗生剤が効いたのか、自然になくなったのかは定かではありません」
採取した淋菌を解析したところ、セフトリアキソンに対する非常に強い耐性をもっていることが判明したのだ。世界にショックを与えた、スーパー淋病発見の瞬間である。
日本で確認されているスーパー淋病の事例は、今のところ京都の1件のみだが、海外ではヨーロッパとオーストラリアで発見され、増加しつつある。もちろん、日本は1件だけだから安心だとはいえない。
「女性の場合、症状が出にくいので、他で耐性菌が生まれ、感染に気づかないままもっている人がいるという可能性は考えられます。それが広がらないかどうか、心配されるところです」
松本氏はそう警告する。海外で性的な接触をした人が日本に持ち込んでしまったり、海外の保菌者が日本に旅行に来て持ち込む可能性も十分にあるのだ。
スーパー淋病に効く新たな抗生物質の開発が望まれるが、「今のところ、セフトリアキソンにかわる有効で使いやすい抗生剤は存在しない。製薬会社や国の研究機関も含めて、新しい抗生物質の開発スピードが鈍っているというのが厳しい現実」(松本氏)だという。
耐性菌と新薬のイタチごっこはこれまでずっと続いてきたが、いよいよ限界。そのためWHOも異例の警告に踏み切ったのだ。
※週刊ポスト2014年5月30日号