児童施設入所費 滞納9000万…12年度末 千葉

読売新聞 2014年06月13日

子どもの児童福祉施設への入所に伴って保護者などが県内の児童相談所(児相)に支払う「児童措置費負担金」の滞納額(千葉市児相除く)が、2012年度末までに9041万円に上り、昨年度も滞納額が増えているとして県監査委員が二つの児相に対し、改善するよう指摘していたことがわかった。滞納額は毎年増加しているが、低所得家庭が多く、強制徴収で子どもの養育が困難になる可能性もあり、県は対応に頭を悩ませている。
児相では相談に乗るほか、虐待などを受けた子どもを一時保護し、乳児院や児童養護施設などの児童福祉施設への入所措置も講じており、12年度末時点で計1219人が施設に入所している。施設への入所費などは国が半分を負担し、県が残り半分を払い、所得などに応じて保護者にその一部負担を求めている。しかし、保護者に納付書を送付すると、同意して施設に入所させたにもかかわらず、「入所に納得がいかない」などと言って、支払わないケースが多いという。
県児童家庭課によると、12年度中に保護者に負担を求めた7972万円に対し、納められたのは5673万円で、収納率は71・16%にとどまった。毎年2000万円前後の滞納が発生しており、滞納が続けば、県税などで賄うことにもなる。
県監査委員が今年3、4月に行った監査によると、東上総、中央、柏の3児相で計7230万円(13年12月末現在)の滞納があり、うち中央、柏の2児相では前年度よりも増加していた。同委はこれを問題視し、両児相に対し、早期解消に向け徴収対策強化を強く求める「指摘」を行った。東上総には「注意」した。

低所得家庭多く 強制徴収困難
県は12年度から高額滞納者に対し、財産差し押さえを行うようにしたが、同課の担当者は「差し押さえで生活が立ち行かなくなれば、子どもが家庭に戻れなくなってしまう」とし、強制的な徴収がためらわれるケースがあるという。このため同年度の差し押さえは1件にとどまった。同課は「分割など、可能な範囲で負担してもらえるように努めるしかない」としている。

社会福祉法人の制度見直しへ 社会貢献活動の義務化など

佐賀新聞 2014年06月13日

特別養護老人ホーム(特養)などを運営する社会福祉法人の制度見直しに向けた厚生労働省の有識者検討会の報告書案が12日、明らかになった。地域での社会貢献活動の義務化や監視役となる外部メンバーを含めた評議員会の機能強化が柱だ。厚労省は社会保障審議会で具体案を詰め、2015年の通常国会に社会福祉法改正案の提出を目指す。
社会福祉法人は、多額の内部留保や一部の理事長らによる私物化などが指摘されている。制度見直しで法人運営の透明性を確保するのが狙い。
社会貢献活動は(1)低所得の高齢者の居住確保(2)生活保護世帯の子どもへの教育(3)生活困窮者への就労支援―などを想定。いずれの活動も内部留保を活用させ、地域への還元を求める。
理事会に意見を述べる評議員会は現在、一部の法人に設置が義務付けられているが、原則として全法人に広げることを検討。法人運営の重要事項の議決機関としての役割を明確化し、理事会への「けん制機能」を強める。外部メンバーには地域の住民などを想定する。
また、一部で理事職の世襲が行われていることを踏まえ、評議員会が理事を選出する仕組みの検討も求めた。
社会福祉法人は特養や児童養護施設、保育所などの事業を行う非営利法人で、全国に約1万9800(12年度)ある。法人税などは原則非課税で、国と地方自治体が補助金も交付している。厚労省によると、13年3月時点で特養の内部留保は、1施設平均で退職給与引当金などを除いた実質で約1億6千万円。
16日の検討会で報告書案とりまとめに向けた議論をする。社会福祉法人制度の見直しは、政府の規制改革会議の答申にも盛り込まれる。

【気になるこの症状】ぎょう虫症 家族間感染に要注意 潰瘍や腹膜炎の原因にも

ZAKZAK 2014年6月12日

子供の頃、肛門に貼り付けた専用のセロハンテープを学校へ提出した「ぎょう虫検査」が来年度限りで廃止される。ここ10年以上、検出率は1%以下だが、完全にいなくなったわけではない。肛門がかゆければ感染の可能性がある。
【肛門に卵を産む】
人の腸管に住み着く回虫、べん虫、サナダムシなどの寄生虫の検査(寄生虫卵検査)は、通常、ふん便に混じる卵を調べる。しかし、ぎょう虫検査だけはセロハンテープ法を行う。杏林大学医学部感染症学(寄生虫学部門)の小林富美惠教授が説明する。
「ぎょう虫は盲腸に住み着き、メスは子宮内の卵が満タンになると夜中、寝ている間に肛門の外に出てきて、一気に1万個もの卵を産んで死にます。だから、トイレで拭いてしまう前に朝起きて一番にセロハンテープを貼って卵を検出するのです」
卵1つの大きさは0・05ミリメートルほど。成虫の体長はメスで8-13ミリメートル、オスは2-5ミリメートルだ。

【無視はできない】
ぎょう虫は、手などに付いた卵が口から入って感染する。シーツや衣類に付いた卵が食品に付着して感染するルートなどもある。
「産んだ卵は数時間で卵の中に幼虫がいる状態になり、それを口にすると感染します。卵は十二指腸で孵化(ふか)し、幼虫は2回脱皮して盲腸へたどり着く。メスは2カ月以内に卵が産める成虫に成長します」
症状は、卵を産んだ場所の肛門のかゆみ。特に小さい子供では、かゆいので睡眠障害で日中に不機嫌になったり、肛門をかいて傷をつけてしまう場合がある。
「腸の症状は、少数なら無症状ですが、多く寄生していると下痢や腹痛を起します。多数寄生で腸壁に侵入して潰瘍を形成したり、腸管を突き抜け腹膜炎を起こしたりした症例報告もある。通常、怖くはありませんが、無視はできません」

【輸入寄生のケースも】
治療は、駆虫薬を服用する。卵には効力がないので、成虫になる期間を考え、2-3週後に2回目の服用をすればほぼ完全に駆除できる。
「多くは家族内で感染が広がるので、1人感染の疑いがあれば家族全員の検査と治療を行う必要があります。予防は、掃除を徹底し、下着や敷布を清潔に保ち、手洗いの習慣をつけることです」
日本は衛生環境がよくなり、東京都予防医学協会のデータによると検査が始まった1959年当時の検出率は約25%だったが、80年には3・2%、99年以降は1%以下が続いている。
「ただし、日本は特別だと思った方がいい。世界では、ぎょう虫が属する線虫類に感染している人は少なく見積もっても10億人以上いる。国内の流行はないが、海外から持ち帰る輸入寄生虫症のケースもあります」

《「ぎょう虫症」の特徴》
★盲腸に寄生する「ぎょう虫」が夜中に肛門から這い出して産卵する
★産卵すると肛門がかゆくなる。幼児の場合、夜泣き・不眠症などを起す
★手などに付着した卵が口に入って感染する
★多数寄生で下痢・腹痛を発症

【10代のネット利用】中高生の9%が病的との説も!? “ネット依存”とは何か、治療が必要なのか

Impress Watch 2014年6月13日

昨年8月、“ネット依存”の中高生が全国に推計51万8000人いるとする「厚生労働省研究班」の調査結果が報道されて話題となった。また、総務省情報通信政策研究所が昨年6月に発表した「青少年のインターネット利用と依存傾向に関する調査」の報告書によると、高校生のうちネット依存傾向が高い生徒の割合が9.2%、ネット依存傾向が中程度の割合が50.8%だったという。

青少年におけるネット依存の現状はどうなっているのだろうか? そもそも、どういう状態を“ネット依存”と呼んでいるのだろうか? 日本で2カ所しかない「ネット依存外来」を行っている成城墨岡クリニックの院長・墨岡孝氏に話をうかがった。

ITにかかわる心身の問題、かつてはキーパンチャー病やVDT症候群、今はネット依存
墨岡氏は、二十数年前から社会精神学やコンピューターの問題などを専門としてきた精神科医だ。当時はコンピューターを扱う労働者のストレスを扱っていた。いわゆるキーパンチャー病(頸肩腕症候群:首筋から肩・腕などに異常を感じる職業病の一種)や、VDT症候群(ディスプレイを長時間見過ぎたことによる目・体・心に支障をきたす病気のこと)などが話題になっていたころに、厚生労働省から委託を受けて研究をしたり、分析を担当したりもしている。
その後、ネットにかかわる技術者、システムエンジニアやプログラマーにおける心と身体の問題を扱うようになったが、ネットが普及するに連れて違う問題が出てきた。10年ほど前から、一般の人達の間にネットの問題や治療の必要が出てきたのだ。ネット依存外来は、ネットを依存的に使う人が増えてきたのに連れて要望が寄せられるようになり、開始した。
家族が訴える患者の症状はさまざまだ。「日常会話がネットのことばかりになり、ネット上の友達ばかりになって現実の人間関係が減った」「昨夜何時までネットをやっていたのか聞くと嘘をつくようになった。風呂場やトイレ、布団の中で隠れてネットをしている」。授業中に寝ていたり、成績が落ちたり、学校や職場に遅刻したり、欠席したり、退学あるいは解雇になった例もある。

ネット依存は4パターン、増えているのが“きずな依存”
成城墨岡クリニックでは2007年以降、初診で訪れたネット依存患者の数をまとめている。それによると、2007年の81人から、2013年には285人と約3.5倍にまで増えている。1カ月に23人強が訪れている計算だ。最年少は10歳、最高齢は29歳、平均17.8歳で、10代が中心だ。
2011年からはスマホやタブレットにかかわる問題が見られ始め、2012年には7割を占めるようになった。そして2013年はほとんどがスマホやソーシャルメディアに関する問題となっている。患者は、時間でいえば1日10~11時間というように昼夜かまわずスマホをいじっている。「スマホは手軽でどこにでも持ち運びができる。家の中に閉じこもってオンラインゲームをする時代は終わった」(墨岡氏)。
ネット依存には4パターンあると考えられているという。“オンラインゲーム依存”、動画やブログなどの“コンテンツ接触型依存”、オークションや一部のソーシャルゲームなどの“ギャンブル系参加型アプリ依存”、そしてもう1つが最近増えている“きずな依存(ソーシャルメディア依存)”だ。きずな依存は同調志向が強い日本人に多く、女性に多い傾向があるという。実際、オンラインゲーム依存は男性患者が多いが、ソーシャルメディア依存は女性患者が多い。
スマホ依存の中にはゲーム依存もあるが、最近はLINEやFacebookなどのソーシャルメディア依存が圧倒的に多いという。中でも目立つのがLINEだ。友だちのトークに対する返事がやめられず、ずっと返事をし続けてしまう子供が増えているのだ。「人との付き合いが断ち切れずに嫌々やっている。返事しないと無視されたり仲間はずれにされると思い、使いすぎてしまう」(墨岡氏)。しかし、そうしなくても人間関係は築けると分かると、依存は解けるのだという。

「病的依存」は間違い? 厚労省研究班による“ネット依存”の定義
ここで“ネット依存”の定義について見てみよう。まずは報道で話題になった厚生労働省研究班のものから。
この調査結果は「未成年の喫煙・飲酒状況に関する実態調査研究」(2012年度厚生労働科学研究費補助金循環器疾患等生活習慣病対策総合研究事業)が元となっている。本来は中高生の喫煙・飲酒行動の実態と関連要因を明らかにすべく行われた調査だ。研究代表者である日本大学医学部教授の大井田隆氏もネットの専門家というわけではなく、公衆衛生学の専門家。研究分担者として、ネット依存外来を持つ久里浜医療センター(独立行政法人国立病院機構)院長の樋口進氏の名前が並ぶ。その資料の後半に出てくるのが「インターネット依存」についての調査結果で、そこに「病的使用51万8000人」という数字が登場する。
この数字は、米国の心理学者キンバリー・ヤング博士が作成した診断質問票「Young Diagnostic Questionnaire for Internet Addiction」の日本語訳で判定した結果から、その割合を全国の中学・高校の生徒数に当てはめて算出したものだ。
診断質問票は下記のような8項目で、0~2項目に該当した場合を「適応的使用」、3~4項目を「不適応使用」、5項目以上を「病的使用」と分類している。

インターネットに夢中になっていると感じているか?
インターネットでより多くの時間を費やさねば満足できないか?
ネット使用を制限したり、時間を減らしたり完全にやめようとして失敗したことがたびたびあったか?
ネットの使用時間を短くしたりやめようとして、落ち着かなかったり不機嫌や落ち込み、イライラなどを感じるか?
使い始めに意図したよりも長い時間オンラインの状態でいるか?
ネットのために大切な人間関係、学校のことや部活動のことを台無しにしたり、危うくするようなことがあったか?
ネットへの熱中のしすぎを隠すために、家族、先生やそのほかの人たちに嘘をついたことがあるか?
問題から逃げるため、または絶望、不安、落ち込みといったいやな気持ちから逃げるために、ネットを使うか?

なお、ヤング博士の診断票の概要については、「Center for Internet Addiction」というサイトを参照のこと。「病的使用」という言葉自体は医学雑誌「Addiction」から直訳したものだというが、上記サイトにある説明を見ると「Meeting five symptoms are necessary to be diagnosed」となっており、「8項目中5項目に該当した場合は診断を受ける必要があると考えられる」といった意味あいのようだ。少なくともヤング博士の尺度を見る限りでは、5項目以上に該当したら即“ネット依存”や、ましてや「病的」であるとはされていない。

総務省の調査でも用いられるヤング博士の診断質問票
総務省情報通信政策研究所の調査もヤング博士が作成した診断質問票に基づいているが、こちらは下記のような20項目のもの。各項目について「いつもある」「よくある」「ときどきある」「まれにある」「全くない」まで頻度に応じて5段階で選択してもらい、それぞれ5~1点として計算。合計点をヤング博士の区分に即して、70~100点で「ネット依存的傾向 高」、40~69点で「ネット依存的傾向 中」、20~39点で「ネット依存的傾向 低」と分類している。

気がつくと、思っていたより長い時間ネットをしていることがありますか
ネットを長く利用していたために、家庭での役割や家事(炊事、掃除、洗濯など)をおろそかにすることがありますか
配偶者や友だちと過ごすよりも、ネットを利用したいと思うことがありますか
ネットで新しく知り合いを作ることがありますか
周りの人から、ネットを利用する時間や頻度について文句を言われたことがありますか
ネットをしている時間が長くて、学校の成績や学業に支障をきたすことがありますか
ネットが原因で、仕事の能率や成果に悪影響が出ることがありますか
他にやらなければならないことがあっても、まず先に電子メールやSNSなどをチェックすることがありますか
人にネットで何をしているのか聞かれたとき、いいわけをしたり、隠そうとしたりすることがありますか
日々の生活の問題から気をそらすために、ネットで時間を過ごすことがありますか
気がつけば、また次のネット利用を楽しみにしていることがありますか
ネットのない生活は、退屈で、むなしく、わびしいだろうと不安に思うことがありますか
ネットをしている最中に誰かに邪魔をされると、いらいらしたり、怒ったり、言い返したりすることがありますか
夜遅くまでネットをすることが原因で、睡眠時間が短くなっていますか
ネットをしていないときでも、ネットのことを考えてぼんやりしたり、ネットをしているところを空想したりすることがありますか
ネットをしているとき「あと数分だけ」と自分で言い訳していることがありますか
ネットをする時間や頻度を減らそうとしても、できないことがありますか
ネットをしている時間や頻度を、人に隠そうとすることがありますか
誰かと外出するより、ネットを利用することを選ぶことがありますか
ネットをしていないと憂うつになったり、いらいらしたりしても、再開すると嫌な気持ちが消えてしまうことがありますか

なお、総務省情報通信政策研究所の調査では「本調査はオンラインアンケートであり、母数となる調査パネル自体が比較的ネットに馴染んでいる層であると想定されるため、すべての値が高めになっている可能性がある」とただし書きがされている。

※情報通信政策研究所では今年5月14日、より新しい「高校生のスマートフォン・アプリ利用とネット依存傾向に関する調査」の速報結果を公表している(本誌5月15日付関連記事『高校生の4.6%がネット依存傾向“高”、SNSだけの友人93.1人で悩み・負担も』参照)。

“ネット依存症”を見分ける4つのポイント
今回話をうかがった墨岡氏も、「ヤング博士の診断項目は多少古いが、基本的なところでは同じ。当クリニックではこれを改定したものを使っている」と語る。5項目以上該当する場合に“ネット依存”としているが、それがすなわち治療が必要な状態であるというわけではなく、「制御不能」「社会生活(勉強・仕事)、人間関係への悪影響」「禁断症状」の側面が重要だと指摘。「日常生活にどれだけ支障が出ているかということで判断すべき」という。
具体的には、下記のような4点が依存症の主な問題点であり、墨岡氏はこの4つがそろったら専門家による診断が必要になるとしている。

自己コントロールができない
社会生活、人間関係、家族関係への悪影響が出る
禁断症状が出る(取り上げるとパニック状態になる、何をしていいか分からなくなる、どんなことをしてでも手に入れたいと感じる等)
耐性ができて利用が長時間化する

なお、墨岡氏は、自己申告のチェック表はあまり当てにならないとも言う。後述するように、患者は初期段階では自覚できていないからだ。「周囲の大人がチェックしたり、治療が進んだ状態でチェックしないと、正しい結果は現れない」。
1998年に登場したヤング博士による診断質問票は、現在でもネット依存を把握するための基準となっており、厚生労働省研究班、総務省情報通信政策研究所、墨岡氏の3者とも、これをベースにしている点で共通している。ただし、ネット依存についての定まった基準があるわけではなく、ネット依存度が高いからと言って即治療が必要な状態であるとはしていない点に注意が必要だ。

認知行動療法によるネット依存症の治療
成城墨岡クリニックは東京都内にあるが、全国からの問い合わせも非常に多い。実際に通院してくる人は都内や近辺からが多いものの、長野や四国から通ってくる患者もいるという。通院できない人には、民間のNPOのメディア関係のカウンセラー、アドバイザーなどを紹介している状況だ。
アルコール依存症や薬物依存症でもそうだが、患者本人は当初、自覚がないことが多い。周囲の家族や同僚らがおかしいと気付いて相談に来るのが一般的なパターンだ。夜中もスマホをいじっていて朝起きられない、学校に行けなくなる、学校に行ったふりをして行っていない、学業成績が急降下する――などの問題をきっかけに家族が気付き、危機感を抱く。
ネット依存症の治療の場合も最初は患者本人は来院せず、家族だけ(中でも母親)が相談に来るケースがほとんどだ。治療には数カ月間かかるが、初めのうちは家族に対するカウンセリングに費やす。そこで家族にネットの問題について考えたり、対応について勉強してもらうのだ。その後、本人を連れてきてもらい、治療に参加してもらうことになる。本人は嫌がっていることが多いが、問題点を突き詰めていくと、自分でも何とかしなければいけないと感じるようになり、治療に協力的になっていく。
治療においては、どうやって利用時間を短くするのかということに重点を置く。認知行動療法に使う方法だが、ネットによって失われた時間を本人に自覚させることが大切だという。ネットのために失ったこと、本来やりたかったことを書き出し、それに対してどう思うかを患者に自覚させるのだ。さらにネットを利用するデメリットや、やめるメリットを患者本人に書き出させ、ネットをやる時に見てもらうようにしていく。
ネット依存の子供は、薬物やアルコール、ギャンブルなどの依存に比べると治りは割合いい方だという。「素直でマニュアル的な子が多いので、約束を決めると守ることが多い。治療はやりやすいが、治療に持っていくまでが難しい」(墨岡氏)。

ソーシャルメディア依存は韓国でも悩みの種
韓国では、青少年のオンラインゲーム中毒に関する取り組みが早かったことは有名だ。通称「シンデレラ法」と呼ばれる青少年保護法改正により、深夜0時になると16歳未満は強制的にオンラインゲームにアクセスできなくなるというものだ。ところが「オンラインゲームなら遮断することはできるが、SNSの利用は遮断する方法がなく、韓国でも困っている状態」と墨岡氏は説明する。韓国ではネット中毒患者のためにネットレスキューやアイウィルセンターを設置し、患者の相談に乗る体制を整えたり、研究が始まっているところだという。
また、韓国では青少年用のインターネット依存自己評価「Kスケール」によって判別し、治療法を提示している。ただし、これではソーシャルメディア依存は測れないため、新たにソーシャルメディア依存を測る「Sスケール」の作成が始まっている。

“LINE依存”から抜け出すには「自我の確立」
「ソーシャルメディア依存はネット依存と大きく違うことを親も自覚すべき」と墨岡氏は警告する。ソーシャルメディア依存の場合は、「こうすると嫌われるかもしれない」「仲間はずれにされるかもしれない」といった人間関係に関する恐怖とつながっている。
また、ソーシャルメディアはさまざまなサービスが併存しており、携帯電話におけるキャリアのような共通するプラットフォームがないため、フィルタリングやゾーニングで制限しづらい点も問題だ。
「LINEをやめるには、断ち切る勇気を持つしかない」と墨岡氏は説明する。「中高生という自我を確立しなければならない時期に、確立前に同調型サービスのLINEが入ってくるからこそ問題が大きくなる」。中高生の時期は本来、自分が何者で、これから何をしたいのか、これからどういう大人になりたいのかを認識していくべき時だ。友達と同調するだけでなく、大人になってから何をしたいのかを考えることが重要だ。
また、家族が機能していなければ、ネットの問題に対処できないという。「父親や母親の存在を子供にきちんと認識させ、親の後ろ姿を見せ、社会でどういう役割を持っているのかを小学校の時代からはっきりと本人に分からせていくことが大切。子供は大人の姿を見ながら成長していくものであり、父母を乗り越えていくが、日本ではそれができていない。将来を考えた時にロールモデルになるのは父母の姿だが、家庭の中で模範となる姿を確立できていないし、家庭そのものの機能がはっきりしていない」と墨岡氏は指摘する。「早い段階でスマホやネットを与えるのではなく、まず自我が確立できるように育てるべき」。
「携帯電話やスマホを持たせるのは、少なくとも中学生になってから。さらに『1日○時間』『夜中はやらない』『LINEも時間を区切って嫌なものは嫌と言う』などの一定のルールを決めてやるべき。ルールを決めても破ることは多いが、『こういうルールを決めただろう』と言えるという意味で意味がある」と墨岡氏はアドバイスする。

青少年のネット依存は、数よりも周囲の子供の状態を見てほしい
51万8000人の中高生がネット依存と言われると多く感じるが、これは中高生の9%程度であり、残りの約90%は普通に自我を形成させて思春期を超えて大人になっていく。「単にネット利用に問題のある子供が全国にいるということであり、数はあまり意味がない。それよりも、自分の周囲の子供がそれに含まれていないのかを考えるべき」(墨岡氏)。
医療の世界でもネット依存の窓口が増えつつある。「子供の異常を感じたら専門家の治療を受けるべき。まずは近くのネットアドバイザーや学校の先生、カウンセラーなどに相談を」。
墨岡氏も参加する「東京都青少年問題協議会」では2013年度の結論として、「東京都青少年問題協議会からの緊急メッセージ」(2014年2月)を提出している(本誌2月25日付関連記事『「お風呂中は使いません」宣言用紙をスマホ契約時に配布、都がネット依存対策』参照)。これを受けて2014年度はいよいよ条例化に向けた話し合いをしていく。今後、「夜○時以降は利用しない」などの、インターネットやソーシャルメディアに関する青少年健全育成条例の改正案が作成される予定だ。
ネット依存は病気なのか、どこから依存症と判定するのかという問題は議論が分かれるところだ。依存者の推計数を示すとインパクトは強いが、ミスリードにつながりかねないとも感じる。しかし、ネット依存やソーシャルメディア依存は登場したばかりの新しい概念であり、今後、徐々に基準が定まっていくことだろう。数云々よりも、目の前にいる子供たちがネット依存によって日常生活に支障が出ていないかどうかを見ることこそが大切なのではないだろうか。
【INTERNET Watch,高橋 暁子】

人手不足が深刻なのに失業率は3.6% なぜ解消しないの?

THE PAGE 2014年6月13日

総務省が5月30日に発表した4月の完全失業率(季節調整済み)は3.6%と先月から横ばいとなりました。専門家の中からは日本は完全雇用になっており、これ以上失業率を低下させるのは不可能という声も聞こえてきます。実際、企業は人手不足で悲鳴を上げているのですが、3.6%も失業している人がいるのに、どうしてそんなに人手不足になるのかと疑問を持つ人も多いかもしれません。
経済学的にはこの水準の失業率はかなり低いと見なされます。企業が提示する条件と労働者が望む条件が完全に一致するとは限りません。どんなに景気がよくても、一定数の労働者はうまく仕事を見つけられない可能性があり、失業率がゼロになることはないからです。
むしろ現在の日本では、本当にこんなに失業率が低いのだろうかという疑問の声も出ているくらいなのです。いくらアベノミクスによって景気が盛り返しているとはいえ、長期のデフレが続いた後ですから、日本はまだとても好景気といえる状態ではありません。バブル経済がピークだった時代にも3%近い失業率があったことを考えると、やはり3.6%という数字は低すぎるのかもしれません。
日本には約6600万人の労働人口があります。このうち仕事についている人の数は約6350万人ですから、失業者は約250万人ということになります。しかし、統計上失業者とカウントされるためには、求職活動を継続的に行っている必要があります。職探しを諦めてしまった人は失業者とはみなされず、非労働人口になってしまいます。
15歳以上の人口に対して、実際に働いている人の割合は57%しかありません。ここには老人も含まれますから、勤労世代に限って言えば、おおよそ80%という数字になります。逆にいえば、2割の人が何らかの理由で働いていないわけです。失業率の定義は国によって異なるのですが、日本の定義を米国と同じにすると、数字が大きく上昇すると指摘する専門家もいます。
仕事をしていない人や、職探しを諦めてしまった人は、労働市場に出てきませんから、企業は職探しをしている人の中から人材を採用しなければなりません。厚生労働省が発表している職種別の有効求人倍率は、建設関係では2.6倍、介護を含むサービス業では1.9倍と人手不足が深刻になっています。労働条件が厳しいといわれる業界では、まったく人が集まらないという状況が発生する一方、一般事務職の求人倍率は0.23倍と人材が余っています。全体として雇用のミスマッチが大きいということが分かります。
数字の上では、働いていない人を労働市場に引っ張り出せば、人手不足はすぐに解消するはずです。しかし、現実にはそう簡単にはいきません。政府が海外からの労働者受け入れを拡大する方針を打ち出しているのも、こうした理由からです。
(The Capital Tribune Japan)