「うちのクラスのあの子は軽度の学習障害」高校教諭ツイッター書き込み

スポーツ報知 2014年7月12日

愛知県扶桑町の県立丹羽高校の教諭が、ツイッターに「たぶんうちのクラスのあの子は軽度の学習障害だ」と書き込んでいたことが11日、分かった。
県教委と同校の説明によると、教諭がこの文言を書き込んだのは2013年。そのほか、過去3年間に「いちくみのおデブちゃんふたり(男子)がテスト中、力尽きたみたいに口ポカーン」「午後イチの試験監督、教卓でしばし爆睡」「モンスターペアレンツ怖すぎだよ」など不適切な言葉を書き込んでいた。
ツイッターは今年4月、書き込みに気づいた生徒が別の教諭に知らせて発覚。学校の調査に教諭は「反省している」「二度としない」と話し、ツイッターもやめたという。
この日、全校集会で校長が生徒に謝罪。教諭も出席したが、本人の口からは謝罪はなかった。教諭本人に対しては校長が口頭で厳重注意し、県教委も同日付で教諭を訓告処分とした。
同校では「県教委からの指示で、教諭の性別や年齢、役職などは公表できない」としている。今回の書き込みによって異動などはなく、「通常通り」(同校)勤務をこなしているという。

中学生のスマホ所有率は34.4% 親の4割は「本当は持たせたくない」

ITmedia ニュース 2014年07月11日

英会話教室を展開するGABAは7月10日、小中学生のスマートデバイス利用状況に関する調査結果を発表した。スマートフォン所有率は小学生高学年が7.8%、中学生が34.4%で、タブレット所有率は中学生が17.1%だった。
子どものスマートデバイス所有に関する親の意識を聞くと、スマートフォンを「持たせてもよいと思っている」は59.7%、「本当は持たせたくない」は40.3%。タブレット端末を「持たせてもよいと思っている」は57.1%、「本当は持たせたくない」は42.9%だった。
調査は小中学生の子を持つ20~59歳の男女1000人に対してインターネット上で実施した。

ソープランドで女子高生雇う=児童福祉法違反容疑で店長逮捕―警視庁

時事通信 2014年7月11日

私立高校3年の女子生徒を雇い男性客にわいせつな行為をさせたとして、警視庁少年育成課などは11日までに、児童福祉法違反容疑でソープランド店長、中村勝明容疑者(39)=千葉県山武市蓮沼ハ=を逮捕した。同課によると、「必要な年齢確認を怠った。弁解の余地はない」と容疑を認めている。
逮捕容疑は2013年10月10日、千葉市中央区栄町のソープランドで、十分な年齢確認をせずに雇った女子生徒=当時(17)=に、40代の男性客へのわいせつな行為をさせた疑い。
同課によると、女子生徒は同年8月上旬にJR千葉駅前で勧誘された。入店時には18歳の友人のパスポートを提示し、店のホームページにも「18歳」と表示されていたという。

「菓子を盗み食いした」4歳女児を縛る…大人になりきれない親たち

産経新聞 2014年7月11日

4歳の女の子に自分のお菓子を食べられ、腹が立った-。子供同士のけんかの理由かと思いきや、そうではないという。長女の両手足首を結束バンドで縛ってけがを負わせたとして、大阪府警が今年5月、傷害容疑で大阪府東大阪市の母親(22)と内縁の夫の男(22)を逮捕し、同6月に大阪地検が同罪で2人を起訴した。ポテトチップスにチョコレート、クッキー…。自分たちが買い込んでいたお菓子をたびたびつまみ食いされ、注意をしたが言うことを聞かないため、2人は「しつけ」の一環として長女を縛ったとされる。
どんな動機であれ虐待は許されないが、まるでペット感覚の発想だ。しかし、過去には育児放棄の動機が「義母に似てきたから」と指摘されたり、「彼氏に会いたい」と子供をトイレに置き去りにしたとして逮捕されたりした母親もいた。大人になりきれていない親が多くなってきたのだろうか。

両手足を緊縛し全治3週間
「子供の具合が悪い」。昨年7月、府内の病院に、母親と内縁の夫の男に伴われて4歳の女児が訪れた。診察にあたった医師は、両手首と両足首にくっきりと浮かんでいたひも状の皮下出血を確認すると、すぐに虐待を疑ったという。
母親と男の起訴内容は、当時4歳だった長女が2人のお菓子を食べることなどに立腹。平成25年7月初旬~同19日ごろ、同居する大阪府東大阪市内の自宅マンションで、長女の両手首と両足首をプラスチック製の結束バンドできつく緊縛する暴行を加え、手と足に全治約3週間の外傷性皮下出血の傷害を負わせたとしている。
捜査関係者によると、被害にあった長女は、母親の連れ子。母親と男は24年夏、飲み会で出会って親密になり、昨年2月から3人で暮らし始めた。
当時、男は工場勤務をしていたが、同居から数カ月後の昨春、バイクを運転中に事故を起こして退職。それ以降は保険金を切り崩して生活するように。同年夏ごろには、自宅マンション前の路上に軽乗用車を止め、車内で3人が寝ている様子も目撃されており、近所の住人は「車内でエアコンをかけて涼んでいるのか」と感じたという。

「お菓子を食べられ腹が立った」
生活が一変し始めたこのころから、夫は長女を殴るなどの暴力を振るい始めた。 母親が加担することもあったといい、保護されたとき、長女の腹部には数カ所にわたってあざが残っていた。
一家の異変は周辺住民も感じ取っており、マンション近くに住む40代女性は、深夜に何度か女の子の悲鳴を聞いていた。「お腹が痛い」と叫ぶこともあったという。
こうした変化の延長線上にあったのが、子供の手足を結束バンドで縛るという行動だったのか。だが、事件でもっとも奇異だったのは、虐待の動機だった。
「昼寝をしている間に自分たちのお菓子を食べられた。注意したが、何回も繰り返されたので、縛った」
逮捕後、大阪府警の調べに2人はこう供述した。
元々、お菓子が好きだったという2人。自宅にポテチやチョコなどを大量に買い込んでいたが、長女が食べてしまうため、子供が届かない棚の上などに保管していたという。
しかし、2人が昼寝しているときや不在のとき、長女は棚によじ登るなどしてお菓子を取り出し、こっそりつまみ食いしていた。このことに気付いた2人は、自分のお菓子を食べられたことに立腹し、長女の両手を結束バンドで拘束。最初は緩めだったが、長女がつまみ食いを繰り返すたびにエスカレートし、両手、両足ともに縛るようになったとされる。捜査関係者によると、長女は長い場合で30分以上緊縛されていたという。

「彼に会いたくて」「義母に似てるから」
わが子にお菓子をつまみ食いされたから-。大人げない物言いは驚くばかりだが、同じような幼稚な動機で子供を虐待したりするケースは、ほかにもある。
今年3月、JR新大阪駅(大阪市)のトイレに1歳の長女を置き去りにしたとして、母親が保護責任者遺棄容疑で逮捕されたが、調べに「彼氏に会いたくて置いて行った」と供述。その後、不起訴になったが、女児と離れて暮らすことを余儀なくされたという。
また、奈良県では平成22年3月、当時5歳の男児を餓死させる事件があった。両親が保護責任者遺棄致死罪に問われたが、母親の裁判員裁判の公判では検察側が冒頭陳述で「男児の表情や声が、折り合いの悪かったしゅうとめに似ていると感じたため、十分な食事を与えなくなった」と主張。母親は懲役9年6月の実刑判決を宣告された。
なぜ、こうした親が後を絶たないのか。子供を襲う虐待をどうすれば防げるのだろうか。
関西学院大の才村純教授(児童福祉論)は前提として「昔と違って今の家庭は地域的に孤立している」とした上で、「昔は子供がいたりすれば、近所の人が集まり、あやしたりしつけたりした。しかし、今はそういう機会がないので、子供のしつけ方を学ぶ経験が少ない」と指摘する。
こうした状況を改善するためとして「ペアレント・トレーニングなどが必要」と提言。才村教授によると、ペアレント・トレーニングは、親に子供への正しいしつけを身に付けさせるもので、子供のほめ方や自身の感情をコントロールする方法などを学ぶ。海外では虐待をしてしまう親の更生プログラムにも取り入れられているという。
一方、大阪市の児童相談所長を務めたことのある花園大の津崎哲郎特任教授(児童福祉論)も同様の意見だ。「十分に親になるためのプロセスを積まないまま、育児を始めた未熟な親があまりにも多い」と分析し、「学校で乳児とふれあう体験学習を充実させるなどの対策を取ることが必要ではないか」と話している。

市職員、安否確認通報を3日間放置 男性すでに死亡

朝日新聞デジタル 2014年7月11日

宮崎県都城市は11日、一人暮らしの男性(49)の安否を心配する通報を受けながら、すぐに対応していなかったことを明らかにした。通報が寄せられたのは国の監査実施日の初日で、市職員は監査が終わった日に男性宅を訪れ、死亡しているのを見つけた。市は「監査は言い訳にならない。すぐに男性宅を訪問すべきだった」と不手際を認め、陳謝した。
市によると、6月24日、同市北原町のアパート隣人から「新聞が5日分ぐらいたまっている」と連絡があった。保護課職員は親族には連絡したが、男性宅には行かなかった。厚生労働省による生活保護にまつわる監査があり、同課などが対応していた。
3日後の27日に職員が訪れたところ、居間で仰向けになって死亡している男性を見つけた。男性は糖尿病を患っていた。事件性はないという。男性は昨年3月から生活保護を受給。先月12日にも生活相談で同課を訪れていた。
池田宜永市長は「適切でなかった。こうしたことが起こらないように万全を期したい」とのコメントを出した。(寺師祥一)

年金「逃げ切り組」と呼ばれる団塊の世代 実は逃げ切れない

NEWS ポストセブン 2014年7月11日

〈知っていますか? 「国民年金」って、実は…お得・安心・便利〉
これは厚生労働省と日本年金機構が作ったパンフレットの表紙に躍るフレーズだ。特に若者たちに「年金の素晴らしさ」を伝えたいのか、ポップなデザインでまとめられている。
表紙をめくると、次のような文句が並んでいた。
〈メリット1 老後をずっと支える終身の年金(中略)メリット5 国民年金は経済の変動にも負けません〉
オイルショックに端を発する「狂乱物価」が始まった1973年、年金には「物価スライド制」が導入された。将来、物価が上昇したらその分だけ受給額もアップさせて実質的な水準(受給額の価値)を保つというもので、役人たちは長い間それを年金制度の長所として喧伝してきた。
が、彼らがアピールする〈メリット〉は大嘘だ。
そこで、あらためて年金博士として知られる社会保険労務士・北村庄吾氏監修のもと、将来の受給額をシミュレーションした(厚労省試算は賃金も物価も上昇するというバラ色の未来を前提に見かけの受給額が水増しされているが、ここではわかりやすくするため現在価値に換算した)。
シミュレーションの結果、〈老後をずっと支える〉〈経済の変動にも負けない〉というフレーズが嘘だとハッキリわかる。
ここでは試算で判明した衝撃的な数字を見ていこう。
現在40歳の一般的サラリーマン(生涯の平均年収500万円)は、25年後の65歳時には月額16万8000円を受給する。
ところが受給開始5年後の70歳時には15万3000円へと減らされてしまう。年を重ねるほど受給水準は下がっていき、80歳時には12万9000円、100歳まで長生きすればわずか9万2000円と、半額近くに減ってしまうのだ。
「逃げ切り組」と呼ばれた団塊の世代も毎年削られていく。
現在65歳の世代(生涯の平均年収500万円)は、月額22万3000円受給している。それが80歳時には19万円へと約15%も減り、100歳になれば13万4000円までカットされる。
毎年削られていく分、受給総額も本誌前回試算よりさらに減少することになる。現在40代以下の世代では総額で1000万円以上の受給カットも当たり前だ。
以上はサラリーマン世帯(厚生年金加入者)の夫婦合計額である。
自営業者で国民年金しか入っていなければ受給額はもっと少なくなるし、夫婦のどちらかが亡くなるとさらに半分になってしまう。「国民年金しか入っていない人は100歳になったら月々3万円」といったことも起きる。
しかも年金からは介護保険料が天引きされる。年金だけでは老人ホームに入ることはおろか、食費や光熱水費すらままならない地獄のような生活が待っているのだ。

<児童虐待 ゆがんだ絆(1)>保育所、児相予期できず

@S[アットエス] by 静岡新聞 2014年7月 (敬称略)

またも幼い子供の命が危険にさらされた。沼津署が6日に摘発した1歳児に対する傷害事件。児童虐待が疑われている。年々、支援制度の充実が図られているにもかかわらず、悲惨な事件は後を絶たない。2013年度の県内児童虐待相談件数も1725件と過去最多を更新した。再発防止の鍵は何なのか―。現場を歩き課題を探った。
沼津市内の保育所を元気な様子で帰宅した2日後、1歳9カ月の幼児が頭部にけがをして、意識不明の重体になり、7日も予断を許さない状況が続く。なぜ幼い男児が悲惨な目に遭ったのか。同居する女性(23)の長男に暴行し重傷を負わせたとして、沼津署が6日に傷害の疑いで逮捕した沼津市南本郷町の無職の男(29)は、黙秘を続けているという。母子といつも顔を合わせている保育所の関係者も事件を予期できなかった。
6日午前2時。寝静まった住宅街に救急車のサイレンが鳴り響いた。母親とみられる女性がぐったりした男児を抱え、車内に乗り込んだ。近所の男性(71)は「子どもの泣き声はよく聞いていたけど、心配するほどではないと思った。幼い命。何とか助かってほしい」と涙ぐんだ。
男は、4日午後5時半から6日午前1時45分ごろまでの間、自宅で男児に暴行し、大けがをさせた疑いが持たれている。母親は外出中で、男から「子どもの様子がおかしい」と連絡を受けて、母親が119番した。搬送先の医師が、男児の体にあざや傷があったことから同署に通報した。
ただ、男児が通う市立保育所の所長は「子どもの体は毎日入念に見ている。男児が日常的に暴行を受けたような痕はなかった。4日も元気に遊んでいた」と話す。母親は、男児の体に湿疹ができた時も病院で薬を処方してもらい、保育所に持ってきたという。
保育所や沼津市、県東部児童相談所は母子が男と同居していることは、事件が起きるまで知らなかった。市の担当者は「一般論として、母子家庭の中には同居する男性がいることで、公的な援助を受けられなくなることを恐れて本当のことを言いたがらない人もいる」と、家庭環境を正確に把握する難しさを口にする。
同相談所の担当者は「本庁の担当部会で有識者を交え対策を検証することになると思う」と重く受け止める。
沼津署は8日、同容疑者を静岡地検沼津支部に送致する。

メモ
静岡県警が虐待があったとして2013年に児童相談所に通告した18歳未満の子どもは227人で過去最多だった。虐待の態様別では、殴る蹴るなどの暴行を受けた身体的虐待が最も多く112人を占めた。通告の結果、52人は施設入所などの措置が取られた。虐待での摘発も過去2番目に多い16人に上った。内訳は被害児童の実父8人、養父・継父5人、内縁関係2人、実母1人。摘発罪種は傷害(7人)、暴行(2人)などが目立った。

<2>親から子へ潜む負の連鎖 家庭の孤立、地域で防ぐ

伊東市で、非行の子どもや若年層の親の支援に取り組むNPO法人「子育ての会伊豆」代表の鈴木善博(56)には忘れられない光景がある。6年前の秋、中学生の時から支援していたかおり(仮名)=当時(27)=から携帯電話に着信があった。力ない声で「苦しい」。深夜、かおりが住む市営住宅に、妻の明美(47)と車を走らせた。
玄関を開けると異臭が鼻をついた。床はごみや荷物が散乱して踏み場がない。その中で、3歳と2歳の兄妹が冷凍されたうどんをかじっていた。妹のおむつは、排せつ物でぱんぱんに膨らんでいた。
奥に、ぼーっとしてたばこを吹かすかおりがいた。ネグレクト(育児放棄)だった。「もう無理だな」。鈴木が声を掛け、市の保健師に連絡。子どもを保護した。兄妹は今、児童養護施設にいる。
かおりは娘を生んだ後に離婚した。うつ病を抱えながらの、孤独な育児だった。市の支援を受けていたが、昔から知っている鈴木にSOSを出した。
鈴木は、かおりが育った家庭環境に注目する。かおりも母子家庭で育ち、中学生のころ家族に乱暴されたことがあった。そのころから複数の異性と交際を重ね、鈴木が理由を尋ねると「必要とされることがうれしい」と話した。鈴木は25年に及ぶ支援の経験から「児童虐待は世代を超えて連鎖する」と考える。「親をしっかり支援しなければ児童虐待はなくならない」
2012年度の全国の児童虐待相談件数は6万6701件。統計を取り始めた1990年度の実に60倍だ。子育てに困難を抱える家庭や、児童虐待は身近に潜む。私たちにできることは何か。
鈴木は地域の関わりが重要だと訴える。「気になる家庭、母親、子どもが気軽に相談できる関係をつくる。信頼を築くには長く付き合う近所や町内にしかできない」
2013年11月、大分県別府市で開かれた「子どもの虐待防止全国フォーラム」。児童虐待問題の専門家養成機関「子どもの虹情報研修センター」(横浜市)研究部長の川崎二三彦が講演した。川崎は大阪市で10年、幼児2人を餓死させた母親が社会から孤立していたことに触れ、こう強調した。「虐待への介入、援助はいろいろな人がわずかであっても自分でできることをしていくことが大事。専門機関だけが行うものではない」

メモ
厚生労働省の専門委員会は、全国の児童虐待死亡事例を集計、分析した「子ども虐待による死亡事例等の検証結果」を2003年分から毎年発表している。最新の第9次報告によると、11年度に発生、表面化した児童虐待死(心中除く)は56例58人。家庭と地域社会の接触の有無を調べたところ、「ほとんど無い」と「乏しい」が全体の64%を占めた。一方で、児童相談所か市町村(児童福祉担当)が関与していたにもかかわらず死亡したケースが38%あった。

<3>いびつな愛着抱え反復 連鎖生む深刻な後遺症

児童虐待は親から子へと世代を超えて連鎖する。そうした説が、蓄積された臨床データから確立されつつある。連鎖の背景にあるのは虐待の深刻な後遺症だ。
虐待を受けた子どもの多くは、心の内にゆがんだ親子関係を形成する。虐待児臨床の権威とされる浜松医科大特任教授の杉山登志郎(児童精神科医)はこれを「虐待的絆」と呼ぶ。
乳幼児は養育者との関係から対人関係の基盤をつくるとされる。この時期に虐待を受けると、殴られた時のしびれや口に広がる血の味、いつ暴力にさらされるか分からないという緊張感が基盤になる。本来、親と一緒にいる安心感から醸成される「愛着」が、ゆがんで形づくられる。
いびつな愛着を抱えた子どもは、かつて自分を虐待した親と同じような暴力的な異性と同居するケースが多い。いわば「虐待的対人関係」の反復が起きる。
愛着障害を持つ子どもが青年期を迎えると、解離性障害や非行、薬物依存の傾向が強まることも、杉山の数百人に及ぶ診療結果から明らかになった。そのまま親になった人の多くは困難を抱えながらの子育てを強いられる。杉山は連鎖のメカニズムをこう説明する。
しかし、支援の現場では、親の生育歴や内面の問題に十分に目を向けた態勢が取られているとは言い難い。
2012年4月、富士市で4歳の女児が母親(27)の交際相手の男(28)に殴られ、顔の骨を折るなど全治3カ月以上の重傷を負う事件があった。県の児童虐待検証部会が支援の問題点を指摘している。児童相談所は交際相手の存在、虐待とみられる女児の体のあざを事前に確認しながら、母親との関係に配慮し、内面的な問題や家族状況を明らかにしようとしなかった―と。
静岡県内の児相関係者はこう指摘する。「親との関係性を重視する従来の児相の手法では、対症療法的な支援にならざるを得ない」
日本子ども虐待防止学会が13年12月に長野県松本市で開いた学術集会。採択された大会宣言の一文が、課題を端的に指摘している。「国と社会は有効な手立てを講じることができないまま、この10年を過ごしたことをしっかりと認識し、今こそ変革に向けた一歩を踏み出すべきだ」
虐待の連鎖を断ち切る、適切な支援が求められている。

メモ
杉山特任教授が勤務していたあいち小児保健医療総合センター(愛知県)が2001年から10年間、診療した被虐待児1110人を分析したところ、全体の47%に解離性障害、41%に愛着障害など虐待の後遺症が認められた。特に性的虐待で後遺症が顕著に表れた。虐待した親のうち、診療を受けた親167人を分析したところ、63%に虐待を受けた過去が認められた。うつ病は86%、PTSD(心的外傷後ストレス障害)は64%に及んだ。

<4・完>妊娠期からの支援急務 リスク見抜き寄り添う

大阪市東淀川区で子育て支援のNPOが運営する「おやこひろば」に8日、ベビーカーや自転車を押して母親たちが集まった。0歳児から就学前までの幼児が遊び、初対面の母親同士が日々の悩みを共有する。この日は新米ママを対象に、子育て相談の時間もあった。「ご飯を食べない」「周りの子より成長が遅い」。不安の一つ一つに助産師の徳山可奈(36)が答えていく。
厚生労働省の報告によると、2011年度に全国で虐待死した子どもの約4割が0歳児で、このうち生後1カ月までに死亡した事例が44%を占めた。虐待の背景要因に指摘されたのは「望まない妊娠」「妊婦健診未受診」など。予防には「妊娠早期からの支援」が必要という。大阪府は虐待に結び付きやすい医学・社会的事情を抱える妊産婦に寄り添い、妊娠の早い段階から助言できる人材として、助産師に着目した。
昨年度、初めて実施した「ハイリスク妊産婦サポートリーダー育成研修」には16人の助産師が参加した。徳山もその1人。1年間、各分野の専門家から虐待に関する講義を受け「不安を抱える母親の、イエス・ノーの裏にある真意」を見抜く必要性を痛感したという。
虐待は普遍的な問題でもある。府はリスクの高いケースに対応するスペシャリストの養成に力を入れる一方、多様な事情に対応できるよう関係機関の連携強化にも努めてきた。
7カ月の長男を持つ女性(42)=池田市=は「保健師と助産師に救われた」と漏らす。出産間もないころ、泣きやまない長男に、自身の入浴さえままならなくなった。パニックを起こし、保健師に電話した。翌日、助産師を伴い自宅に来てくれた。身の回りの世話を焼き育児相談に乗りながら、朝から晩まで寄り添ってくれた。「誰にも虐待をする可能性がある。あの時、支えがなかったら…」
受け皿は充実しつつある。ただ、医療や保健福祉の機関と関わりを持たない妊婦の支援に課題が残る。虐待のリスクが高いケースと重なることも多く、早急な対応が求められる。
解決策の一つとして府は全国に先駆け11年10月、思いがけない妊娠に関する相談窓口「にんしんSOS」を設けた。保健師と助産師が電話とメールで応対し、必要に応じて保健センターや行政につなぐ。運営を担う府立母子保健総合医療センターの医師佐藤拓代によれば、必要なのは「リスクの高い妊婦を見抜くアンテナ」。助産師の徳山と同じ指摘だった。

メモ
大阪府が始めた「にんしんSOS」の取り組みは、全国各地に広がっている。県内では浜松市が2011年12月、県が12年10月にスタートさせ、思いがけない妊娠や出産に悩む女性から多くの相談が寄せられている。開設から13年度末までで浜松市には172件、県には511件の相談があった。双方の担当者とも「虐待防止につながる手段」と捉え、継続と普及の必要性を指摘する。