問題行動調査:反抗・暴言、荒れる児童 社会のひずみ、ストレスに

毎日新聞 2014年10月17日

文部科学省の2013年度問題行動調査で、荒れる小学生の増加が明らかになった。「中学校と同じことが起きている」。小学校教員からは悲鳴が上がり、専門家は「荒れの背景には貧困など社会のひずみが子供のストレスとなって表面化している」と指摘。学校や行政は対応に追われている。【寺岡俊、松田栄二郎、関東晋慈、三木陽介】
「精神的に不安定で感情を抑えられない児童が目立つ」。大阪市立小のベテラン男性教諭(60)は現状をそう明かす。反抗的な態度を見せ、ささいなことで教室を飛び出したり、突然壁を殴ったり。広島県の市立小校長は「調査統計には含まれないが『言葉の暴力』も目立つ」と嘆く。教員とすれ違いざまに「うざい」「死ね」と暴言を吐く児童が珍しくない。東京都の区立小校長も「注意すると、かみついたり、いすを投げたりする。過度な指導は『体罰』になりかねず先生も遠慮がち。それが暴力行為を助長させている面もある」と対応に悩む。
自治体は対応に乗り出してはいる。熊本県教委は08年度に小中学校での暴力行為が前年度52件増の171件となったことを受け「子どもの居場所作り」を重視した対策を促進。異学年交流の活発化や教員が連携して生徒指導に当たる学校が増加した。13年度は135件に減り、県教委は「取り組みが浸透した結果」と説明する。福岡県教委は02年度から「非行要因」として不登校への対策を強化。担任とは別の教員によるマンツーマンの相談体制などに取り組む。
小中高校の暴力行為件数が13年度1万187件と、4年連続で全国1位だった大阪府。大阪市教委は来春から、在籍校とは別の施設に特別教室「個別指導教室(仮称)」を設置し、問題行動を起こした生徒を厳格に指導する方針だ。
重い傷害や薬物所持、強盗などを起こしたケースが対象。出席停止にした上で、専門スタッフが警察などと連携して指導する。市教委は「あくまで出席停止措置の受け皿。排除ではない」と説明するが、教員からは「邪魔者扱いと受け取られ、逆に傷つける」「規範意識は集団生活の中で身につく」と疑問の声も上がる。
荒れる児童について、元小学校教員の増田修治・白梅学園大教授(臨床教育学)は「ストレスを抱える子が確実に増えている」と指摘。一因として家庭要因を挙げる。経済的困窮で子を構えなかったり、思い通りの進路を歩ませようとしたりする親も目立つという。学校も受け止める余裕がない。小学校は障害を抱え特別支援が必要な児童も増え、新たな指導方法も求められる。全国学力テストで学校間競争にもさらされる。
増田教授は「問題行動を起こす子どもは親からも先生からも認めてもらえず自己肯定感が低い子が少なくない。社会全体の問題としてとらえ対策を取る必要がある」と話している。

◇いじめ18万件、続く高水準
文科省が実施した13年度の問題行動調査で、全国の国公私立の小中高校、特別支援学校で認知されたいじめ件数は18万5860件だったことが分かった。前年度の約19万8000件に比べ減ったものの依然高水準で「いじめ20万件時代」に入ったことをうかがわせる。
都道府県別では1000人当たりの認知件数は全国平均が13・4件だが、最多は京都府の99・8件、最少は福島県の1・2件と開きがあった。同省は「自治体、学校ごとで把握の方法が一様でないことが要因。国の手引を精査し、客観的で的確に認知できるようにしたい」と話している。
いじめのうち、インターネット上で誹謗中傷(ひぼうちゅうしょう)する「ネットいじめ」は8787件で過去最多。全体に占める割合は4・7%だが、高校ではその割合が高く、約2割を占めた。
昨年9月施行のいじめ防止対策推進法が示す対策の取り組み状況(今年10月現在)を調べた結果、都道府県に比べ市区町村の遅れが目立った。各自治体が作る「いじめ防止基本方針」は、策定中の奈良県以外の都道府県で策定済みだったが、市区町村は4割強。学校や教委、児童相談所など関係機関でつくる「いじめ問題対策連絡協議会」も都道府県は9割超が設置済みに対し、市町村は3割程度だった。【三木陽介】

ことば
◇いじめ防止対策推進法
2011年に大津市の中2男子生徒がいじめを受け自殺した事件で、大津市教委の隠蔽(いんぺい)体質や不適切な学校の対応が問題視され、初めて法制化された。学校に対し、教員や心理、福祉の専門家らで構成するいじめ防止対策組織の常設▽いじめ防止基本方針の策定▽重大ないじめ事案が起きた場合、迅速な事実関係の調査−−などを義務づけている。

<問題行動>いじめ20万件時代…ネット使い最多8787件

毎日新聞2014年 10月16日

文部科学省が実施した2013年度の問題行動調査で、全国の国公私立の小中高校、特別支援学校で認知されたいじめ件数は18万5860件だったことが分かった。前年度の約19万8000件に比べ減ったものの依然高水準で「いじめ20万件時代」に入ったことをうかがわせる。
都道府県別では1000人当たりの認知件数は全国平均が13.4件だったが、最多は京都府の99.8件、最少は福島県の1.2件と開きがあった。
同省は「自治体、学校ごとで把握の方法が一様でないことが要因。国の手引きを精査し、客観的で的確に認知できるようにしていきたい」と話している。
いじめのうち、インターネット上で誹謗中傷(ひぼうちゅうしょう)する「ネットいじめ」は8787件で過去最多。全体に占める割合は4.7%だが、高校ではその割合が高く、約2割を占めた。
昨年9月施行のいじめ防止対策推進法が示す対策の取り組み状況(今年10月現在)を調べた結果、都道府県に比べ市区町村の遅れが目立った。各自治体が作る「いじめ防止基本方針」は、策定中の奈良県以外の都道府県で策定済みだったが、市区町村は4割強。学校や教委、児童相談所など関係機関でつくる「いじめ問題対策連絡協議会」も都道府県は9割超が設置済みに対し、市町村は3割程度だった。同省は「都道府県の方針や組織を参考にする市区町村もあり、今後は増える」とみている。【三木陽介】

長野県では未成年と淫行しても処分されない!?

シェアしたくなる法律相談所2014年10月16日

「中3娘の同級生買春で35歳女逮捕」というニュースががありました。
これは、自分の娘と同級生の男子生徒を35歳の女が売春したというニュースなのですが、このニュースではもうひとつ話題となった部分がありました。
それは47都道府県で唯一、青少年保護育成条例が制定されていないため、金銭の授受がないとされた場合、起訴されない可能性があるという部分です。
本来、このような事例で適用されるのが、淫行条例です。では、なぜ長野県では淫行条例が制定されていないのでしょうか?

淫行条例とは
いわゆる淫行条例は、ほとんどの都道府県がこれを「青少年保護育成条例」という名称で制定し、地域社会における青少年の健全な育成に取り組んでいます。
しかし、長野県では、県自体としては、青少年保護育成条例を制定していません(※長野市などのより小規模な地方公共団体では制定されています)。
では、なぜ、長野県では青少年保護育成条例を制定していないのでしょうか。今回はこの点をテーマに検討していきます。そもそも、青少年保護条例の目的は「青少年の健全な育成」であり、そのために、深夜徘徊や有害図書の規制など多岐にわたる内容を定めています。
青少年保護育成条例が「淫行条例」といわれる由縁は、18歳未満の青少年に対する、「淫行」を禁止している点にあります。
この淫行とは、わたしたちが一般的に考える性行為よりも範囲が広く、たとえば性交類似行為なども規制の対象としていると考えられています。

長野県の考え方
長野県では“青少年の健全育成は住民運動や啓発活動でやっていくべきもの”と考えていることから、青少年保護育成条例を制定していません。
また、性の自己決定権を尊重すると、青少年保護育成条例は行き過ぎた規制なのではという考えもあるようです。
しかし、上記の条例制定目的を達するためには、悪質な「淫行」を取り締まる必要性はやはり高いものであるといえます。たとえば、学童に対する教員からの性交 又は性 交類似行為など、極めて看過することのできない事態が多発していたとしても、条例がなければ摘発されない状況が生じてしまうのです。この点につき、長野県は児童福祉法の運用により対処してきたものと考えられますが、限界として条例制定の動きもあるようです。
確かに、性的自己決定権は重要なものかもしれませんが、未成熟な児童に対しては全国的な立法で規制しても問題はないという意見もあるようです。
みなさんはどう思いますか?
*著者:弁護士 小西一郎(聖マグダラ法律事務所。風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律を専門分野とする風俗弁護士として全国を飛び回る。)