性的虐待を受けた子どもの話をどのように聞くべきか? 専門家が語る4つのポイント

弁護士ドットコム 2014年12月17日

「性的虐待を受けた子どもは、被害を周りの大人に訴えられずにいる。聞き方を間違えると、さらに被害を招くことになる」。子どもの性的搾取をなくすための方策を考えるセミナーが12月6日、東京都内で開かれた。
小児科医の山田不二子さんは、性虐待をするのは「顔見知り」の場合が多いとして、子どもが受ける性虐待の特徴を次のように語った。
「父親が娘に、というケースが一番多いですが、父親が息子に行うこともあれば、母親が息子や娘に行うこともあります。きょうだいや学校の先生の場合もあります。
そうした人物が性虐待をする理由は、性欲もないとは言いませんが、より強く影響しているのは征服欲・支配欲です」
そうした特徴があるため、多くの子どもたちが「どうせ何をしても逃げられないから、あきらめよう」と自分を順応させてしまうか、その逆に「あんな被害を受けたことを認めてしまえば、もう生きていけない」と、ひたすら否認し続けるのだという。

「何で言わなかったの?」母の一言で告白を「撤回」
子どもたちが勇気を出して、信頼できる大人に被害を告白しても、周りがきちんと反応してくれるとは限らない。
「たとえば子どもが、お父さんから性虐待を受けたことをお母さんに話すとします。するとお母さんは、『もっと早く教えてくれれば良かったのに!何で言わなかったの?』と言ってしまうんですね。
子どもは、言いたかったけど言えなかったんです。背景には、口止めをされていたり、自分がしているのは恥ずかしいことだと思っていたりと、さまざまな事情があります。
その葛藤を乗り越えて、最後の頼みとして話したお母さんにそう言われれば、子どもは『拒絶された』と思っても仕方ない。そういう経験をした子はどうするか? 『ママごめん、いまのは全部ウソ』と、告白したことを撤回します。そういう子はすごく多いです」
山田さんは、子どもの言葉がすべてだと考えるのが正解ではないと話す。
「子どもが語ったことが100%だと思わないでください。子どもの言葉をそのまま信じると、子どもが語っていない部分で、もっと深刻な被害があることを見落とす危険があります。
そして、子どもの中には『語らない』という選択をしている子や、『語れない』という状況に置かれている子もいると知っておいてください」

虐待が疑われる子どもへの聞き取り法
山田さんは、「虐待が疑われる子どもから話を聞くときにこれだけは理解しておくべき」項目として、4つのポイントをあげた。
「まず徹底してほしいのは、『誰が何をしたか』以上のことを、根掘り葉掘り聞かないことです。こちらから話すよう促してもいけません。ある程度子どもが語ったら、『この先は専門家の人が話を聞くからね』と言って、それ以上聞いてはいけません。
2つ目は、子どもが言ったことを疑ってはいけないということです。『まさか、そんなことがあるはずない』と不思議そうな顔をするだけでも、子どもは『この人は信用してくれなかった』とキャッチして、もう話してくれなくなることが多いです。
3つ目は、他の大人に再度同じ話をさせないということです。自分だけでは受け止めきれないからといって、他の大人に話をさせる人もいますが、子どもにとっては同じ話を何回もしなければならないので、とても苦痛です。新たに話をした相手が不適切な対応をした場合、撤回したり、もう話さないことを選んでしまうリスクもあります。
そして4つ目は、虐待の加害者に対して、周りの人間が虐待を疑っていると言ってはいけないということです。たとえば、身体的虐待の場合、加害者に対して『●●君があなたに殴られたって言ってるけど殴りました?』と聞く人は意外と多い。
このように聞かれた加害者は、虐待をやめるどころか、バレないようにもっとやるんです。通告して調査が進んで、子どもの安全確保ができる段階になるまで、虐待が疑われていることを加害者に知らせてはいけません」

子どもに何度も同じ話をさせるな
虐待を受けた子どもから、どうやって必要な情報を聴き取るのか。欧米では、児童相談所や警察、検察という専門機関が、子どもから必要な情報を一度で聞き取る「司法面接」というやり方が一般的だという。
「専門の面接官が1回のやり取りで、子どもから必要な情報を聴き取るため、子どもは辛い体験を複数の人間に何度も話す必要がありません。
司法面接は欧米ではすでに制度化されています。しかし、日本では一部地域で実践が開始されているものの、児童相談所が独自に行っているために、面接の1回制が担保されていません。
日本でも、この司法面接を早急に制度化することが求められます」
山田さんはこのように語っていた。
弁護士ドットコムニュース編集部

厚労省年金改悪 何があろうと下げ続けるという強い決意あり

NEWS ポストセブン 2014年12月18日

厚生労働省は選挙のドサクサに紛れて、国民に気付かれないように水面下で年金改悪を検討している。政府の社会保障審議会の関係者が明かす。
「今の仕組みでは、基本的に『物価の増減率-(マイナス)スライド調整率(カット率)』の割合で年金を減らしていくことになっている。
厚労省はそれを、デフレ下で賃金減少率が物価下落率を上回る場合、『賃金減少率-スライド調整率』にする方向で検討を始めた。当然、現行制度よりも減額幅は拡大する」
つまり、

●物価がマイナス0.5%
●賃金がマイナス2%
●スライド調整率がマイナス1.1%

だったとすると、今までは「マイナス0.5%」と「マイナス1.1%」で1.6%の減額だったが、それが「マイナス2%」と「マイナス1.1%」で3.1%の減額となるように改悪しようというのである。現在のように景気が苦しい時に、“現役世代も苦しいのだから、もっと減らすからな”というわけだ。やられるほうはダブルパンチである。
アベノミクスによって、すでに実質賃金は16か月連続で減少している。前述のような改悪を考えているということは、厚労省は今後アベノミクスが失敗して賃金が減り続けることを予測しているのだろう。そして年金は、何があろうと下げ続けるという“強い決意”がうかがえる。
圧倒的な議席を握る安倍政権が、年金官僚たちが作るさらなる改悪計画をそのまま国民に押し付けることは間違いない。国会にチェック機能がない以上、改悪を止めるのは国民の声しかない。

障害者雇用水増し 厚労省出向者が関与

日本テレビ系(NNN) 2014年12月18日

労災病院などを運営する独立行政法人が障害者雇用率を水増しして国に報告していた問題で、第三者委員会は、10年以上にわたり厚生労働省からの出向者が虚偽に関与したとする調査報告書をまとめた。
第三者委員会によると、独立行政法人「労働者健康福祉機構」の歴代の総務部長らは、遅くとも2000年頃から、雇っている障害者の数を実際より多く計上するなどし、法律で定められた障害者雇用率を上回るよう水増しを続けたという。歴代の総務部長や人事課長は厚労省からの出向者で、不正と知りながら虚偽を続けた動機について、「過去の虚偽が発覚し、歴代の労働事務次官が務める機構の理事長に迷惑がかかることなどを恐れた」としている。
報告書は「法令順守よりも前例踏襲と組織防衛を最優先する体質」と結論づけ、監査などを強化すべきとし、厚労省からの出向についても十分な検証が必要だと指摘した。.

4人に1人が経験!女性活用の壁「マタハラ」とは?

Mocosuku Woman 2014年12月18日

「マタハラ」はマタニティ・ハラスメントの略語です。働く女性が妊娠・出産を理由とした解雇や雇止めをされることや、妊娠・出産にあたって職場で受ける精神的・肉体的な嫌がらせを受けることを指します。働く女性にとっては、「セクハラ」「パワハラ」に並ぶ3大ハラスメントのひとつと言えます。
4人に1人が経験!女性活用の壁「マタハラ」とは?

マタハラの実態
厚生労働省が発表している統計によると、マタハラに関する相談件数は、2004年度には875件だったのが、2013年度には3663件になっています。また、別の調査では、働きながら妊娠した女性のうち、4人に1人が「マタハラ」を経験しているという報告もあります。マタハラの具体的な内容は下記の通りです(連合非正規労働センター「マタハラに関する意識調査」2013年5月より)。
●妊娠中や産休明けに心ない言葉を言われた(9.5%)
●妊娠・出産がきっかけで解雇や契約打ち切り、自主退職へ誘導等された(7.6%)
●妊娠を相談できる職場文化がなかった(7.0%)
●妊娠中・産休明けなどに、残業や重労働などを強いられた(4.7%)

意外に知られていないマタハラ
少子高齢化が急速に進む状況で、労働力としての女性の活用を目指して、ワークライフバランスや両立支援が求められています。そんな中で「マタハラ」は問題となってきていますが、その一方で、「マタニティ・ハラスメントという言葉も意味も知らない」(79.5%)、「言葉は聞いたことがあるが意味は知らない」(14.4%)で、「言葉も意味も知っている」と答えた人はわずか6.1%でした。言葉自体が新しいことを差し引いても、マタハラという行為そのものに対する認識が非常に低いことがうかがえます。

問題解決への道は?
妊娠・出産、産休明けの人は時短勤務になったり、子供の都合で突発的に休んだりすることはよく起こります。それを「非効率」としか考えず、職場から排除してしまうようでは女性は安心して働くことができません。そんな企業ばかりになってしまうと、少子化が加速してしまう一方です。マタハラという言葉が一人歩きして、妊娠・出産する女性と職場の社員が対立することが問題視されていますが、重要なのはそういうことではありません。マタハラが半ば当然のように起こる企業や社会の枠組みそのものに問題があるのです。そうした視点からの抜本的な対策がなされない限り、マタハラはなくならないでしょう。

<大阪市・入れ墨判決>あなたはどうみる「公務員の入れ墨」

毎日新聞 2014年12月17日

◇職員への入れ墨調査、裁判所は「行き過ぎ」と判断
プライバシー重視か市民の不安払拭(ふっしょく)か--。職員に入れ墨の有無の回答を義務付けた大阪市の調査について裁判所は行き過ぎと判断し、「橋下流」の強権的な手法に異を唱えた。ただ、入れ墨は見た人に恐怖感を与える可能性があり、大阪市には職員の入れ墨に苦情が寄せられたこともあるという。「公務員の入れ墨」を巡る議論は続きそうだ。【堀江拓哉、服部陽】
「やってはいけない調査だと司法が判断してくれた」
大阪市内で記者会見した原告の安田匡(ただす)さん(56)はほっとした表情を見せた。弁護団の小谷成美弁護士(大阪弁護士会)も「大きな勝利だ。市は調査で集めた個人情報を廃棄すべきだ」と訴えた。
安田さんは1991年にバス運転手として市に採用された。体に入れ墨はなく、市が調査で回答を義務付けた人目に触れる部分にもないことは上司にも確認してもらった。ただ、橋下徹市長の手法に疑問を感じ、回答を拒んで処分を受けた。
処分の取り消しを求めて提訴したが、その2日後に藤本昌信交通局長に呼び出され、「社長を訴える時は腹くくらなあかん」と言われ、取り下げを求められたという。そして、バスの運行管理などをする交通局運輸課に配置転換となった。当初は仕事もなく、パソコン入力やコピー取りなどの雑用係だった。
安田さんは「定年退職まで4年余り。運転手として仲間の元に戻り、職務を全うしたい」と判決を喜んだ。
入れ墨調査のきっかけは2012年2月末の一部の新聞報道だった。市立児童福祉施設で男性職員が入れ墨を子どもに見せながら威圧したという内容だ。
後にこの報道は正確でないことがわかったが、市民からこの報道に基づく抗議電話が相次いだ。橋下市長はすぐに動いた。入れ墨を禁止する規則の検討を担当部局に指示し、こう報道陣に語った。
「職員が入れ墨をしているという報告が結構ある。採用後に入れ墨をした職員もいる。普通そんな職場はない。税金で飯を食う立場になっているのに狂っている。市民から信頼されない組織になる」
そして教職員を除く全職員約3万3500人を対象に5月1日から入れ墨調査を始めた。その結果、114人が入れ墨があると答え、99人は人目に触れる部分に入れ墨があった。114人の大半は清掃作業やごみ収集を担当する現業職だった。所属は環境局の75人が最多で、うち半数は採用後に入れ墨をしたという。
また、市教委も教職員約1万7000人に自己申告を求めた。10人が入れ墨があると申し出て、そのうち2人は人目に触れる可能性があったという。

◇公務員の入れ墨 感じ方は時代や人で異なるのでは
精神科医の香山リカさんの話 公務員の入れ墨をどう感じるかは時代や人によって異なるのではないか。昔は医師や看護師でピアスをする人がいなかったようにファッションへの意識は時代と共に変わる。もし不快に思う人がいるなら隠したらいいだけだ。公務員は良識に従って仕事しているのだから、職場ごとの自主的な対応で十分可能だ。市をあげて調査したり、入れ墨禁止をルール化したりするのでは、市民は逆に大阪市を不安に思うだろうし、不毛だ。

◇見える場所の入れ墨 公務員の適性には疑問
名古屋大の大屋雄裕教授(法哲学)の話 入れ墨が反社会的勢力との関連をうかがわせる意味を持ってきたのは事実。それを知りながら、人から見える場所に入れ墨をしている人間が公務員として適性があるかは疑問だ。大阪市の調査はやむを得ないし、対象を人目に触れる可能性がある場所に限っており、プライバシーや人権に配慮したものだ。今回は裁判所に条例違反を指摘されたが、調査のための条例を作るなどして対応すれば良かった。