“ホームレス”の子ども 10年で85人

NHKニュース 2014年12月21日

NHKが全国の児童養護施設などにアンケート調査を行ったところ、一時、車上生活や路上生活に陥りホームレス状態になっていた子どもがこの10年で少なくとも85人に上ることが分かりました。
専門家は「安心感のない生活を送ることで子どもたちに深刻な“後遺症”が残るおそれがある」と指摘しています。

NHKは、虐待や貧困が理由で義務教育さえ受けられないなど、社会とのつながりを絶たれる子どもたちを、“消えた”子どもと捉えて実態を把握しようと、全国の児童養護施設など1377か所を対象にアンケート調査を行いました。
その結果、一定期間、社会とのつながりを絶たれた経験のある子どもの数は施設に保護されているだけでもこの10年で1039人に上ることが分かっています。
このうち、親が家賃を払えず住む場所を失ったり、借金の返済から逃れるために親に連れられて夜逃げをしたりして、85人の子どもがホームレス状態になっていたことが新たに分かりました。
車上生活をしていた子どもは61人、路上で暮らしていた子どもが22人、ほかに、ネットカフェなどを転々としていたケースもありました。
施設から寄せられた回答では、「コンビニエンスストアで廃棄されたものを拾って食べていた」という子どもや「劣悪な生活環境で、保護されたときには歯はすべて虫歯だった」という子どももいました。
ホームレス状態の生活を経験した親子の精神的ケアを行っている浜松医科大学の杉山登志郎特任教授は「格差社会が広がればいちばん弱い部分にしわ寄せが来て、子どもでもホームレスになるような極端な事態が起こるということだと思う。子どもたちは安心感のない生活を強いられ基本的な教育やサポートを受けられない状態になるため深刻な“後遺症”が残るおそれがある。セーフティネットを整備するとともに、保護されたあとのケアにも力を入れていく必要がある」と指摘しています。

高校3年の男子生徒は
ホームレス状態になっていた子どもの1人、関東地方の児童養護施設に暮らす高校3年生の男子生徒は小学校に1年半ほど通えませんでした。
父親の仕事上のトラブルで一家6人で夜逃げ同然で家を出て車上生活を余儀なくされました。
夜は公園やスーパーの駐車場で過ごし、風呂にも入れず車の中で体を折るようにして眠ったと言います。
男子生徒は「小さな青い車の中で1つの弁当を家族全員で分けて食べるような生活で、いつまで続くんだろうと思っていた。友達と遊びたいとか、学校に行かせてほしいとか親に言ってみたけれど、『今はお金がないからだめだ』と言われて諦めるしかなかった」と話します。
男子生徒が当時、通っていた小学校の元校長は、突然、来なくなった男子生徒を探していました。
大家の立ち会いの下、部屋の中を確認し、親の実家まで訪ねましたが、手がかりは得られませんでした。
元校長は「警察に捜索願いを出すべきか児童相談所と検討したが、親と一緒にいるとみられたため、事情はあっても子どもは無事だろうと考え、そこまでは踏み切れなかった」と話していました。
男子生徒は父親が死亡したことをきっかけに保護されました。
学校に1年以上、通えなかった影響に苦しみましたが、施設で暮らすようになって初めてスキーやキャンプを経験し、友だちも出来ました。
男子生徒は「当初は勉強の遅れに加えて、同年代の友達と話せなかったことでコミュニケーションにも苦労した。あのままずっと学校に行くことができていなかったら、ずっと孤独だっただろうと思う」と話しています。

道の駅では車上生活の人たちが
道路を利用する人たちの休憩施設として国や自治体が設置している「道の駅」では、車上生活をする人たちの姿が、たびたび目撃されています。
このうち、首都圏近郊の道の駅では、取材に訪れた今月上旬の夜も、車上生活をしているとみられる車が、数台、駐車場にとまっていました。
長距離トラックの運転手などが休憩できるよう24時間開放されていて、トイレや水道もあることから、車上生活者が集まってくるのではないかと道の駅の担当者はみています。
車内で眠っていた男性は、「事情があって、家に帰っていない。毎晩、この駐車場で寝ている」と話していました。
また、埼玉県杉戸町にある「アグリパークゆめすぎと」では、2年ほど前、小学生くらいの男の子と女の子が、両親に連れられて車上生活をしていて、平日の日中も敷地内の公園で遊んでいたということです。
職員の男性は、「学校がある日にきょうだいで遊んでいて、おかしいなと思っていた。毎日同じ服で汚れていて、風呂にも入っていない様子だった」と話していました。
「アグリパークゆめすぎと」の小林朝美社長は、「あまり長い間滞在している人には注意したり、警察に通報したりするが、それぞれ事情があると思うので、どこまで介入するのか判断が難しい」と話していました。

児童虐待 加害者情報通知に地検が指針

読売新聞 2014年12月22日

児童虐待事件で起訴猶予となった保護者らの再犯防止と子どもの安全確保の徹底を目指し、水戸地検は今月、加害者の言動や社会復帰時期などの捜査情報を、児童相談所(児相)へ通知する基準や方法を示した指針を作成した。東京高検管内の地検では初。
地検は9月、県や県警と情報共有の枠組みを話し合う連絡協議会を開催し、各機関の収集情報を相互活用することで合意した。
指針は今月16日、支部を含む全ての検察官と検察事務官に「指示文書」として通達された。
対象事件を「児相の援助が相当と認められる事件」などに限定。地検から児相への通知項目についても、〈1〉事件概要〈2〉勾留請求の状況〈3〉釈放や保釈の見通し〈4〉社会復帰後の居住地〈5〉言動など反省の度合い――などと明示した。
児相が加害者の現状、将来的な処遇を早期に詳しく知ることで、必要があれば加害者が日常生活に戻る前に、被害児童を保護施設へ入所させることなどが可能となり、再犯防止効果が期待される。
地検の高橋孝一次席検事は、「児相への通知は電話や文書で適宜行う。今後も子どもを守る仕組み作りに取り組んでいく」としている。

生活困窮者自立支援と生活保護、それぞれの課題は?

THE PAGE 2014年12月21日

来年4月から生活困窮者自立支援法が施行となります。生活保護ではカバーできない困窮者を支援するための法律なのですが、これはどのようなものなのでしょうか。

捕捉率が低い生活保護
日本のセーフティネットの基礎となっているのは生活保護なのですが、生活保護の制度には、捕捉率が低いという課題があります。生活保護の受給者数は約220万人、受給世帯数は160万世帯ですが、一方で厚生労働省がまとめた日本の相対的貧困率は約16%です。日本の世帯数は約5200万世帯ですから、貧困率が16%だとすると約832万世帯が貧困状態にあると考えられます。そうなってくると、貧困世帯のうち生活保護を受給できているのは、約20%に過ぎないという計算になるわけです。
生活保護については財政的な問題もあり、基本的に給付を抑制する方向で改革が進められています。今年の7月に施行された改正生活保護法では、窓口での申請書提出の原則義務付けや、親族や雇い主に対する調査権限の強化などが盛り込まれており、保護を受けるハードルが従来に比べて格段に高くなっています。

生活困窮者自立支援法とは?
このままでは支援の対象とならない生活困窮者が増加することから、それに対応するために作られたのが、生活困窮者自立支援法となります。
この法律は、生活困窮者の自立を支援するためのものです。福祉事務所を設置している自治体は、自立相談支援事業を行うことになっており、生活困窮者がワンストップで相談できる窓口が設置されます。また、生活困窮者が就労できるよう各種支援を実施します。失業などにより一時的に住む家を確保できない人のために、家賃を補助する制度も盛り込まれました。
働く意思はあるものの、その機会を見つけることができず、貧困状態から抜け出せなかった人には、効果のある施策といえるかもしれません。一方で、内容が就労支援に偏っていることについて危惧する声も上がっているようです。

就業が難しい人はカバーできない恐れも
日本では、仕事がない一人親世帯の貧困率は50%を超えているのですが、仕事がある一人親世帯の貧困率もやはり50.9%とほぼ同じ水準です。労働基準法が守られていれば、こうした結果にはならない可能性が高く、労働環境が劣悪な職場が多数存在することを伺わせます。仮に就労機会が得られたとしても、そういった仕事に従事してしまうと、貧困から脱出できない危険性があります。この法律を効果的に運用するためには、労働環境の整備とセットで行うことが重要です。
また何らかの事情で就業が難しい人や世帯については、今回の法律でも十分にカバーされません。セーフティネット全般について、金額を抑制しつつも、カバーする範囲を広げると行った包括的な工夫が必要でしょう。

その「しつけ」「甘やかし」は虐待かも?あなたの毒親度チェック

ハフィントンポスト 2014年12月20日

虐待により子供が命を落とす事件のニュースが後を絶たちません。最近では、大阪で難病を患う3歳の女の子が食事などを満足に与えられなかったことで衰弱死し、腸内にアルミ箔や玉ねぎの皮が入っていた、といった事件がありました。この女の子の頭や顔には打撲傷などがあり、日常的に虐待を受けていたとみられています。
実際、厚生労働省が2014年8月に発表した報告によると、2013年の児童相談所での児童虐待相談対応件数は7万3千件を超えており、年々増加の一途をたどっています。
児童相談所の虐待対応件数は年々増加しています。

■「毒親度」チェック
身体的に暴力をふるったり、衰弱死させるようなところまで至らなくとも、ストレスが多く、子供を育てるのに適した環境とはいえない現代の日本では、誰でも子供に対し、知らない間に虐待をしている可能性があります。「躾」「教育」を言い訳に子供の健やかな成長を妨げる「毒親」になっていないか、チェックしてみましょう。
・イライラしていると、普段だとあまり気にならないような些細なことでカッとして子供を叱ることがある
・躾は「叱ること」だと思っており、誉めたり、諭したりなどはあまりしていない
・叱っても効果がないのに叱り続け、段々とエスカレートしている
・「~してはダメ」など、否定的な言葉を使うことが多い
・他の兄弟など、他人と比べて劣っているというようなことを子供に言ってしまう
・子供が納得しない場合、言葉で説明するのではなく、強い言葉や力でねじ伏せてしまう
・何度言ってもできないのは、子供が怠けているせいだと思う
・叱りすぎた後、罪悪感に駆られていつもより優しくすることがある
・子供がかわいそうで、悪いことや危険なことをしても叱れない
・子供が失敗しないよう、前もって「こうしなさい」「こうするべき」と指示をすることが多い
・兄弟姉妹や他人の子供、育児書などと比較し、自分の子供にできないことがあると焦燥感にかられる
・お金や夫婦関係など、深刻な問題を抱えている
・夫や妻、祖父母などがいきすぎた躾をしているのを見て見ぬふりをしている
・自分も厳しくされたが我慢してここまできたので、子供も当然そうするべきだと思う

以上のうち、3つ以上当てはまるものがあれば、今すぐに子供に対する態度を見直す必要があります。

■躾とは何か
辞書によると、躾とは「礼儀作法を教えて身につけさせること」とあります。躾というと、子供を甘やかさず、言うことを聞かない時は「厳しくする」「叱る」といったことが連想されますが、「礼儀作法を教えて身につけさせる」ということが躾であって、その手段には誉めることや諭すことなども含まれており、不必要に厳しく叱ったり、ましてや暴力をふるうこと自体が躾ではありません。いくら叱ったり暴力をふるっても、子供に礼儀作法が身に付かなければ、躾とは言えないのです。
また逆に、甘やかして子供が社会で生きていく上で必要な常識が身に付かないのはもちろん、失敗させないようにレールを敷き、子供が自分で考える力が身に付かない、守り過ぎて小さな失敗でも乗り越えられないなど、子供の成長や自立を妨げるような行為も、間違った躾や教育をしていると言えます。
公立小学校の教師として23年間子どもたちに接してきた教育評論家の親野智可等氏によると、「しつけには厳しさが必要だが、この厳しさを多くの大人たちが誤解している」とのことです。
親野氏のいう躾の厳しさとは、「継続性」「一貫性」「身を持って示す」の3点で、親自身がお手本として身を持って示す、気分や感情に流されず一貫性を持って子供に接する、決めたことを子供が継続できるよう、誉めたり、「守れる工夫」を考案し、実施し続けることです。
子供は親の言葉ではなく背中を見て育つので、いくら厳しく接したところで、親自身の人格や振る舞いが良くなければ効果はありません。また、一貫性がなく、感情に任せて怒っているのでは、「イライラしているから怒っているんだ」というのが子供に伝わってしまいます。そうすると、例え非が子供にあっても「しつけ」だとは思わず、行動は改まらないばかりか、親への不信が高まってしまいます。

■虐待が発生しやすい状況
痛ましい虐待のニュースが流れると、親に人間失格の烙印が押され、「あんな親だからこんな事件が発生したんだ」で終わってしまいがちです。しかし、児童虐待につながる家庭の状況について、全国児童相談所長会「全国児童相談所における家庭内虐待調査」(複数回答)をみると、虐待が発生した背景として「経済的困難」が45%と最も多く、「親族、近隣、友人から孤立」が40%、夫婦間の不和が28.6%と続きます。
虐待が起きる時には、親に心の余裕がなく、切羽詰まった心境が背景にある場合が多いといえます。「金銭的に苦しいので、何とか働き口を見つけて仕事をしている。遅刻を理由に会社で嫌味を言われるので、朝は定時に行かないといけないが、子供が保育園に行くのを嫌がり、いつもグズる。今日は特に嫌がって暴れ、朝食をまき散らした。」などといった状況が、感情を爆発させてしまいやすい状況の例です。
また、時間や金銭的に余裕があっても、自分自身が幼少期から親にストイックに追い詰められてきた人は子供のちょっとした失敗が許せなかったり、子供が発達障害など育てるのが難しい子供の場合、ずっと一緒にいる親に大きなストレスがかかり、虐待を発生させてしまうケースもあります。
もし育児に悩み、「子供を叱りすぎているかも」「妻/夫の躾がいきすぎている」などと思う時、サポートが必要な時は、早めに信頼できる人や児童相談所に連絡をするようにしましょう。一度カッとなって感情を爆発させてしまうと、「子供の気持ちを無視して怒ることや暴力で行動をコントロールする」ということが癖になる場合があります。さらに、そんな自分に対して罪悪感を持つと、そのストレスで自暴自棄になり、虐待がエスカレートする危険性が高まります。
また、虐待されているかもしれないと思う子供が周囲にいる場合も、ためらわずに児童相談所に連絡をするようにしましょう。冒頭で記載した虐待を受けて死亡した3歳の女の子は、近所の人が真冬にベランダに粘着テープで縛られている姿を見かけるなど、虐待の可能性は色濃く感じられる状況でした。しかし、誰も児童相談所に通報せず、最悪の結果となってしまったのです。子供は自分でSOSを出すことができないことが多く、気がついた大人が救い出してあげる必要があります。

■児童相談所全国共通ダイヤル:0570-064-000
電話をかけると、発信された電話の市内局番等から当該地域を特定し、管轄する児童相談所に電話が転送されます。携帯の場合は、ガイダンスの案内を聞き、該当地域の郵便番号を入力すると、管轄する児童相談所に電話が転送されます。