里親などへの委託 依然として低水準

NHKニュース 12月25日

虐待などによって保護者と暮らすことができない子どもが里親などに委託された割合は、ことし3月末の時点で15.6%と依然としてほかの先進国に比べて低い水準にとどまっていることが分かりました。
専門家は、「里親委託に関するノウハウが少ないために消極的になる自治体が多い。地域で里親家庭を支える仕組み作りが必要だ」と指摘しています。

NHKは厚生労働省が公表している児童養護施設で暮らす子どもの統計などを基に、虐待などによって保護者と暮らすことができない子どもが里親などに委託されている状況について分析しました。
その結果、ことし3月末の時点で里親や定員が6人以下のファミリーホームに委託された子どもの割合は全国の平均で15.6%で、去年より0.8ポイント増えたものの、依然として多くの子どもが施設で暮らしていることが分かりました。
委託を行っている自治体別に見ると新潟県で44.7%、静岡市で36%などと全国平均を上回った一方で、秋田県で6.2%、大阪府で7.2%などと12の自治体では10%を下回りました。
日本は保護者と暮らすことができない子どもが、施設で生活する割合が、ほかの先進国に比べて高いことから国連や人権団体から改善を求められています。
児童福祉に詳しい日本社会事業大学の宮島清准教授は、「里親委託に関するノウハウが少ないために消極的になる自治体が多い。専門の職員の配置を進めるとともに、民間団体などと連携して、地域で里親家庭を支える仕組み作りが必要だ」と話しています。

障害者に1日2万歩ノルマ、達成まで食事与えず

読売新聞 2014年12月25日

秋田県湯沢市が運営する知的障害者支援施設「皆瀬更生園」(入所者82人)で、女性入所者(54)が2012年4月からほぼ毎日、歩行訓練と称して担当職員から「1日2万歩」のノルマを課され、達成するまで食事を与えられていなかったことが24日、わかった。
福祉の専門家らによる市の虐待ケース検討会議は「虐待にあたる」と判断。市は今後、県に概要を報告するとともに、施設の運営改善など対策を取る。
市によると、女性職員(47)が12年4月から13年3月まで、歩数計を着けた女性入所者に施設内の廊下を歩いて往復させ、夕食の時間になっても2万歩の目標を達成できないと、食事を遅らせることが複数回あった。職員は理由について「女性の日々の行動に問題があり、自由な時間を与えたくなかった」と話しているという。同年4月に別の女性職員(30)に担当が替わった後も、今年11月までノルマは続いたという。
歩行ノルマは、市が11月下旬から12月上旬にかけ、施設の全職員35人と入所者12人に対して行った聞き取り調査でわかった。入所者ごとに作成する支援計画書や行動日誌に女性の歩行訓練に関する記載がなく、女性が夕食にたびたび遅れることを他の職員が問題視していたという。
18日に開かれた専門家3人による虐待ケース検討会議では、ノルマで女性にかかる負荷を試算。女性は身長約1メートル60で、2万歩は約15キロ歩いた計算になるという。時間も5時間ほどかかり、会議のメンバーからは「1日に2万歩は度が過ぎている」「食事を遅らせるなど、入所者の心理的・精神的負担は大きい」などの意見が出たという。
施設では、このほか、歩行ノルマを課していた47歳の女性職員が昨年4月、この女性に漢字練習ノートを投げつけて頬を切るけがを負わせ、さらに、今年4月には、男性職員(46)が男性入所者(66)を押さえつけ、頬を3回平手打ちする問題が発覚している。
市は障害者虐待防止法に基づき、虐待事案の通報窓口として福祉課に「障害者虐待防止センター」を設置しており、通報があった場合、虐待の有無や対策を検討する会議を開く必要がある。しかし、ノートと平手打ちの件では、施設から連絡があったにもかかわらず、市は「虐待に当たらない」と独断し、会議の開催や県への報告を怠っていた。
24日の定例記者会見で、斉藤光喜市長は「すべて私の監督不行き届き。おわび申し上げたい。今後、職員の処分や施設の運営改善など、しっかりと対処していきたい」と謝罪した。

カッター手に「子ども返せ」 一時保護、緊迫の現場

@S[アットエス] by 静岡新聞 12月25日

児童相談所でそのとき、親は―。子の安全のため、親から子を引き離す一時保護の言い渡し。通常、第三者の目に触れることのないやり取りの一端が、静岡地裁で審理された公判で明らかになった。一時保護に関する話し合いは、児相職員にとって緊張が最も高まる場面の一つ。その瞬間、職員にカッターナイフを示して脅したとして、暴力行為処罰法違反の罪に問われた静岡市の主婦(42)に24日、地裁は懲役10月、執行猶予4年(求刑懲役10月)の判決を言い渡した。
判決やこれまでの公判によると主婦は小学5年生の長男と2人暮らし。6月30日、面談のために訪ねた同市の児相で、パチンコや飲酒をやめる意思がないことや長男の意向を理由に、一時保護決定を告げられた。
「認めない」「子どもを返せ」。主婦は怒り、事務室にあったカッターナイフを手に取った。「これでも保護するのか」と、女性職員の顔近くに刃先を突き付けたという。「息子を拉致されたと警察に言ってやる」とも口にした。
安福幸江裁判官は「被害者が受けた精神的苦痛は計り知れない」と指摘。「一時保護に落ち込み、自殺しようとしてカッターナイフを手にした」との主婦側主張を退けた一方、主婦がうつ病だったことなどを考慮し、執行猶予を付けた。
児相の関係者は「親にナイフを見せられてトラウマ(心的外傷)になった職員もいる」と打ち明ける。その上で、「第一に考えるのは子の安全。トラブルにならないように親とは信頼関係を築き、緊急時には警察との連携が重要になる」と話す。

虐待指摘、少女に同情の声 北海道、母・祖母殺害事件

朝日新聞デジタル 12月24日

北海道南幌町で10月、自宅で母親(当時47)と祖母(同71)を殺害したとして高校2年の三女(17)が逮捕された事件で、札幌地検は25日、殺人の非行内容で札幌家裁に送致する。同地検は24日まで三女を鑑定留置し、犯行の経緯や家庭環境などを調べた結果、刑事責任能力に問題がないと判断したとみられる。
三女は10月1日、9月30日深夜から10月1日未明ごろにかけ、2人を刃物で切りつけるなどして殺害した疑いで逮捕された。
「厳しいしつけから逃れたかった」。逮捕直後、三女は動機をそう供述した。ある捜査幹部は「しつけというレベルを通り越し、虐待だった」と話す。
「冬に祖母が庭に立たせ、ホースで水をかけていた」「食事は小麦粉に青汁の粉末を混ぜて焼き、マヨネーズをかけたもの。台所の隅で一人で食べさせられていた」
事件後、一家の親族は三女の自宅での様子を関係者にそう打ち明けた。三女の腕には、火の付いたたばこを押しつけられたあともあったという。近所の住人は、祖母が「この役立たず」などときつく叱る声を頻繁に聞いた。
三女が幼稚園児だった2004年、「虐待を受けている」との通報が道岩見沢児童相談所にあった。三女の弁護人も虐待を受けていた可能性を認める。

<埼玉・祖父母強殺>被告少年は「居所不明児」、無援の年月

毎日新聞 12月24日

埼玉県川口市で今年3月、少年(18)が祖父母を殺害し金銭を奪った強盗殺人事件の裁判員裁判の過程で、少年が社会問題化している「居所不明児」として学ぶ機会を奪われ、暴力やネグレクトなど虐待を受けてきた生い立ちが浮かんだ。公判で裁判官が「大人は救いの手を差し伸べられなかったのか」と発言する一幕もあった。判決は25日、さいたま地裁(栗原正史裁判長)で言い渡される。【山寺香】
少年は初公判で、殺害行為を認めつつ「母親の指示だった」と述べた。弁護側も、強盗罪などで服役中の母親(42)らの虐待が背景にあると訴えた。
弁護側の主張では、少年の父母は就学前に別居し、その後離婚。引き取った母親はホストクラブに通い続け、少年は毎晩家に来て酒を飲むホストに付き合わされ、小学4年からほとんど学校に通わなくなった。
母親はホストを追いかけ1カ月ほどいなくなったこともあった。母親は再婚し、一時は元ホストの義父と母親と3人で静岡に暮らし、2~3カ月間は静岡の小学校に通った。その後、住民票を残したまま埼玉に戻り、小学5年からは学校に通っていないという。
日雇い仕事で義父に収入がある日は3人でラブホテルに宿泊し、仕事がない日は公園で野宿した。ささいなことで義父に殴られ、前歯が4本折れたこともあったという。
少年は母親と義父の指示で、親類らに金銭を無心していた。弁護側証人として出廷した父方の祖母の姉は「約4年間で振り込んだ金は400万~500万円。借金して調達した」と証言した。
その後、義父は塗装会社に就職し、会社の寮で暮らした。間もなく義父は失踪し、少年は16歳から代わりに働いた。母親は少年に給料の前借りを強要し、金が尽きた直後、事件が起きたという。
少年を精神鑑定した精神科医は公判で「少年は、虐待する母親の言う通りにするしかない『学習性無力感』の状態にあり、仮に母親の(殺害)指示がなかったとしても、(金を必要とした)母親の言葉の意図を察知して殺害に至った可能性がある」と分析した。
公判では、裁判長が検察側証人の被害者遺族として出廷した少年の母の姉に「決してあなたを非難しているわけではないが、周囲にこれだけ大人がそろっていて誰か少年を助けられなかったのか」と尋ね、裁判員がため息をつく場面もあった。
弁護側は「親類などは少年が金を借りに来させられたと気づきながら、母親から引き離さなかった。児童相談所もケアできず、事件を防げなかったのは社会の責任でもある」と主張。検察側は「母親は相当悪いが、それと少年の刑を軽くするのは別で、事件の実態を無視した乱暴な論法」と反論している。
2人を殺害していることもあり、検察側は「大人なら死刑相当」と無期懲役を求刑。弁護側は少年院送致などの保護処分を求めている。