高知県香南市の女児虐待死 複数機関の支援も防げず

高知新聞 2014年12月28日

家庭の安定期に落とし穴
母親と叔母による暴行で死亡した衣斐瑠維ちゃん(3)への虐待については、複数の行政機関が以前から把握していた。施設入所や両親への育児指導など、多角的な支援もしてきた。それでも悲劇は防げなかった。関係機関の代表者は今回の事件を「想定外」だとする。何が足りなかったのか―。
児童虐待への対応は深刻度によって担当機関が異なる。困難事例を児童相談所が受け持ち、生活支援で見守るような案件は市町村が窓口となる。高知市の場合は「子ども家庭支援センター」が相談、支援に当たっている。
専門機関に任せるだけでなく、多くの目で支援する態勢もある。「要保護児童対策地域協議会」は地域の学校や警察、医療機関、民生・児童委員など関係機関でつくる組織で、支援が必要な子どもの状況把握を定期的に行っている。
瑠維ちゃんのケースでは、2012年2月に高知市がネグレクト(育児放棄)を把握し、支援対象として要保護児童対策地域協議会に登録。当初は児童相談所が中心的な役割を果たし、瑠維ちゃんを児童福祉施設に入所させた一方、育児能力が十分ではなかった両親には子どもへの関わり方を助言した。
2013年4月に瑠維ちゃんが家庭に戻ってからは保育所が支援機関として加わる。
高知市のある保育士は保育所の役割として「おしゃべりや遊びにも家庭内の様子は表れる。自分から相談してくれるよう、保護者や子どもと信頼関係を築く」と説明する。
実際、高知市子ども家庭支援センターによると、瑠維ちゃんの通っていた保育所も、母親に電話するなどして見守っていたという。
さまざまな支援、見守りの中、児童相談所は2014年9月30日、瑠維ちゃんの案件は深刻度が低くなったと判断し、担当機関を高知市に移した。同居する祖母の協力が得られる▽高知市の保健師とも信頼関係を築いている―ことなどが判断理由だった。
児童相談所の支援時代には1カ月に1、2回だった面会は、高知市子ども家庭支援センター支援になった10月以降は2回だった。それでも、このころ瑠維ちゃんの発達状態は良好で、母親の衣斐未歩容疑者(27)も父親(26)も育児に前向きになっていたという。
家庭環境が“安定期”に入ったと見られていた時期だが、同時に変化もあった。
父親によると、11月に祖母のいる高知市の家から瑠維ちゃん家族は香南市の家に移り住んだ。そして事件の5日前、けんかをきっかけに父親だけが香南市の家を出た。
高知市子ども家庭支援センターの中屋雅克所長は「年内には高知市内に戻ると聞いていた」。同居していた叔母の吉村瞳容疑者(23)とも会えておらず、支援態勢は通常レベルのままだった。

「泣きやまず腹立った」香南署が実母らの動機など捜査
高知県香南市で衣斐瑠維ちゃん(3)が母親と叔母から虐待を受けて死亡した事件で、香南署に暴行容疑で逮捕された母親が「叱りつけたら泣きやまず、暴れたので腹が立ってやった」などと供述していることが27日、捜査関係者への取材で分かった。叔母も同様の供述をしているという。香南署は、両容疑者の暴行への関わり方や動機を慎重に調べている。
香南署は27日午後、女児の母親で香南市野市町下井、飲食店従業員、衣斐未歩容疑者(27)と、叔母で香南市野市町下井、無職、吉村瞳容疑者(23)の容疑を傷害致死に切り替え、高知地検に送検した。
送検容疑は、両容疑者は共謀し、25日午後2時ごろ、自宅で瑠維ちゃんの両手を粘着テープで縛り、布団の上に投げ付けた後、布団を体に巻き付け、窒息死させた疑い。
捜査関係者によると、25日の昼食時に瑠維ちゃんがジュースをこぼしたり、フィギュアを倒したりしたことで、吉村容疑者が先に瑠維ちゃんを叱りつけた。瑠維ちゃんが泣きやまず、手足をばたつかせるなど暴れてぐずったことに両容疑者が腹を立て、両手を粘着テープで縛るなどの暴行に至った。
両容疑者はその後、買い物に出掛けた吉村容疑者が帰宅して異変に気付くまで、瑠維ちゃんの両手を粘着テープで縛った状態で2時間以上放置。救急隊員が到着するまでの間に粘着テープを外した―と話しているという。
隊員が到着した際、瑠維ちゃんはフリースの長袖シャツとズボンを着用し、じゅうたんのような敷物の上にあお向けに寝かされていた。
捜査関係者によると、衣斐容疑者は「これまでも厳しいしつけをしたことがある」と供述しているという。
一方、衣斐容疑者は勤務する飲食店の関係者に事件の数日前、「子どもの世話をするために1月いっぱいで店を辞めたい」という内容のメールを送っていた。
さらに吉村容疑者が勤務していた高知市内の雑貨店を衣斐容疑者と瑠維ちゃんが訪れ、3人で商品を仲良く選ぶ姿も目撃されており、香南署は両容疑者が日ごろ、瑠維ちゃんにどう接していたかなどを慎重に調べている。

■虐待把握から関係機関の主な動き■
【2012年 2月27日】
警察から連絡を受けた高知市子ども家庭支援センターが、高知県中央児童相談所に通告。児相はネグレクト(育児放棄)と認定し、2日後に生後3カ月の瑠維ちゃんを一時保護
【2012年 4月27日】
高知県中央児童相談所が瑠維ちゃんを高知市内の児童福祉施設へ入所させる
【2013年 4月】
高知県中央児童相談所が瑠維ちゃんを高知市内の自宅へ戻す。
瑠維ちゃんが高知市内の保育所に入所
【2014年 9月30日】
高知県中央児童相談所から高知市子ども家庭支援センターへ引き継ぎ
【2014年 10月上旬】
高知市子ども家庭支援センターの職員らが高知市内で母親、瑠維ちゃんと面会
【2014年 11月13日】
高知市子ども家庭支援センターの職員らが、香南市内の自宅で両親、瑠維ちゃんと面会
【2014年 11月25日】
両親や瑠維ちゃんらが香南市に一時転居した、と高知南署が香南署に連絡
【2014年 12月9日】
両親と瑠維ちゃんらが高知市役所に来所。高知市子ども家庭支援センターとは別の職員が面会
【2014年 12月25日】
瑠維ちゃんが母親と叔母から虐待を受けて死亡。翌日、香南署が2人を逮捕

「騒音心配」6割 横浜の保育施設/国大など調査

カナロコ by 神奈川新聞 2014年12月28日

横浜市内で2011年以降に開所した保育施設の約6割が近隣に子どもの声が漏れ聞こえることを気にしていることが、横浜国大などの調査で分かった。県外では保育中の子どもの声を騒音として訴訟に発展したケースもあることなどから、保育施設側でも子どもの声に過敏になっている状況が浮き彫りになった。専門家は「萎縮するばかりでなく、近隣住民と関係づくりを進め、子どもにとって望ましい保育環境を維持してほしい」と話している。
調査は、横浜国大大学院の田中稲子准教授(建築環境工学)や当時同大学院生だった高橋藍子さんらが、13年末に実施。同市の「保育所待機児童解消プロジェクト」(09年)発足を受け、11年4月以降に開設した認可保育所、横浜保育室、家庭的保育事業など215施設を対象にアンケートを配布、82カ所(回収率38・1%)から回答を得た。
その結果、約6割の保育施設が近隣に対し、保育時間中の室内の子どもの声を気にしていると回答。保育士の声や散歩など園外活動中の子どもの声についても気にしている保育施設が5割前後に上った。
建物の構造別では、ビル内にある保育施設のような複合型は独立型の施設より音漏れを気にしている割合が高かった。複合型の中でも、店舗や住宅など別の用途で使っていたスペースを保育施設に転用したケースの方が、ほかのテナントと同時入居する新築ビルも含め、保育施設用に新たに建設した施設よりも音漏れを気にしていた。
田中准教授らがいくつかの施設で騒音レベルを測定したところ、実際にはそれほど音は大きくはないにもかかわらず、保育施設側が近隣への音漏れを心配しているケースも見られたという。
ヒアリング調査では、音漏れを心配するあまりに園庭遊びや楽器演奏を控えている施設があることも分かった。また「音漏れが不安」と回答した施設の多くは、特に苦情を受けたわけではないにもかかわらず、保育中の音が外に漏れることを危惧していた。
待機児童解消に向けた保育所整備が進む中、横浜市のような都市部では、今後はますます複合型の保育施設が増える傾向にあり、田中准教授は「施設側が保育を行う際の音に過敏になっており、子どもが生き生きと活動できない可能性も考えられる」と指摘。「音は実際の音量の大小よりも、音を発している相手との関係によって、騒音に聞こえることも気にならないこともある。保育施設側も近隣住民と積極的に関係をつくることが重要だ」と話している。

【年末年始】連休中の急な子どもの病気、症状に応じた対処方法を紹介

リセマム 2014年12月28日

大型連休となると、急な子どもの病気にどう対処したらよいのか、病院の診療を受けたほうがいいのかなど判断に迷うことも多い。厚生労働省の小児救急電話相談や情報サイト「こどもの救急」など、緊急時の対応に関する情報をまとめた。
厚生労働省が提供している小児救急電話相談事業は、急な子どもの病気の対応について、小児科医師や看護師に電話で相談できるサービス。全国同一の短縮番号「#8000」をプッシュすることで、各都道府県の相談窓口に電話が自動転送され、子どもの症状に応じた対処方法について相談することができる。病院の診療を受けたほうがよい場合は、受診する病院などのアドバイスを受けることもできるという。
電話相談窓口は47都道府県すべてで実施しているが、深夜対応の有無など、対応時間は都道府県によって異なるため注意が必要だ。
日本小児科学会が監修している情報サイト「こどもの救急」は、1か月~6歳までの子どもを対象とした救急情報を症状別に紹介。夜間や休日などの診療時間外に病院を受診するかどうかの判断の目安を提供している。
気になる子どもの症状を選択し、子どもの様子に当てはまる項目を選択すると、病院に連れていくべきか、家で様子を見るべきかの判断が表示される。たとえば、発熱(38度以上)の症状で、「無表情で活気がない」「1日中ウトウトしている」「ぐったりしている」を選択した場合は、自家用車・タクシーで急患診療所へ行くとよいとアドバイスが表示される。
また、病院に行く場合に必要な健康保険証、母子健康手帳、着替え・オムツなどの持ち物が表示されることも特徴。家で看病する場合は、子どもに薬を与える場合の注意点や看病のポイントが表示される。
東京消防庁が提供している「東京版 救急受診ガイド」では、対象者の年齢や症状を選択していくと、対処方法が表示される。緊急度が高い場合は救急車を呼ぶよう表示されるほか、受診の必要性などのアドバイスを確認することもできる。パソコン、スマホともに対応しており、外出先での急な体調変化などにも便利だろう。
そのほか、「gooヘルスケア」は症状から想定できる主な病気を絞り込むことができるページを用意し、病名ごとに原因、治療方法、関連情報などを詳細に紹介している。子どもに多い22種類の病気を紹介している特集ページ「メディカルiタウン 子どもの病気と症状」では、症状や分類から病気を調べる機能や診療科目から医療機関を検索する機能を提供している。
年末年始は、インフルエンザやノロウイルスなどの感染症の流行時期でもある。子どもの体調の急な変化で対応に悩んだ場合は、専門家のアドバイスを参考にしたい。また、滞在先の最寄りの病院や年末年始の診療体制を事前に調べておくのもよいだろう。