「親の禁煙、子のぜんそくに予防効果」大阪の医師ら発表

朝日新聞デジタル 2015年1月6日

親が禁煙すれば子どものぜんそくが重症化するのを防げることを、大阪府立成人病センターの田淵貴大医師らの研究グループが明らかにした。4歳半~8歳の間にぜんそくで入院する子を少なくとも2割近く減らせるという。小児ぜんそくと親の喫煙の関係は指摘されていたが、禁煙の予防効果を具体的に示したのは初めて。
厚生労働省の大規模追跡調査に参加した2001年生まれの子ども4万3千人を対象に、生後半年時点の親の喫煙状況と、8歳までのぜんそく入院の経験を、三つの年齢層で調べた。両親が室内で吸っていた3399人中52人が4歳半~8歳でぜんそくで入院していたが、両親とも吸わない1万4117人では入院したのは112人だった。
喫煙以外の要因を除いた上で、両親が室内で吸う子がぜんそくで入院する確率は、両親がたばこを吸わない子に比べて、(1)生後半年~2歳半で1・54倍(2)2歳半~4歳半で1・43倍(3)4歳半~8歳で1・72倍になった。
調査結果を日本全体に当てはめると、両親とも禁煙すれば、少なくとも(1)の年齢層で8・3%(4970人)(2)で9・3%(4950人)(3)で18・2%(1万940人)の入院を減らせるという。田淵さんは「子どものぜんそくの8~18%は親の喫煙が原因といえる」と話す。研究成果は米医学誌電子版に掲載された。(錦光山雅子)

障害者事業報酬を減額へ 政府、1%前後で調整

朝日新聞デジタル 2015年1月7日

政府は、障害者への福祉サービスを提供する事業者に対し、おもに税金から支払う報酬を2015年度から引き下げる方向で最終調整に入った。介護事業者に支払う「介護報酬」を引き下げるのに合わせ、増え続ける社会保障費の伸びを抑えるねらい。福祉の現場で働く人の賃金にあてる報酬は引き上げる方針だ。
障害者施設でのサービスや、障害者の自宅でのサービスにかかる費用は、国が定める公定価格の「障害福祉サービス等報酬」に基づき、国や地方自治体が事業者にお金を支払う。所得に応じてサービス利用者が一部を負担する場合もある。
14年度の国の負担は約9千億円。利用者数は08年の約40万人から14年は70万人近くに増えており、15年度は国の負担も約1兆円に増える見通しだ。財務省や厚生労働省などは事業者向けを1%前後引き下げる方向で調整している。

社会保障改革 少子化の克服へ総力で挑もう

読売新聞 2015年01月07日

医療・介護の効率化も急ぎたい
少子化が、日本の将来を揺るがしている。社会保障制度の安定を脅かすだけでなく、経済・社会の活力も低下させる。
少子化の克服へ向け、今年を、抜本的対策に総力を挙げて取り組む出発点としたい。
日本の総人口は、2008年をピークに減少に転じ、現在は約1億2700万人だ。出生率が今の水準のままなら、60年には8700万人に落ち込むと推計される。65歳以上の高齢者は総人口の4割に達する見通しだ。

保育サービスの拡充を
超高齢化に伴って医療や介護などの社会保障費が膨張する一方、少子化で制度の支え手は減り続ける。放置していては、いずれ行き詰まることが確実である。
政府は昨年末、「60年に人口1億人」を確保する目標を掲げた。1人の女性が生涯に産む子供の平均数を示す合計特殊出生率を今の1・43から、40年には2・07に引き上げることを想定している。これが人口を維持できる水準だ。
夫婦が理想とする子供の数は平均2・4人とされる。未婚率は上昇しているが、実際は独身の若者の9割近くが結婚を望んでいる。
出生率の低迷は、経済的な理由などにより、結婚や子育てをあきらめる人が多いことを物語る。
若い世代が希望通りに結婚・子育てができる環境が整えば、目標達成は決して不可能ではない。
女性が仕事と子育ての二者択一を迫られずに、安心して出産できるようにすることが重要だ。育児への不安や負担感を減らすため、妊娠期からきめ細かく相談・支援する体制作りも望まれる。
最優先すべきは、保育サービスの拡充である。
今年4月から、待機児童解消などを目指す子ども・子育て支援新制度がスタートする。保育所の増設などを進めるが、17年度には年1兆円超の追加費用が必要とされる。財源確保が大きな課題だ。

非正規の処遇改善せよ
企業や男性の意識改革も求められる。共働きが増える中、育児や家事を女性任せにしていては、出生率回復は難しい。夫が育児に積極的だと第2子以降の生まれる割合が高くなるとの報告もある。
仕事と家庭の両立支援と併せ、長時間労働の是正など働き方の見直しが欠かせない。
少子化の大きな要因として、非正規労働者の増加が指摘される。低賃金で身分が安定せず、昇進・昇給の機会もほとんどない。男性の場合、既婚率が正社員と比べて著しく低い。
若者の雇用安定は、少子化対策の要である。
非正規労働者の処遇改善と技能習得の機会拡充、正社員への転換支援の強化などで、働きに見合った賃金を確保し、キャリアアップの道を広げることが大切だ。
若者が意欲を持って働ける職場作りを通して、貧困や格差を是正していく必要がある。
人口減少で労働力不足が懸念される中、女性や高齢者も十分に能力を発揮できる環境を整えることが肝要である。それが、安倍政権が掲げる「女性が輝く社会」の実現にもつながろう。
医療・介護費は今後、団塊の世代の高齢化と共に急増する。ムダを省いた効率的な制度に改め、質を高めつつ、給付の抑制を図らねばならない。
まずは、病院・病床の役割分担を明確にすることだ。
高度な設備やスタッフを備えた急性期向けの病床が過剰となり、そこに症状の安定した慢性期の高齢者が入院している。
退院支援や在宅診療など、超高齢社会のニーズに合った医療を充実させ、コストのかかる急性期病床を適正数に絞り込むべきだ。

「痛み」伴う政策が要る
介護保険では、新年度から、介護の必要性が低い軽度者向けサービスの一部を市町村事業に移す。特別養護老人ホームの入居要件も厳しくする。重度者に給付を重点化することは、やむを得まい。
病院や施設に過度に依存せず、在宅を中心に必要なケアが受けられる体制作りが急がれる。
年金制度では、厚生年金の加入対象の拡大が重要課題だ。非正規労働者の多くが除外される現行制度では、将来、低年金者が急増する恐れがある。
年金課税の強化や高所得者の年金減額も検討すべきだろう。
超高齢社会において社会保障制度を維持していくには、給付の抑制や、経済力のある高齢者の負担増など、「痛み」を伴う改革が不可避である。政治の強い指導力が求められる。