<児童養護施設>大学行っていいんだよ 進学の女性、後輩へ

毎日新聞 2015年3月3日

児童養護施設に入所する高校生の大学・短大・専門学校進学率は12.3%で、全国平均の53%を大きく下回っている(2011年度厚生労働省調査)。そんな中、和歌山県田辺市内の施設の女性(19)が昨年4月、県立医大保健看護学部(和歌山市紀三井寺)に入学した。入所者が大学進学したのは同県内で初めてだ。女性は今年4月から、施設を出て和歌山市内で1人暮らしを始める。「施設の子どもでも大学に行っていいんだということを、後輩たちに伝えたい」と話している。【高橋祐貴】
女性は4人家族の次女として生まれたが、間もなく両親は離婚し、父と姉とは別居。その後、母が精神疾患を患ったため、2歳の時に田辺市城山台5の児童養護施設「ひまわり寮」に入所した。
中学1年生の時、施設が増改築され、4~6人部屋から1人部屋となった。自然と自分の生い立ちと向き合うようになり、親元に帰れる状況でないことも自覚するようになった。将来について施設員と相談することも増えた。施設を出た先輩が何度も職を変えて生活に苦しむ話も聞き、「安定して働けて、母のような病に苦しむ人々を救いたい」と看護師の道を意識しだした。「学歴が良ければ、より環境の良い職場で働ける」と思い、大学進学を志した。
すぐに行動に移った。「塾に通わせてほしい」と施設員に相談。タイミングよく、施設の中学生を対象に学習塾費が補助されるようになった。さらに施設員が、退職した教師をボランティアとして招いてくれ週2回教えを受けることになった。
県立田辺高校に進学後は、将来の生活費をためるため、白浜町の旅館で清掃のアルバイトを始めた。「アルバイトで体力は削られ、友だちともなかなか遊べなくてつらかった」という思いを抱きながらも、施設員の全面的な応援を受け、目標に向けて突き進んだ。
2013年11月、高校での推薦枠を見事勝ち取った。「喜びよりも、ほっとした」。担任から合格の知らせを受けた時の気持ちをこう振り返る。
大学に入学して間もなく1年。和歌山市と田辺市は通学に2時間半かかり、帰宅時間は日付をまたぐこともある。勉強にも力をいれたいし、貯金するためにアルバイトもしたい。そこで施設を出ることを決めた。
「夏休みには戻っておいで」と施設員から声をかけられている。「私にも帰れる場所があるんだ」という安心感を胸に「患者さんの心のよりどころになれる看護師を目指したい」と前を見据える。

「苦労して産むけど、安心して産めるわけではない」日本の少子化の現状とは?

Mocosuku Woman 2015年3月3日

森三中の大島美幸さん、元プロテニスプレイヤーの杉山愛さんと、次々と、不妊治療で妊娠し、安定期に入ったことが報道されました。
報道を見て、祝福の気持ちで嬉しく思った人や、うらやましかったり、焦りを感じた人、励まされた人など、感想はさまざまかと思いますが、今、同じように妊活に励んでいるカップルがとても増えてきています。高齢出産が増えた背景などもあり、不妊治療をしているカップルも珍しくない時代になりました。
ここでは、不妊治療最新情報として、日本の少子化事情についてみてみましょう。
「苦労して産むけど、安心して産めるわけではない」日本の少子化の現状とは?

不妊治療は増えている
2004年から不妊治療に対する公的な費用の補助が始まって、不妊治療の助成を受けて、何らかの治療を受けている人は年々増加しています。実際に、体外受精によって産まれた子の数も増えてきています。
最新のデータによると、2004年は18,168人だったのが、2010年には28,945人となっています。出生割合でいうと、総出生数全体の2.70%で、37人に1人が、体外受精治療を受けて産まれた子です。

日本の人口は減少の一途を辿る
不妊治療が制度として取り組まれている背景には、不妊の問題が、単にこれに悩むカップルだけの問題ではなくなってきているからでしょう。新たに産まれる子どもの数が減っていくということは、人口が減っていくということですし、国にとって危機的な状況だからです。
人口の減少については、厚生労働省より驚くべき数値が出されています。人口の動態を見る「将来推計人口」によりますと、日本の人口は33年後の2048年にはなんと、1億人をきって、9913万人となり、50年後の2060年にはさらに少なく、8674万人になるといわれています。

合計特殊出生率の地域格差に注目
女性がどれだけ子どもを生むかは、「合計特殊出生率」という数値で表されますが、2012年は1.41、2013年は1.43と、微増という傾向です。
合計特殊出生率には地域格差が激しくあります。2012年の調査によると、全国平均の1.41という数値を上回る地域は、47都道府県中32県、下回る地域が13県です。
最高の沖縄県で1.90、最低値で1.09と、その差は2倍近くあります。ですから、全国的には微増傾向だといっても、地域による格差もあり、しかも、人口動態は大幅な減少傾向だということを鑑みると、日本全体として、まだまだ「好転した」とは言えない状況ではないでしょうか。

女性たちの意識「苦労して産むけど、安心して産めるわけではない」
一方、出産に対する意識調査でも、女性は、若い年代ほど、「子育てや教育にお金がかかりすぎるから」という理由で、理想の子の数に実際の子の数が達しないのが現状です。
ですから、不妊治療で出生率が上がったとしても、子育ての環境や、仕事との両立、家庭の経済面などさまざまに要因が絡んでいて、すぐに少子化に歯止めがかかるわけではありません。
「苦労して産むけれど、安心して産めるわけではない」という少子化問題の複雑さを抱えながら、日夜、不妊治療に奮闘している女性たちがいるということです。
女性は加齢によって妊孕性(妊娠力)が落ちます。ですから、若い時から妊娠・出産を計画することが大切です。
けれども、現在の少子化状況は、「産んでも大丈夫だろうか」という心配を女性たちに与えています。自然妊娠でもそうですから、不妊治療の場合は、妊娠の困難さに加えて、出産後の育児の難しさも抱えて、出産に取り組むことを余儀なくされています。

<医療保険制度改革法案>閣議決定…入院食など負担増

毎日新聞 2015年3月3日

政府は3日、国民健康保険の運営主体を市町村から都道府県へ移管することと、40兆円近くに達した医療費の抑制策を柱とする医療保険制度改革関連法案を閣議決定した。1食260円の入院食の自己負担を3年で460円に増額する案や、紹介状なく大病院を訪れた患者に5000円以上の負担を求める案、サラリーマンの保険料率の上限(現在は年収の12%)を13%に引き上げる案などが盛り込まれた。政府はさらに、6月にまとめる財政再建計画で追加の抑制策を打ち出す構えだが、厚生労働省内には「打つ手は限られている」という声が上がっている。
消費税率10%への引き上げを延期したため、政府は財政健全化への対応を迫られている。財務省はさらなる医療費抑制策として、患者が新薬の処方を受ける際、同じ成分で作られた安価な後発医薬品との差額を全額自己負担とする案や、風邪など軽い病気の医療費の一部を保険適用外とする「免責制」の導入、湿布などの全額自己負担化、高齢者の窓口負担割合(70歳以上は原則1~2割)のアップなどを提起している。
ただ、これらの案はいずれも過去に検討され、「通院を我慢する人が増え、重症化して逆に医療費が増える」などの理由で見送られた経緯がある。また、財政再建に要する財源は数兆円に上るにもかかわらず、財務省案が仮に実現したとしても、せいぜい数千億円の抑制効果にとどまる。今回閣議決定された医療保険制度改革関連法案の負担増には野党が強く反発しており、厚労省幹部は「負担増の法案の審議と並行して新たな負担増を議論できるのか」と指摘する。
与党は1月、75歳以上の後期高齢者医療制度の保険料を最大9割軽減している特例措置を段階的に廃止する時期について、当初予定より1年遅い2017年4月からにすることを決めた。26日から始まる統一地方選を前に、高齢者層に配慮した。来年夏には参院選が控えており、厚労省内では「及び腰の与党が本格的に医療費に切り込めるのか」との疑念もくすぶっている。【吉田啓志】