僕は「おかえり」と言ってほしかった・・・「母子家庭」で暮らす子どもの厳しい境遇

弁護士ドットコム 2015年3月12日

いまの日本では、6人に1人の子どもが「貧困家庭」で暮らしているーー。厚生労働省が昨年発表した2012年の「子どもの貧困率」は16.3%で、過去最悪の数字を記録した。この数字は同省が3年ごとに実施している国民生活基礎調査によるものだが、1985年に10.9%だった子どもの貧困率はだんだん大きくなり、ついに16%を超えたのだ。
特に「ひとり親世帯」の子どもの多くが経済的な苦境に置かれていることが、調査結果から見てとれる。川崎市の中学1年生殺害事件で命を奪われた上村遼太君の母親が公表したコメントも、5人の子を育てるシングルマザーの置かれた厳しい境遇をうかがわせた。
<遼太が学校に行くよりも前に私が出勤しなければならず、また、遅い時間に帰宅するので、遼太が日中、何をしているのか十分に把握することができていませんでした>
そんななか、「母子家庭における子どもの貧困ーその原因と実効的施策を考える」と題したシンポジウムが3月7日、東京都内で開かれた(日本弁護士連合会主催)。

なぜ「母子家庭」の貧困対策が必要なのか?
シンポジウムの基調講演で、国立社会保障・人口問題研究所の阿部彩・社会保障応用分析研究部長は、母子家庭の貧困対策の充実を訴えた。
「母子家庭の貧困を解決するために、もし何か1つやるのなら、『児童扶養手当』の拡充をするべきです。現金給付は、教育支援や親の就労支援よりも即効性があります。しかし現実は、中流層も上流層も生活が楽とはいえず、『自分は搾取されている』という意識がある。
この意識を変えていかなければ、拡充は難しい。ただし、手当を拡充してほしいと言う側も『なぜ拡充が必要なのか?』をきちんと伝えていくことが必要です」
児童扶養手当の拡充の必要性は、冒頭でも触れた厚労省の調査結果からも読み取れる。
それぞれの世帯の1人あたりの所得が、社会全体の中央値の半分(122万円)に満たない「貧困世帯」の割合が2012年は16.1%に達しているが、ひとり親世帯の貧困率は54.6%と突出している。特に母子家庭は父子家庭に比べて、経済的により厳しい状況に置かれているという。

子どもは「我慢」の裏で寂しさを味わっている
パネルディスカッションには、母子家庭の貧困の支援や取材にあたる5人が登壇。NPO法人「しんぐるまざあず・ふぉーらむ」の赤石千衣子理事長や、ジャーナリストのみわよしこさんらが、シングル家庭が直面するさまざまな困難について討論した。
「貧困状態にあっても、子どもが親を恨むことは非常にまれ」と指摘したのは、登壇者の1人で「なくそう!子どもの貧困」全国ネットワーク世話人の山野良一さんだ。
貧困状態にある子どもの多くは、親が苦労している状況を誰よりもよく見ている。そのため、ほしい物があっても我慢するといった術を身につけて、親に迷惑をかけまいと、貧困に適応しようとする。しかし子どもは、その「我慢」の裏で、さまざまな寂しさを味わっているという。
山野さんは、母子家庭で育った、ある少年の例をあげて説明した。その少年は、中学生のころから同級生や先輩と連れだって夜間徘徊を繰り返していた。警察から指導されても徘徊はやまず、最終的には児童福祉施設に入所することになった。
「彼が入所した施設は、内部に学校があるのですが、あるとき、学校から帰ってきて『ただいま』と言った少年に、施設の先生が『おかえり』と言ったんです。すると彼が、『先生、ぼくは、この一言を言ってほしかったんだよ』と言ったそうなんですね。つまり、彼の中では、本当に『寂しい』という気持ちが大きかったんです」

「子どもの貧困は、喪失体験の積み重ね」
少年の母親は、子どもたちを養うために必死で働いており、夜も家にいないことが多かった。仕事のストレスから、子どもに辛くあたることも少なくなく、ときには手をあげることもあったという。
山野さんは「子どもの貧困は、喪失体験の積み重ねです。他の子どもが当たり前にできることができない。それは、とても寂しいことです」と強調していた。
子どもを養うためにシングルマザーが働けば働くほど、子どもとの時間やゆとりを持てなくなるというジレンマにも陥ってしまう。学校や地域をはじめ、社会全体で支え合うためにどうするべきか。
国立社会保障・人口問題研究所の阿部部長は「まず、隣の人に問題を話すことから」と、提言した。タブー視せずに語り合うことこそが、問題解決のための大きな一歩となるということだ。

<ネット掲示板>「サイバー補導」439人 女子が96%

毎日新聞 2015年3月12日

手法は「捜査員らが身分を隠してやり取り」
警察庁は12日、2014年にインターネットの掲示板などで児童買春などの性犯罪被害につながる書き込みをしたとして、18歳未満の子供439人(前年比281人増)を補導したと発表した。ネットで書き込みを発見した捜査員らが身分を隠してやり取りする「サイバー補導」と呼ばれる手法で、書き込みがされていた大半は、不特定多数が交流できるコミュニティーサイトだった。同庁は「補導歴がない子供も多く、軽い気持ちで書き込んでいる可能性がある。取り組みを強化したい」としている。
サイバー補導された子供のうち、女子が422人で全体の96%。439人の書き込みの内訳は、「性行為を誘ったりしていた」284人▽「下着売買を持ちかけていた」150人▽「その両方」5人。高校生が309人、中学生が45人、無職が72人--などで、平均年齢は16.1歳だった。
書き込みはコミュニティーサイトが97%で、内訳は掲示板321件▽ツイッターなどのSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)107件--などだった。補導された全体の6割に過去に補導された経験がなく、特に下着売買では7割近くが補導歴のない子供だった。
サイバー補導がきっかけで、児童福祉法や条例違反などによる容疑者摘発に結び付いたのは127件(前年比92件増)。ただ、警察側からメールで接触を試みて返信があったものの、やり取りが中断されたり待ち合わせ場所に姿を見せなかったりして最終的に会えなかった件数は1万1051件に上った。
サイバー補導は静岡県警が09年から始めたことをきっかけに導入された。全国の警察では13年4月からの試行を経て同年10月から実施されている。【長谷川豊】

少女たちの書き込み、夜間とは限らず…
警察庁によると、サイバー補導の「出発点」となるネット上の書き込みを探す作業は、全国の警察本部などの少年捜査部門が担当している。
「えんできる人待っています。3から」
「えん」は児童買春につながる援助交際を指す言葉で、「3」は3万円を意味するという。恋愛感情抜きの割り切った気持ちで会うとして、「わりきりで会いたいです」といった書き込みや「お金ほしいな。待っています」という直接的な内容もある。こうした書き込みを見つけ次第、捜査員らが関心を装ったメールを送り、返信を待つ。
また、少女たちが書き込む時間帯は夜間とは限らないという。例えば、補導されたある中学3年の女子生徒(15)は平日の午前8時6分に性行為を誘う書き込みをしていた。捜査員らが15分後に返信し、女子生徒が待ち合わせ場所に現れたのは午後1時10分。生徒はその場で補導されたが、警察幹部は「学校にいると思われる時間帯でもスマートフォンでネット上に投稿しているのではないか」とみる。

<少年犯罪>川崎事件で逮捕された「3人の少年」捜査後どんな「手続」が待っている?

弁護士ドットコム 2015年3月11日

川崎市で中学1年の男子生徒が殺害された事件で、逮捕された17~18歳の少年3人の取り調べが続いている。報道によると、3人は事件への関与を認める供述を始めているが、それぞれの供述にはズレがあり、警察は慎重に捜査を進めているという。
この後、少年たちにはどんな手続が待っているのだろうか。少年事件の場合、検察がいきなり起訴するわけではないようだが、具体的にはどうなっているのか。少年事件にくわしい本多貞雅弁護士に聞いた。

検察官に「逆送」されるケースとは?
「14歳以上の少年、つまり『14歳~19歳の少年』が警察に逮捕された場合、捜査段階では、成人の刑事事件と同じく、警察で取調べを受けることになります。
成人の場合は、その後、警察から検察に送致されて、『検察官』が起訴・不起訴(刑事裁判をするかどうか)を決めることになります。
一方で、少年は、原則として警察か検察から『家庭裁判所』に送致され、少年審判を受けることになります」
本多弁護士はこのように述べる。少年の場合、家庭裁判所では、どんな手続きが行われるのだろうか。
「家庭裁判所は『少年審判』を開いて、少年鑑別所による鑑別結果や、家庭環境等の調査結果、付添人による意見などを踏まえて、少年の処遇をどうするかを決めます。
この少年審判は、刑事裁判と違い、原則非公開です」
少年審判では、どんな決定がされるのだろうか?
「少年審判では、最終的に、大きく分けて4種類の決定がなされます。
(1)不処分
(2)児童相談所などへの送致
(3)保護観察や少年院送致などの『保護処分』
(4)検察官への送致
このうち、(4)の検察官送致は、一般に『逆送』あるいは『検送』などと呼ばれ、殺人など、一定の重い罪の事件について、刑事処分が相当であると判断された場合に行われます。
なお、犯罪行為時に16歳以上で、故意に被害者を死亡させたことが疑われる事件の場合には、原則として、検察官送致の決定がなされます」
検察官送致のことを「逆送」と呼ぶのは、もともとは警察・検察で扱われていた事件が、いったん家庭裁判所で審理されたあとに、再び検察に送られるのが「逆戻り」しているように見えるためだ。

「逆送」されたあとの手続は?
では、検察官に「逆送」された後は、どうなるのだろうか。
「検察官送致がされた場合、少年は原則として起訴されます。それ以降の手続は、基本的に成人と同様です。
ただし、有罪とされた場合の刑罰は、成人に比べて緩和される場合があります。たとえば、14歳以上18歳未満の少年は死刑にすることができず、死刑とされるようなケースでも、その代わりに無期刑になります。
また、14歳以上18歳未満の少年は、成人なら無期刑が選択されるような場合でも、裁判所が10年~20年の有期刑とすることが可能です。
また、裁判所が保護処分に付するのが相当と考えた場合、再び家庭裁判所に事件を移送することもあります」
なぜ、少年についてはこうした手続きが定められているのだろうか。
「少年は、成長途中の未成熟な存在ですから、単に刑罰を科して終わりではなく、その少年に適した良好な環境で、きめ細やかな処遇を受けることによって、更生し、健全な社会人としての再出発することを期待したいということです。少年法は、このような『保護主義』を理念としているのです」
本多弁護士はこのように述べていた。

<津の保育園>男児の口に粘着テープ

毎日新聞 2015年3月12日

津市の私立保育園で2011年、2歳の男児が騒いだとして女性保育士が口に粘着テープを張っていたことが11日、分かった。三重県と市は同園に対し、事実関係を確認して報告するよう求めている。
県子育て支援課などによると、保育士は昼寝の時間に騒いだ男児に、静かにするよう促したが応じなかったため、テープを張ったらしい。男児にけがはなかった。先月下旬に問題を把握した県が、市とともに聞き取り調査を行い、同園は6日に緊急の保護者会を開いた。保育士は行為を認めたという。
同課は他に園内で問題行動がなかったかも含め報告を受け、対応を検討するという。【谷口拓未】