どこへ行っても「母親のせい」…周囲の見方がプレッシャーに【「発達障害」の子どもを育てる:その1】

Mocosuku Woman 2015年3月23日

「じっとしていられず、落ち着きがない」「集団行動になじめない」など、さまざまな理由で「発達障害」と診断された子どもたち。
このシリーズでは、そんな発達障害児の育児・療育の実際を、さまざまな角度からレポートしていきます。

「ウチの子はほかと違う」、でも…
Tさん(仮名・45歳)が、長男のM君が「ほかの子どもと違う」ことに気づいたのは、M君がハイハイから自分で立てるようになる頃のことでした。Tさんは、何度立とうとしても転んでしまうM君を見ていて、M君のつま先が180度に開いていることに気がついたのです。
そのため、不安定なポーズでしか立つことのできなかったM君は、なにかつかまる物がないとすぐに転んでしまうのでした。
また、M君がなんでもすぐに口に入れてしまうことも、Tさんは気になっていました。幼い子どもには多かれ少なかれそういった面があるものですが、M君の場合はやや度を超しており、網戸をやぶってまで外へ出て、ベランダにあるクーラーの室外機をなめたり、停めてある車のボディをなめまわしたりするのです。しょっちゅう体中を真っ黒にしているM君を見て、Tさんは心配になりました。
しかし、20年ほど前は、今までほど発達障害やADHDなどの言葉は世間に浸透しておらず、どこに相談していいかもわからないため、Tさんは自分の子どもが持つ「違い」について悩むばかりでした。

テレビの特集をきっかけにしてLD(学習障害)を知る
そんなTさんが、自分の子どもが持つ「違い」について知るきっかけとなったのは、ある日偶然テレビで見たLD(学習障害)についての特集でした。
テレビで紹介されたLDと診断される児童の特徴が、M君に似ているような気がしたのです。しかし、Tさんは同時に、LDの特徴がM君の行動と完全に一致するとも思えませんでした。
この時期のM君には、「強風を怖がる」「人ごみでパニックを起こす」「目標物以外は目に入っていないように見える」といった行動が目立つようになっていました。

どこへ行っても「母親のせい」と言われる
自分の子どもが持つ「違い」について悩み、もっと知識を得たいと思ったTさんは、児童精神科などの病院や児童相談所を訪ねて、自分の子どもが抱えている問題について打ちあけました。
しかし、どこへ行っても返ってくるのは「母親の心の問題」というような答えばかり。
20年前のこととはいえ、医師や相談員のこうした言葉は、M君が起こす問題行動への対応に日々追われているTさんにとって、とてもつらいものだったようです。
さらに、Tさんは自分の両親や舅・姑からも、M君がほかの子と違う行動をするのは「母親のしつけが悪いんじゃないか」と責められてしまいます。
やがて、M君の持つ「違い」には「軽度知的発達障害」という名前がつけられるのですが、TさんがM君の「違い」を受け入れ、前向きな親子関係を築くまでには大変な苦労があったようです。

現在では、発達障害は脳の障害に基づくものであり、家庭でのしつけが原因ではない、という説が浸透しつつありますが、一方で「親のしつけが原因」という考え方も根強く、そういった周囲の見方が、子育てで大変な思いをしている母親へのさらなるプレッシャーとなっている現実もあるようです。

※この話は実話を元に、脚色を交えて構成しています。実在の人物や場所などとは一切関係ありません。

普通学級か支援学級か…小学校選びの問題【「発達障害」の子どもを育てる:その2】

Mocosuku Woman 2015年3月24日

「じっとしていられず、落ち着きがない」「集団行動になじめない」など、さまざまな理由で「発達障害」と診断された子どもたち。
このシリーズでは、そんな発達障害児の育児・療育の実際を、さまざまな角度からレポートしていきます。

人を突き飛ばしてしまうM君の「クセ」
Tさん(仮名・45歳)は、長男であるM君の「軽度発達知的障害」と診断される特徴に悩まされていました。
そのうえ、児童精神科などの病院や児童相談所へ行っても、「母親の心の問題」と言われ、また夫婦双方の両親からも「母親のしつけが悪いから」と責められてしまいます。
M君を保育所であずかってもらいながら、なんとか仕事を再開したTさんでしたが、保育所の先生からは「M君は他の子どもの迷惑」とまで言われる始末でした。
この頃のM君には、近くに寄ってきた人を突き飛ばしてしまう、という「クセ」がありました。また、電車が大好きなM君は、電車のオモチャや本などを見ると、それ以外は目に入らないらしく、目の前にいる別の子どもを押しのけたり、突き飛ばしたりしてトラブルになることも多かったようです。
やがて、M君は1人で外で遊べる年齢になったのですが、この頃のTさんは家にいても、外で子どもの泣き声や悲鳴が聞こえると、「ウチの子がなにかやったのではないか」と気が気ではなかったそうです。

普通学級か支援学級か
やがて、M君が小学校に進学する時期がやってきました。
Tさんは地域の公立小学校へ行き、M君の特徴を伝えたうえで、進学について先生と話し合いました。
Tさんの希望は、M君が「普段は普通学級(通常学級)に在籍し、授業についていけないときだけ特別支援学級へ行く」というものでした。特別支援学級とは、障害や病気などでサポートが必要な子どものために設けられているクラスのことです。
しかし、小学校の先生の意見はTさんとは正反対の、「M君は基本的に特別支援学級に在籍し、ときどき普通学級で授業を受けるのが望ましい」というものでした。

環境を選ぶことの大切さ
上記の経験からTさんは「親が子どものために環境を選ぶ」ことの大切さを痛感したと言います。
なぜなら、M君のように知的障害や発達障害を持つ子どもの場合、学校や地域によって受け入れる姿勢にかなりの違いが見られるからです。また、公立の学校の場合は、地域によって「加配」と呼ばれる支援の先生の人数が違うことなども影響しているとのことでした。
M君のように人の多い場所でパニックを起こす傾向のある子どもの場合は、静かで自然環境が豊かな場所へ引っ越すことも、選択肢のひとつだとTさんは考えました。
そして、Tさん家族はM君の進学に際して、小中高一貫教育の学校に入学するために、実際に引っ越すことを決意したのです。

※この話は実話を元に、脚色を交えて構成しています。実在の人物や場所などとは一切関係ありません。

いじめ、虐待、ネット上の名誉毀損…昨年の人権侵犯220件 和歌山地方法務局

産経WEST 2015年3月24日

和歌山地方法務局は、昨年1年間に学校でのいじめや家庭での虐待、インターネットによる名誉毀損(きそん)など、人権侵犯のおそれがあるとして救済手続きを開始した事案が、前年比14・4%減の220件にのぼったと発表した。暴行虐待関係が、前年から31件減り29件となるなど減少傾向となったが、プライバシーをめぐる人権侵犯が11件増加し、27件となった。
同局によると、人権相談の専用電話や面談で事案を把握。公務員や教職員による事案は前年比17・8%減の37件となった。内容別にみると、学校でのいじめに対する学校側の不適切な対応などが6件減の17件、教育職員による事案が1件増の12件となった。
一方、私人の間での事案は前年比13・7%減で183件。医療関係が7件増の8件、住居・生活の安全関係が16件減となった。しかし、プライバシーに関する侵犯は増加傾向で、特にインターネットなどによる事案は5件増の12件となった。
その中には、インターネット掲示板に被害者の名誉を毀損する書き込みがあることが確認され、同局が掲示板の管理者に削除を要請し、削除された例もあったという。
暴行や虐待事案は、夫から妻に対するものが14件、親から子が5件あった。いじめや虐待の相談を手紙で受け付ける同局の「子どもの人権SOSミニレター」を通じて、小学生から「母親にたたかれている」との連絡があり、児童相談所に一時保護されるケースがあった。
同局は、平成26年に手続きを開始した220件に加え、前年持ち越し分の12件を含めた232件のうち、213件について助言や関連機関の紹介などの措置を取った。
顕在化していない人権侵犯もあるとみられ、担当者は「これまで以上に声を拾い上げ、被害の救済につなげていきたい」としている。