進んだコメ離れ=栄養改善、食生活は多様化【戦後70年】

時事通信 2015年5月12日

日本人の主食はコメ。しかし、国民1人が食べるご飯の量は半世紀以上、ほぼ一貫して減り続けている。戦後、食生活の洋風化と多様化が進んだ結果、食卓の風景は様変わりした。
飢えからの再出発
終戦後も、庶民の多くは戦中から続く深刻な食料難に苦しんだ。コメの配給は滞り、サツマイモやトウモロコシなどの代用食も足りなかった。都会の住民は農村に買い出しに行ったり、駅前に出現したヤミ市の食料品を買ったりして飢えをしのいだ。海外から食料援助を受けた日本は、国を挙げてコメなどの増産に励んだ。
戦後10年たった1955年、乳児死亡率はなお1000人当たり39.8人と高水準だった。厚生省(現厚生労働省)の外郭団体として、日本食生活協会(東京)が設立されたのはこの年だ。
同協会は翌年から、バスを改造して後部に調理設備を設けたキッチンカーを全国各地に巡回させ、栄養改善運動を展開。欧米風の食事の作り方を実演して見せ、普及に努めた。当時まだ珍しかったフライパンと油を使う調理法も披露した。
ご飯を基本にみそ汁、魚、野菜、芋などが並ぶ伝統的な和食で、問題視されていたのは炭水化物や塩分の取り過ぎだ。同協会の上谷律子会長は「主食の米飯に偏って栄養バランスの悪かった食事内容の改善が当時の活動目的だった」と話す。
洋風化でパン食普及
55年は、ご飯を釜で炊くという家事労働に革命が起きた年でもある。自動式電気釜の発売だ。手間が大幅に省力化されたため、爆発的に売れ、4年で全家庭の約半数に普及した。多くの人が手軽に白米を食べられる時代になっていく。
「コメを食べると頭が悪くなる」という「米食低脳論」が世間をにぎわせたのも、この頃だ。大脳生理学の権威だった林髞慶応大教授(当時)が著書「頭脳」(58年刊)で、パンの原料、小麦に含まれるビタミンB群が白米には含まれていないと指摘し「頭の正しい働きができなくなる」と強調。パンを主食にするよう提唱した。
上谷会長によると、栄養改善運動のキッチンカー12台の製作費は米オレゴン州小麦栽培者連盟の援助金で賄われたという。米側には、日本を余剰農産物の大口輸出先にしたいとの思惑があった。ただ、米側からは活動内容に関する条件は「一切なかった」と同会長。61年発行の協会パンフレットによると、実演料理の試食では、レバーサンドイッチ、みそペーストサンド、サバのホットドックなどが特に好評だった。
高度成長期、生活全般の洋風化とともに、パン食は広く普及した。食卓には肉や卵、牛乳・乳製品が多く並ぶようになり、果物や野菜の摂取量も増えた。
和食の再評価も
1人当たりのコメの年間消費量は62年度、118キログラムに達し、戦後のピークを迎えた。60年代後半には消費が減り、コメが大量に余るようになる。政府は70年から、計画的に生産量を少なくする減反政策にかじを切った。
やがて、肥満や生活習慣病が問題になる時代になった。動物性たんぱく質や脂肪の過剰摂取が指摘され、米食中心の「日本型食生活」が再評価されるようになったが、コメ離れは止まらなかった。コメの消費量は2012年度には1人当たり57キログラムになり、半世紀で半減した。
「私が子供の頃は丼に2杯、3杯食べるのが普通だったが、今は小さな茶わんでお替わりする人も少ない」。そう嘆くのは、コメ卸大手、神明ホールディング(神戸市)の田中義昭常務だ。人口減と高齢化が進む日本で、コメ消費が今後回復する可能性は小さいとみる。
和食は13年、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産に登録された。海外では米食中心の健康食として人気が広がる。ただ、シンガポールでおにぎり店を開いたアグリホールディングス(本社東京)の前田一成社長は「ラーメンでさえ日本食なのでヘルシーと思われています」とも話す。5月から「食」をテーマにイタリアで開かれるミラノ国際博覧会の加藤辰也日本政府代表は「ご飯を基本に一汁三菜で多くのものをバランスよく取る食べ方を世界に発信したい」と語る。

大切な「食事バランス」毎日の摂取量の目安はどのぐらい?

nikkanCare.ism 2015年5月13日

健康的でスリムな身体を維持するためには“食事バランス”が重要。とは言っても、どんな食事がバランス良く栄養素を摂取できるのかは知らない人が多いのではないでしょうか。
厚生労働省と農林水産省が共同で策定した「食事バランスガイド」というイラストでは、上から「主食」「副菜」「主菜」「牛乳・乳製品」「果物」と並んでおり、コマに見立てられています。上にあるものほど多く取ることでバランスが良くなるとされています。
しかし、実際にどのくらいの量を食べたらよいかイマイチよく分からない、というあなたに、ダイエットアドバイザーの筆者がそれぞれの摂取目安をご紹介します。

「主食」はごはんを中心に1日3食
コマの頂上に描かれているのはごはんやパンなどの主食。主食に含まれる炭水化物は体内のはたらきを活性化させるエネルギー源ですから、3食必ず食べるのがベスト。ダイエット中だからと制限しすぎてはむしろ代謝の悪い状態になってしまいます。脳の唯一のエネルギー源でもあるんですよ。
余分な塩分や脂質をプラスしてしまう加工食品や菓子パンなどは避け、ごはんやパン(食パンやフランスパンなど、味付けのないもの)を1日3回食べましょう。パスタも主食ですが、具材やソースがプラスされていますので主菜を減らすなどの調整が必要です。

「副菜」は1日5皿を目標に
副菜は、野菜やきのこ、海藻類を摂取するメニューのこと。内臓のはたらきをサポートしたり、腸内環境を整えて便秘を解消する効果もあります。“野菜は1日350g”と言われていますが、小鉢やミニサラダなどで取れる野菜は50~70g程度。1日のうちで5皿を目標に取り入れましょう。

「主菜」は毎食手のひら1枚分
バランスの良い食生活には、肉や魚、卵、大豆製品などのたんぱく質も重要。たんぱく質は筋肉や細胞の材料ですから、筋トレで筋肉を育てたい人にとっても必須の食材です。
量の目安は1食で“手のひら1枚分”。朝食に卵料理を食べたら昼は肉、夜は魚、などのように素材が重ならないように取り入れると栄養バランスが良くなります。料理に野菜をたっぷり使えば副菜をカバーすることも可能です。

「牛乳」は1日1本
乳製品は良質なたんぱく質やカルシウムの補給源。ヨーグルトなどの発酵食品には整腸作用もあります。牛乳ならば1日1本が目安。3食のうち好きなタイミングで摂取すればOKです。おやつ代わりに間食として取り入れても良いですね。

「果物」は1日握りこぶし2つ分
果物には糖質やビタミン、ミネラルなどが豊富。体内のはたらきを活性化してくれるため、美肌をキープするためにも毎日食べたい食材です。果物は、種類にもよりますが、握りこぶし大くらいで約100g摂取可能。2つ分を目安に食べましょう。

手のひらや握りこぶしなどの目安を知っておけば、簡単に量を調節することが可能です。
1日くらいバランスが崩れても翌日調節すればOK。ストレスの溜まらない程度に、参考として活用してみてくださいね。

若年性認知症、看病続けた夫の辛さ 孤立や周囲の対応に苦悩の日々

福井新聞ONLINE 2015年5月13日

妻の晴美さん(65)=仮名=が若年性認知症と診断されたのは6年前、59歳の時だった。中本秀雄さん(64)=福井県嶺北在住、仮名=は2年前に会社を辞め、看病している。「女房は、仕事一筋の自分を40年以上支えてくれた。看病されるより、する方がいい」と吹っ切れたように話す中本さん。だが、これまでのエピソードを聞くと、生活の変化による孤立、周囲の妻に対する対応、患者が検診すら受けられない状況など、若年性特有の課題が垣間見えた。

前兆
晴美さんがブレーキとアクセルを間違い、車の事故を起こしたのは7年前。これを機に仕事を辞め、専業主婦になった。家では趣味の読書にふけっていたが、次第に物忘れが増え、500メートルほどの帰り道すら分からなくなった。認知症と診断されたのは、その1年後だった。
夫婦2人暮らし。中本さんは会社の役員で、すぐに仕事を辞められなかったこともあり、晴美さんに留守を預けた。「家事全般はこなしてくれた。それに甘えてしまった」という。
晴美さんは時折「ばか」「のくてえ」など、これまで使ったことのない言葉を連呼するようになり“正常”でいられる時間は少しずつ減っていった。

対応
晴美さんの友達が見舞いに来たことがあった。「私のこと分かるか」と、泣きながら晴美さんの手を握りしめた。晴美さんはにっこり笑ったが、友達は「笑ってるけど、分からんのやろ」と返し、また泣いた。
「妻は笑うことしかできなかっただけで、友達だと分かっている。傷ついているだろうなと思った」と中本さん。見ているのがつらかった。
県内のある医師は「認知症の人は、相手の顔色や口調に対して、敏感になる傾向がある」と話す。晴美さんは、中本さんのほんの小さな舌打ちにさえ反応した。だからこそ中本さんは「周りは普段通りに接してあげてほしい」と話す。

退職
家事は中本さんが行うようになった。朝食を作り、昼ご飯は作り置きした。でも晴美さんは、昼ご飯を一人では食べなくなった。1階の居間にある大きな座敷机を、一人で2階に運んでいたときもあった。晴美さんの爪ははがれ、足は傷だらけだった。
2年前の3月、中本さんは退職した。それから毎日、晴美さんを助手席に乗せ、ドライブした。三国、小浜、琵琶湖…。車中で妻が突然大声を出すことも何度もあった。
「この生活が何年続くのか…」。仕事人間だった中本さんは、地域とのつながりがなく、仕事のつながりもプツリと切れた。「相談できる人がなく、完全に孤立した」
まだ若い晴美さんを、70~80代の人が集まるデイサービスに預けることに当初は抵抗があった。一度体験させたときには、帰りの車中で晴美さんから「なんで、あんなところに行かないといけないの」と怒られた。

検診
晴美さんは現在、別の病気も併発し、要介護度4。週に4日はデイサービス、2日はリハビリや口腔ケア、月に2回はショートステイのサービスを受けている。
「妻は最近、機嫌が良い朝には、とびきりの笑顔を見せるようになった」と喜ぶ中本さん。趣味や旧友との食事などの時間が取れるようになり、認知症の集いに参加し、悩みを打ち明けられるようにもなった。「介護する人には『自分の時間をつくって』と言いたい。気持ちのリフレッシュは重要」と話す。
県内には若年性認知症の人が千人いるともいわれ、嶺北認知症疾患医療センター(福井市の松原病院内)は2年前、「若年性認知症の人と家族の会」を発足。3カ月に1度集いを開いている。中本さんは「孤立した自分を救ってくれたのは会だった」と振り返る。
ただ心配事もある。嫌がる乳がん検診や、子宮がん検診は、無理強いできない。胃カメラなどもってのほかで「認知症に対応した検診があれば」と思う。言葉での意思疎通がほとんどできなくなった今、「妻の体調が悪いと、どこか痛いんじゃないかと思ったりするんですよね」。

若年性認知症
65歳未満で発症する認知症。発症年齢の平均は51・3歳で、女性よりも男性に多いとされる。2009年の厚生労働省研究班の推計によると、患者数は全国に約3万8千人。同省の調査では、就労経験がある人の約8割が失職。発症を境に世帯収入が「減った」のは約6割を占めた。40歳以上なら介護保険を利用できる。