広がるファミリーホーム 子どもが生活の主人公に

京都新聞 2015年5月13日

「ファミリーホーム」をご存じだろうか。虐待や育児放棄により親元で暮らせない子どもたち5~6人が、里親とともに生活する取り組みだ。施設と家庭の中間的な位置付けで、2009年に児童福祉法改正で制度化された。京都府内で唯一の「ゆんたくホーム」(京都市西京区)を取材すると、さまざまな問題を背負う子どもやその立ち直りを支援する現場の声は十分に届いていないと痛感した。
「ここに来て趣味ができた。これまで自然やスポーツに全く興味がなかったのに。明日は山登りに行くんです」。中学3年のときに、ゆんたくホームへ移ってきた少女(17)は、少し照れながら笑顔で教えてくれた。
母子家庭で育った少女は精神障害のある母親の暴力などを受け、小学6年から一時保護施設の入退所を繰り返した。兄は17歳で自立し、姉は別の施設で育った。「本当にいろいろあった」。当時の記憶はあまりないという。
以前は「何もかも反抗していた」といい、家のドアを壊し、夜中に徘徊(はいかい)を繰り返した。「おっちゃんに『荷物まとめて出て行け』と怒られたこともあった。迷惑ばかり掛けたけれど、今は感謝しかない」。通信制高校と職業訓練校に通い、介護施設で働く夢にチャレンジしている。
ホームを運営するのは、子どもたちから「おっちゃん」「おばちゃん」と呼ばれる北川をさみさん(64)、温子さん(65)夫婦だ。長年の里親経験を生かし、国の制度発足に合わせ5年前に開設した。現在は、女子中高生6人と一つ屋根の下で暮らす。
同年代の子が少人数で暮らすことで互いの生活を見直しながら、育ちを深め合う。料理作りなどを手伝う補助員はいるが、掃除や料理は当番制で、施設に比べ自立性が求められる。2人は「私たちには何でもない日常が子どもにとっては非日常。ここは途切れてしまった家庭生活を再開する場所なんです」と語る。
府内でほかに同様のホームはない。里親受託率が低いことや児童養護施設の充実が理由とみられる。一方、滋賀県は里親がファミリーホームに移行する例が多く、14カ所ある。ホームの運営費用は国と都道府県が負担している。
全国には、221カ所(日本ファミリーホーム協議会調べ、3月末現在)あり、年々増加傾向だ。制度に詳しい吉田雄大弁護士は「一代限りの取り組みのため、複数の職員がいる施設と違って『お父さんも年取ったな』みたいな、家族のような関わりができる」と有効性を指摘する。
北川さん夫婦は近く、今の自宅より広い近所の空き家に生活拠点を移す予定だ。「ファミリーホームの魅力を多く人に知ってもらいたい」との思いから今回、取材を受けてくれた。「子どもたちが生活の主人公になれるホームが増えてほしい」と願っている。

社説[復帰の日に考える]「子ども」を振興の柱に

沖縄タイムス 2015年5月15日

1人当たり県民所得や1世帯当たりの消費支出、高校進学率、大学進学率は全国最下位。一方、完全失業率や離職率、離婚率、母子世帯の割合、新規の高校・大学卒業者の無業者比率は全国一。
県統計協会が発行する2014年版「100の指標からみた沖縄県のすがた」などから暮らしに関わる指標を拾った。全国一と最下位が目立つデータが示すのは、個人の努力だけでは乗り越えることができない厳しい現実である。
中谷元・防衛相との9日の会談で翁長雄志知事が「他の都道府県のように子どもやお年寄り、まちづくりのために全力を尽くしたいが、基地に時間が割かれすぎる。知事になって約5カ月、仕事の8~9割は基地」と嘆く場面があった。だから「せめて事件が起きたときは、沖縄防衛局の方が県に出向くべきだ」と要求したのだ。
大田昌秀氏や稲嶺恵一氏ら歴代知事も同じように「基地問題に時間をとられすぎる」と口にしていたことを思い出す。
沖縄の最大の政治課題が基地問題であることは確かだ。しかし基地行政に忙殺されるあまり、子どもや暮らしの問題に十分向き合えないとしたら、これもまた基地あるゆえの問題である。

1986年3月、県の児童福祉施設等職員研究発表会で児童虐待に関する報告があり、大きなニュースになった。児童虐待防止法が施行される14年も前のことで、沖縄の深刻な状況に衝撃が走った。
発表したのは当時、中央児童相談所の心理判定員だった山内優子さん(沖縄大学非常勤講師)。「頭全体が傷だらけで、その間に髪が生えているような子、アイロンでやけどを負わされた子などが次々と現れ調査を始めた」という。
100件余りの事例を調べた結果、「保護の怠慢・拒否」というネグレクトが虐待の大半を占めたことも明らかになった。
その後、女性相談所に勤務した山内さんは「夫の暴力や経済的理由から離婚した女性たちが、生活のために夜働く。子どもは親のいない夜を過ごし、朝起こしてくれる人もなく、ご飯もない。不安定な生活から不登校になったり、非行に走ったりする」ようなケースにいくつも遭遇した。
家計や気持ちに余裕のない親が、安定した家庭を築くのは困難で、そのひずみが弱い子どもたちを直撃していたのだ。
生活が苦しい人の割合を示す「相対的貧困率」は2012年時点で16・1%に上る。貧困に関する地域別のデータは少ないが、週刊東洋経済(4月11日号)の都道府県別貧困率推計によると、貧困率は沖縄が23・9%でワースト。2番目の大阪と4ポイント以上も開きがあった。
沖縄の貧困の根をたどっていくと、沖縄戦による荒廃と米軍統治下における法制度の空白や不備に行き着く。その二重苦を今も引きずる。
例えば子どもの健全育成の拠点となる児童館、切実な課題を抱えた母子を支援する母子寮(母子生活支援施設)。児童福祉法に規定されたこれら施設が沖縄にできたのは復帰後である。児童福祉法は戦後いち早く1947年に制定されているが、沖縄の子どもたちの福祉は後回しにされてきた。
県政の重要課題となっている待機児童の問題も、復帰前の保育政策の立ち遅れに起因している。

43年前のきょう、沖縄は日本に復帰した。
復帰後、本土との格差を是正しようと始まった沖縄振興計画の中心は、社会資本の整備と産業振興だ。
現在の改正沖縄振興特別措置法には「子育て支援に関する配慮」が盛り込まれているが、数々の指標が示す親子の困難をカバーするには不十分である。
自立経済に必要なのは何といっても人材。将来を切り開く子どもたちは、沖縄の財産である。
子どもへの視点が乏しかった沖縄振興策の反省とともに、例え貧困であっても未来に希望を持ち健やかに育つよう、子どもに特化した「未来振興計画」が必要だ。

平成のKOキング、貧困・虐待の子励まし続ける

朝日新聞デジタル 2015年5月15日

坂本博之さん(44)=ボクシングジム会長
「つらいときこそ前に出ろ」。そう言いながら、現役プロボクサー時代から25年、貧困や虐待に苦しむ子や夢を持てない子を励まし続けてきた。官民で子どもの貧困の解消に取り組む「子供の未来応援国民運動」の発起人となった元日本王者の戦いは続く。

「7歳の時、命がぎりぎりだった」
福島県いわき市にある児童養護施設「いわき育英舎」を3月15日に訪れ、約40人を前に語りかけた。
「人には光と影がある。忘れたいこと、恥ずかしいこと、うれしいこと、悲しいこと、怒ったこと……。どうせなら、光を表にして生きていこう。ただ、影の部分を忘れちゃだめだ」
物心つく前に両親が離婚。乳児院や児童養護施設を転々とし、一時預けられた親類宅で虐待を受けた。同じ境遇の子供に向ける言葉は率直だ。

<「消えた年金」問題>14万6000件を回復

毎日新聞 2015年5月14日

第三者委が報告書 15日閣議で廃止決定へ
払った保険料の記録がなくなる「消えた年金」問題を審査する総務省の年金記録確認第三者委員会は14日、設置された2007年6月以降約30万件の申し立てがあり、このうち約14万6000件の記録を回復したなどとする報告書をまとめた。
業務は今年3月から既に厚生労働省に引き継いでおり、第三者委は15日の閣議で廃止が決まる予定。
第三者委は第1次安倍内閣時に発覚した消えた年金問題を解決するため、弁護士や社会保険労務士などをメンバーとして07年6月に新設。国に記録がなく、受給者側にも領収書など公的な納付記録がない人に対し、記録がない期間以外の納付状況や行政の処理ミスの可能性などを検討し、年金給付の可否を判断してきた。
申し立て件数は今年4月下旬までの約8年間で計29万3621件。本人が取り下げたケースなどを除いた26万8453件のうち、54.3%の14万5936件の年金記録が回復した。近年は申し立て件数が減少傾向にあるという。
一方、「納付者の記憶が乏しい、不明確」「申し立て内容に矛盾や事実との相違がある」などのケースは回復していない。
年金は元々厚労省の所管だったが、公正・公平さをアピールしようと、安倍晋三首相が当時総務相を務めていた菅義偉官房長官に指示して第三者委を総務省に設置した経緯がある。【樋口淳也】

毎朝、通園前に泣く我が子 「泣きたいときはたっぷり泣かせて」と専門家

ベネッセ教育情報サイト 2015年5月14日

大切な我が子の泣き顔を見るのは辛いものだ。毎朝のように子どもが「ママと離れたくない」と泣いてしまう……と、悩む保護者に教育評論家の親野智可等氏がアドバイスをする。

日中は園で楽しく遊べるのに、朝が大変なのはどうして?
【質問】
保育園に行くとき、毎朝「ママと離れたくない。一緒にいたい」と言って泣きます。保育士さんに聞くと日中はけっこう友達と仲良く遊んで楽しそうにやっているとのことですが、とにかく朝が大変です。育て方が間違っていたのでしょうか?(年中男子の保護者)

母親と離れたがらないのは、素直な気持ちのあらわれ
【親野智可等氏からのアドバイス】
そもそもこの年代では、親と離れるのが寂しくて不安だという気持ちを持っている子はたくさんいます。お子さんの場合、その自分の気持ちを素直に表現できているということです。これはむしろ望ましいことかもしれません。
逆に、すごく寂しくて不安なのに、それを表現できないで無理に押さえ込んでいる子もいます。または、押さえ込まされている子もいます。その場合、そのストレスが別の形で出ることもあり、たとえば友達やきょうだいにそのストレスをぶつけることもあります。つまり、理由もなく乱暴な振る舞いをしたり、ちょっとしたことでけんかになったりということです。物に対する扱い方が乱暴になり、おもちゃを投げたり机をたたいたりすることや、あるいは、必要以上にわがままな振る舞いをして周りを困らせることもあります。

泣きたい時には存分に泣かせて共感してあげよう
泣きたいときにはたっぷり泣かせてあげてください。そして、その気持ちに共感してあげてください。「誰も泣いてないよ。泣いてるのは○○ちゃんだけだよ。恥ずかしいね」「そんなことじゃ小学校には入れないよ」などととがめたり、否定的な言い方で叱ったりするのは逆効果になるだけです。