自殺で家族亡くした子供138人、児童相談所の38%が関わり 25年度調査

産経ニュース 2015年5月24日

平成25年度に児童福祉施設入所や里親委託となったケースで、親など近しい家族を自殺で亡くした子供に関わった児童相談所が38・8%に上るとの調査結果を、国立精神・神経医療研究センター(東京)が24日までにまとめた。
調査で把握された子供は計138人で、うち10人が自殺の場面を目撃した。一方、自助グループに関する情報提供や、精神科医によるカウンセリングの紹介などの「自死遺児」支援を提供しているとした相談所は5・6%にとどまった。研究チームの川野健治・自殺予防総合対策センター室長は「近親者の自殺を経験すると、子供本人の自殺リスクが高まるとされる。適切な援助のため、外部機関と連携して体制整備を進める必要がある」としている。
調査は全国約200カ所の児童相談所を対象に実施、160相談所が回答。親などを自殺で亡くした子供に関わりがあったとした相談所は38・8%を占めた。138人のうち10人が自殺場面を目撃し、遺体の第1発見者となった子供は16人だった。

【子どもの虐待防止】 川副 正敏さん

西日本新聞 2015年05月25日

◆非難だけでは解決せぬ
2000年5月24日に児童虐待防止法が公布されてから今日で15年。児童相談所(児相)での児童虐待相談対応件数は、13年度には7万3千件を超え、公布当時に比べ4倍以上になった。
「国民の義務」と規定された児童虐待通告制度の周知が進んだとともに、全国の児相が強化された面もあるが、虐待事案は膨大な数になるのは確かだ。中でも、死亡という最悪の結果に至ったケースは、12年度は51人、心中(未遂を含む)を合わせると90人と深刻な水準で推移している。
最愛の保護者であるべき父母らから殴られ、蹴られ、やけどを負わされ、食事も与えられず放置された子どもたちの悲しい目と痛々しい身体、これによる大人への不信と絶望、自分を責めてしまう深い心の傷を思うと胸がふさがる。被虐待経験が非行の根となり、将来、親として自ら子の虐待に及ぶ連鎖も指摘されている。こうした事件のたびに、加害者である親たちだけでなく、これを防げなかった児相や学校も激しい非難にさらされる。

虐待の類型で最も多い身体的虐待の動機は「しつけのつもりだった」「泣きやまないことにいら立った」「反抗的態度をとったことに激高した」などだ。その家庭状況としては、ネグレクト(養育保護の拒否・怠慢)を含めて、ひとり親、経済的困窮、就労不安定、孤立、育児疲れなどが重なり合う。
核家族化がますます進む中で、非正規雇用や貧困世帯の急増といった社会の矛盾に直面し、生活や育児にきゅうきゅうとしている加害親らの姿が目に浮かぶ。
この間、地方自治体ごとに要保護児童対策地域協議会が設置され、個別事例についての関係機関の情報共有と協働による虐待予防措置の実施、妊娠期からの育児支援事業などの施策が進められてきたが、緒に就いたばかりだ。次代を担う子どもへの責務として、貧困対策を含め、質量ともに取り組みを拡充すべきだ。

児相は、児童の安全の確認と確保のために、自らの判断で強制的に住居に立ち入り、必要な場合には「一時保護」として児童を相談所に付属する施設などに住まわせ、親子分離をする権限が与えられている。
しかし、そのことが親側の強い反発を招き、職員への激しい抗議、罵倒や脅迫、暴行に及ぶこともまれではない。そのため、児相の職員が疲弊するばかりか、虐待の再発防止、親子の再統合に向けた指導や援助は拒絶され、本来の役割を果たせないケースも多い。
日本も批准している子どもの権利条約は、子どもと父母を分離させる強制力の発動について「権限のある当局が司法の審査に従うこと」を条件とし、実施機関と審査機関を分けると規定している。児相が両方を行うという現在のあり方は、同条約に抵触する。
児相本来の業務を充実するためにも、一時保護の判断は原則として家庭裁判所が行う制度に改めるべきだ。手続きの中で、当該児童の意見表明と最善の利益を反映する「子どもの代理人」制度も検討されてよい。
児相や児童養護施設の職員を増員し、専門性を高めることは急務だ。弁護士を児相の常勤職員に採用した福岡市の先駆的な施策は有益である。
条約は、暴力、虐待から児童を保護するためあらゆる措置を取るよう求めている。子どもたちを社会全体が無償の愛で温かく抱きしめようということだ。行政任せにせず、福祉、医療、教育、司法など多くの分野で、官民、民民間の連携と協力の輪を広げていこう。

<投票年齢引き下げ>大人か子供か18歳 なるほドリワイド

毎日新聞 2015年5月25日

選挙で投票できる年齢を18歳に引き下げる公職選挙法改正案が今国会で審議されます。法律の公布から1年たった選挙に適用されるので、6月下旬ごろまでに成立すると、来年夏の参院選は18歳や19歳でも投票できるようになります。同時に少年法や民法の年齢規定も18歳にしようという議論があります。改正が実現すると何がどのように変わるのでしょうか。

【70年ぶりの見直し】教育現場、どう対応?
◇投票年齢、20歳から下げるの?
◇法案可決なら来夏参院選から

なるほドリ 18歳以上の若者が来年夏の参院選から投票できるようになるって聞いたよ。

記者 与野党6党が今年3月、衆院選や参院選、地方自治体の首長・議員選挙で投票できる年齢を現在の「20歳以上」から「18歳以上」に引き下げる公選法改正案を国会に提出しました。選挙権年齢(せんきょけんねんれい)を25歳以上から20歳以上に引き下げた1945年以来、70年ぶりの大改革です。今国会で成立し、18、19歳の約240万人が新たに有権者(ゆうけんしゃ)となる見通しです。

Q なぜ引き下げるの?
A 昨年6月に施行(しこう)された、憲法改正の手続きを定めた改正国民投票法は、施行から4年後に国民投票ができる年齢を18歳以上に引き下げるとし、選挙権についても18歳以上に引き下げる法律を「速やかに」整備するとしました。背景には社会保障(しゃかいほしょう)など将来に関わる議論は、若者にこそ加わってほしいという考えもあります。他国では多くが選挙権年齢を18歳以上にしていることもあります。
Q みんな投票に行く?
A 最近の衆院選の20代の投票率は、2014年32.58%(全体の平均52.66%)▽12年37.89%(同59.32%)▽09年49.45%(同69.28%)--でした。18歳だと高校3年生も投票できるので、政治や選挙への関心を高める取り組みが大切になります。最近は授業で模擬(もぎ)投票を実施する学校も珍しくありません。ただ、教育基本法は学校に対し、特定の政党を支持するような教育や活動を禁じているため、中立性の確保を求める声もあります。
Q 18、19歳が選挙違反をしたらどうなるの?
A 改正案では18歳以上も選挙運動ができるようになります。悪質な違反の場合、原則として成人と同じ刑事裁判を受けることになります。

◇少年法適用年齢どうなるの?
◇「教育より処分」に慎重意見も

Q 少年法が適用される年齢を引き下げようとする意見もあるようだね。
A 公選法改正案の付則(ふそく)には、大人として扱う年齢(成人年齢(せいじんねんれい))を20歳以上とする民法や、20歳未満に適用される少年法について「必要な法制上の措置を講ずる」と明記されています。2月の川崎市中1男子殺害事件で17~18歳の少年3人が逮捕され、社会的関心を集めたことも影響しているようです。
Q 事件を起こした時、少年だとどうなるの?
A 警察に逮捕されると、まず検察に送られます。大人なら検察が起訴するかどうか考え、起訴されれば公開の法廷で裁判が行われますが、少年の場合は検察から家庭裁判所に送られます。非公開の手続きで、少年院に入れるべきか、社会生活を送りながら立ち直りを目指すべきか検討されるのです。教育的な性格が強いのですが、家裁が「大人と同じように処分すべきだ」と判断すると、「逆送」と言って検察に送り返され、大人と同様の手続きが進みます。ただし、14歳未満の少年は処罰できないので、通常は警察が補導(ほどう)し、児童相談所に通告します。
仮に適用年齢だけを18歳未満に引き下げると、罪を犯した18、19歳は家裁には送られず公開の刑事裁判の対象となります。また、18歳や19歳でも実名や顔写真を報じることが法律上可能となります。
Q そもそも少年犯罪は増えているの?
A 少年の刑法犯検挙数は83年に19万6783人に達しましたが、13年は5万6469人まで減りました。殺人や強盗など凶悪事件に限っても13年は10年前のほぼ半分の786人で、引き下げに慎重な意見があるのも確かです。

◇民法改正なら何が変わる?
◇親の同意なく契約を結べる

Q 民法については、どんな議論があるの?
A 専門家たちが法改正の在り方を議論する法制審議会(ほうせいしんぎかい)は09年、国民投票や選挙権の年齢が18歳以上に引き下げられることを前提に「特段の弊害(へいがい)がない限り、成人年齢は18歳に引き下げるのが適当」との結論を出しました。実現すれば、18、19歳でも親の同意なしに結婚できます。親の同意がなくても契約が結べるようにもなりますが、トラブルに巻き込まれる可能性もあるため、引き下げ時期は「国会の判断に委ねるのが相当だ」としました。
Q 反対の人はいるの?
A 13年の内閣府の世論調査では、親の同意なく契約を結べる年齢を18歳にすることについては約79%、親に従う年齢を18歳未満にすることについては約69%が反対しました。欧州各国や米国の大半の州が成人年齢を18歳としていますが、日本では「18歳は子供」との意識も根強いようです。
Q たばことかお酒も18歳からOKになるの?
A 喫煙(きつえん)や飲酒(いんしゅ)が認められる年齢はそれぞれ民法とは別の法律で20歳以上と決められていて、成人年齢が引き下げられても見直さない見通しです。一方、馬券(ばけん)を買える年齢(競馬法)や医師になれる年齢(医師法)など、年齢の規定を民法に合わせている法律は、何らかの見直しをしない限り同時に20歳が18歳になります。成人年齢の引き下げで何らかの影響を受ける法律は212本(昨年4月1日現在)に上ります。【水脇友輔、和田武士】

「ブラック企業」社名公表開始で喜ぶ企業とは?

ZUU online 2015年5月26日

厚生労働省は違法な従業員の長時間労働を繰り返すいわゆる「ブラック企業」について、是正勧告の段階で社名を公表する方針を固めた。この動きにより人材派遣業界をはじめとして恩恵を受けそうな業界、銘柄をみていく。

恩恵を受ける業界は?「すき家」の事例から考える
長時間労働の是正で恩恵を受ける業界の事例から考えたい。長時間労働や深夜の一人勤務といった労働環境の悪さで問題となった「すき家」を経営するゼンショーHD <7550> に対する第三者委員会の報告書では、「長時間労働禁止と休日付与、連続勤務禁止のルール実現のために、人事部門による営業部門の監視機能の強化」「人材の継続的な採用と店員教育の強化」「労働時間を客観的に管理するためのシステム導入」が提案されている。
この報告書から分かることは、ブラック企業解消の恩恵は人材派遣、アウトソーシングを業務とする企業だけではなく幅広い業界に波及効果があることだ。
例えば、ITシステム開発ベンダーや従業員向け教育大手。さらに、残業時間が減ることで帰宅後の時間を有効活用する観点からスクールやフィットネスクラブといったサービス業にも恩恵が広がる可能性もある。

人材紹介業界では技術者派遣企業が好調
ブラック企業に対する取り締まり強化の対策の基本は、適切な従業員数を確保することにあり、人材を採用するか、派遣やアウトソーシングを活用することで一人当たりの負担を減らすことだ。この動きは人材紹介、人材派遣、アウトソーシング業界にはビジネスチャンスとなるだろう。
特に注目なのは、技術者や専門家を派遣することで同業他社との差別化を図っている企業である。
例えば、技術者派遣大手のアルプス技研 <4641> は2014年12月期決算で売上高が前期比11.5%増の202億円。営業利益が前期比51.9%増の16億2, 600万円。当期純利益は前期比93.3 %増の12億6,000万円と業績は好調だ。
業績に影響を与える稼働率も、2015年度第一四半期は前年同期比0.7ポイント増の98.0%と堅調に推移しており、さらなる上ぶれも考えられる。
また同業大手メイテック <9744> も、2015年3月期の決算では、派遣事業部門は増収増益を記録し、2016年3月期決算予想では、売上高は過去最高である860億円(前期比4.7%増)、営業利益は98億円(前期比2.7%増)を見込んでいる。

勤怠管理システムにも特需が起こるか?
すき家の第三者委員会が提案した改善策の1つに、「労働時間を客観的に管理するためのシステム導入」が提唱されたことから、タイムカードを始めとする勤怠管理システムを販売する企業の売上高が増えることも予想される。
例えば、タイムカードや勤怠管理、人事管理システム大手のアマノ <6436> は、今後の売上増が見込める。同社の2016年3月期売上高は、前期比9.3%増の1,200億円、営業利益は前期比20.8%増の113億円、当期純利益は前期比7.4%増の73億円の見込み。
さらに同社は株主還元にも力を入れており、連結配当性向は40%以上を目標に掲げている。配当金の実績も、2015年3月期の1株当たり配当金は前期比8円増の38円。2016年3月期は40円を予想しており、3期連続の増配を予想している。株主還元という観点からも魅力的な企業である。

クックパッドやNTTドコモにも恩恵が?
ブラック企業の取り締まり強化の動きは、社会人向けスクールやフィットネスクラブを運営する企業にとっても追い風だ。社会人のスクールやフィットネスクラブへのニーズは高い。
英会話学校のGABAの調査によると、今後始めたい習い事がある割合は、全体の70.8%(男性61.6%。女性80.0%)であり、1位「英語・英会話」2位「料理・お菓子」3位「フィットネス・ジム」の順に人気が高い。
英会話学校を経営する上場企業で、独自のビジネスモデルを展開して売上が伸びているのは2007年設立のベンチャー企業であるレアジョブ <6096> だ。同社は、スカイプを活用しフィリピン人講師と英会話を行うというオンライン式の英会話スクールを展開し、月額5,800円からの低価格と開始5分前から予約できるという柔軟性をウリにしている。
ユーザー数は開始8年で順調に伸び、2015年に4月には34万人を突破した。業績も好調で、2014年3月期に黒字転換した後、2014年6月にマザーズ上場。2015年3月期には売上高が前年同期比25%増の21億円、当期純利益は前年同期比約3倍となる1億円を達成している。オンラインで柔軟に予約を受け付け受講できるという手軽さは、忙しい社会人でも受講がしやすく、今後も会員数の伸びが予想される。
「料理・お菓子」分野での注目企業は、クックパッド <2193> とNTTドコモ <9437> である。クックパッドはレシピサイトの大手であるが、2014年5月から認定料理教室である「クックパッド料理教室」を展開。
また、NTTドコモは2013年10月にABC cooking studioを運営するABC Holdingsの発行済株式の51%を取得し子会社にしている。
スクールの運営会社が小規模な企業が多く、NTTドコモのように既存のスクール事業することで新規参入する企業が現れることも考えられる。ブラック企業に対する取り締まり強化に代表される監督省庁の動きは、広範囲な影響を与えそうだ。