児童養護施設の子どもに進学時低額の住宅提供

NHKニュース 2015年6月19日

「子どもの貧困対策法」が成立して19日で2年になります。埼玉県は、児童養護施設で育った子どもが高校卒業後に大学や専門学校に進学した場合、低額で住宅を提供する全国で初めての取り組みを始めました。

埼玉県によりますと、平成25年度に、親がいないなど何らかの理由で県内の児童養護施設で育った子どもの高校卒業後の進学率は13.9%と、高校生の平均の81%よりも大幅に低くなっています。
進学しなかった理由について、多くが、「経済的な理由で諦めた」と答えていて、県は、今年度から児童養護施設で育った子どもが、高校卒業後に大学や専門学校に進学した場合、低額で住宅を提供する新たな取り組みを始めました。
具体的には、県が借り上げた部屋やシェアハウスなどの住宅を光熱費込みで、月に1万円程度で提供するということで、県は、最大で9人程度の利用を見込んでいます。さらに、これらの住宅には、社会福祉士が定期的に回り、社会に出るまで相談に応じるということです。
埼玉県によりますと、児童養護施設で育った子どもに住宅を提供し、進学を支援するのは全国で初めてだということです。埼玉県こども安全課の大山典宏主査は、「子どもが、経済的な理由で進学や夢を諦めることがないよう支援したい」と話しています。

[障害者虐待] 早期発見の体制強化を

南日本新聞 – 社説 2015年6月18日

福祉施設での障害者虐待が後を絶たない。山口県下関市の障害者施設で、知的障害者を虐待していたとして元施設職員が暴行の疑いで逮捕された。
男性の胸ぐらをつかんで体を揺さぶり、頭を3回平手打ちした疑いが持たれている。警察は繰り返し虐待していた可能性があるとみて調べている。
暴行の様子を撮影した映像が先月、テレビで放送されたのが捜査の発端だ。胸が締め付けられるショッキングな映像だった。
虐待は決して許されない。ましてや障害者を守る立場の施設職員が暴力を振るうのはもっての外だ。関係機関は虐待防止の取り組みを強化すべきだ。
施設によると、別の職員も通所者に「殺す」「ばか」などと暴言を吐いた疑いがあるという。
不可解なのは市の対応だ。昨年4月に市側に匿名の通報があったほか、職員が暴言を吐く動画も施設関係者から提供されていた。
だが、市は立ち入り調査を行ったにもかかわらず、「事実が確認できない」と処分しなかった。
市が適切に対応していれば、虐待を早期に発見できていたはずだ。職員が否定したのをうのみにしたのなら、ずさんな調査と言わざるを得ない。
なぜ確認できなかったのか、早急に全容を明らかにしなければならない。
厚生労働省によると、福祉施設や自宅での生活支援サービスの職員による虐待は2013年度に263件、455人に上る。被害全体の2割近くを占める。3人が亡くなっており深刻だ。
鹿児島県内では13年度27件の障害者虐待が認定されている。内訳は家庭内16件、福祉施設7件、職場4件だった。
ただ、公表された被害は氷山の一角とみるべきだろう。虐待は部外者が気づきにくく、密室化する傾向があるからだ。
3年前に障害者虐待防止法が施行された。虐待の早期発見を目的に自治体に通報窓口の設置と、虐待に気づいた人に速やかな通報を義務づけた。
下関のケースは内部告発がありながら発見が遅れた。再発防止には通報を生かし、虐待を見逃さない窓口の体制強化が欠かせない。
通報を受け付ける職員が不足しているとの指摘もある。職員の資質向上を図る上でも、研修の充実に力を入れてもらいたい。
むろん、施設側も職員教育を徹底すべきだ。暴力やわいせつ行為はもちろん、賃金を支払わないのも虐待だ。障害者が安心して暮らせるよう社会全体で支えたい。

少子化が少子化を加速させるメカニズム~仲人が見る婚活のリアルな現場から

Yahoo!ニュース 2015年6月19日

親御さんがお子さんの婚活を阻む現状は、仲人として婚活の現場を見る限り、少子化による親世代の不安や寂しさが原因のひとつのように思えます。
その不安や寂しさから、意識的か無意識か、子どもの結婚や婚活に口を出したり妨害するケースが見られます。
実例を挙げてみます。

実例1 ある30代女性のケース
彼女は色白のスレンダー美人で聡明な女性です。
最近まで、40代男性と婚約していたのですが、残念ながら結婚にはいたらずに婚約解消となりました。
「彼のお母さんがいらっしゃる限り、私でなくても、彼は結婚は難しいと思います」
一度は結婚を考えた方との婚約解消は悲しいことでしたが、すでに吹っ切れた様子で、事情を話してくださいました。
彼の父親は他界して、お母様と彼の2人暮らし。
あれ? と思うことは、無事に家族の顔合わせを済ませた後に起きたそうです。
「スルメを持って行かないと!」
彼の母親は、彼女の実家まで結納の品などを持ってきたそうです。
婚約中の2人の間では、「結納はしないで家族同士の顔合わせの食事会でいいよね」と話していたはずなのに。
違和感は続きます。
結婚式の日取りや時間や場所も、母親の考えに逆らえない彼。
結婚して新居を構えることを良しとしない母親の意見を彼女に言い出せず、新居決定をズルズルと先延ばしに・・・。
そんな彼を見て、彼女は
「結婚しても言いなりなんだろうな、結婚なんてとても無理」
と考えるようになり、結婚への雲行きが怪しく・・・。
最終的に、彼女に破談の連絡をしてきたのは、彼ではなく、母親だったそうです。
「彼のお母さんの気持ちも、わからなくはないんです。
たよりにしていた息子が自分から離れていってしまうのは60代のお母さんにとっては寂しかったんだと思います。
表面上は祝福してくれたんですけどね、実際には彼が何かを選択する余地を与えなかった・・・」

実例2 あるアラフォー女性のケース
クリッとした瞳がかわいらしい、年齢よりかなり若く見える女性です。
気配り上手な彼女はお仕事も順調で、忙しくしているうちに、気付いたらアラフォー・・・。
子どもを考えると今がラストチャンスと一念発起、忙しい中、パーティーや紹介で婚活を始めたそうです。
華やかでモテる雰囲気の彼女なのですが、今は婚活が憂鬱なそうです。
それは、自身の母親に起因していました。
パーティーが終わり、家に戻ると、「いい人いたの?」「どんな人がいたの?」など母親が根掘り葉掘り彼女に聞くそうです。
「いい人がいた」「楽しかった」「いまいちだった」・・・
彼女がどんな答えをしても、母親のコメントはいつも同じ。
「そんなパーティーで出会えるわけがないって、知り合いの方から聞いたたわよ。
婚活なんかやめて、独りでも一生食べていける資格でも取りなさい!」
彼女はため息まじりに吐露しました。
「小さなコミュニティーの中の常識が、母の全てなんです。
ネガティブなことを言われているうちに、本当に私は結婚できないんじゃないか、って思ってきてしまって・・・」
老いを感じた親世代が子どもを縛る現実

1947年には4.54、1948年は4.40、1949年は4.32と、第一次ベビーブームには4以上あった合計特殊出生率も、1975年(1.91)に2を割り込んで以降、2以上に回復する兆しはありません。
1975年といえば、その年に生まれた赤ちゃんは今年40歳!
単純に考えると、40歳以下のアラフォー世代は両親を、2人未満の子どもで世話する、ということになります。
かつては子どもが6人7人・・・という家族も少なからずあり、大家族だから、子どもが結婚しても、まだ家には多くの子どもがいて、一番下が巣立つ頃には上の子どもが孫を連れてくるという好循環が生まれていました。
親が子どもの独立を阻止する暇も必要もない時代だったと思います。
でも今の50~60代は、子どもが1人や2人という人のほうが多く、その子どもたちも晩婚になっています。
親は、自身の老いを感じはじめた頃、手塩にかけて育てた子どもに「結婚」という形で独立されるわけです。
親世代は「親世代だけ残されることへの寂しさ」と、「自分の老後が不安」だから、子どもを手元においておきたいと思うわけです。
実際、実例1の女性は、彼から「母に、老後の世話はたのんだと言われているから」と言われたそうです。
こういう例は、婚活の現場ではよく聞く話です。
・健康や老いなど高齢者が抱える不安
だけとは限りません。
・経済的不安
・変化への抵抗
・親自身のわがまま
・子どもへの支配欲(過保護、過剰関与、子ども扱いなど)
など、様々な要因があるでしょう。
どちらにしても、少子化で高齢者が頼る子どもの数が減っている現状が、親の不安や様々な感情を生み、子ども世代の婚活や結婚を阻む形で、さらなる少子化に向かって世の中を突き動かしている気がしてなりません。
親世代の不安や寂しさが少しでも少なくなるような行政対策も、広い意味での「少子化対策」になると、私は考えています。
アラフォー独身の子を持つ親世代は不安より未来の幸せを考えて子離れを!
親子関係は幼少時から培われてきた濃い関係なだけに、力関係を急に変えるのはとても難しいでしょう。
特に、子ども側から関係を変える行動をとることは、勇気もパワーも必要です。
だからこそ、親は絶対に、親の考えで子どもを縛るべきではありません。
子どもの幸せは子ども自身がつかむもの。
アラフォーで独身のお子さんを持つ、子離れがまだの親世代は、今からでも決して遅くはないので、子離れしてほしく思います。
子ども世代は決して、老いた親の世話を嫌がっているわけではなく、新しい家族という違った形の幸せを持ってきてくれるのですから。
今のアラフォー世代が直面している、親子関係が婚活や結婚を阻む状況から「少子化が少子化を加速させるメカニズム」をご紹介させていただきました。

栄養摂取基準が新たに!第三の朝食にぴったりの●●って?

Mocosuku Woman 2015年6月19日

厚生労働省が発表した調査によると、男性の14.4%、女性の9.8%が朝食を抜いて通学・通勤をしていることがわかりました。朝食欠食率は特に若い人に多く「何も食べない」「お菓子だけ」と栄養バランスの偏った食事をしているとのことです。
朝食を抜くと生活リズムが崩れ、昼食や夕食のときにドカ食いをしやすくなると言われています。とはいえ、忙しい朝はなかなか思うように朝食が摂れないもの。いったいどうすればいいのでしょうか?
ここでは、6月15日に丸の内トラストタワーで行われたフルグラ事業戦略発表会でのパネルディスカッションをもとに、日本人の朝ごはんのあり方と、今後の可能性についてご紹介します。

栄養摂取基準が新たに!注目すべきは「食塩」と「食物繊維」
朝ごはんのあり方について考えるとき、何を重視すべきでしょうか?それは、「食塩」と「食物繊維です」

生活習慣病を予防することを目的に、厚生労働省が5年おきに発表している「栄養摂取基準」。2015年に見直された栄養基準のなかで気になるのが「ナトリウム(食塩)」と「食物繊維」の基準値です。
18歳以上の成人男性が1日あたりに摂取するナトリウム(食塩)の量とされていた「9g未満」が、2015年の基準では「8g未満」に変更。女性については「7.5g未満」から「7g未満」へと少なくなりました。
一方で、食物繊維の1日あたりの目標量は、18歳以上の男性は19g以上から20g以上に変更、女性は17g以上から18g以上と増えています。
つまり、日本人の食生活において、塩分を抑え、食物繊維を増やすことが重要な課題のようです。

和食の朝ごはんは塩分が多い!
東京女子医科大学教授の渡辺尚彦氏は、パネルディスカッションのなかで「最近の人は1日あたりの塩分摂取量が10~11gの人が多い」と話しています。また、日本人の和食の朝食は塩分量が多いことをこう指摘していました。
「お味噌汁に含まれる塩分量は1杯につき2g相当。和食では醤油や塩を多く使いすぎてしまう傾向があり、濃い味付けでないと美味しいと感じられなくなってきています。塩分量が多いことは、生活習慣病である高血圧の原因となるので気をつけたほうがいいですね」
これを予防するために渡辺氏が勧めていたのが「反復1週間減塩法」です。これは、ラーメンやかまぼこ、お惣菜、外食などを含めた塩分量の多い食事を1週間だけ外し、薄味に慣れるという取り組み。「1週間後に通常通りの味付けに戻すと、外食がしょっぱいと感じ、正常な味覚を取り戻すことができる」と渡辺氏は言います。

食物繊維は腸内環境を改善させる
また、今回改訂された栄養摂取基準のなかでも「食物繊維」は、摂ることが難しい食品のひとつです。千葉大学大学院教授農学博士である江頭祐嘉合氏は「食物繊維の目標基準値は男性が20g以上、女性が18g以上でも、現実では14gを摂取するのがやっと」と話しています。さらに、食物繊維の摂取量については次のように説明します。
「食物繊維は野菜100gあたり1gほどしか摂取することができず効率が悪いです。一方でゴボウなどは100gにつき5gの食物繊維をとることができます。穀物は少量で食物繊維がたっぷり含まれているので効率的です」
江頭氏は、食物繊維の重要性として次の2つを挙げています。
1)糖の吸収を抑える働きがあるため悪玉コレステロールを低下させ、動脈硬化を予防に役立つ、
2)腸内環境を整えるので、お通じにも効果的…

第三の朝食「グラノーラ」に期待!
いくら減塩を推奨されたり、食物繊維が大事だと言われても、これまでの食生活変えるのは容易なことではありません。
そんな中で第三の朝食として注目を集めているのが「グラノーラ」です。グラノーラは、とうもろこしや麦、玄米などを使った穀物加工品のこと。アメリカやイギリス、オーストラリアなどの海外でポピュラーな朝食です。ナッツやドライフルーツなどを、蜂蜜やメープルなどで混ぜてオーブンで焼き、ヨーグルトや牛乳と混ぜて食べるのがスタンダードなスタイルです。
渡辺氏が患者さんに朝食をフルーツグラノーラに置き換えるよう指示したところ、血圧が下がった人や安定し始めた人が多くなったと言います。フルーツグラノーラ50gあたりに含まれる塩分は約0.2g。1日あたりの基準値である8g未満を大きく下回ります。朝食を置き換えるだけで、それだけの塩分量が抑えられるのです。
また、江頭氏によるとフルーツグラノーラには50gあたり4.5gもの食物繊維が含まれているそうです。
塩分の多い和食の朝食の人も、朝ご飯を抜きがちな人も、減塩効果ガあり、食物繊維も摂取しやすいグラノーラを試してみてはいかがでしょう?準備するのもカンタンなので忙しい人にも向いています。

携帯番号に「060」追加案 枯渇目前、総務省が検討

朝日新聞デジタル 2015年6月19日

総務省は18日、「090」「080」「070」と広がってきた携帯電話の番号が3年後に枯渇する恐れがあるとして、対策を練る議論を始めた。「060」を加えたり、電子機器同士の通信に新しい番号を割りふって余裕を作ったりする案が有力だ。
携帯電話などの番号を管理する総務省が、有識者でつくる審議会に対策案づくりを諮問した。審議会は年内に答申をまとめる。
総務省は1999年に携帯電話の番号を「090」、PHSを「070」に集約し、けた数も10けたから11けたに増やした。その後の利用者急増にあわせ、2002年に「080」を携帯に追加。14年には利用が伸び悩むPHS、携帯間の番号持ち運び制度を始めて区別をなくすなどの対策をとってきた。
現在、「090」「080」「070」の総数は2億7千万回線ある計算だ。
これに対し、15年3月末の携帯・PHSの総契約数は1億5786万件。年間約800万件のペースで増えている。日本の人口約1億2700万人よりも契約数が多いのは、スマートフォンとタブレットを同時に使う人などが増えているからだといわれる。

手術でよくなる認知症「特発性正常圧水頭症」の3つの症状

週刊女性PRIME 2015年6月20日

厚生労働省によると認知症高齢者の数は’12年の時点で全国に約462万人と推計されており、今から10年後の’25年には700万人を超えるという。これは、65歳以上の高齢者の5人に1人が認知症にかかるということだ。
現代の医学では、認知症は進行を遅らせることはできても、完治することができない病気とされている。だが実は、認知症の中でも、手術でよくなる認知症があることを知っている人は少ない。
そもそもひと口に認知症といっても、その原因によって分類がなされていて、大きく分けて、アルツハイマー型、レビー小体型、脳出血や脳梗塞や、くも膜下出血が原因となる脳血管型、そのほかに外傷やアルコールを含めた薬物によるもの、一酸化炭素中毒によるもの、そして『特発性正常圧水頭症』(以下、iNPH)によるものとなる。
このiNPHが手術によってよくなる認知症だ。

特徴的な3つの症状
《『iNPH』が疑われる人の有病率は高齢者の1.1%であると推定され、日本の人口の高齢化率(約22%・2012年)で換算すると、低く見積もっても約31万人の方が罹患している可能性がある》(難病情報センターのホームページより)
それほど多くのiNPH患者がいても、病気そのものの認知度が低いため、有効な治療を受けられている人は少ないのが現状だ。
東京・目黒にある『東京共済病院』院長で脳外科医の桑名信匡医師はiNPH治療の第一人者。全国からiNPHの疑いのある患者が桑名医師を頼ってやって来るという。
「iNPHというのは、原因は明らかになっていませんが、脳脊髄液の産生と吸収に問題が起き、脳室という脳内の空洞に脳脊髄液がたまってしまう病気です。内側から脳が圧迫されて、いろいろな症状が出てきます。発症は徐々に進み、基本的に60歳以上の人に多い。平均でいうと77~78歳ですね」
この病気は認知症のほかに、歩行速度が遅くなり、ガニ股になったり、小刻みですり足で歩くようになる歩行障害や尿失禁が起きたりするのが大きな特徴で、
「発症のタイプでは歩行障害が最初で、それから認知症が加わったりします。ごくまれに頻尿、尿失禁だけで発症する人がいますが、ほとんどの人が歩行障害で発症します」
しかし、この病気はゆっくり進行していく。歩行障害が出てくると、危ないからと外出を控えるようになり、やがて歩けなくなって寝たきり状態になり、1日中ボーッとしていて、軽い認知症の症状が出ても年のせいだと思われて、放置されやすい。また、自発性の退化が起きて元気がなくなると、老人性のうつ病と間違われることもあるという。

『iNPH』かもしれない主な症状
(1) トイレが近い、尿意を我慢できない
(2) 表情が乏しく1日中ボーッとしている、物忘れがひどくなった
(3) 足元がふらついてよく転ぶ、足が上がらずすり足で歩く

局所麻酔ですむ手術で認知症が改善
このiNPHの症状を速やかに改善する手術とは、いったいどういうものなのか。
「L-Pシャント術といって、私が40年ほど前に開発した手術法で、圧迫の原因である脳脊髄液をバイパスを使って腹腔に送る方法です。それまでは脳に直接管を挿入していましたが、抵抗を抱く人もいました。脳に直接管を刺すのはちょっと怖いし、脳を傷つける可能性もあります。この方法は、脳と脊髄はつながっているので、脳のかわりに脊柱管に管を通す方法。安全性も高く、患者の不安も抵抗感も少ない。慣れれば40~50分ですみます」(桑名医師、以下同)
さらに、局所麻酔ですむというこの簡単な手術で、
「歩行障害は90%、尿失禁は80~85%、認知症は約65%改善されます。頻尿や尿失禁があるからiNPHは過活動性膀胱と間違われたり、歩行障害からパーキンソン病と疑われやすいんです。あるいはアルツハイマーですね。ひどい場合は、この3つの病気の薬を飲まされることになりますし、副作用も出るからそれを抑える薬も飲むことになる」
その人たちは病気が改善することで薬が必要なくなり、寝たきりで尿を垂れ流していた人がそうでなくなることで介護保険もグレードが下がり、社会保険料も削減でき、経済効果も期待できる。
そのためにも、iNPHがもっともっと世間に知られることが必要だが、
「マスコミなどで報道されてこの病気を知る人が増えましたが、まだまだです。歩行障害や尿失禁があったら、老化ではなくiNPHを疑ってもらいたい」

【症例】
桑名医師の治療を受けたAさん(79歳)は、当初、都内の大学病院で診察を受けたが原因はわからなかった。老化現象と診断されて、そのまま通院を続けていたが、症状は一向に回復せず、それどころか、ますます悪化していったという。1年ほど通院したところで、ようやくiNPHを疑われ、桑名医師を紹介されたという。
Aさんのように、特発性正常圧水頭症の認知度は低く、神経内科や脳神経外科を受診しても、iNPHを疑って精密検査が行われるまで、病気に気づかないケースも少なくない。『iNPH』が疑われる場合、専門医がいる病院を受診するのが望ましい。