「少年院に送られて、初めて支援された例もある」セイフティネットとしての「少年法」

弁護士ドットコム 2015年6月25日

投票年齢の18歳への引き下げなどに伴い、「少年法の適用年齢引き下げ」の議論が、自民党の特命委員会などで行われている。日弁連は6月24日、東京・霞が関の弁護士会館でプレスセミナーを開いた。出席した元少年院長や元鑑別所長らは、非行少年・少女の実態を伝えつつ、適用年齢引き下げに疑問を投げかけた。
元富山少年鑑別所長の川邉譲・駿河台大学心理学部教授は「非行は減少の一途」「少年非行は凶悪化していない」として、「現在の少年非行がどうなっているか。現状をちゃんとふまえて、法改正を考えてほしい」と、現在行われている法改正の議論に注文を付けた。

非行少年は「パートタイム」
川邉教授によると、多くの非行少年は、24時間ずっと非行を繰り返しているのではなく、先生の前とか仲間の前でだけ強がっている「パートタイム非行少年」なのだという。
「そういう子たちは『まともな世界』と『非行の世界』の間に、片足ずつを置いて、どちらに行こうかなと漂流している状態です。その状態の子どもたちに、罰を与えて『向こうの世界へ行け』というのか、それとも抱え込んで『健全な世界で一緒に頑張ろうよ』というのか。そこが本当に考えなければいけない部分だと思います」
また、少年たちは一見大人に思えても、未熟な部分がたくさんあるという。
「少年たちの多くは、鑑別所にバスで連れてこられるときには周りの子がいるので、少し強がって平気な顔をしている。でも、夜ひとりの部屋に入れちゃうと、かなり大きな子でも『寝られない』とずっと泣いています。強がっていても、お父さんお母さんが面会に来ないとすごく心配になって、『どうしたらいいんでしょうか。手紙を書いたほうが良いのでしょうか』と言ってくる子たちが、実際には多い。とても、大人として自分のやったことの責任を全部自分で負う準備ができているとは思えない」

少年法が「セイフティネット」になっている
一方、元浪速少年院長で、龍谷大学で講師を務めている菱田律子さんは、実父らから性的虐待を受けて14歳で家出した少女が、18歳で少年院にたどり着いたエピソードを紹介した。
この少女は18歳のとき、たまたま働いていた風俗店が摘発された際に補導された。少女は家裁調査官と面接した際、『実は父親からの虐待があって家出をした』とうち明けたため、少年院送致になった。少年院では「勉強できるのが楽しい」と話していたという。少女は実父に知られないよう、20歳になってから中学卒業資格の試験を受けて合格し、いまは自立して働いているそうだ。
菱田さんは「彼女のように、保護者から適切な養育が受けられない・・・むしろ虐待を受けたにもかかわらず福祉の手が届かず、少年院送致されたことで初めて支援されたという事例が、残念ながら少なからずあります。特に18~19歳の年長少年は、児童福祉法の対象外ですので、少年法が彼ら・彼女らのセイフティネットになっていることをご理解いただければと思います」と強調していた。

少年による凶悪犯罪はピーク時の12%以下
日弁連・子どもの権利委員会に所属している山�・健一弁護士は「少年非行は減少し、少年による凶悪事件はピーク時の12%以下まで減っています」「少年院では人格の内面に踏み込んだ指導をしていて、多くの非行少年が早期に立ち直っています。現行法制は有効に機能していて、世界的にも高く評価されています」と説明。少年法の適用年齢は「少年の更生や再犯防止などの観点から考えるべきだ」として、引き下げに反対していた。

<匿名通報ダイヤル>薬物、虐待など…14年度は9401件

毎日新聞 2015年6月25日

警察庁は25日、犯罪情報を受け付ける「匿名通報ダイヤル」の2014年度の実績が9401件(前年度比7%増)に上り、07年度の制度開始以来最多だったと発表した。スマートフォンなどからインターネットを通じて寄せられる通報が92%を占めた。通報をきっかけに45件が摘発された。
通報を分野別にみると、薬物・拳銃関連が1715件、18歳未満が被害者になる少年福祉犯罪が825件、児童虐待関連が380件--など。このうち児童虐待の疑いがあった70件は児童相談所に通告された。事件解決につながった場合に支払われる情報料(最高10万円)の対象は40件が該当したが、通報者が名乗り出て支払われたのは4件だった。
警察庁は今年度から振り込め詐欺など特殊詐欺の拠点やメンバーに関する情報も通報の対象に加え、5月末までに38件が寄せられているという。【長谷川豊】

社会的養護がテーマの「タイガーラジオ」 子どもたちに届け

福祉新聞 2015年06月23日

社会的養護をテーマにした全国初のラジオ番組「タイガーラジオ」(FM西東京)が4月から始まっている。パーソナリティーは、児童養護施設出身者の支援をしている安藤哲也・タイガーマスク基金代表理事と、児童養護施設の子どもの学習支援をしている森山誉恵・3keys代表理事。番組はインターネットで聞くこともでき「多くの人に聞いてもらえれば」と意気込んでいる。
取材日は6月28日放送の番組を収録。コメンテーターは早川悟司・子供の家施設長で、ゲストは虐待問題を取材するフリーライターの杉山春さんだった。
番組で、杉山さんは2010年に大阪市内で起きた二児置き去り死事件などについて解説。事件について本を出版した後、子育て中のお母さんからは「自分と重なって、読めない」などの声が届いたという。
「そうした虐待の問題を防ぐには市民一人ひとりが何をすべきなのでしょうか」。安藤さんが問う。
杉山さんは「決してお母さんを責めることはせず、まずはよく頑張っているねと認めてあげてほしい」と語りかけた。
番組では居所不明児童の問題も取り上げた。また、リスナーの声を紹介するコーナーでは、児童養護施設出身の若者が、大学で勉学やバイトに励み、充実した学生生活を送っているという手紙が読み上げられた。
早川さんは「児童養護施設出身者の進学率は上がっていて、支援の充実が欠かせません」とコメントした。
番組は、もともと同局で父親の子育て支援をテーマに番組を持っていた安藤さんが「もっと社会的養護のことを世間に知ってほしい」と思い、同局に掛け合って実現したという。森山さんは「テーマがテーマなだけに暗くならないように心がけている」と話す。
放送は月1回で、第4日曜の午後2時から1時間放送される。放送後は同局のウェブサイトでも聞ける。
安藤さんは「昨年のテレビドラマ『明日、ママがいない』の影響で、社会的養護というテーマに漂う自粛ムードを払拭したい。ぜひ児童養護施設の職員や、子どもたちにも聞いてもらいたい」と話している。

保育士に聞く女性の多い職場での処世術

@DIME 2015年6月25日

保育士や幼稚園教諭の人材紹介サービス「保育のお仕事」を展開する、株式会社ウェルクスは、同社が運営するサイト「保育のお仕事レポート」にて、読者を対象に行ったアンケートに基づいた独自のコンテンツを発表した。これは主に保育士や幼稚園教諭として働く読者さまに対し、女性が多い職場で働くことの大変さについて伺ったもので、アンケート結果によれば、回答者の全員、100%が「女性が多い職場で働くことに、ストレスを感じた経験がある」と回答。また女社会のストレスが原因で辞めたいと思った経験の有無に関しても、95.9%が「辞めたいと感じたことがある」と回答する結果になった。
今回は「女性が多い職場で働くことに、ストレスを感じた経験があるか」73名に聞いたところ、なんと回答者の全員が「ストレスを感じたことがある」とという結果に。保育業界全体を通じて見ても、非常に多くの方が女社会特有の職場ストレスに悩んでいることが伺える。また女社会のストレスが原因で「辞めたい」と思った経験について伺ったところ、こちらも95.9%の人が「経験がある」と回答。女性ならではの人間関係の難しさが、離職に直結してしまう可能性も十分あると言えそうだ。
では、実際にストレスを感じるのはどのような場面なのか。寄せられた意見を一部紹介しよう。
・女は感情の起伏が激しいからプライベートで何かあると八つ当たりみたいになるし、充実していればご機嫌だしで面倒くさい。(30代)
・仲が良いように見えて実は悪かったり…変に気を使う。(20代)
・当事者がいないときに、その人の悪い噂を持ちかけられる。自分がいないときに言われていることもある。(40代)
・大奥のような人間関係。(30代)
一方、ストレスに対する具体的な対処法や予防法についてもアンケートを実施。集まった意見をタイプ別に分けたところ、「深入りはせずに仕事と割り切る」ことで乗り切っているという意見が最も多く、38.4%。次いで「休日など職場の外でストレスを発散する」という意見が20.5%となった。男性保育士が増えてきたとはいえ、まだまだ女性の比率が高い保育業界では、女同士ならではのストレスを抱えている人も多く、長く働く上では、こういったストレスに対処する自分なりの工夫が必要であることが伺える調査結果となった。

調査概要
・実施期間:2015年6月12日~6月22日
・実施対象:保育士:78.1%・幼稚園教諭9.6%、その他保育関連職:2.7%・資格保有者(離職者など)9.6%
・回答者数:73人
・平均年齢:32.5歳
・男女割合:女性/98.6% 男性/1.4%・回収方法:facebookおよびLINE@で告知

<労災>精神疾患が過去最多…長時間労働の影響深刻に

毎日新聞  2015年6月25日

厚生労働省は25日、2014年度の精神疾患と脳・心臓疾患の労災補償状況を公表した。精神疾患による労災請求は1456件で、13年度を47件上回った。うち労災と認定された件数は497件で13年度を61件上回り、請求、認定いずれも過去最多となった。
精神疾患による労災認定の内訳は男性347件、女性150件。うち99件は自殺(未遂含む)で、13年度より36人増えた。厚労省が過労死のリスクが高まると位置づける「過労死ライン」の残業時間「月80時間以上の残業」は13年度より57件多い201件。このうち、160時間以上の残業は13年度の31件の2倍を超える67件に上り、長時間労働による過労の実態が浮かび上がった。
要因別では「悲惨な体験」が72件で最多。次いで「パワハラや暴行」が69件だった。
一方、脳・心臓疾患の労災請求は763件(13年度比21件減)、認定は277件(同29件減)だった。職種別では自動車運転従事者が最多の85人で、管理職24人、営業職14人の順。厚労省職業病認定対策室は「仕事上でストレスを感じている人が増加しているのが労災増加の一因になっている」と話している。
過労死等防止対策推進法制定に携わった関西大学名誉教授の森岡孝二さんは「長時間労働の影響が深刻化している。精神疾患で認定されたケースのうち160時間以上の残業が多く、信じがたい。労働時間の上限規制に取り組まなければ過労死防止は困難だ」と話している。【東海林智】

労働時間削減規制が不可欠
精神疾患による労災の増加に歯止めをかけ、減少させるには長時間労働の削減に向けた規制が欠かせない。
厚生労働省所管の過労死等防止対策推進協議会は、過労死の危険性が指摘される週60時間以上働く人の割合は30代男性で17%に達し、全体で468万人の「過労死予備軍」がいる現状を指摘している。
政府が過労死や過労自殺の防止策に乗り出しているのは確かだ。防止策を国の責任と位置づけて昨年11月に施行された過労死等防止対策推進法(過労死防止法)はその成果と言える。基本方針となる大綱の素案には、過労死ゼロを目指すために2020年までに週60時間以上働く人の割合を5%以下にするなど数値目標を入れた。
だが、政府は流れに逆行するようにも映る労働基準法改正案を今国会に提出。改正案には1日8時間の時間規制の適用が除外され残業の概念がなくなる「ホワイトカラーエグゼンプション」(残業代ゼロ制度)や、実際の労働時間に関係なく一定の時間働いたとみなす「裁量労働制」の営業職への拡大が盛り込まれた。長時間労働削減に政府が真面目に取り組もうとしているのか、疑わざるを得ないのが現状だ。【東海林智】

働く女性に聞く「職業病」を感じた瞬間

@DIME 2015年6月24日

働く女性向けWebマガジン『Woman type』を運営する株式会社キャリアデザインセンターは、2015年4月16日~20日に、同社が運営する転職サイト『女の転職@type』の20代~30代女性会員およびWebマガジン『Woman type』のサイト読者に職業病についてのWebアンケートを実施した。日常生活を送る中で、つい仕事目線で物事をチェックしてしまったり、勤務中の習慣やクセがうっかり出てしまったり……世の働く女性たちはどのくらい職業病を感じているのか。「社会人になってから『職業病だな』と感じたことがありますか?」と聞いたころ、7割近くの人が「ある」と回答したことがわかった。そこで、「職業病」を感じた時のシチュエーションを聞いてみたところ、以下のような声が聞かれた。

【営業職:みんな顧客に見える】
・「お客さま層を見かけると、つい声を掛けたくなります」(36歳/スクールマネジャー)
・「合コンや何かのきっかけで誰かと知り合うたびに、相手が『自分の会社の製品を買ってくれるお客さんになりそうかどうか』を考えてしまう」(27歳/営業)

【サービス業:どうしても見過ごせない】
・「料理の仕事なので、外食に行っても料理の見た目や味付け、厨房の裏側、サービスが常に気になる」(36歳/調理)
・「街中を行き交う人々の体のラインを、無意識に見てしまう」(24歳/エステティシャン)

【不動産業:物件・土地が無視できない】
・「外観が綺麗で空いているお部屋を見つけると、中に入って写真撮影をしたくなる」(38歳/不動産営業)
・「マンションを見ると、値段や維持費を試算してしまう」(26歳/不動産関連)

【クリエイター:そこチェックするの?】
・「広告業なので、雑誌を読んでいても、広告ページの出来や、クライアントの競合などを考えながら読んでしまう」(31歳/マーケティング)
・「ホームページを見るとソースコードを見たくなる」(33歳/Webディレクター)

【アパレル関連:気楽にお買物ができない】
・「洋服屋で商品を広げて見た後に、綺麗にたたんで元に戻す」(37歳/接客・販売)
・「価格と縫製などの作りを瞬時に考えてしまうこと」(33歳/アパレルデザイナー)

【その他:染み付いた習性】
・「昼食は5分で食べます」(37歳/保育士)
・「ピンポンのコールが空耳で聞こえる」(35歳/介護ヘルパー)

“あるある”な職業病がたくさん寄せられた。オフタイムなのに、ついお仕事モードが出てしまうというのは、それだけ普段の仕事に真剣に取り組んでいる証とも言えそうだ。

【調査概要】
・調査方法:転職サイト『女の転職@type』の20代~30代女性会員およびWebマガジン『Woman type』サイト読者へのWebアンケート
・調査期間:2015年4月16日~20日
・有効回答者数:214名

仕事を成功させるには人間関係の対立は必要である — 尾藤 克之

アゴラ 2015年6月25日

「できるって言ったのはオマエじゃないか!」容赦ない上司の叱責が、烈火のごとく浴びせられる。数日前、上司から依頼された仕事に「かしこまりました」、そう言って引き受けたものの、期限までに仕上がらなかったのだ。落ち込み、やり場もなく抑え付けられた憤りはストレスへと変わっていった。
ビジネスパーソンであれば、このような経験をしたことは一度や二度はあるでしょう。仕事にはストレスが付きものです。厚生労働省の「労働者健康状況調査」(2014)では、調査対象の全労働者のうち6割以上が「仕事において強い不安、悩み、ストレスがある」と答えています。
佐藤康行氏は、北海道から15歳で単身上京し、コック見習いを経て営業マンに転身してからは宝飾品のセールスで日本一、教育関連の営業で世界一の実績を打ち立てて、レストラン経営で70店舗を展開するまでに至っています。その分、人間関係の大切さや難しさを経験したといいます。今回は、職場の人間関係の対応方法について伺ってみました。

部下は上司の指示を安請け合いする
職場の人間関係のメカニズムについて教えてください。
佐藤康行氏(以下、佐藤) 職場には「タテの関係」と「ヨコの関係」があります。上司などからの指示で仕事をすることが「タテの関係」。同僚や部下、部門を超えたコミュニケーションが「ヨコの関係」です。職場の人間関係のもつれの中で代表的なものは、組織におけるタテの関係、つまり上司部下の人間関係から起こる対立でしょう。
冒頭のケースであれば「業務指示を受ける」なかで、仕事の知識不足や力量不足で遂行できないことが起因として挙げられます。「わかりました」「やります」と言って結果が伴わないから対立に発生したわけです。
部下には「できないことでも挑戦する」「上司の依頼は請けなくてはいけない」という意識があります。上司に「君は忙しいようだね?」「君には難しいかも知れないけどできるかな?」と言われて「それはできません!」とはなかなか言えないものです。結果的に「安請け合い」をしてしまいます。安請け合いをしても、周囲の力を借りるなどをして仕上げれば問題はありませんが、仕上がらない場合は人間関係の悪化に影響を及ぼす可能性があります。

仕事には摩擦がつきもの
仕事で対立を起こさない方法などあるのでしょうか?
佐藤 まず重要な仕事ほど人間関係が複雑で困難な仕事であることを理解しなければいけません。重要な仕事であるほど摩擦が生じる。例えるなら、総理大臣ほど最も摩擦が多い仕事はないと言えるでしょう。そして、人間関係のストレスを感じた際に「自分の能力の範囲内で仕事をして出世をあきらめるか」「重要な仕事に挑戦して出世を目指すのか」、ビジネスパーソンとしての生き方を考えなくてはいけません。
ここに売れないミュージシャンがいたとします。何度も新曲をリリースしてもヒットには恵まれません。「まだ時代が追いついていない」と不満を言う人は同じことを繰り返す可能性が高いと思います。一方で「理解される曲をつくろう」と思えば進歩していくものです。これは人間関係において、相手を変えることを求めずに自らが変わることと同じです。
また自分に課せられた仕事が難題であるほど自分にとってはチャンスが与えられたと思えば良いのです。人間関係に悩むことで生き方や考え方を深める機会にはならないだろうか。仕事をして給料を稼ぐことも大切ですが良い人間関係を構築することも同じくらい大切なはずです。これは、私がレストランを70店舗まで拡大し全国展開した経営者としての経験があるから余計に理解できることです。社長も弱音を吐きたいことがありますから。

ありがとうございました。
人は人生の中の大半を仕事に費やします。あなたも身のまわりの人間関係をいま一度振り返ってみては如何だろうか?

ジェネリックの薬が安くなるのはどうして?

月刊糖尿病ライフ さかえ 2015年6月25日

ジェネリック医薬品を使用すると医療費が安くなるそうですが、なぜですか?(2型糖尿病、52歳、男性)
ジェネリック医薬品とは、有効成分そのものに対する特許が切れたため他の製薬会社が製造・供給することになった医薬品のことです。もともとの医薬品は先発医薬品、ジェネリック医薬品は後発医薬品とも呼ばれています

ジェネリック医薬品は、先発医薬品と全く同じ?
薬として有効な成分が先発医薬品と同じ量入っていても、調剤法などが同じではないことがありますので、全く同じ薬というわけではありません。また、服用してからの吸収の速度や濃度が異なる場合もあります。

ジェネリック医薬品はなぜ安い?
厚生労働省の資料によると、新薬の開発に掛かる費用は1品目あたり数百億円といわれていますが、ジェネリック医薬品の場合は1億円程度で済むそうです。また、先発医薬品の開発には約9~17年かかりますが、ジェネリック医薬品はその1/3程度の期間で開発できます。そのため、薬価(国が決めた薬の値段)を先発医薬品の60%程度に抑えることができます。国や地方の財政が厳しい状態にあるにも関わらず、今後、福祉関連の支出がさらに増加することが予想されていますので、ジェネリック医薬品はなくてはならない存在になっています。ご自身の所属する健康保険組合から、「ジェネリック医薬品に替えてみませんか?」というお知らせをいただいた方もいらっしゃると思います。

いつでも大幅に安くなるわけではない
ただし注意しないといけないのは、ジェネリック医薬品に替えても医療費が大幅に安くなるわけではないということです。単純に考えると、ジェネリック医薬品は先発医薬品の60%程度の薬価なので医療費を40%程度節約できそうに思えますが、そうではありません。まず、薬代は安くなりますが、診察料(初診料あるいは再診料)や検査料は変わりません。
次に、全ての薬にジェネリック医薬品があるわけではありません。一般的に用いられる25種類の糖尿病治療用の経口剤(飲み薬)のうち、ジェネリック医薬品が存在するのは9種類のみです。特に最近発売されたDPP-4阻害薬やSGLT-2阻害薬などは薬価が高いのですが、まだジェネリック医薬品は発売されていません。
また、既にジェネリック医薬品を服用していた(現在服用している薬を先発薬だと思い込んでいた)ということも少なくありません。ジェネリック医薬品の名前は、平成17年の厚生労働省の通達により「有効成分に係る一般名称に剤型、含量および会社名を付すこと」と規定されたため、処方箋の中のどれがジェネリック医薬品かは何となくお分かりになると思います。しかし、それ以前はジェネリック医薬品でも自由に商品名を付けることが許可されていたため、先発医薬品との区別がつきにくいと思います。
また、もともとの薬価が安い薬では、ジェネリック医薬品に替えても思ったほどの経済効果が得られない場合もありますので、注意が必要です。

インスリンのジェネリック?
糖尿病患者さんから「インスリンにはジェネリック医薬品はないのか?」という質問をよく受けます。現在、インスリンにはジェネリック医薬品はありません。しかし近い将来、インスリンのジェネリック医薬品に相当する「バイオシミラー製剤」が発売されるでしょう(2014年10月に認可されました)。ではなぜ、「ジェネリック医薬品」ではなく、わざわざ「バイオシミラー製剤」という別の言葉を使うのでしょうか。それは、インスリンや抗がん剤などの生物製剤は構造が複雑で、薬剤中の有効成分が先発医薬品と全く同じことを証明することが難しいためです。それにより、バイオシミラー製剤はジェネリック医薬品に比べて認可までの手続きが格段に多くなっています。しかし、全く新しい薬を開発するわけではないため、かなりの経費が節減でき、価格も安く抑えられるということになります。

医師と相談して上手に活用
医療が発達し、高額な薬が発売されて、医療費も高騰しています。また、公的病院で包括支払い制度(*注)が拡大し、それによってジェネリック医薬品の採用が増えていますが、欧米に比べて日本の医薬品市場はまだ小さいのが現状です。
今後、ジェネリック医薬品はその存在がますます大きくなると思われますが、医師や薬剤師とよく相談をして、ジェネリック医薬品や将来発売が予定されているバイオシミラー製剤を上手に使う必要がありそうです。
(*注)包括支払い制度:医療行為ごとに金額が決められている制度。そのため、薬価の安いジェネリック医薬品を採用すると病院のメリットにもなる。