母乳出ないと母親失格?悩む女性たち ネット販売の背景

朝日新聞デジタル 2015年7月9日

不衛生な「母乳」がインターネットで販売されているという報道があり、厚生労働省が注意喚起を求める通知を都道府県などに出しました。母乳が十分に出ずに悩む女性が購入している可能性があると判断したためです。実際に授乳で悩んだ経験のある人たちに話を聞きました。
インターネット上には母乳の売買を呼びかける業者のサイトや個人のブログが複数ある。ある業者のサイトでは「母乳とは人の命の源です」「赤ちゃんは母乳を通し、母親から栄養のみならず様々な免疫力を蓄えています」「質の高い母乳をお届けいたします」とうたう。料金の目安として「母乳月数6カ月50ミリリットル 1200円」などと示している。
厚労省は3日に通知を出した。管理の状況が不明な他人の母乳を飲ませることについて、母乳に病原体や医薬品などの化学物質が含まれていれば、乳幼児に悪い影響を与える恐れがある、としている。
埼玉県の女性(30)は「自分は買わないと思う」としつつも、「母乳をネットで購入するほど追いつめられた気持ちはわかる」と話す。
2年前に出産した。母乳がほとんど出なかった。
子どもを産んだら母乳は自然に出るものだと思っていた。出なかったのが単純にショックで、「飲ませたい」と意地になった。育児雑誌に母乳だけで育てる完全母乳が主流かのように書かれているのも、そんな気持ちに拍車をかけた。
子どもも吸うのを嫌がった。乳首を口に含ませると大泣きする我が子。その顔を見るのがつらかった。「なんで吸ってくれないのよ」と子どもを責めたくなる自分もいて、罪悪感にも苦しんだ。
生後1カ月から、育児用ミルクに混ぜるため母乳を搾ったがほんの少ししか出なかった。半月後にはミルクだけになった。
完全母乳でなく、母乳を足すことさえできないと感じて「母親失格」と思った。
子どもの通院先で医師に「ミルクで育てた」と話すと、「努力が足りなかったんじゃないの」と言われ、さらに深く傷ついた。

愛するわが子が「お荷物」になってしまう日

東洋経済オンライン 2015年7月8日

「37.5℃」は子どもを保育園に預けて働く共働き夫婦にとっては、なじみのある数字だ。通常は健康な子どもが通う場所。だから、子どもの体温が微熱と呼ばれる37.5℃のボーダーラインを越えると、保育園は子どもを預かってくれない。預けた後に発熱してしまったら、親はたとえ仕事中でも子どもを迎えに行かなくてはいけなくなる。保育園で預かれない理由は、「ほかの子どもへの感染防止」と「保育園のリスクマネジメント」であり、法律で決められているわけではない。
TBSテレビで7月9日(木)よる9時からスタートする連続ドラマ『37.5℃の涙』は、子どもが熱を出したときにどうしても仕事を休めない親に代わって、自宅に訪問して子どもの世話をする『病児保育士』を主人公にした連続ドラマ。主人公の目線を通し、共働き夫婦にとって何ともやるせない問題にも切り込んでいる。ドラマ内で描かれているテーマのひとつは、「愛する子どもが時に親にとっての荷物になる」ということ。ショッキングな響きだが、実は意外に身近なことでもある。ドラマの制作にあたって取材を重ねた担当プロデューサーが、目の当たりにした現実をつづる。

共働き夫婦をトコトン悩ます「37.5℃の壁」
私自身は子どもがいないのだが、子どもは好きで、子どもが欲しいと望んで授かった人であっても、「子どもが荷物になることがある」という事実がとても意外だった。恥ずかしながら『37.5℃の涙』の原作漫画を読むまで、「37.5℃以上の熱が出ると保育園で子どもを預かってもらえない」という子育ての常識さえ知らなかった。

「37.5℃の壁」とはいったい?
たとえば、経済的負担とか睡眠不足といった物理的な負担で、子どもを荷物に感じてしまうことはあるかもしれない。一方で、子どもの熱が37.5℃を超えるたびにお迎えコールで呼び出されて、自分自身が職場のお荷物になってしまう、という社会でのより具体的なレベルの出来事は想定外だった。この「37.5℃の壁」について、保育園に子どもを預けた経験がなかったり、子どもがいなかったりすると、知らない人も多いのではないだろうか。
漫画をきっかけに仕事と育児を両立している人に取材したり、現状を調べていったりするうちに、現在子育て中の人やその周りが抱えている困難を他人事とは思えなかったし、情報として一般に知ってほしいと思い、ドラマ化を企画した。さまざまな「子どもが荷物になる」ケースを物語の中で描いている。
「37.5℃の壁」が想定外の初歩レベルだとすると、最高レベルは「毒親」だ。児童虐待とか育児放棄などは最近一般的に知られているが、実は親の立場から「自分の子どもを好きになれない」「愛せない」「どう接していいかわからない」と悩んでいる人は多い。
保育園の先生の中にもよく親から相談を持ちかけられるという方が多くいる。でも、それは親がおかしいわけではなく、心理学的には「親子にも相性があるから、合わないことがあって当然」と考えるのだそうだ。
「なぜ、愛せないのか」という理由や原因はわからない、と心理学者の先生も話していたが、このケース、特に母親たちにとっては、世間が作っている“母性神話”“親子神話”がキーになっている気がする。
「女性にはもともと母性が備わっているものだ」とか「子どもを産めば自然に子どもの世話をしたくなる」といった、いまだに半分常識のようにいわれていることの外圧が、母親を苦しめたり、「私はダメな母親だ」という罪悪感を植え付けてしまったりしていることもあるのではないか。

どうして毒親になってしまうのか
毒親をもう少し詳しく解説しよう。「子どもにとって“毒”になる親のこと」だ。自分の価値観を押し付ける、抑圧する、育児放棄する、暴力を振るう、兄弟間差別を行う、など色々なケースがある。毒母になってしまう心理的な背景には、経済的な余裕のなさ、育児の悩みを誰にも相談出来ない、自身が子どもの頃に受けていた虐待経験、などのほか、子どもの特性によるものもある。
子どもの特性とは、離婚した夫に子どもの顔が似ていて可愛く思えない、子どもの聞き分けが悪くなかなか言うことを聞かない、など。一般的に、自分が毒親であるという自覚がないことがほとんどである。
『37.5℃の涙』の原作漫画で、共働き夫婦の夫が、子育てへの参加の仕方がわからなくて、結局は妻ひとりが大変になる、という話がある。このケースでは、そもそもたったひとりで子育てなんかできるわけはないのに、子どもの世話を完璧に見ることができないことで自分を責めてしまい、その結果、子どものことをさらにお荷物に感じてしまう、悪循環が描かれている。
この話の結論は、妻に子どもを預けることが前提になってしまっている夫に「その前提はおかしい」と怒っても現実には何も解決しないから、夫を褒めたりおだてたりして上手く使う、という方向にもっていっていて面白い。
ほかに仕事の関係では、子どもが原因で仕事を休むことが多くて辞めさせられた、とか、左遷された、というケースも結構ある。シングルマザーや、シングルファーザーにとっては特に問題だ。それは、企業や政治が悪いという話になるのだが、今、政治は少しずつ変わり始めているらしく、ここ数年で、東京都内のいくつかの区や自治体が訪問型病児保育利用に、助成金を出すようになったそうだ。このように、みんなが意識を持つことは重要だ。

関係悪化の原因は「残業」
病児保育サービス「NPO法人フローレンス」の代表理事を務める駒崎弘樹氏は「会社が旦那を定時に家に帰さないから、現在の状況に陥っている」と指摘する。子どもがいる、いないに関わらず、旦那が残業をしてなかなか家に帰れないと、妻との関係が悪くなっていく。
育児もどんどん妻の役割になり、育児の悩みに耳を傾けることさえなくなる。そういった色々なことが、定時に帰る、ということを徹底することで変わっていく。これは、究極の目標ながら、関係者の心に余裕が生まれるようになるし、子育ても楽になるのではないだろうか。
ただ、会社が悪いという一方で、子どもを持つ人の横暴な態度もある。子ども至上主義は子ども至上主義でムカついてしまう、という「他人の子どもが荷物になる」というケースだ。
以前、知人が「俺は昨晩、子どもの夜泣きでまったく寝てないんだ!」と言って、出社するなり上司にキレられたことがあったそうだ。子どものことでイラつくのは仕方ないと思うけど、それをイライラしたまま、何か行動に起こされると大人気ない。子どもが理由なのは仕方がないとこちらも理解する。ただ、子どもを水戸黄門の印籠代わりに使うのは、いかがなものだろう。

なぜ親は学校の給食費を払わなくなったのか?

プレジデント 2015年7月8日

泣かせるケータイ会社のCM
動画投稿サイト YouTubeには「泣かせる話」として、世界各国のテレビCMなどが紹介されているが、その中にタイのケータイ会社のこんな作品がある。
母親の留守中に泣きだした赤ん坊に、若い父親が狼狽している。まだ自分で赤ん坊を抱いてあやすのが怖く、さっそくケータイで妻に連絡した。アプリの動画、バカトン、バカトンを見せたらどうかと母親が提案し、やってみるが、効果はない。「アプリじゃなく、君が必要なんだ」。母親はパンピン、パンピンとケータイ越しに表情たっぷりにあやして、それを赤ん坊に見せるが、やはり効果がない。
スーパーで買い物をしながらケータイに向かって妙な表情をしている母親は周囲の人から怪訝な目で見られるばかりで、赤ん坊はいよいよ大声で泣き、父親はさらに狼狽する。ついに父親は一大決心をして、ケータイをベッドの上に置き、はじめて自分の両手で、おそるおそる赤ん坊を抱き上げる。するとあれだけ泣き叫んでいた赤ん坊が泣き止んで、笑顔を見せた。思わぬ事態に感激している父親の姿を、ベッドの上のケータイを通して見た母親もまた、人目をはばかりながら、目頭をそっとぬぐう。そのとき、「技術は愛を代替できない(タイ語。字幕の英文ではTechnology will never replace love)」というテロップが流れる(https://www.youtube.com/watch? v=-8nkgUHzlQY)。
設定が秀逸なうえに父親と母親を演じた役者の演技がほのぼのと魅力的で、これがケータイ会社のCMというところがニクイ。愛を技術で代替することはできないが、その感動的なシーンをケータイは伝えることができる、というのが隠されたメッセージである。
<サイバーリテラシー・プリンシプル(27)技術で倫理は代替できない>の巧みな具体化として紹介しておこう。すでに<(3)スマホに子守をさせない>http://president.jp/articles/-/12883で紹介したように、技術やシステムに頼りすぎるのは危険である。具体的な人の介在しないところからは倫理は立ち上がらない。

学校給食費の不払いの理由
10年ほど前、小中学校の学校給食費を支払わない親が全児童生徒の約1%にあたる10万人に上り、滞納総額は22億円余に上ることが話題になった(2005年度の文科省調査)。貧しくて払えない、というよりむしろ、学校給食制度をみんなで支えているという意識が保護者に薄れ、「みんなで払わなければ怖くない」といったモラルハザードが原因らしかった。
この問題は現在も尾を引いている。東京新聞電子版(6月28日)によれば、埼玉県下の市立中学校4校が6月中旬、学校給食費を3カ月間納めていない生徒の保護者43人に「未納のままなら7月から給食を停止する。弁当を持参してほしい」との趣旨の通知を出した。その結果、41人の保護者が給食費を納入する意思を表明したという。
記事には、「4校の給食は以前は給食センター方式だったが、今年4月に自校方式に切り替わり、給食会計が市から学校側に移管されて未納問題が顕在化した」という記述があった。逆に言えば、給食管理が大規模システムだったときには「なんとなくのモラルハザード」が蔓延していたわけである。
かつてのように給食費が学校(教室)単位で給食袋によって納入されていた場合は、出せるはずの給食費を出さないという事態は起こらなかった。だれが払い、だれが払わないという区別が見えない銀行振り込み方式になって、「給食費は払うものである」という一般的な道徳が失われたわけである。
イスラエルで夕方迎えに来る親が約束の時間に遅れることに業を煮やした幼稚園が遅刻時間にあわせて追加料金をとることにしたら、かえって遅刻する親が増えたという。この事例を紹介したマイケル・サンデル『それをお金で買いますか』(早川書房)は、「迎えの遅れに価格をつけたせいで、規範が変わってしまった。かつて時間を守る―保育士に迷惑をかけない―ことは道徳的義務とみなされていたが、いまでは市場関係とみなされている」と述べている。
サンデルの意図は、本来入り込むべきでない分野に市場が介入することで、道徳、規範に変化が生じるということだった。みんなの迷惑になることはやめようという一般的な道徳が市場関係を導入することによって失われたように、インターネットという技術を日常的に使っていることで、私たちの生き方の基本も、その深層において徐々に変わりつつある。インターネットは技術の一大体系であり、技術では倫理を代替できないということである。しかもこういう小さな変化が人びとの意識や感情に大きな影響を与えつつあることを強調しておきたい。

もしやネグレクト? 近所で“放置子”を見かけたときの対処法

マイナビニュース 2015年7月8日

【ママからのご相談】
数週間前の休日、年少になる娘と近所の公園で遊んでいると、「一緒に遊ぼー」と女の子がやってきました。小学校低学年くらいの子です。「いいよーお名前は?」と、最初は楽しく遊んだのですが、その子から変な匂いがするのに気付きました。 よくよく見てみれば、髪の毛もお風呂に入っていない感じで、服も洗ってもらっているのか疑わしい様子です。「おばちゃんのおうちはどこなの?」と聞かれたので、つい教えてしまったら、次の日から毎日のように家にやってくるようになりました。子ども相手だしむげにもできず、強く言えない私も悪いのですが、正直面倒くさいと感じています。毎日のように来るその子を見て思ったのですが、いわゆる“放置子”のようです。体に傷のような虐待の跡はないようですが、あまりにもガリガリに痩せているし、休みの日などは朝かなり早く(7時台に)やってきたり、結構夕方遅くまで家に居座っていたりもします(門限が無い?)。

私も自分の子育てに手一杯なので、深く関わりたくないのですが、その子がかわいそうにも感じます。「今後関わらないようにするべきなのかも……」という思いと、「なんとかしてあげたい!」という思いが両方で、悩んでいます。

A. 放置子、ネグレクトも立派な虐待です!
ご相談ありがとうございます。ママライターの木村華子です。
“放置子”とは、その名の通り親から放置されている子どもを指すネットスラングです。育児放棄されていることも多く、ネグレクトの被害にあっていることが懸念されます。
“虐待”と聞けば、子どもに身体的な暴力を振るったり、性的な行為に及んだり……といったイメージを持たれがちですが、厚生労働省は虐待の定義を、
・身体的虐待
・性的虐待
・ネグレクト
・心理的虐待

の4つに分類していますので、相談者様が遭遇している女の子のケースも虐待に当てはまる可能性が考えられます。
今回は、放置子を見つけたときの対処法について考えてみましょう。

放置子には関わらない方が良いの?
上にも書きました通り、“放置子”というキーワードはネットから発祥した言葉です。そのためか、インターネットで“放置子”と検索すれば、実にさまざまな体験談やエピソードがヒットします。
意外にもたくさんのママが遭遇している放置子なのですが、その内の多くは、「放置子に関わるとデメリットが多いから、早めに関わりを絶った方が良い」といったネガティブな意見です。放置子に関わることで発生しうるデメリットには、以下のようなものがあります。
・放置子の親に注意しようとしても、親が非常識なケースが多く、トラブルにつながる恐れがある(放置の原因に母親の浮気が関係していることも……)
・放置子は、子どもよりも大人(ママ)にかまってほしいのか、とにかく人懐っこい。粘着されると毎日でも訪れる
・家に上げると、お菓子やジュースなど食べ物をもらおうとする。勝手に冷蔵庫を開けられる
・小学校高学年になってくると、放置子本人の人格も過激になってくる。同情ができない
このような理由から、ネグレクトの被害者かもしれない子どもたちがうっとうしがられている現状があるようです。
確かに、ご自身のお子様を育児中のママにとって、他の子どものことまで心配をする余裕は少ないかもしれません。しかし、育児をしているママだからこそ、放置子を拒否してしまう自分へ罪悪感や嫌悪感を抱いてしまうこともあるのではないでしょうか。
もしも自分にできる範囲の行動があるのであれば、してあげたい、してあげるべきだと思いませんか?

児童虐待の通告は義務付けられています
もしも放置されていると思われる子どもを見かけたら、公的機関に通告することを考えてみてください。
『児童虐待の防止等に関する法律第6条』では、“児童虐待を受けたと思われる児童を発見したものは、速やかに、これを市町村、都道府県の設置する福祉事務所若しくは児童相談所に通告しなければならない”と義務付けています。
もしも、「この子、放置子かな? ネグレクトされてる?」と感じたら、
・児童相談所全国共通ダイヤル……189(いち・はや・く)
に問い合わせましょう。最寄りの児童相談所につながります。
通告は匿名でも可能ですし、実名で通告したとしても誰が通告したかを知らされることはありません。また、もしも本当は虐待がなかった場合、つまり間違った通告であったとしても、それによって罰せられることもありません。
「わたしが通告したことがばれて、ご近所でトラブルを起こしたくない……」
「もしも虐待されていなかったら、迷惑をかけてしまうことになるかも……」
と心配される方も多いでしょうが、通告者のプライバシーはきちんと保護されているので、安心してください。

少しの勇気で最悪の結果を防げるかもしれません
「正直、わずらわしい!」「子どもはかわいいけど、他の子まで面倒見られない……」と、マイナスな印象を持たれがちな放置子たち。しかし、彼ら自身に責任はありません。
たしかに、「あまり深入りしたくないな……」というのが大人の正直な感想かもしれませんが、そのまま拒否して終わり! にしてしまうのではなく、ぜひ勇気をもって通告してあげてください。

無戸籍の学齢児童・生徒の就学の徹底及びきめ細かな支援の充実について(通知)

文部科学省初等中等教育局初等中等教育企画課長 2015年7月8日

日本国籍を有するものの戸籍に記載がない者(以下「無戸籍者」という。)については、戸籍謄本等により身元を証明することができないために社会生活上様々な不利益を被ることがあるほか、各種の行政サービスを受ける上で困難が生じるものと考えられるため、法務省及び文部科学省を含む関係省庁においては、無戸籍者が適正な手続により戸籍に記載されるための支援を推進するとともに、平成26年8月以降、無戸籍者に関する情報を各地域の管轄法務局において集約し、法務省に報告することとしています。
法務省が把握している無戸籍者の中には、学齢児童生徒と思われる者も相当数含まれていることから、文部科学省においては、法務省が平成27年3月10日現在で把握した無戸籍者について、就学状況の調査(以下「実態調査」という。)を行い、その結果を取りまとめたところです。(別添1)
戸籍の有無にかかわらず、学齢の児童生徒の義務教育諸学校への就学の機会を確保することは、憲法に定める教育を受ける権利を保障する観点から極めて重要であり、各市町村(特別区を含む。以下同じ。)教育委員会及び各義務教育諸学校においては、今回の調査結果も踏まえつつ、下記に御留意の上、無戸籍の学齢児童生徒の就学の徹底ときめ細かな支援の充実に取り組んでいただくようお願いします。
各都道府県・指定都市教育委員会教育長におかれては所管の学校及び域内の市町村教育委員会に対して、各都道府県知事及び構造改革特別区域法(平成14年法律第189号)第12条第1項の認定を受けた各地方公共団体の長におかれては所轄の学校及び学校法人等に対して、各国立大学法人の長におかれては附属学校に対して、本通知の趣旨・内容について周知・指導願います。
なお、本通知は法務省民事局、厚生労働省雇用均等・児童家庭局及び総務省自治行政局と協議済みであることを申し添えます。

1.無戸籍の学齢児童生徒の居住が判明した場合の対応等について
実態調査においては、平成27年3月10日現在で戸籍に記載がない学齢児童生徒142名のうち、1名が未だ就学できておらず、また現在就学している者のうち6名は過去に未就学の期間があったことが判明した。
この点に関しては、戸籍や住民票の有無にかかわらず、学校教育法第17条に基づき、学齢児童生徒の保護者には義務教育諸学校に子を就学させる義務があるが、無戸籍であったり住民基本台帳に記載されていない場合には就学できないのではないかと保護者が誤解している場合や、ドメスティック・バイオレンス被害等の困難な家庭状況が就学の妨げとなっている場合も考えられる。また、戸籍や住民基本台帳に記載されていないことにより、教育委員会が当該児童生徒の情報を把握することができず学齢簿を編製することが困難となることも考えられる。
以上のことから、市町村教育委員会におかれては、戸籍担当部局、住民基本台帳担当部局、社会福祉部局、児童相談所等の関係機関との間で戸籍や住民基本台帳に記載されていない学齢児童生徒に関する必要な情報共有のためのルールをあらかじめ決めておくとともに、戸籍や住民基本台帳に記載されていない学齢児童生徒が域内に居住している事実を把握したときは、直ちに当該児童生徒に係る学齢簿を編製するとともに、対面により丁寧に就学の案内を行うなど、戸籍や住民基本台帳に記載されていない学齢児童生徒が就学の機会を逸することのないよう取組を徹底すること。

2.無戸籍の学齢児童生徒に対するきめ細かな支援について
(1)戸籍への記載に向けた支援
法務省においては、「戸籍に記載がない者に関する情報の把握及び支援について(依頼)」(平成26年7月31日付け法務省民事局民事第一課長通知)(別添2)において、市区町村(教育委員会等も含む。)が戸籍以外の所管業務の過程で無戸籍者に関する情報を把握したときは、市区町村の戸籍窓口に当該情報(通称,生年月日,連絡先等)を連絡するとともに、無戸籍者に対して管轄法務局等へ相談するよう案内すべき旨通知しているところである。
以上のことから、各市町村教育委員会におかれては、当該通知に基づく取組を徹底するため、無戸籍の学齢児童生徒の情報を把握したときは、速やかに戸籍担当部局に連絡するとともに、当該児童生徒の保護者に、無戸籍者支援に係る法務省のホームページを紹介したり、近隣の法務局から就籍手続に関する連絡が行くよう取り計らうなど、戸籍担当部局と連携して、当該児童生徒の就籍に向けた支援を行うこと。

(2)学習上・生活上課題がある児童・生徒への支援
実態調査においては、無戸籍の学齢児童生徒が義務教育諸学校へ就学している場合であっても、当該児童生徒のうち約16%が困難な家庭状況により児童相談所の支援を受けているなど特別な生活上の課題があり、また過去に未就学期間があった児童生徒のうち半数が、未就学期間があったことによる学習上の課題を抱えていることが判明した。
以上のことから、義務教育諸学校においては、別添1において、今回の実態調査で把握した、無戸籍の学齢児童生徒が抱える学習上・生活上の課題を取りまとめているので、その内容や「生徒指導提要」(平成22年3月、文部科学省)の第6章2「個別の課題を抱える児童生徒への指導」における記載も参考としつつ、無戸籍の学齢児童生徒が抱える教育上・生活上の課題に適切に対応すること。
特に、当該児童生徒が、未就学期間があったことによる学習上の課題を抱えている場合は、学習内容にまとまった欠落があるなど、日々の教職員の指導の中で補充的に対応するだけでは十分な支援ができない場合も考えられるため、教育委員会と学校とが連携して個別に支援計画を策定し、放課後や長期休業日の活用も含め、修業年限全体を通じた組織的・計画的な学習支援を行うことも検討すること。
児童生徒が児童養護施設へ入所している場合や、貧困、虐待、ネグレクトといった課題を抱えている場合など、児童生徒に特別な生活上の課題がある場合には、児童相談所等の関係機関や、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカーといった専門職員と緊密に連携しつつ、きめ細かな支援を充実させること。
また、各都道府県教育委員会においては、当該児童生徒の在籍校における学習指導上・生徒指導上の課題の状況を総合的に判断して必要と認められる場合は、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーの配置に係る補助や教職員定数の加配の活用も考慮しつつ、当該在籍校の指導体制の充実に努めること。