<無戸籍小中学生>全国で142人 35%は就学援助受ける

毎日新聞 2015年7月9日

無戸籍の小中学生が3月時点で全国で142人おり、そのうち35%は就学援助を受けている低所得層だったことが8日、文部科学省の調査で分かった。中でも生活保護世帯は約12%で、全小中学生の平均割合の8倍以上に上り、無戸籍の子どもが経済的困難を抱えている実態が浮かんだ。142人のうち7人に未就学だった期間があり、学習状況に課題があることも判明した。今年6月時点では186人に増えており、行政が把握していない子どもがさらにいるとみられる。
文科省は、都道府県教育委員会などに対し個別の学習支援などを求める通知を出した。
法務省の無戸籍調査で判明した小中学生142人について、居住地の教委に対し文科省が聞き取り調査した。無戸籍の子どもに関する実態調査は初めて。
その結果、142人のうち1人(小学5年相当)が学校に一度も行っていなかった。また6人が過去に学校に行っていない期間があった。最長の子は7年半に及び、中学の途中まで通学していなかったことになる。
学校に通っている141人のうち就学援助を受けているのは49人(約35%)。このうち、生活保護を受けている「要保護」は17人(約12%)、住民税非課税などの「準要保護」は32人(約23%)。全小中学生に対する平均割合と比較すると要保護率は8倍、準要保護率は1.6倍で低所得層の割合がかなり高い。
142人のうち23人が「学習状況や家庭に課題がある」ことも分かった。漢字が書けない▽九九ができない--など学習上の課題に加え、▽身体的虐待▽家庭での食事が十分でない▽給食のない日に学校を欠席しがち--など家庭での問題も分かった。
文科省は「自治体は無戸籍の子どもが就学の機会を逸することがないように取り組みを徹底するとともに、学習状況に課題がある場合は放課後や長期休みを利用して組織的に個別支援に当たってほしい」と話している。【三木陽介】

無戸籍児
離婚後300日以内に出産した場合は民法772条の規定で、戸籍上は元夫が父になるため、母親が出生届を出さないケースが多い。住民票を取ろうとしたり、児童福祉サービスを受けようとしたりして行政の窓口で発覚する事例が目立つという。法務省によると、ほかの事情も含め出生届を出せず戸籍がない人は6月10日時点で少なくとも626人いる。

「調査結果は氷山の一角」
文科省の調査で、学習の遅れなど戸籍のない子どもたちが抱える課題が明らかになった。ただ、役所に行かない親子らの存在は把握できておらず、支援者は「調査結果は氷山の一角」と指摘し、実態把握や個別の学習支援の体制強化を訴える。
民間支援団体「民法772条による無戸籍児家族の会」の井戸正枝代表によると、親が児童福祉サービスの相談などで役所を訪れて初めて発覚することが多い。
中でも、子どもが就学年齢を迎えても無戸籍のままの親子は、調停や裁判などで無戸籍を解消しようとしても思うように進まなかったり、適切な知識を持つ支援者と出会えなかったりしたケースも少なくないという。「無戸籍では学校に通えない」と誤解したままの親もいるとみられ、井戸さんは「役所の窓口担当者は相談者の子が赤ちゃんの時から、学校に行けることを伝えてほしい」と話す。
今回の調査で無戸籍の子には未就学期間があったり、学習や生活上に課題があったりしたことも分かった。井戸さんは「担任教諭だけでなく複数の関係者が長期間、きめ細かい配慮を続けてほしい。文科省は過去に無戸籍の子を受け入れた学校の経験を共有できる仕組みをつくるべきだ」と話す。
支援に動く自治体もあり、兵庫県明石市は昨年10月に専門の相談窓口を設置して教育や生活、法的手続きに詳しい弁護士の紹介など総合的に支援しており、4件の相談があったという。【高木香奈】

厳しくするべき? 泣き虫で打たれ弱い子どもに接するポイント

アメーバニュース 2015年7月8日

【ママからのご相談】
かなり小さいときからなのですが、娘が打たれ弱くて悩んでます。一見気が強そうなのですが、ちょっと注意されたりするとすぐヘコんで、ここ最近は泣くようになってしまいました。「そんなことしたらダメでしょ」くらいの口調で言うだけでも、 「ママ(パパ)に怒られた?」と涙を流して泣きます。幼稚園の授業参観が終わり帰ろうとすると、「ママと一緒がいい」と泣いてしがみついてきます。上の子なので手探りの育児ですが、それでも特に甘やかしたり厳しくしたりした覚えはなく、普通に接してきたつもりです。昔からわりと聞き分けのいい子なので、私や旦那が怒鳴ったりすることもありません(注意の段階で、「ごめんなさい」と泣いてしまうので)。
このまま、打たれ弱く泣き虫でいてもいいのでしょうか。去年妹が生まれたので、赤ちゃん返りをしているのかと思い、甘えてくるときにはぎゅっと抱きしめたり、できるだけ手(愛情)をかけてあげてるのですが、それが逆効果なのか、もっと突き放すように強く接した方がいいのか、わかりません。この先、人間的に強く、すぐに泣かないようにするにはどうしたらいいのでしょうか?

A. お子さんの言動、全て受け止めてあげてくださいね……。
はじめまして、こんにちは。藤じゅんです。ご相談ありがとうございます。
毎日の子育ての中、文面からお子さんへの深い愛情が伝わってきました。上のお嬢さんのことでお悩みなのですね……。
ご相談内容から、上のお嬢さんはとても繊細な心の持ち主だと感じたと同時に、聞きわけの良いお子さんという点からもう少しご両親に甘えたいのかな? と思いました。
お嬢さま、打たれ弱くてもいいと思います。泣き虫でもいいと思います。お嬢さまが落ち込んだときには抱きしめてあげてください。もちろん、命に関わることで危険をおかしそうなときや、他人に迷惑がかかる行為については、きちんと注意しなくてはなりませんが……。
人間的に強くなってほしい、泣かないでほしいというご相談者様の気持ちは同じ母親として良く分かります。でも、子どもが母親に自分の感情をきちんとぶつけられることはとても大切なのです。
そして、それを母親が受け止めてあげることはさらに大切。その繰り返しで、お嬢さまは強くなっていくはずです。きっと、お嬢さんはお母さんのいない所(幼稚園や学校習い事など)で一生懸命頑張って過ごしているのではないでしょうか?
そんなお嬢さま、ご両親の前でしか弱い部分を見せていないのかもしれないですよね……。
ご相談者様にとって第1子ですから、いろいろな思いがあると思います。でも、第1子だからこそ、お子さんの性格や起こりうることを試行錯誤しながら、受け止めてあげてほしいと思います。そうすることによって第2子以降の子育てに気持ちの余裕ができてくるはずです。

全てを受け止めてあげましょう
お嬢さまの現状(打たれ弱い点、すぐに泣いてしまう点)を直そうとせずに受け止めてあげることを繰り返したら、お嬢さまはどうなると思いますか? 果たしてこのままずっと打たれ弱く泣き虫のまま成長するのでしょうか?
ここで、私が子どもたちを通わせていた幼稚園の園長先生のお話をお伝えさせていただきますね。
『子どもは家庭内でくつろぎや甘えの場所がきちんと確保されていれば、家の外に出たとき、自分の行動をきちんと正せるようになります。反対に家庭内でそのような場所がない子どもは外で不安定になり、家庭の外に安らぎを求めるようになると、それが非行につながることも否定できないのです。だから、家庭内で自分の感情を素直に表現できる場所があることはとても大切なのです』
また、ご自身の経験に基づいて28年間子どもの非行と引きこもりの解決に力を注いでいらっしゃる伊藤幸弘氏は児童精神科医である佐々木正美先生との対談の中でこんなことも述べています。
『両親、特に母親にその感情を受け止めてもらって成長した子どもは、ゆくゆく、お母さんの希望や願いや気持ちに応えようとするようになる』

お嬢さまの今後を楽しみに……
いかがでしたでしょうか……?
ご相談者様のお気持ちを少しでも緩和できましたでしょうか?
将来、お嬢さまに、「あなたは小さかったころ、本当に打たれ弱く、すぐに泣いちゃう子だったのに。いつの間にかとっても強くなったわね……。その強さ、お母さんにも分けてほしいわ」なんて思い出話ができる日がくるかもしれません。
そんな日が来ることを願って、これからもお嬢さまの言動を受け止めてあげてくださいね。

「絶歌」発売1カ月、印税2000万円超……問われた出版の良識、内容に社会性はあったのか

ITmedia ニュース 2015年7月9日

平成9年に起きた神戸市須磨区の連続児童殺傷事件で、加害男性(33)の手記「絶歌(ぜっか)」が出版、発売されてから10日で1カ月。出版の是非や内容をめぐる波紋が収まらない。少数ながら「言論の自由」などの観点から出版を容認する声はあるものの、被害者遺族に無断で出版し、多額の印税を手にすることに出版の「良識」を問う声が強いようだ。

販売自粛の書店、購入しない図書館も
「責任ある成人男性が、少年法の陰に隠れて匿名で本を出し、遺族を傷つける。卑怯(ひきょう)だ」
事件で亡くなった土師淳君=当時(11)=の父、守さん(59)は憤る。出版直後、版元の「太田出版」(東京)に抗議、手記の回収を求めた。
山下彩花さん=当時(10)=を亡くした母、京子さん(59)も「元少年Aや出版社の人たちと同じ土俵に立ちたくない」と突き放した。
遺族感情を踏まえ、各方面から批判の声が上がった。淳君の菩提(ぼだい)寺がある兵庫県明石市の泉房穂市長は6月19日の記者会見で、出版を「遺族を傷つける許されない行為」と非難。神戸市の久元喜造市長も「遺族が精神的苦痛を受けたことは大変遺憾」と述べた。
販売を自粛する書店や購入を見合わせる図書館も全国で相次いだ。神戸市などの公立図書館は購入しない方針で、成人に限定して貸し出しを認める滋賀県立図書館などのケースもある。
一方、日本図書館協会は「社会的に関心が高く、賛否両論のある本。図書館があたかもその本が存在しないかのように振る舞ってしまうと、議論自体を覆い隠すことになる」と出版を否定しない姿勢を示した。

当初は幻冬舎に…森功氏「覚悟も意義もない内容」
手記は、加害男性の幼少のころから、事件での逮捕を経て関東医療少年院に入院するまでの第1部と、医療少年院を退院し、日雇い建設業など職場を転々としながら社会生活を営む様子を描いた第2部で構成されている。
出版関係者によると、加害男性は当初、幻冬舎に出版を持ちかけていた。24年冬、幻冬舎幹部宛てに手記の出版を希望する手紙を送付。幹部は25年初めに男性に面会し、編集作業が始まった。
作業は約2年続いたが、社内の議論で大きな批判が予想されることや、加害男性が一時、出版を取りやめる意向を示したことなどから、幻冬舎は出版を断念した。加害男性はその後一転して出版を希望したため、幻冬舎幹部が3月、太田出版を紹介したという。
太田出版は被害者遺族に連絡をしないまま出版。ホームページ上で「少年犯罪を考える上で社会的意味があると考えた」とした。
かつて「週刊新潮」編集者として加害男性の父親らを取材したジャーナリストの森功氏は、絶歌を一読して「文学的とも思えない嫌な文章を読まされた」と感じた。「事件を起こしたのは病気が原因で、少年院退院後も世間の冷たい風に苦労している、と自己弁護に終始しているだけだ」
出版の是非については「仮に遺族が反対しても、心の闇や事件を起こした原因を真摯(しんし)に分析した内容であれば、社会性、普遍性があり、出版の意義はあった」と指摘。その上で出版社のあり方に言及し、「絶歌は『言論の自由』以前の問題。私が編集者なら書き直させた。覚悟が見えない匿名で、しかも意義のない内容で出した出版人の神経を疑う」と批判する。

「サムの息子法」導入議論も
今回の出版は印税の行方にも注目が集まった。
絶歌は税抜き1500円で初版10万部。6月末には5万部が増刷された。加害男性に入る印税は2千万円以上とみられる。「遺族への賠償金に充てるべきだ」との声も上がるが、加害男性は使い道を明らかにしていない。
こうした状況の中、新たな議論として浮上しているのが、日本版「サムの息子法」の導入だ。
サムの息子法は自ら起こした犯罪を基に利益を得ることを禁じた米国の法律。1976~77年、ニューヨーク州で発生した連続殺人事件の犯人が名乗った偽名に由来する。犯人の手記を出すため、出版社が多額の報酬を持ちかけたことが問題となり77年、同州で制定された。
約40州で同様の法律が制定され、自らの犯罪を利用して得た商業的利益を被害者救済のために運用するよう定めている州もある。
明石市の泉市長は6月30日、同様の法律の制定を国に働きかける方針を示し、「被害者の二次被害防止を法的根拠に規定することが望ましい」と述べた。
一方、兵庫県弁護士会の幸寺覚会長は「犯罪被害者の気持ちを考えると、営利目的で出版されないような体制づくりは必要だ」としながらも、法律制定には否定的な見解を示した。
「制定はまだ早い。金(印税)を取り上げるという経済的な面が焦点となり、更生したかどうかなど、問題の焦点がぶれるのではないか」

太田出版のコメント「『絶歌』の出版の意味・意義に関して数多くの取材要請を受けていますが、会社の方針としてこの件に関して取材には応じていません」