DV被害者を守る「シェルター」の厳しい実情 人命を守る活動に予算が十分に下りない

東洋経済オンライン 2015年7月11日

政府統計を見ているといろいろ驚くことがあります。たとえば強姦被害は、10代20代の若い女性に多いのですが、7割が誰にも相談していないのですね……。
はい。性暴力犯罪の統計は、公式な統計を見ると減っていますね。これは、被害が減っているのではなく、被害者がどんどん「言えなくなっている」ことを意味します。なぜなら、私たちが連携している電話相談(よりそいホットライン:0120-279-338、被災3県からは0120-279-226)には、性暴力や性虐待に関連する相談が引きも切らないほどです。
現場で被害者の声に耳を傾けていると、いったい、この社会はどうなっているのだろうと思います。

福島県で深刻化する性暴力
昨年、シェルターネットは、福島県で性暴力やDV被害者支援のための集中講座を手掛けました。
はい。先に触れた電話相談で統計を取ってみると、福島県では性暴力に関する相談件数が多くあります。
被害者支援の集中講座を受けてくださったのは、県警関係者、犯罪被害者支援にかかわる方々、男女共同参画にかかわる方、学校の先生、保健師さん、虐待された児童の支援にかかわる方々などです。皆さん、福島の被害実態が深刻であることを、データで知って驚かれていました。

福島では対策のほうも進んできているようです。
SACRAふくしま(Sexual Assault Crisis Response Association:性暴力等被害救援協力機構)が頑張っていると思います。病院、被害者支援センターや県警が協力して対処しています。電話(024-533-3940)をすると、ふくしま被害者支援センターの女性支援員が対応し、できるかぎり、病院や警察にも付き添います。

本来なら、このようなワンストップセンターは全国各地に作るべきなのです。最初に駆け込んだところで、きちんと受け止めて話を聞いてもらい、心身の傷を癒やして、適切な捜査につなげていく。そうすれば、PTSDなどの2次被害を最小限に抑えることができます。
現在の体制では、被害者は警察に行けば根ほり葉ほり関係のないことまで尋ねられて、二重三重に傷つき、裁判をすれば加害者側の弁護士に、自分が悪かったかのような質問をされてさらに傷つく。だから、性暴力被害を受けても「誰にも言わない」若い女性が7割にも上るのです。

シェルターは9~17時仕事では無理
福島県で行われた性暴力とDV被害者支援員の養成講座は、自治体や政府の予算ではなく、国際協力NGOオックスファム・ジャパンの資金援助で行われました。民間のおカネで民間支援団体が行政をトレーニングしています。
私は、DVや性暴力被害者のシェルターの運営は、もっと民間に任せてほしいと思います。政府にはもちろんおカネを出してほしいですが、被害者支援の実務は民間がつみあげてきたやり方でやらせてほしい。被害は24時間、いつでも発生しうるのですから、私たちの仕事は9~17時までのお役所仕事にはなじみません。
DV防止法ができて十数年経った今、民間支援団体で働く人たちの高齢化が課題になっています。支援者の中心は50~70代。若い人を採用したいけれど、民間の支援団体におカネが回らない現状では難しいのです。

現在、民間のDV支援団体の予算規模はどのくらいですか。
平成21年度には、地方公共団体から、日本全国の民間DV支援団体に、合計1億4000万円が支払われました。民間委託の仕組みはシンプルです。大人1人1日7600円、子ども1人1日4000円が利用実績に応じて支払われるのです。公的なDVセンターには億単位の予算が使われていることと比べると、微々たる金額です。
要するに、民間支援団体には、滞在者がいないとおカネがまったく入ってきません。しかし、相談窓口は毎日ほぼ24時間開いており、ひっきりなしに寄せられる、人命のかかった相談に対処しているのです。
現在、日本全国に100以上の民間支援団体があり、そのうち68が私たちシェルターネットに加盟しています。民間のDV被害者支援団体は、1団体、年間300万円から2000万円程度の財源で運営しています。
繰り返しますが、問題は第1に、DV被害者の命を守ることが、政策の優先課題として認識されていないことです。DVがどれほど大きな人権侵害で、かつ社会に与える損失も大きい問題か、官僚も政治家も正しい認識をしていない。そのために、十分な予算が割かれない。
第2に、今ある予算と施設、人員が活用されていないことが問題です。もちろん予算自体も増やしていただきたいですが、国民のみなさんには、さまざまな課題がある中で民間シェルターが人命を救うために大きな役割を果たしていることを、知っていただきたいのです。

ところで、近藤さんがDV被害者支援にかかわったきっかけを教えていただけますか。
なぜ?と聞かれたら、「女だったから」というのがいちばんいい答えでしょう。私は大学紛争世代なのです。学校を出た後はいろいろな仕事をしまして、いわゆる「ルンペンプロレタリアート」でした。出産・育児など経験して、1990年代始め、札幌に住んでいました。
当時、さまざまな女性運動をやっていたのですが、何かあるたび署名を集めたりするのは大変だから、女が集まるスペースを作ろう、ということになりました。そうしたら、まだオープンする前から黒いビニールに子どものおもちゃを詰めて持ってくる人や、夜行列車を乗り継いで逃げてくる人が相次いだのです。皆、今でいうDV被害者の女性たちでした。
家庭内で起きている暴力被害の大きさに驚き、友人のアパートや教会など、逃げ場を確保し、彼女たちをかくまいました。その後、1995年の北京女性会議で、こうした運動に携わる女性たちのネットワークができたのです。1998年には北海道を8つの地域に分けてシェルター活動を始めました。当時の北海道では6対4でシェルターは民間主導だったのです。
現場で女性たちを助ける活動を続けるうちに、日本中、どこでもDV被害者を助けられる法律をつくりたい、と考えるようになりました。最初のうち、支援者は「そんなの無理」と考えていました。役人は「何とかなるんじゃないか」と比較的楽観的でした。そういう中で「こんな目に遭った」という被害者の声がどんどん集まってくる。その声に支えられるようにして、今まで動いてきました。

DV対策で、動いてくれる人は少ない
民間主導で進んできたことがわかります。DV関連予算を確保する前提で、シェルターの運営は、もっと民間に任せてもよさそうですね。
そうです。理念もノウハウも、民間が蓄積していることを行政の人にわかってほしいのです。私たち民間のDVシェルターは、男女共同参画センター、婦人保護施設など、行政向けに多くの研修を手掛けています。
緊急対応は警察の仕事だと思いますが、それ以降はスキルとノウハウと志のある民間機関に任せてほしいと思っています。

「女性が輝く社会」は政府目標だと思いますが、DVや性暴力に対する政治家の反応はいかがでしょう。
はっきり申し上げて、DV対策について、多くの議員は口では賛成しますが、本当に動いてくれる人は少ないのが現状です。
お話してきたように、DV対策の予算は組まれているのに、公設のシェルターが十分に仕事をしていない現状、加害者が野放しになっている現状で、どれだけの税金が無駄に使われていることでしょう。
表面は元気そうに見える社会でも、女性に対する暴力が潜在化しているのです。子どもたちに、反暴力教育を提供することを含め、この社会のありようを反映している暴力と、それへの対処を真剣に考え直さなくてはいけない、と思います。

「神奈川限定保育士」、10月に筆記試験

カナロコ by 神奈川新聞 2015年7月11日

厚生労働省は10日、神奈川を含む4府県で実施される「地域限定保育士」の試験日程を発表した。8月に年1回実施している通常の国家試験に加え、10月に2回目として行われる。県は試験機会を増やし、保育士確保につなげたい考えだ。

試験を行うのは神奈川県、大阪府、沖縄県、千葉県(成田市)。筆記試験は10月24、25日で、実技試験は12月13日に行う。近く8月の試験を申し込んだ全国約5万人に案内状を送り、地域限定保育士試験の受験意向を確認する。
試験内容は通常の試験に準じ、筆記試験(8科目)、実技試験(3分野から2分野を選択)。合格科目は相互に引き継げる予定で、8月の試験で合格した科目は免除される。現行の試験作成者の全国保育士養成協議会がすべての作問・試験事務を担当する。
地域限定保育士は、改正国家戦略特区法の成立(8日)に伴い創設された制度。保育士として働ける地域は、資格取得後3年間は受験した府県に限定されるが、その後は全国で働くことができる。

熱中症、発症の条件…屋内にいても要注意

読売新聞(ヨミドクター) 2015年7月12日

夏本番。6~9月に「日射病」など熱中症の症状を訴えて病院を訪れた人は国内で毎年平均約33万人もいる。厚生労働省が管理する過去5年分のレセプト(診療報酬明細書)を分析してわかったもので、2013年は、関東地方の梅雨明けが平年より約2週間早かったことから、40万7948人にも上った。
「熱中症は、体が高温にさらされて発症する病気の総称です」と言うのは、レセプトを分析した昭和大学の三宅康史教授(救急医学)だ。熱中症の症状は、めまい、立ちくらみ、筋肉痛、大量の汗といった軽いものから、頭痛、吐き気、けいれん、意識を失う重いものまで様々だ。
発症時期のピークは、梅雨明け後の7月中旬から8月上旬で、時刻は正午~午後3時頃が多い。「気温や湿度が高く、風が弱い、日差しが強いといった条件がそろう時は要注意」と三宅教授。患者は、大きく分けて2通りある。運動や作業中の若者と、日常生活の高齢者だと言う。
熱中症の3分の2を占める「運動や作業中の発症」は、炎天下が多いが、屋内でのケースもある。湿度が高く、風がないと、汗をかいても蒸発せず、体温が下がりにくいからだ。
運動や作業中に熱中症にならないためには、事前に天気予報をチェックして活動を控えることが大切だ。
三宅教授は「運動などでは、『自分との闘い』につい頑張ってしまい、熱中症になることが多い。大量の汗など、おかしな症状に周囲が気づいてあげることが大切」と話している。

会社を辞めるとき自己都合・会社都合で違ってくる失業給付(失業保険)

マネーの達人 2015年7月13日

終身雇用が当たり前で、一度勤めればよほどのことがない限り転職はなかった時代も今では昔のこととなってしまいました。
一旦就職したものの、より給与が高い会社に転職したい、といった自己実現に向かったものから、逆に会社の業績が芳しくなく、縮小により会社をやめざるを得なくなり、やむを得ず転職というケースも少なからず見られます。
すぐに仕事が見つかる、あるいは次の再就職先を確保してからの退職であればいいのですが、そうでないことも結構あります。そのときにありがたいのがいわゆる失業保険(正式には「失業等給付」)です。

自己都合と会社都合で大きく異なる「失業等給付」

この失業保険ですが、受け取れるには、
(1)ハローワークに来所して、求職申し込みをし、就職の意思・能力があるのに失業状態であること
(2)離職の日以前2年間に、賃金の支払いの基礎となった日数が11日以上ある雇用保険に加入した月が通算して12か月以上あること
が必要です。ただし、この(2)については倒産や解雇などを理由とした受給のときは要件が緩和されています。
時々見られるのが、会社を辞めるときにいわゆる自己都合か、会社都合かが会社と辞めた本人で違いがある場合です。
基本手当は、受給資格がある人が会社を離れてから最初にハローワークに求職の申し込みをした日以後、失業している日が通算して7日に満たないときは支給されない、いわゆる「待機期間」があります。
正当な理由のない、自己都合での退職、または辞める人に責任がある重大な理由での解雇ですと、「待機期間」が終わってからもさらに3か月間給付が受けられないという制限があります。
どんな場合給付制限があるパターンかについては、厚生労働省のホームページに詳しく書かれています。また、自己都合での退職であれば、年齢による区別なく、雇用保険の加入期間に応じて失業手当の給付日数が決まっています。
これに対して、会社都合の場合には、「待機期間」がない上に、「特定受給資格者」にあたれば、年齢や雇用保険の加入期間により失業手当の給付日数が手厚く保障されています。
たとえば、年齢が45歳で雇用保険の加入期間が10年であったとすると、自己都合であれば失業手当の給付日数が120日であるのに対して、会社都合となると270日分給付されることになるのです。
このように、会社を辞めたときの事情が自己都合とされるか、会社都合かで、失業給付をいつから受け取れるようになるか、あるいはどのくらい受け取れるかが大きく異なってくる場合があります。ですから、会社が作成する離職証明書にどんな理由での離職とされているか、良くチェックする必要があります。

事実に反して「自己都合」にされた場合は?
会社が事実とは違い自己都合退職として、具体的事情を記載する欄にも異なる事情を書いているときは、内容を改めるよう会社に求める必要があります。もし、それでも会社が記載を変えないときは、会社を辞める人が記入する欄に、自分が事実と考えていることをきちんと書いて、「異議有り」に○をつけておくべきです。
また、会社を辞めた人の意に反して、会社が離職票に「自己都合退職」としてしまっているときは、会社に訂正するよう求めるとともに、ハローワークに相談しましょう。
相談をするときは、自分の主張(「会社都合」の退職である旨)を裏付けるような資料(たとえば会社を辞めるに至るまでのやりとりを書いたメモ、録音媒体など)をできるだけ準備することが大事です。
さらに、会社を解雇されたのち、解雇を争って裁判などにする場合、失業保険は受けられるのかというご相談を受けることがあります。
この場合は、ハローワークに今会社と解雇に関して争っていることが分かる資料(たとえば、弁護士に依頼して作成してもらった内容証明郵便や労働審判申立書・訴状のコピーなど)を提出すると、「仮給付」を受けることができます。
のちに会社による解雇が裁判などで無効になり、会社から解雇時点からの給与を受け取れば、ハローワークにその間受け取った失業給付を返還することで調整を図ることになります。
雇用保険は会社に勤めているときに支払っているのですから、受け取ることができるお金をきちんと受け取って、再スタートを切るようにしたいものです。(執筆者:片島 由賀)